【インタビュー】「セカンダリー市場の更なる成長を」…Precious Analytics米元氏に訊く セカンダリープラットフォーム事業参入の背景と狙いとは

日本のモバイルゲーム・セカンダリー市場規模は年々の成長を遂げており、昨年2017年には1000億円を超えるまでに成長している。今後、モバイルゲーム市場におけるプレイヤーの寡占化が進む中で、セカンダリー市場はその必要性とともに、更なる成長可能性を有している。

その中、セカンダリーのプラットフォーム事業に参入した株式会社Precious Analyticsの代表取締役CEO米元広樹氏にインタビューを行った。(インタビューアー:美田和成氏) 
 

◼︎セカンダリーの更なる加速を…セカンダリー市場の3つの課題とは



 株式会社Precious Analytics
 代表取締役CEO
 米元広樹

―――: よろしくお願いいたします。まず今回セカンダリープラットフォームに参入された経緯についてのお話をお聞かせ下さい。
 

よろしくお願いいたします。ご存じのように日本のモバイルゲームのセカンダリー市場は倍々で成長しており、2017年に1000億円を超える規模に成長しました。(図1参照)

 
私はこのセカンダリー市場はもっと成長可能性があると考えておりますが、現在いくつか課題があり、今後の市場成長速度のボトルネックになりそうだと考えております。それらの課題を解決することで、セカンダリー市場の成長をより加速できればと思い、セカンダリープラットフォーム事業に参入することにしました。
 


―――:それではまず、セカンダリー市場が抱える課題から教えていただけますでしょうか?
 
はい。現在のセカンダリー市場の課題は大きく3つほどあると考えています。
 
 
ず1つ目は「不十分なマッチング」です。セカンダリービジネスは、売り手と買い手の両者のニーズ、経済条件、移管や受入体制がマッチすることでタイトルの売却・移管が成立します。

しかし、殆どの場合は属人的かつ限定的な交渉となっており、必ずしも、売り手、買い手の十分なマッチングが行われているとは言えない状況です。

その背景として、売り手側の情報は当然ながら内容的に広く開示できないことが多く、どうしても限定的にならざるを得ないこと、またタイトル移管は両社の運用メンバー間で膨大なコミュニケーションコストを要するため、スイッチングコストが高いことが挙げられます。

2つ目としては、「タイトルの不明確な値付け」が挙げられます。
経済条件を固める上で、対象となるタイトルの長期にわたっての売上や収益見通しが不明確であることが多いため、結局タイトルの価値はいくらなのか、とういところの経済条件がすり合わないことで、結果的に交渉しにくい、という点が課題になりやすいです。

最後、3つ目については、「買取り後の収益不振」です。
買い手がタイトルを買い取った後に、自社で運用をしっかり行い、収益を上げて行けるかどうか、の懸念があります。

 
―――:なるほど。これらの課題を解決するのがセカンダリープラットフォームということでしょうか?
 
はい。まず課題となっている2つ目の「タイトルの価値算定」、3つ目の「買取り後の収益改善」については、これまでに弊社が提供してきたサービスである、ゲームのシミュレーションやメタゲーム設計、パラメーター設計やデータ分析をそのまま転用できるため、親和性が高いと自負しております。
 
 
 
またこれらの課題解決ができることで、マッチングを行う上での前提である、経済条件、移管や受入に必要な体制等の要件が整理されますので、結果的に1つ目の課題であるマッチングがスムーズに行えるようになります。

実はシミュレーションやデータ分析を活用することで、買い手には別のメリットもありまして、運用工数の削減も可能になるのですが、これは1つの重要なテーマなので別の機会にお話させてください。

 

―――:ありがとうございます。それでは実際にゲーム会社がセカンダリープラットフォームをどのように利用できるかを教えていただけますでしょうか?
 
まず売り手と買い手とで置かれている背景が異なりますので、提供できるサービスも異なります。(図3参照)
 
 
まず売り手ですが、対象は大手ゲーム会社のケースが多いですね。
背景として、新規で大型のヒットタイトルを開発するミッションがある一方、開発ラインは限られているため、既存の運用タイトルから新規タイトルに開発人員を回す必要があるケースがあります。

その際、既存タイトルをクローズするケースもありますが、IP含め多くのファンを抱えるタイトルということもあり、タイトルは継続する方針でも、自社ではなく外部に運用委託、もしくは売却するケースがセカンダリーの対象になります。ここで重要となるのが、適正な価格でタイトルを評価できること、そして、タイトルの規模に応じた運用をしっかりできる会社に売却、もしくは移管すること、この2点になります。

当社のプラットフォームでは単なるマッチングだけでなく、客観的立場でのタイトルの価格評価や、タイトルの規模に応じた適切な運用会社やチームの選定を行うと同時に、弊社の強みを活かした運用の仕組化とフロー整備を実施し、必要に応じてコンサルティングを行うことで、移管後のタイトルの収益維持や向上をしっかりサポートさせて頂くため、売り手も安心して譲渡できる流れができます。

 

―――:それは売り手としても安心して譲渡できますね。買い手向けにはいかがでしょうか?
 
買い手からのニーズは非常に高いですね。背景として、モバイルゲーム市場の寡占化が進む中で、大手以外の会社は経営が以前に比べ厳しくなりつつあります。

そのような状況下で、売上はそれほど大きくなくとも、確実に利益を生むタイトルを運用することで安定的な収益確保や運用実績をつけたいというニーズが高まっております。
また、若手の育成向けに具体的なタイトルで育成チャンスを創出したいというニーズも増えてきております。


我々プラットフォームの運用側としては、売り手から提供されるタイトルの中で、ゲームのジャンルやゲームシステム、そして運用規模を元に、相性の良いタイトルを買い手にご紹介いたします。

その後、タイトルの価格算定や運用後の収益シミュレーションを行い、安心して引き受けるかどうかの意思決定に関するサポートを行うとともに、譲渡後は着実にタイトルの売上を維持して発展できるようにコンサルティングを行います。

 

―――:WIN-WINのサービスですね。
 
そうですね。モバイルゲーム市場がスタートしてもうすぐ10年になりますが、毎年数々のゲームが世に出ては消えていきます。

それらすべてのタイトルは、様々なクリエイターの皆様が試行錯誤の苦労の末世に出したゲームであり、また大なり小なりファンの皆様によって支えられてきたゲームです。

個人的な話になりますが、最近、今までずっとやってきたゲームのクローズが決まってしまい、とても寂しく思っていますし、これらのゲームが少しでも長くプレイしてもらえることで、ゲームの作り手も、ファンの皆様も満足し納得できる市場を作っていきたいという願いを持っており、弊社がこれまで提供させていただいたサービスがこの市場の活性化に寄与できるのであればこれほど幸せなことはありません。

 

―――:今後のセカンダリーマーケットの発展が楽しみですね。
 
本日はありがとうございました。