​【インタビュー】新井社長と新スタジオ代表の岡田氏に聞く、Happy Elementsの今後の展望と新スタジオ「ミニアスケイプスタジオ」設立で目指すものとは

『あんさんぶるスターズ!』や『ラストピリオド』などスマホゲーム市場において注目を集めるタイトルを輩出し続けるHappy Elements。2017年10月2日には、「カカリアスタジオ」、「グリモアスタジオ」に次ぐ新しいスタジオとして、東京に「ミニアスケイプスタジオ」を設立した。

今回SocialGameInfoでは、Happy Elements代表取締役CEO兼カカリアスタジオエグゼクティブプロデューサーの新井元基氏とミニアスケイプスタジオ代表(ミニアスケイプ代表取締役)の岡田一郎氏にインタビューを実施。Happy Elementsの2017年の取り組みを振り返るとともに今後の展望、また新スタジオ「ミニアスケイプ」設立の経緯や求める人物像について話を聞くことができた。
 

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◼︎多様性に手応えも感じた一年…2018年もオリジナルで勝負を。


――:本日はよろしくお願いいたします。まず最初にHappy Elementsの2017年の取り組みを振り返っての感想をお願いいたします。

新井氏(以下、新井):当社代表作の『あんさんぶるスターズ!』はリリースして2年経ち、中国大陸や台湾・香港にもゲームをリリースすることができました。韓国版も現在事前登録を受付中です。また、全国4都市でCGライブツアーである「あんさんぶるスターズ! DREAM LIVE -1st Tour “Morning Star!”-」を開催するなど、一定の成果を感じることのできた一年だったと思います。


一方で女性向けのタイトルが市場に増えたこともあり、伸び悩んだという印象も持っています。また、市場としてもユーザーから求められているレベルがどんどん高くなってきていることを実感しています。

――:「あんさんぶるスターズ! DREAM LIVE -1st Tour “Morning Star!”-」は、東京、仙台、名古屋、大阪のいずれの公演もチケットが早々と売り切れとなり、追加公演が決定するほどの人気となりました。

新井:私も完成したライブを見て、手前味噌で恐縮なのですが、これはまさに新しい時代のエンターテイメントだと感動しました。想像以上のすばらしいものができたと思っています。

――:他のゲーム会社でも似た取り組みをされていますが、キャラクターの動きなど正面からだけでなく斜めから見てもしっかり見えるなど、今までにないレベルでとても驚きました。

新井:初音ミクのCGライブを制作していらっしゃる、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社様やマーザ・アニメーションプラネット株式会社様を中心としたチームとご一緒して制作したのですが、初音ミクのCGライブを何年もやってきたノウハウを存分に注いでいただき、CGライブとしては初音ミクと並ぶ日本最高峰のクオリティに仕上がったと自負しています。


『あんさんぶるスターズ!』は男子高校生アイドルを題材としたコンテンツなのですが、ゲームの中では歌ったり踊ったりするのは静止画でしか表現できていないため、このCGライブツアーでようやくキャラクター達が実際にキラキラしているところを見せられるということで、注力して取り組んできました。

CGでのライブとなりますが、『あんさんぶるスターズ!』にとってはキャラクター達本人によるライブという位置づけのものになります。キャラクターによって細かいしぐさやダンスの上手さや癖などを反映したりと、キャラクター本人の性格や特徴などを表現するために細かい部分にも気を配り、こだわりを持って取り組みました。


――:今後もライブツアーの取り組みは考えているのでしょうか。

新井:今回のツアーの最後となる大晦日のカウントダウンライブの最後に発表させていただいた通り、第2弾を2018年夏に開催することが決まっていますし、今後もユニットを追加しながら継続的に開催していきたいと考えています。今回3ユニットで1時間強のCGを制作するのに約1年の準備期間がかかりましたので、全ユニット・全キャラクターを出せるようになるまではまだまだ時間がかかるとは思いますが、最終的には全キャラクターでライブができるようにしていきたいと考えています。

――:2017年のアプリマーケットを振り返って、どのような感想を持っていますか?

