【インタビュー】スクエニ、『破軍・三國志』の開発秘話や魅力を草野武宏氏と馬場保仁氏が語る…盤面とカードデッキ構築の駆け引きが融合した新感覚の戦略TCG


スクウェア・エニックスの『破軍・三國志』は、劉備、曹操、孫堅といった三國志の英傑達によるボードゲームの戦略性を兼ね備えたスマートフォン向け対戦型タクティカルカードゲームとして、3月29日より配信を開始している。

本作は、将兵の持つ特技や大将が放つ陣形を駆使しながら5×6マスの盤上で戦うのが特徴的で、戦術はプレーヤー次第で千差万別。カードのデッキ構築と盤面の駆け引きが融合した、新感覚の戦略カードゲームと言える。

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そこで今回、その『破軍・三國志』の開発を手掛ける、スクウェア・エニックスの草野武宏氏と、ファリアーの馬場保仁氏へのインタビューを実施。本作の企画が誕生した経緯や開発中の苦労話、さらには他のTCGにはない本作ならではの魅力について語ってもらった。


(写真右から)
■株式会社スクウェア・エニックス
草野 武宏 氏(『破軍・三國志』プロデューサー)

■株式会社ファリアー
馬場 保仁 氏(代表)
 

◼︎『破軍・三國志』誕生の決め手は”サイン会飛び込み”と”人と人との縁”!?


――:まずは簡単にお二人の自己紹介と『破軍・三國志』における立ち位置を教えてください。

草野 武宏氏(以下、草野):私は元々DeNAで『FFブリゲイド』に携わっておりまして、その時一緒にやっていた縁で、現在はスクウェア・エニックスでプロデューサーとして『破軍・三國志』に関わっています。

馬場 保仁氏(以下、馬場):僕は21年前にセガに入社しまして、今から6年前にDeNAに移ったときに草野さんと出会いました。そこで一緒に『FFブリゲイド』だったり『栄冠へのキセキ』という野球ゲームなどを運営していました。

ただ、当時の僕はDeNAでの立場上、やらなければならない案件が多くなっていて、心残りではありましたが『栄冠のキセキ』は彼に任せて次のプロジェクトに移ってしまった。その後、開発の部長になったときにまた彼と一緒に『JKヴァンパイア』などで一緒にやることもありましたが、お互いにDeNAを離れて、僕は今から1年半前に独立してファリアーを立ち上げました。


――:DeNA時代にお二人は出会われたわけですね。

草野:そうですね。始めて馬場さんに会った時のことは今でも覚えています。元々僕はセガタイトル、『やきゅつく』が好きだったのでセガトークで盛り上がりました(笑)

――:草野さんはスクウェア・エニックスに移られてから馬場さんと一緒に仕事をするのは。

草野:初めてですね。僕がスクウェア・エニックスに入社したのが2015年の7月で、馬場さんが独立する1年前になります。それ以前から交流自体はあったんですが、馬場さんの独立をお祝いする食事会の席で、「また何か一緒にやりたいね」という話になったのが、『破軍・三國志』立ち上げのそもそもキッカケです。

馬場:そこですぐにプロジェクトが立ち上がったというわけではなく、あくまで構想が始まったということになります。

――:構想段階で”三國志”というジャンルを取り扱おうと思った狙いは?

草野:最初から三國志ありきで考えたというわけではありません。どちらかと言うと「トレーディングカードゲーム(TCG)をボードゲームのような盤面の上で遊べたらおもしろいよね」という着想が先にあって、そこから陣形や配置の組み合わせで何かできるようになったらどうだろうと考えていきました。

例えばオリジナルの西洋ファンタジーがテーマでも良かったんですが、遊び方だけじゃなくて世界観もオリジナルですと、プレイヤーにとって少ししんどいかなと。そこで戦記物だったら世界観もある程度認知されているだろうということで、三國志をチョイスしました。

