【セミナー】ディライトワークスのディレクターに必要なのは”予想”を裏切ること!?…『FGO』を海外展開するうえでのこだわりポイントも

 
ディライトワークスは、10月5日、同社内にて、ディライトワークスでの仕事に興味のある方々を対象に、ざっくばらんな情報交換や交流、キャリアの相談を行えるイベント「肉会(MEAT MEETUP) Vol.5 ゲームディレクター限定キャリア相談会」を開催した。
 
第5回となる今回は、FGO PROJECT クリエイティブプロデューサーの塩川洋介氏がMCを務め、Fate/Grand Order 第2部開発ディレクターの叶良樹氏と、Fate/Grand Order 北米版ディレクターの浅沼拓志氏を招いて、FGO PROJECTにおけるゲームディレクターの役割や、どんな人がゲームディレクターに向いているかというテーマでトークを展開した。
 
【会社紹介】

▲『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)リリース前は20名ほどで発足したという同社だが、徐々に規模を拡大して現在は422名の社員が在籍している。
 
【登壇者】

●叶良樹氏
ディライトワークス株式会社
Fate/Grand Order 第2部開発ディレクター
 

●浅沼拓志氏
ディライトワークス株式会社
Fate/Grand Order 北米版ディレクター
 

●塩川洋介氏
ディライトワークス株式会社
クリエイティブオフィサー
FGO PROJECT クリエイティブプロデューサー
 

■ディライトワークスにおける”ディレクター”の「役割」や「働く魅力」

 
まずは叶氏、浅沼氏が登壇して自己紹介を行った。
 
2017年にディライトワークスへ入社したという叶氏は、『FGO』のほか、2017年4月1日限定で配信された『Fate/Grand Order Gutentag Omen』の開発にもプロジェクトマネージャーとして参加。2018年4月以降は、第2部開発ディレクターとしてイベントを含め、開発指揮を執っているという。
 
一方、2017年6月よりディライトワークスとアニプレックスの直接運営という形で始まった『FGO』北米版でディレクターを務める浅沼氏は、その他にも新規プロジェクトのディレクターを担っているとのこと。
 

 
ここからは、出されたテーマに沿ってトークを展開。最初のお題は「FGO PROJECTにおけるディレクターの役割」について。
 
これにはまず叶氏が「カラフルな黒子」と回答。役割としては黒子にあたるが、気配を消しても絶対に目立ってしまうためと理由を説明した。ディレクター業務としては主に、『FGO』を如何にユーザーのもとへ届けるかを裏方として考えているという。その中でTYPE-MOONと連携をしたり、開発メンバーの指揮を執ってイベントを展開したりしているが、これはユーザーからは目に見えない部分になる。
 
ただ、ステージイベントや生放送の際には、『FGO』の良さを伝えるために表舞台にも自ら出演している。そのため、ユーザーからの認知度も上がり、裏方でありながらリアルイベントなどで声を掛けられるほど目立ってしまうというところから“カラフルな”という言葉が付けられているようだ。この部分について叶氏は、決して目立つことがダメというわけではなく、多くのユーザーがいるタイトルを任されているからこそ「色々なところから見られていることを意識しながら、いつも暮らしています」とコメントした。
 

 
この回答には、浅沼氏も「『FGO』はTYPE-MOONさんの作り上げる世界観が魅力のゲームで、”如何にTYPE-MOONの作品を楽しんでもらうか”にフォーカスしているので黒子という気持ちはよく分かります」と賛同した。
 
そんな浅沼氏は「FGO PROJECTにおけるディレクターの役割」について「FGO伝導師」と回答。通常、こうしたゲームが海外展開される際には、各国向けの施策・機能・バランスなど各方面から調整が行われるものである。ただ『FGO』北米版は、北米向けに作り直すのではなく、日本でサービスされているものをなるべく変更せず、日本版から得られる体験をそのまま伝えようというコンセプトで作られているのだとか。どうすれば国ごとに日本で提供している感動を味わってもらえるか、『FGO』の世界観をより良く伝える人という意図で「伝導師」という言葉が使われたようだ。
 

 
また、ここで塩川氏より「特に伝導するのが大変だったところは?」との質問も。これに浅沼氏は「日本語でなければ表現できないこともあるのが大変」と回答した。例として、『FGO』にはエドワード・ティーチというキャラが登場しているが、その際にオタク用語やスラングが多々使用されるため、どのようにしてこのテンションをそのまま届けるかに苦労しているのだとか。北米でも、コアユーザーには説明せずとも伝わっているノリがあるが、いざ英語に置き換えたときにテンションやスピード感の表現を間違えてしまうとユーザーから「ローカライズを失敗している」と受け取られかねない。そうならないよう調査を重ねてユーザーから「分かっているね」という反響を得られたときが、この仕事をしていて最も楽しい瞬間だと答えた。
 

 
2つ目のテーマは「ディライトワークスでディレクターとして働く魅力」について。これに叶氏は「ただただ、純粋に面白く」と回答。同社では「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」という企業理念が掲げられているが、そうは言っても実際には周りから意見が入ったり、コスト面の制約が設けられたりして「理想を掲げているのではないか?」と問われることもあるという。しかし、同社では真っ直ぐに面白さを求めて開発できる環境が実現できており、面白さを追求することに横槍が入ることはないとアピールした。
 
特に、ディレクター間ではよく情報共有が行われているが、面白さを求めて自由に制作できる分、他のディレクターの話の中には自分が後から知ると驚くこともあるほどフットワークの軽さがあるのだと説明した。