新井:2017年の日本のマーケットを振り返ると、中国や韓国のディベロッパーの成功事例が目立ってきた一年でした。オンラインゲームで培われてきたような豪華なゲーム性に加えて、キャラクターデザインを日本のテイストにアジャストしてきたことが大きな要因だと思います。

またIPのタイトルも躍進も2017年の大きな特徴だと思いますが、弊社は引き続きオリジナルタイトルで勝負していきたいと考えています。新規タイトルについては現時点で公開できる情報はまだ何もないのですが、弊社の強みは2Dのキャラクターイラストや独特の世界観で、新作タイトルでもそういったものを楽しんでいただけるようなものを開発しています。


 

◼︎自分がやりたいゲームを制作できる「ミニアスケイプスタジオ」


――:以前にもお聞きしたカカリアスタジオ(京都オフィス)について教えてください。

新井:設立して7年目になりますが、現在では約150名となりました。少数精鋭でクリエイターにとって理想的な環境、一人一人のクリエイティブティを最大限活かせる組織を目指しており、急激に規模を拡大することは考えていないのですが、継続的に採用を行っており従業員が年20-30人くらいずつ増えています。引き続き全方位で人材を募集しています。

――:カカリアスタジオではどのような人材を求めているのでしょうか。

新井:「クリエイターにとって理想的な環境、少数精鋭で一人一人のクリエイティブティを最大限活かせる組織をめざし、熱狂的に愛されるコンテンツをつくる」というビジョンに共感いただける仲間を少しずつ増やしたいと考えています。

特にゲームデザイナー(プランナー)は、関西で転職しようという人がそもそも少ない印象で採用に苦戦しており、急募しています。既存タイトル以外に新作も複数ライン進めており、男性向けタイトル、女性向けタイトルともに経験者を募集しています。

その他エンジニア(サーバ・アプリ)やインフラエンジニア、イラストレーター、アニメーションデザイナー、グラフィックデザイナー、シナリオライター、ディレクターといったクリエイター職の経験者を募集していますが、ゲーム開発以外の管理部門のスタッフも募集しています。150人とそれなりの規模になり会社としての組織運営体制をより強化していく必要性を感じているため、人事・総務・経営企画などバックオフィスからゲームづくりを支え、理想を目指してよりよい組織づくりを一緒にしていくための仲間を募集しています。


――:10月2日には、新たな開発拠点として「ミニアスケイプススタジオ」を設立されました。その経緯について教えてください。

岡田氏(以下、岡田):「ミニアスケイプスタジオ」は、京都の「カカリアスタジオ」出身のメンバーが中心となり、2017年10月2日に東京に設立した新たな開発拠点であり子会社となります。カカリアスタジオ、グリモアスタジオに次ぐ、3つめの新しいスタジオとなります。



 

新井:元々、弊社のスタッフは前職まで東京で働いていた方も比較的たくさんいるのですが、あるときその中の一人である岡田から、そろそろ東京に戻ることを考えているという意向を聞きました。いずれは東京にいる仲間達とゲームづくりがしたいということでしたので、それなら今東京で新しいスタジオを作らないかと提案し、「ミニアスケイプススタジオ」を作ることになりました。

――:スタジオ名の「ミニアスケイプ」にはどのような意味があるのでしょうか。

岡田:「ミニアスケイプ(Miniascape)」には「箱庭」という意味があります。ゲームは現実世界とは別の世界の構築に近いものがあると思っていて、「箱庭」はゲームそのもののような感覚がありました。語感が柔らかかったのと、「ミニ」というのが謙虚でいいかなと(笑)。またスケイプには「風景」といった意味もあり、「スマホという小さな窓を通した、その先の風景」といった意味合いも込められています。

――:ミニアスケイプではどのようなゲームの開発を目指しているのでしょうか。

岡田:ゲームがユーザー様からどう評価されるかは市場に出してみるまで判らないと思っていますので、「制作している自分達自身がこれは面白い、楽しい、と心の底から思えるもの」を作りきることを第一に考えています。

幸いにも、私自身カカリアスタジオで「周囲から口出しされずに、自分がやりたいゲームを制作する」という経験をさせていただいており、その中から多くの経験や体験を得ています。現状、一緒にやっているメンバーも、それぞれに私と同等か私以上の経験値をもっているメンバーで、同じビジョンをもって取り組んでいます。


――:これまでのインタビューでも「自分自身が面白いと思うゲームをつくることに専念する」というこだわりをHappy Elementsからは感じますが、その考えを持った背景は何だと思いますか。

新井:私自身が一人のエンジニアとしてシステムやゲームの開発に携わっていた時から、常にどうすればものづくりに専念して良いものがつくれるのかということを考えており、現場を知らないマネージャーによる的外れな判断や理不尽なルールが無く、自分たちで正しいと思う判断がすぐにできる環境でものづくりをするのが理想なのではないかと考えていました。