馬場:言うなれば将棋ですね。将棋って皆さん大体のルールや駒の動き方も知っていると思います。このゲームにマニュアルがあるわけではないし、最初に見たときに大体こんなゲームかなということがわかったほうがいいし、既知となる情報がある程度あった上で新しいものがあったほうがいい。

知っている所と知らない所の情報バランスを考えて提供することが大事で、新しいものばかりだと誰も受け入れてくれない。今回テーマにしている三國志なら、さすがに呂布は強いとか、孔明は賢いってイメージがあるじゃないですか。なので、そこはある程度わかるIPを活用させていただきました。


加えて、『破軍・三國志』はカードだけじゃなくて盤面の組み合わせを考えて遊ぶんですが、複雑というほど複雑ではないにしろ、最近のスマホのオリジンユーザーにとっては若干ヘビーかもねという話になり、尚更わかるべき所は説明なしでもわかる状況を用意する必要があると考えて、三國志に落ち着きました。

草野:ただ他にも候補があって、三國志と戦国ですごく議論しましたね。




――:確かに戦国もわかりやすいIPですが、そこで三國志を選んだ決め手は?

馬場:そこは蚩尤(しゆう)先生の話が大きいんじゃないかな。

草野:そうですね。ゲームの構想について雑談レベルで話していたとき、メインビジュアルの絵師さんを誰にするかも考えていたんです。

お互いイラストレーターの候補を持ち寄ったんですが、その中に今回女性キャラクターのイラストを描いていただいた台湾の蚩尤先生というイラストレーターがいらっしゃって、「この方がいいね」という話になりました。蚩尤先生は中華圏の方だったので、それなら三國志がいいねというひとつの決め手でした。

馬場:実際に仕事をお願いできるかその段階ではわからなかったけど、とりあえず候補に挙げました。蚩尤先生は女性キャラのイラストがすごく魅力的なんですが、ゲームにとって女性キャラって大事な要素なんです。『破軍・三國志』を本格的に遊べるゲームにはするけど、ある程度キャラクターにひきがないとダメなので、先生のイラストで女性キャラをたたせられたらいいなと思いました。


草野:ただ、私も馬場さんも蚩尤先生とパイプがつながっているわけもなく、縁があったらという感じでしたね。

馬場:どうやって接触しようか考えていたときに、ちょうど先生が来日して画集のサイン会をやるという情報をSNSでつかんで(笑)

草野:中野ブロードウェイの一角で小規模なサイン会をやるという情報を見つけて、これは運命だと思ってその会場に足を運んだんです(笑) ただ、その会場では結局先生には会えなかったんですが、画集を担当されている編集者の方に名刺を渡したら後日連絡が来まして、そこから話が進んでいきました。

馬場:実は蚩尤先生自体もスクウェア・エニックスさんが好きだったみたいで、ノリノリで引き受けてくれました。これはもう運命だと思って、それで三國志をテーマにすることに決めました。


――:元々パイプがあったわけじゃなく、まさかのサイン会飛び込みだったんですね。それで三國志という世界観、盤面、カードゲームという大枠が決まったと。

馬場:そうですね。そこから盤面でどうやって遊ぶかという話の中で、結局将棋っぽいものというのはあったけど、そこにどうやってオリジナリティを出すかを考えていきました。駒の動きはみんな知っているけど、いかに将棋っぽいモチーフを直感的に取り入れて、かつ将棋だけだとゲームにならない。

そこで、このゲームオリジナルの陣形を入れて、単にカードの強さや、ユニットの配置の運だけじゃない、上手く盤上を操作して2つのリソースをコントロールしていくゲームにしようという話になり、そこから何とかこの方向性でプロトにいけるんじゃないかという道筋が見えてきました。


草野:ゲームのコンセプト自体は、本当に最初の1~2ヶ月くらいで固まりました。メインビジュアルについても、結果的に蚩尤先生にお願いすることができたので同じタイミングで固まって。そのときに、出版社の編集者の方ともつながったんですが、「ほかにもイラストレーターさんいませんか?」と相談したら男性キャラが得意な方を紹介してもらえました。

