【セミナー】アカツキ流、若手リーダーへの大胆な権限委譲とは?

アカツキでは、5月23日に業界の若手を対象としたミートアップ「平成生まれのゲームクリエイターMEETUP」の開催を予定している。当日は「平成vs昭和」の対談形式を取り、タイトル開発の裏側や、今後の事業展開について語られるようだ。「平成生まれ」と銘打ってはいるが、登壇者、参加者ともに幅広い年代・会社から集まるイベントになるとのこと。平成世代の方も、そうでない方も、ぜひ足を運んでみてほしい。
 
【開催日時】5/23(木)19:30スタート
【開催場所】東京都品川区上大崎2丁目13-30 oak meguro 8F
 
 
ここからは、そのアカツキでこの春開催されたイベント「アカツキのゲーム事業を大公開 #3」についてレポートしたい。アカツキのゲーム事業を広く知ってもらうために開催されている本ミートアップも3回目となった。前回は大胆な権限委譲とその背景にある「才能を信じる」、「人に張る」という信念について語られたが、今回は今後のアカツキを引っ張っていくであろう、20代リーダー2氏のトークを中心にレポートしたい。
 
プログラムの内容としては、
 
1) まず執行役員の戸塚氏による会社紹介と今後の事業展開
2) その後20代リーダー2氏によるトークセッション
3) 懇親会という流れであった。
 
その中でも2氏のトークセッションは、権限委譲を受けた現場リーダーの生の声を聞けた場として特に印象的であった。
 
今回のイベントでは若手のプロデューサー、開発ディレクターが登壇した。まずはプロデューサーの三宅氏。氏の経歴は興味深く、元々は大学卒業後「焼肉屋で肉を焼いていた」そうだ。そんなアルバイト生活を送りながらも、ゲームへの想いは熱く、出会ったアカツキで「アルバイトからでいいので雇ってほしい」と入社。デバッグやゲーム内のお知らせの作成、カスタマーサポートなどの業務を経て、大型IPタイトルのプロジェクトリーダー(以下PL)に抜擢。その役割を3年務めたあと、現在は新規オリジナルIPを生み出すことをミッションとした部署で日々奮闘している。
 
一方の開発ディレクターの仲田氏。2015年の新卒1期生として入社。現在は運営中IPタイトルのPLとしてチームをまとめている。
 
両氏は、常日頃から「面白さとは何か」を議論してきた仲だそうだ。その答えになるヒントを探して仲田氏が取り組んだのが、中国・韓国のRPGを徹底的にプレイすること、そして歴代のコンソールゲームを徹底的にプレイすること。その中で、ヒットするゲームに関する解像度が格段に上がったと、と仲田氏は言う。

▲三宅さんP:アルバイトからデバッグ、カスタマーサポートなどを経て、大型IPタイトルのPLを経験

▲仲田さんD:2015年新卒1期生、運営IPタイトルのPL。
 
仲田氏「品質の大切さを肌で感じました。そしてその『面白さ』が継続率に現われる。継続率が、≒『面白さ』を測る指標だと思っています。ビジネスとしてのゲームよりむしろ、ゲーム本来の面白さを圧倒的に磨き上げ、その後ビジネスとして成立するまでに持っていこうと思いました」
 
三宅氏も続ける。
 
三宅氏「『面白さ』の上位概念は『刺激』だと思います。その刺激が他とは違う、と、あるアプリを遊んで感じたんですね。ただ、そのアプリと同じことをしていては勝てない。どうやってそれとは違う刺激を与え続けられるか、イベント企画やログインボーナスなど、考えては実行の繰り返しでした」
 
ゲームの品質、つまり『面白さ』が改めて大切であると語る両氏。ただ、いくら開発現場でこれが正しい、と分かっていても、なかなか現場だけの判断で進められなかった経験をお持ちの読者の方も多いのではないだろうか。その部分はどうやって進めたのだろうか。


 
実はここが「権限委譲」を前面に出すアカツキらしいところなのだが、PLは「ミニCEO」とも呼ばれ、リーダー自身がプロジェクトのほぼ全ての意思決定を行なっている。ゲームの内容はもちろん、採用や育成などの組織・文化づくりも然りだ。つまり、上長に伺いを立てるのではなく、決定事項を報告し、上長もまたそれをよしとしているのである。
 