いざHappy Elementsという会社を立ち上げた後は、開発でなく組織づくりやバックオフィス、プロモーションなどのゲームづくりのサポートにまわっていて、全然ものづくりに関われていないですけど(笑)。私はクリエイターにとって理想的な環境づくりに注力するので、スタッフには思う存分面白いゲームづくりに注力してもらいたいです。


また、社内では経営からの売上目標を設定していません。会社やゲーム運営を長く続けていくために利益はもちろん大事ですが、よりたくさんの人に長く楽しんでもらい幸せにするということを一番に考えており、その結果として利益が出る状況が望ましいと考えています。中国にある親会社にも設立当時から「クリエイターにとって理想的な環境づくりをする」という考えを理解してもらえており、自分たちのやり方に対してネガティブな意見をされることは全く無いです。

――:現在のミニアスケイプでのゲームの開発の状況について教えてください。

岡田:現在は有力企画が3タイトルほどあり、どれもそれぞれに、面白い、新しいなど手応えを感じていますが、その中でも一番「ぶっ飛んだもの」をモック段階まで作り始めています。「ぶっ飛んだもの」と言いましたが、例えば現在のスマホゲームのトレンドで採点項目をつくって、その採点項目をチェックしていったら、軒並み「×」が入るゲームだと思います(笑)。

ただ、そこに踏み込んででも、その先に「剥き出しの面白さがある」と感じていますし、「新しさは現状の破壊の先にある」と思い込んでいます。とはいえ、まぁ、もっと面白そうな企画が舞い降りてくれば方針転換するかもしれません…(笑)。


――:ミニアスケイプの体制について教えてください。

岡田:ミニアスケイプは、まだまだスタートアップ段階の会社となり、現状の体制は社長兼雑用の私と、エンジニアが3名、プランナーが1名、バックオフィスが1名となっています。これから具体的にゲームの開発を進めていくので、よくある「全職種急募」といった感じでしょうか(笑)。特にクリエイティブ系が弱いので、我こそは、と思う方がおられましたら、ご応募お待ちしております。

また、オフィスのサイズ的に20名くらいしか入らないというのもあるのですが(笑)、20名くらいのチームが、各々が主体性をもって、互いに顔の見える距離で仕事をするうえで最適な規模感かな、という感覚もあるので、この体制で一本リリースして、そこから先のことはそれからかな、と。

勿論、働きやすい職場環境が大きなテーマであることは不変ですし、会社の規模は比例しない面もあると思ってるので、ミニアスケイプはミニのままでありつつも、次期社長が出てきて独立してくれるのが理想かな、と勝手に思ってます(笑)。


――:ミニアスケイプが求める人材について詳しく教えてください。

岡田:ミニアスケイプはスタートアップいうこともあり、業務範囲も広いので、自分で仕事を見つけて動ける方に来ていただきたいです。

ゲームづくりに対して、真摯な情熱があるものの、大規模チームに押しつぶされて、自分のやりたいことがやれない、自分のやっていることが見えない、そんな現状に満たされてない方には、是非、ミニアスケイプというスタジオを知ってもらいたいです。

また、ゲーム業界未経験だけど、ゲームが大好きで、ゲームづくりに携わってみたいという情熱のある方、そんな方々ともお会いしていきたいので、少しでも興味をお持ちいただけた方のご応募、お待ちしております。

新井:Happy Elementsの社風でもあるのですが、本当に自由にやれます。自由なので、やろうと思えばトコトンまでやれると思います。


――:最後にHappy Elementsの今後の展望を教えてください。

新井:スマホゲームの市場環境も厳しくなり、会社として「クリエイターにとって理想的な環境、少数精鋭で一人一人のクリエイティブティを最大限活かせる組織をめざし、熱狂的に愛されるコンテンツをつくる」ことを当初から掲げていますが、維持することの難しさも実感しています。

例えば、会社を10年続けるのも難しいことですが、同じ業種で10年続けることはもっと難しいことです。特にベンチャー企業では業種が当初から変わっている会社も多く見られ、当初の業種から変わっていない会社はほとんどないのではないでしょうか。

変わらず続けていく難しさは身を持って実感していますが、ものづくりに専念できる環境づくりを継続して、良いゲームを継続的に生み出していきたいと考えています。

今後も自分たちが面白いと思えるゲームをカカリアスタジオ、グリモアスタジオ、ミニアスケイプスタジオで生み出し続けて、ゲームを通じて世界中の人々に幸せを届けていきたいと思います。


――:ありがとうございました。




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