馬場:最初に蚩尤先生に女性キャラを描いてもらうなら、男性キャラはこの人という方が実はいたんです。それは、昔「東周英雄伝」を描かれていた鄭問先生だったんですが、昨年お亡くなりになられていて。

草野:蚩尤先生の話が固まっていけそうだとなったとき、鄭問先生はまだ描かれているのかとその編集者に相談したところ、「さすがに引退はしているけどお弟子さんがいる」と教えてもらい、そこで繋いでもらったのが、練任先生だったんです。

馬場:その時、芋づる式にご縁があるものだなと、人と人との繋がりの大切さを実感しましたね。そこからはトントン拍子に進んでいきました。


 

◼︎テストプレイチームの存在がなければ『破軍・三國志』は完成しなかった


――:構想段階はトントン拍子で進んでいったという印象を受けますが、開発の中で最初にぶつかった壁はどんなところでしたか?

馬場:やはりテストプレイの開発ですね。カードを出してその強さだけを競うわけじゃなくて、盤上を動かしていくというゲームなので。いまは5×6マスだけど、そこに至るまでに色々な大きさの盤面を考えるなど紆余曲折がありましたよ。

草野:一昨年の8月くらいに構想を決めて、プロトが動いてたのが11月~12月くらい。それで去年の4月には陣形等は入っていなかったけど、カードを出して特技が発生するくらいの遊びができるROMができていました。そこから半年間はひたすらテストプレイの繰り返しでしたね。それでもCβTがあまり良くなかったので、そこからさらにテストして調整を重ねてようやく今のゲームになったというところです。


――:やはりテストプレイの積み重ねが重要であり、ゲーム作りにおいて壁となるポイントだと。

馬場:何しろみんなが触ったことのないタイプのゲームだったので、難し過ぎてもダメだけど、家庭用ゲームみたいに遊んだら確実にプレイヤーが成長できて、かつ施策が加えられていて、対人戦で勝ったらうれしいし、負けたら悔しい、と感情を揺さぶられるのが楽しいわけです。我々もテストプレイで対人戦を繰り返す中で、やたら曹操軍が強すぎるなど、開発中もトレンドがあったよね。

草野:そうですね。特技の内容変更はそんなになかったけど、ルールが結構変わりましたね。「帰投」という要素は最初ありませんでしたから。


馬場:盤上にたくさんのユニットを出せたほうが楽しいので、最初は盤面も7×7マスくらい大きいほうがいいと考えたけど、そうするとお互いのバトルが発生するまでに3ターンくらいかかってしまう。カードを置くだけで数ターン消費しちゃうからこれは長いなと。

じゃあ、4×5マスにしてみたらどうかというと、今度はすぐにバトルが終わってしまう。初手に引いた何枚かカードの運で勝敗が決まっちゃうからこれもダメだと。だから手札を何枚にするか、コストはどうする、盤上の大きさをどうするかを、テストプレイを繰り返しながらいろいろ試行錯誤していきました。



草野:そうですね。大将のパラメーターとか、戦法も結局そこの問題を解決する中で生まれました。

馬場:最初は大将ってHPも攻撃力も高かったんだけど、全然大将が倒せなくて(笑) 1人でガンガン攻めていくのが一番強い戦い方になっちゃってたから。

草野:盤面を5×6にしたとしても、戦端が開くまでに時間がかかるから結局「先鋒」という最初から配置されているキャラも用意しましたし、それでも決着までに時間がかかるから「帰投」を入れた。そういう試行錯誤に時間を費やしましたし、むしろその当時はそれしかやっていなかったですね。

馬場:勢力間のバランスや盤上の大きさ、ユニットの強さとかを考える中で、ユーザーさん同士で戦ったらこういうトレンドが生まれるだろう、という想定を初期はしているけど、その先実際にやっていったらあるカードが1枚追加されることでトレンドが変わるかもしれない。

開発中にも実はそういうことがあって、みんなでテストプレイしているときにやたら勝っている勢力があると思って聞いてみたら、バランスブレイカーなカードが存在していて。


草野:美女連環ですね。あまりにも強くてテストプレイ中は禁止令が出ましたから(笑) 美女連環は、相手のユニットをこちらに向かせる効果があるんです。今はバフが消されるようになっているけど、当時はバフが消されないまま向かせる状態だったので、ひたすらバフをかけて強くした自分の呂布が相手に獲られて終わるというつまらないものになってしまったので、テストプレイチームの中で貂蝉禁止令が出ました。

――:ちなみに、『破軍・三國志』の開発に関わられているチームは何名くらい?