仲田氏「チームの総意として、品質最優先にすることを、上長の戸塚(ゲーム事業担当役員)に伝え、合意しました。そして、『面白さを追求する』ためのチーム文化を時間をかけてつくっていきました。」
と、『面白さを主語とするチーム文化』をつくることができるかどうかが鍵だと語る。
 
この部分については戸塚氏も重ねて言及している。
 
「経営陣が考えることを押し付けてしまいがちだが、それでは経営陣の想像する世界以上のことは起きない。エンターテインメント産業に爪痕を残すような企業を目指している以上、誰にも想像できないことを成し遂げる必要があります。そのためには人に任せる。個の才能を信じて『創造性を解放させる』ことがカギだと思っています。仲田自身は『既存のゲーム業界に対する危機感』を持っていましたから、その考えを反映させてもらおうと思いました。こうやって『人に張る』ことをし続けたいと考えています」


 
会場の参加者からは、権限委譲に関して、PLからメンバーには具体的にどういったステップで任せているのか、という質問も出た。仲田氏は、自分のチームが自社の社員だけではなく、複数の協業会社のメンバーがおり、また場所も社内だけでなくリモートで働くメンバーもいることを踏まえ、次のような工夫をしたという。
 
仲田氏
「弊社ではコミュニケーションツールとしてSlackを使用していますが、新しいゲームがリリースされる度に、そのプレイ感をSlackでシェアする文化を作りました。その結果、メンバー内で共通のゲーム体験ができ、さらにそこから議論が生まれ、共通言語が生まれていきました。また、Slack上で独り言を積極的につぶやくように心がけ、日常的に議論がしやすい環境も作るようにしていました。例えば、データ調整を行ったらそれをSlackに投稿する。そうすると、他の誰かが突っ込んでくれる。『面白さ』の共通言語ができているから、議論もしやすい。そうやって目線感を合わせていきました」
 
また三宅氏は1on1(1対1で面談をすること)の重要性を説いた。
 
三宅氏
「1on1はかなりやっています。毎週一人当たり30分を5?10人分。ですから木曜日なんかは1on1やっているうちに日が暮れるなんてこともザラです。これは弊社の文化でもあるのですが、人ごとになってしまうのが一番よくないことなので、1on1で心の距離を保っていました」
このように20代のリーダーが活躍しているアカツキ。懇親会では10名近くの若手プロデューサー、ディレクターが参加し、予定時間を大幅に超えてゲーム開発やチーム作りの話題で盛り上がった。


 
最後に、アカツキ流の若手育成について、戸塚氏からその考えをうかがい知ることができたので紹介しておきたい。同氏は今のモバイル市場を踏まえ、若手が気軽にチャレンジできる土壌を作りたいと話していた。
 
戸塚氏「モバイルゲームの黎明期は20代そこそこで、数千万円単位のプロダクトを企画から運用まで1周回すような経験ができていた。今は市場が成熟しプロジェクト規模が大きくなってきたため、新規チャレンジで1周回す経験を若手に与えるのが難しくなっている。これでは優秀な若手クリエイターが育っていかない。若くて情熱も持っているが、まだゲーム開発を一通り経験できる機会を得られていない人にどんどんまかせて、若手が育つ土壌を作りたい」
 
アカツキではシードプロジェクト(seed:種)と呼ばれる、部長職の決裁で特定予算内で誰でも事業にチャレンジできるプロジェクトもある。今後、若手育成をどう進めていくのか。そして同社からどんなクリエイターが誕生するのか。そういった点でもアカツキの今後から目が離せない。
 
記事冒頭でも述べたが、そんなアカツキが新しいミートアップイベントを開催する。平成世代を中心に幅広い世代のクリエイターがアカツキを中心に集まり、交流を深めるイベントのこと。日々の業務の参考になるだけでなく、互いに意見をぶつけられるチャンスでもある。
 
・詳細申し込みはこちら。
【開催日時】5/23(木)19:30スタート
【開催場所】東京都品川区上大崎2丁目13-30 oak meguro 8F
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高243億3600万円、営業利益57億円、経常利益52億700万円、最終利益13億4200万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
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