​サイバーエージェント、18年9月期は「順調なスタート」 AbemaTV拡大続く 収益支えるネット広告は動画・インフィード中心に好調 ゲームは新作に期待



サイバーエージェント<4751>は、1月25日、第1四半期(2017年10~12月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内で、証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は「順調なスタートだった」と振り返った。

発表した決算は、売上高979億円(前年同期比13.1%増)、営業利益82億円(同29.8%増)と増収増益となった。インターネット広告の拡大が続いたことに加えて、巨額投資を行っていた「AbemaTV」の広告収益が計上されたことで赤字幅が縮小したことが背景にある。


 
■「AbemaTV」は質と量で順調に成長

インターネット広告とゲームが稼いでいるうちに次に向けた投資を十分に行う――そんな考えから「AbemaTV」を中心に新しい事業への投資を行っているが、一定の成果が出ているが、足元はどういった状況にあるのだろうか。

「AmebaTV」は、MAU(月次アクティブユーザー数)が1000万人、WAU(週次アクティブユーザー数)が500万人を突破するなど利用者数が拡大しただけでなく、「質」の改善も進んだ。テレビを見なくなった若年層にアプローチする動画メディアを目指し、目論見通りに利用者を増やしたものの、当初は男性が80%になるなど偏りが見られた。しかし、ドラマや恋愛リアリティ番組など女性に好まれるコンテンツを充実させたことが奏功し、2017年12月には48%まで上昇した。また、長時間視聴につながりやすいPCやタブレット、テレビ経由の利用の比率も22%から32%に伸びた。

同社が掲げる、マスメディアとしてビジネスが成立するための条件としたWAU1000万人到達まで、まだまだ道半ばといった状況にあるが、藤田社長は「頑張れば達成できそう」と手応えを感じている。元SMAPの3人を起用した「72時間ホンネテレビ」は国内外で大きな話題を集め、視聴者数の拡大につながった。ただ、こうした特番の効果については絶大と認めつつ、目標達成にあたってはあくまで日常的に放送するレギュラー番組の充実が重要との見方を示した。

 
▲国内外で注目を集めた72時間ホンネTV。会場からは「珠玉のコンテンツだった」との声も


というのは、「特番」はマスメディアやネットでも話題になりやすく、視聴者数の急拡大につながるものの、放送が終わってしまうと、その一定割合が視聴をやめてしまうからだ。ユーザーに視聴習慣を付けてもらうことが大切とする。そのため、恋愛リアリティ番組や独自のドラマの制作を行うほか、大相撲の完全生中継、ゲーム専門チャンネル「ウルトラゲームス」など、今後もオリジナル番組への投資を行い、レギュラー番組の充実を図っていく考えだ。


 
■ネット広告拡大、伸び悩むゲーム事業

「AbemaTV」への巨額投資を支える事業の柱であるインターネット広告は順調そのもの。スマートフォン広告がけん引し、売上高が前年同期比17.4%増の572億円、営業利益が同16.0%増の54億円と2ケタの伸びとなった。とりわけ伸びが目立ったのは、動画広告とインフィード広告である。インフィード広告は売上高が同23%、動画広告は同78%増と成長し続けている。「広告効果を分析し、次の広告を提案する運用力が評価されている」。

もうひとつの柱であるゲーム事業はやや気がかりだ。売上高が同2.7%減の337億円、営業利益が同12.6%減の56億円と減収減益だった。売上高が6四半期連続で横ばいとなり、営業利益も2015年10-12月期に記録した88億円をピークに低下傾向にある。「そろそろヒットタイトルを出して伸ばしたい」。2018年9月期にでは10タイトルの新作をリリースする予定で、直近リリースを控えている『プリンセスコネクト!Re:Dive』と『戦国ASURA』に期待を寄せた。
 


 

次の四半期(1~3月)においては、Cygamesの『グランブルーファンタジー』が3月に4周年、Craft Eggがブシロードと共同で展開している『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』も4月に1周年を迎えることになる。一般的に、ゲームアプリの周年イベントやキャンペーンについては売上・利益に与えるインパクトは大きくなるため、次の四半期(2018年1~3月)においては増収増益に転じる見通しだ。また新作が出た場合、広告宣伝費が増える見込み。


 
■新規事業は「AbemaTV」だけじゃない

なお、「AbemaTV」以外の新規事業についても順調に育っている。マッチングアプリ「タップル誕生」は、アプリストアのセールスランキングで競合サービスを抜いてトップに立った。また、クラウドファンディングサービス「Makuake」も1000万円以上の資金調達事例が70件を超え、調達金額が1億円を超える案件も生まれるに至った。「同業者の数字は開示されていないのでわからないが、おそらく国内最大規模になったのではないか」という。
 


最後に「AbemaTV」は質・量両面で成長し、前回の決算説明会で明かした「売上を伸ばしながら、売上の増加分をさらに制作費につぎ込む」施策である「PumpUp」についても早くも機能し始めた。ただ、WAU1000万人達成まで道半ばにある。加えて「AbemaTV」のようなサービスは前例がなく、潜在的な市場規模は未知数だ。4月に控えた開局2周年や、ゴールデンウィーク、お盆などの大型連休、そして話題性のある特番などを通じて視聴者数の「山」を作りつつ、レギュラー番組の充実で「谷」を引き上げていく青写真をどれだけ具現化できるか、引き続き注視したい。
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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