草野:ここまでの話の中で”チーム”という単語を使っていましたが、実はガッチリとしたテストプレイチームがあるというわけではなく、テストプレイ用のロムを遊んでくれる社内のチームにいるメンバーに、「ちょっと触ってみてよ」とお願いした形なので、厳密なチームではないんです。TCGが好きな人に集まってもらって、定期的にプレイしてもらう機会を作っていました。なので開発チームというよりはユーザーライクな視点でテストプレイしてもらいました。

馬場:スマホのTCGゲームを純粋に遊んでいらっしゃる方たちなので、超ヘビーコアで遊ぶ人が多かった。すべての意見を聞けたわけではないですけど(笑)、座談会みたいなノリで集まっていただいてこのゲームに対して言いたいことを言ってもらえたというのはすごく有益でした。

草野:彼らはこのゲームの開発者では無いので、に関して開発の責任も何もないので、言いたいことを言ってくれる。それがテストプレイとしてとても有益でしたし、彼らがいなければ(『破軍・三國志』は)絶対にできなかったです。

馬場:そうですね。我々では気づかない穴をユーザー目線で見つけてくださいますし。開発者だとどこかで工数を考えるけど、ユーザー目線ならそういうこと考えない。だからテストプレイの最初の頃はすごくボロクソに言われましたけどね(笑) でも、それがありがたいわけで。

草野:そうですね、ただ後半は半分楽しんで、このゲームに愛が湧いてきたようですね。

馬場:だからそこは冷静になってください、と(笑) 作り手もここがやばいかも、と直感的に思っているところがあって、そこを明確に指摘してくれるからやっぱりそこは課題だったかと思わされる。逆に不安に思っていた部分について、大丈夫だと言ってくれるときもある。それでも開発者としてある程度冷静になって、彼らの意見を受け止めてより良いゲームを目指していきました。


 

◼︎ペイtoウィンではない、噛めば噛むほど奥深い対人戦が『破軍・三國志』の魅力


――:お二人が考える『破軍・三國志』の一番の魅力は?

馬場:やはり盤上だと思います。先程話した二つのリソースをコントロールするところで、表現は違うかもしれないけど、カードゲームだけにするとペイtoウィンに見えがちなのが嫌なんです。お金を払った人のみが強いというものが嫌で、カードのデッキ組み方、内容、盤面への置き方、どう動かすかなどをある程度考えるものにしたい。あ、でも、もちろん、アクティヴィティが高い、もしくは、お金を使った方が弱いは、ダメだと思っていますよ(笑)

で、話は戻って、相手は大将しかいなくて、こちらが5体いるとする。いつでも倒せると思って油断すると1ターンで負けることもこのゲームでは起きる。そういう意味では、改めて将棋ってすごいと思うんです。だって、ちゃんと王を守るような定石が何百年、何千年前から作られている。『破軍・三國志』だと、大将が負けているといきなり特攻されて負けちゃうことあるから。

だから、ちょっと難しいゲームかもしれないけど、遊んでくれている人の話を聞くと、噛めば噛むほど味が出てきて楽しいと言ってくれるので、そこは間違いなく魅力なんだと思います。カードだけでも勝てない、盤上だけでも勝てないという、二つの組み合わせを考えなければいけないというボードゲーム的な奥深さが、テストプレイしてくれた皆さんのおかげで表現できている。そこが魅力ですね。


草野:他のスマホのカードゲームに比べて、プレイヤースキルがすごく出やすいゲームで、運の要素が低いんです。ドローしてくるカードの順番の運はありますが、ぶっちゃけそれだけ。重要なのは、カードをいつ、どこに出して、どう動かすか。そこの戦略がプレイヤーによって十人十色あるのが魅力ですね。