 
一方、浅沼氏は「ディライトワークスでディレクターとして働く魅力」について「世界を知れる」ことに尽きると答えた。また、この言葉には2つの意味が込められているという。
 
ひとつは、『FGO』北米版でもApp Store売上ランキング1位を獲得したことがあるからこそ、北米大陸におけるアプリの状況を知ることができる。この結果を得るために必要な取り組みやユーザーの感情を知ることができるのは非常に大きなメリットとなっているようだ。さらに、北米のみに留まらず、『FGO』が世界で展開しているからこそ中国、台湾、韓国などあらゆる場所の状況を知ることができることが同社で働く魅力に繋がっているとのことだ。
 
ふたつ目に、こうした経験があるからこそ、新規タイトルを開発する中でも「世界視点での面白いゲームを創る」という部分でバックアップ体制が備わっていることやプロセスが共有されていることが魅力に挙げられるとの話だった。
 

 
これには叶氏も、セールス以外の部分でも運営・開発を行う中で、日本でヒットしたイベントやサーヴァントが北米でどのような捉えられ方をしているか。リアルな情報を得られるので、国内版をメインに担っている自分も「世界を知る」ことができているとコメントした。
 
こうした知見から浅沼氏は「ゲームの面白さの中には、世界共通で、環境に応じて変わることがない普遍の面白さ」があることを学べたと語る。新規プロジェクトでも、こうした経験が活かされているのだとか。

 
 
また、『FGO』の成長を初期から見ていた塩川氏は「No.1にならないと分からないことがある」ということを体感したとコメント。見える景色が変わったことで、「ここにたどり着くためにはこれだけのことをやらなければならない」という、知識だけでは身に付かない経験をすることができたという。また、同じ経験をした者同士で働けることがディライトワークスで働く魅力にもなっているとのことだ。
 
最後のテーマは「どんな人がディレクターに向いているか?」について。ここでは、塩川氏が発表した「”予想”を裏切る人」という言葉を中心に話を展開した。
 

 
塩川氏は「面白いゲームを届けることはディレクターとして当たり前」としたうえで、その先をどこまで見られるかが前提条件になっていると話す。イベント施策やゲーム設計を含め、ユーザーが期待する先の展開まで見据えられる人がディレクターに向いているのではないかと述べた。
 
実際、『FGO』では一部の期間限定イベントを復刻する際にも、ただ単に以前、開催されたものを再現するだけでなく新しいサーヴァントを追加するといった工夫が試みられている。また、昨年(2017年)は、クリスマスのイベントが終了した瞬間の12月26日0時から第2部のプロローグを公開するなど、ユーザーが予想できない展開を見せることで大きな反響を得ることができたと叶氏は話した。予めユーザーには「2017年内に第2部をスタートする」ということは伝えていたが「ここで来るか!?」というタイミングの部分で予想を裏切ることができたようだ。
 
そのほか、ディライトワークスでは開発において「どの会社も普通はこうしているから」というワードがNGになっているという話も飛び出した。ゲームには歴史もあり、ある程度パッケージ化されている部分もあるが「何故そうなっているのか」、「本当に面白いのか」ということを説明できなければディレクターを担うことは厳しいとのこと。ただしその分、自分が「面白い」と思ったことを納得してもらえれば、やりたいことを実現できる環境であるということは間違いないようだ。最後に浅沼氏は、外から見ると苦しそうに見えてしまうかもしれないが、決してそうではなく中の人たちは楽しんで働いているというのも、ひとつ予想を裏切っているところかもしれないとして話を締めた。

 
▲トークセッション後の懇親会では、「マンガ肉」を始めとした多彩な料理が振る舞われた。
 
そんなディライトワークスでは、同社にて11月2日20時より「肉会(MEAT MEETUP) Vol.6 ゲームプランナーキャリア相談会」、11月9日19:30からは「DELiGHTWORKS ボードゲームパーティー 2018.11」の開催が決定しているとのこと。既にPeatixにて参加者募集が始まっているので、興味がある方は是非、下記のページをチェックいただきたい。
 
■Peatix
 

肉会(MEAT MEETUP)肉会(MEAT MEETUP) Vol.6

DELiGHTWORKS ボードゲームパーティー 2018.11

 
 
さらに、イベントの最後には「三代目 Fate/Grand Order ディレクター候補 採用オーディション」の開催が決定したことも発表された。サービス開始から3年が経過した『FGO』で、これから先を見据えユーザーにFGOを永く楽しんでもらうめ、未来の『FGO』を担う人材を今から探したいという意図があるようだ。3代目とあるが、『FGO』の第3部の展開などは特に関係がないとのこと。これについて2代目ディレクターの叶氏は「ディライトワークスでは、ディレクターに限らず、各ポジションにおいて運営を長く続ける中でいつまでも同じ位置にいるのは勿体ないという考え方がある」とコメント。叶氏はこれからも『FGO』のディレクターとして活躍するようだが、次のタイミングを計画立てるという意味でも叶氏が現役のうちから経験を積み、長いスパンを掛けて徐々に任せていきたいと話した。
 
 
▲会場には、現在イベントなどで「2」のTシャツを着用している叶氏に続く、3代目Tシャツの現物も。

 
(取材・文 編集部:山岡広樹)
 

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■『Fate/Grand Order 』
 

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(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT
FGO PROJECT

会社情報

会社名
FGO PROJECT
企業データを見る
ディライトワークス株式会社
https://delightworks.co.jp/

会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
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