馬場:陣形もあるから、自分の中でそれらを連携して動かさないといけない。それこそ将棋のように、何手先はこうなると予測してある程度やらないといけないけど、ハマる人は絶対にハマる。だって作戦通りに戦況が動くってことが起きるから。相手を罠にはめてやったということが起きるからおもしろい。


――:強いカードを持っているだけで勝てるわけではなく、プレイヤーのスキルや戦略で勝てるゲームというわけですね。

草野:ただ逆に、自分に足りないカード、欲しいカードが明確になるんですよ。このデッキだとこのカードがないと戦略が完成しない、ということが見えるので、カードに対する飢餓感はあるかもしれません。

馬場:自分の持っていないカードを相手が使ってきて、しかもそれで負けたりして「何それ、確かにそのカード有効だわ」という発見がある。だから、このゲームは対人戦がすごく楽しいんだと思いますね。


草野: 1回目のバージョンアップの結果を言うと、たぶん関羽が強くなっているので、僕の周りの上位陣は所感ですが関羽祭になっています。関羽ってエグくて、ちゃんと防御しないと一発で10くらい持っていかれて、それだけでほぼ勝敗が決まってしまう。僕が最近それをやられたんですけど(笑)

馬場:このゲームって、デッキを組むときに、例えば曹操の勢力には関羽を入れられないんです。彼は劉備の勢力だから。もちろんどの勢力にも入れる中立的なカードもありますが、そういう意味ではユーザーさんたちがいま主にどの勢力を使っているかも見ていて、次に追加する新しいカード次第でバランスやトレンドが変わってくる。恐らく1つの勢力だけで戦い続けることはできなくなると思うけど、違う陣形や戦略を考えるのが楽しくなると思います。劉備と曹操も戦い方が違うので、自分の性に合った勢力といまの組み合わせを考えてみるとすごく楽しいと思いますよ。


草野:その意味で言うと、孫権って強いんですけど、あまり使われていない勢力なんですよ。実は使いやすくて初心者の皆さんにはオススメなので、ぜひ使ってみていただけるとうれしいです。孫権の陣形は使うシチュエーションがわかりやすく、そんなに迷わない。結局ダメ系を発動できるような配置を相手がしていれば迷わずやっていいので、ぜひ孫権に注目してください。

馬場:みんなが使っていない勢力って、敵としてあまり戦う機会がないから、実はみんなが使わない勢力で戦うと、相手も対処法がわからない状態だから案外有利に働くんじゃないかと僕も思っていて。しかも、自分がデッキを組んだことがあれば、あいつらだいたい弓兵を使ってきて、こういう戦略だなと思うから、じゃあこう対応しようと。みんな、だいたい相手の勢力を見てカウンター対策を考えることが多い。そこで見たことのない勢力と戦って、見たことのないカードが出てきた時に「あれ?」と思わせることができる。

最大勢力の場合はみんなに対応策を読まれるから、あとはカードの強さなりデッキの構築になるけど、なかには動かし方のうまい人もいて。なんで一歩引いたところに置くんだろうと思うんだけど、3手後に「なるほどそういうことでしたか」と(笑) 出陣した瞬間に全ユニットを1歩前進させる能力を持っているキャラがいるから、それを利用してわざと一歩引いておいて、能力を発動させたら一気にその陣形になるようにするとか、色々な作戦があるんですよ。負けるとものすごく悔しいけど、ユーザーさんの発想力には、なるほどと感心させられますね。



――:ちなみに現在は何種類の勢力があるのでしょうか?

草野:曹操、劉備、孫権、董卓、張角、袁紹、孫策の7つです。

馬場:もちろん今後増えていくと思うし、それによってトレンドが変わってくると思います。確約はできませんが、関羽って曹操に仕えていた時期もありましたからね。いまは劉備軍にしか入れないけど、いずれは曹操軍にしか入れられない関羽が出てくるかもしれません。


――:配信を開始してユーザーの盛り上がりなど感触はいかがでしょうか。

馬場:チュートリアルの突破とか、ゲームの進行を見ていても、ある一定のポイントを越えたユーザーさんたちは続けてくれていますね。そこがおもしろいと思った瞬間なのか、そこからずっとやってくれているという。まだ配信されたばかりなので、この先どうなるかはわからないですが。

草野:上位陣の資産はすごいですね。上位陣と対戦すると、何でそんなにカードが揃っているのかって思うくらい、ヘビーなユーザーさんもいますね。


――:新カードを追加する際、開発側はこういうトレンドになる、とある程度想定はされているんですか?

草野:想定はありますが、その通りになるかは別で、我々の想像を超えてきます。

馬場:いくら僕らが十数人でプレイしていても、万の数の人が触ってくれたら、新定石、新戦略なんて発掘されますからね。まぁそこを見つけてくれるくらいの方が盛り上がるのでこちらとしてはうれしいんですけどね。


この先運営していく上で、お客さんがお金を払って手に入れた既存のカードに対しても、不快に思わせちゃいけないけど、バランス調整をかけるフェーズもあるかもしれないし、もしかしたらキラーカードを出すこともあるかもしれません。

――:逆に『破軍・三國志』で課題だと思っているところはありますか。

馬場:対戦の楽しさをどうやったらわかってもらえるか。このゲームは、CPUより人と対戦したほうが断然楽しいんですよ。人間ってこっちの想像を超えるイマジネーションで戦略を組み立ててくるし、やけっぱちになる瞬間もあるし。そこで弾ける瞬間もあるから、対人戦のほうがバラエティーに富んでいるし、勉強にもなる。そんな対戦のおもしろさを、自然に皆さんに伝えられる方法を考えないといけないなと感じています。

草野:対人戦は本当にわかりやすいですね。もう勝負は決まっているのに、相手が高コストのフィニッシャーカードを出してくるとか。そりゃあ最後はかっこよく決めたいよねって(笑)

馬場:でもそれってすごく大事で、こういう勝ち方かっこいいという感情が生まれるし、それは対人戦じゃないと味わえないもの。プレイヤーのこだわりがすごく発揮できるから、そこへうまく誘導したいなと思っています。楽しいですよ、という言葉以上に仕組みとして構築したいですね。


――:対人戦の様子を見せるのがやはり一番手っ取り早いのかもしれません。

馬場:そうですね。例えば関羽の倒し方をYoutuberにお願いしたりとか。本当はみんながどういう勢力を使っているかの勢力比を毎週発表したいくらいなんですよ。ヘビーなプレイヤーだったら、少ない勢力を敢えて使って、そこで天下獲れたらかっこいいじゃんって思うかもしれない。次の週になったらその勢力の比率が増えていたら「俺の活躍のおかげじゃん」って思える。そういう状況を作り出すだけでも変わると思うし、今のトレンドを知らせることがやりがいにもつながると思っています。

草野:それはおもしろそうからやりたいですね。

馬場このゲームって、ルールがわかってくると、戦い方がよりわかってくると思います。ルール、ユニットの出し方、カードの強さ、特技の強さがわかったら、そこから始めて戦い方、どう戦略を組み立てるかを陣形を含めて考えていくと思う。たぶん序盤、中盤、終盤で戦略を変えなきゃいけないので、そういう意味で難しいと思われるかもしれないけど、そこが楽しいしハマったら抜けられないんです。

――:だからこそ一度触ってみてほしいと。今後の展望で何かお話できることがあれば。

草野:ちょっと先になりますが、ある程度軍勢を絞ったりとか、盤面の広さを変えた限定戦みたいなものもやってみたいです。あとは、カードが追加されていくごとに特技も新しいものが増えていくので、まずはカードと特技のことを優先してどんどん追加していきながら、ちょっといろいろな条件をつけて遊び方をかえた形のイベントもやっていきたいなと考えています。

馬場:このゲームは盤上がユニークなゲームじゃないですか。だから、いま盤に絡んだイベントの案がいくつかあって作っているけど、またテストプレイをやらなきゃいけないので。カードの強さ、特技はデータでしかないから比較的想像は付くけど、盤は例えば5×6に決まるまでに我々すごい時間をかけたわけで、最初は冗談で7×2くらいってどうなんだろうと試してみたんですよ。曹操と劉備が戦うときに、張飛がたった一人で橋の上に踏みとどまったことで全軍を逃がした長坂橋の戦いのような橋の上の戦いをやることになったら、わざと細い7×2作ることで歴史的エピソードを再現できるかもって。けど、すれ違うこともできないし「祈祷できません」ってなって(笑)


草野:ありましたね。盤面上に石とかおいて再現していたんですけど、遊ぶ幅を狭めてしまって、デフォルトにするのは辛いなと。最初は川の盤面があって、真ん中に流れている川だと家計ができなかったり移動が制限されたりというのも考えていたんです。けど、ちょっと覚えることがさすがに多くなりすぎてしまった。

馬場:当時は、できることじゃなくて、できないことが増えるアイデアしか出せなかったんですね。それって制約するってことだからおもしろくない。だからいまはプラスになる方向の盤面のアイデアを出しています。普通のノーマル盤面だとできないけど、この盤面にするとこういうことができるんだ、というアイデアをいくつか出し合っています。


草野:もともと盤面上に何か置いたりというのは構想にあったんです。いまって意味はないけど天候が何となく入っていますが、じつはそれもなごりで。昔は雨ならではの影響があったんですよ。いまは天候については寝かせている状態ですが(笑)

馬場:赤壁の戦いで、大きな船をつなげた連環の計があるんですけど、最初冗談で盤どうしがガーンとぶつかって大きな盤になるのはどうだって話もあったりして、いろいろ考えていたわけです。船同士がくっつくイメージでステージが動いてくるって今まで見たことないと思うし。そういう意味で、戦略も含めて考えるとまだまだ『破軍・三國志』っておもしろくなる可能性はあります。盤のマス目を1個増やすだけで遊び方が変わるから、アイデアの出しようはいくらでもある。

草野:三國志という題材もあるので、そこともうまく合致したものを入れていきたいですね。もっと陣形や盤、特殊なカードで三國志らしさをより増幅できると思います。

――:ところで『破軍・三國志』では、古田敦也さんを起用されていますが、こちらのどういう経緯で?

馬場:古田さんって、将棋連盟から三段に認定されるくらい将棋が強いんです。しかも知的な戦略家というイメージもある。最初にこのゲームのイメージを考えたときに、盤を挟んで軍師が将棋をさしているみたいなものがあったらいいよねって話をしていて。『破軍・三國志』は盤面、軍師、戦略といった要素があるので、そのイメージにマッチしているのは誰かとなったら、じゃあ古田さんだろうと。

草野:30代くらいの方なら、古田さんの現役時代の野球をゴールデンタイムで見ていた。『破軍・三國志』はその世代を対象にしているので、ユーザーさんに受け入れられやすいというのも起用の理由ですね。


馬場:ちゃんと古田さんのボイスもガッツリ収録しているからね。

草野:そうですね。三國志ゲームで古田さんのボイスが聞けるのは本作だけなので、ぜひダウンロードしてみてください。

――:それでは、最後にメッセージをお願いします。

馬場:とにかく対人戦で遊んでみてほしいです。普通の三國志のカードゲームってだけじゃなく、盤面のおもしろさは今までにないおもしろさなので、ぜひ一度体験してください。家庭用ゲームが好きな方でも遊び応えがあるので、よろしくお願いします。

草野:ゲームの内容はおもしろいと思うので、その部分をもっと僕らも伝えていかないといけないと思っています。三国志好きな方も、TCGや戦略的なゲームが好きな方も楽しめるゲームですので、ぜひダウンロードして楽しんでください。





■『破軍・三國志』

 

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株式会社スクウェア・エニックス
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会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
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