東宝、2021年2月通期は営業利益57%減の224億円 新型コロナの影響で 「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は歴史的な大ヒット

東宝<9602>は、2021年2月通期の連結決算を発表し、営業収入1919億4800万円(前の期比27.0%減)、営業利益224億4700万円(同57.5%減)、経常利益241億9500万円(同56.1%減)、最終損失146億8800万円(同59.9%減)と大幅減益となった。


・営業収入:1919億4800万円(前の期比27.0%減)
・営業利益:224億4700万円(同57.5%減)
・経常利益:241億9500万円(同56.1%減)
・最終利益:146億8800万円(同59.9%減)


新型コロナの影響で映画の配給作品の公開延期や演劇公演の中止を余儀なくされたほか、緊急事態宣言を受けて全国の劇場が一斉休業に追い込まれた。そして宣言解除後は、政府、自治体及び関係団体からのガイドラインに基づき、適切な感染予防の取り組みを講じたうえで環境変化に対応したが、座席販売の制限や邦洋画の公開延期などの影響が依然として残った。そのような状況下で、10月公開の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が歴史的な大ヒットとなり、業績に寄与した。


映画事業
映画営業事業では、予定していた配給作品が相次いで公開延期となったが、東宝において、昨年春の緊急事態宣言解除後に座席制限の中で公開となったスタジオジブリの長編アニメーション4作品のリバイバル上映が映画館に活気を取り戻し、新作映画「今日から俺は!!劇場版」の大ヒットに繋げた。

続く「コンフィデンスマンJP プリンセス編」「映画ドラえもん のび太の新恐竜」「糸」も好調で、座席制限解除後の10月には、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が記録的な大ヒットスタートとなった。その後も「STAND BY ME ドラえもん2」「新解釈・三國志」「映画 えんとつ町のプペル」とヒット作が続いた。また、東宝において劇場用映画「ブレイブ -群青戦記-」等を制作した。

東宝東和等においては、「ドクター・ドリトル」等を配給したが、洋画話題作品が軒並み次期以降に公開延期となった影響により減収となった。これらの結果、映画営業事業の営業収入は398億4000万円(前年度比18.4%減)、営業利益は64億7800万円(同47.8%減)となった。

映画興行事業では、TOHOシネマズ等において、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の大ヒットがあり回復基調ではあるが、4月中旬から5月中旬にかけて全劇場で休館したことや、劇場再開にあたっては感染予防措置として間隔を確保した座席販売の措置を施していたこと、また、洋画の期待作が公開延期や配信限定へ転換したこと等もあり、前期における映画館入場者数は2500万人と前年度比49.3%の大幅減となった。これらの結果、映画興行事業の営業収入は462億4200万円(前年度比49.3%減)、営業損益は11億円の損失(前年度は149億4800万円の営業利益)となった。

なお、前期中の劇場の異動だが、TOHOシネマズが、7月3日に東京都豊島区に「TOHOシネマズ池袋」(10スクリーン)、9月10日に東京都立川市に「TOHOシネマズ 立川立飛」(9スクリーン)をそれぞれオープンし、11月30日に愛知県名古屋市港区の「TOHOシネマズ 名古屋ベイシティ」(12スクリーン)を閉館した。これにより、当企業集団の経営するスクリーン数は全国で7スクリーン増の702スクリーンとなっている。

映像事業では、東宝のパッケージ事業において、DVD、Blu-rayで「天気の子」「舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち」「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」等を提供した。出版・商品事業は劇場用パンフレット、キャラクターグッズにおいて「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」「映画ドラえもん のび太の新恐竜」をはじめとする同社配給作品の販売が伸長したが、邦洋画の話題作が公開延期となったことが引き続き影響し、前年度比では減収となった。アニメ製作事業では、TVアニメ「呪術廻戦」等に製作出資した。

アニメ製作事業・実写製作事業では、「僕のヒーローアカデミア」や「東宝怪獣キャラクター」等の商品化権収入に加え、製作出資した作品の各種配分金収入があった。ODS事業では、「Endless SHOCK」「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」「映画『映像研には手を出すな!』」等を提供した。東宝映像美術及び東宝舞台では、映画やTV・CM等での舞台製作・美術製作で稼働を再開したものの、ライブイベントやテーマパークにおける展示物の製作業務や大規模改修工事等に関して、開催の中止や延期、見直しが相次いだため、減収となった。これらの結果、映像事業の営業収入は301億1400万円(前年度比8.5%減)、営業利益は49億7300万円(同25.1%減)となった。

なお、東宝における映像事業部門の収入は、内部振替額(45億5400万円、前年度比0.5%増)控除前で275億8900万円(同0.1%増)であり、その内訳は、パッケージ事業収入が82億3600万円(同14.7%増)、出版・商品事業収入が44億0200万円(同17.6%減)、アニメ製作事業収入が128億7000万円(同26.5%増)、実写製作事業収入が14億4100万円(同25.2%減)、ODS事業収入が6億3700万円(同78.2%減)等だった。

以上の結果、映画事業全体では、営業収入は1161億9700万円(前年度比32.8%減)、営業利益は103億5100万円(同69.5%減)となった。(東宝映画は12月1日を効力発生日として、非連結子会社の東宝スタジオサービスを吸収合併し「TOHOスタジオ」に商号変更している。)


演劇事業
演劇事業では、東宝で、緊急事態宣言が発出した4月以降、東京公演及びそれらの全国ツアー公演をすべて中止していたが、7月より順次公演を再開した。再開にあたっては、劇場の消毒や換気の強化等の感染予防の取り組みを実施している。

公演再開後、帝国劇場においては「ジャージー・ボーイズイン コンサート」「THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE」「ローマの休日」「ビューティフル」「DREAM BOYS」「Endless SHOCK -Eternal-」等を上演した。

シアタークリエでは「メイビー、ハッピーエンディング」「Gang Showman」「おかしな2人」「オトコ・フタリ」等を上演したが、間隔を確保した座席販売や公演関係者の新型コロナウイルス感染による一部公演中止等もあり、減収となった。

また、有料のライブ映像配信やアーカイブ配信を実施し、新たな収益源の確保に努めた。東急シアターオーブでは新作ミュージカル「プロデューサーズ」や「マリー・アントワネット」を上演し好評を博した。

東宝芸能では、映像作品の撮影中止や延期、舞台やコンサートの公演中止等の影響を受け減収となった。以上の結果、演劇事業の営業収入は79億4800万円(前年度比54.7%減)、営業損益は10億6600万円の損失(前年度は40億8200万円の営業利益)となった。

なお、東宝における演劇事業部門の収入は、内部振替額(1億7900万円、前年度比8.1%増)控除前で62億2600万円(同60.0%減)であり、その内訳は、興行収入が52億8300万円(同58.2%減)、外部公演収入が7億7200万円(同71.9%減)、その他の収入が1億7100万円(同17.5%減)だった。


不動産事業
不動産賃貸事業では、昨年春の緊急事態宣言を受けて商業施設の臨時休館を実施したことに伴う賃料の免除や歩合家賃の減少、保有する物件の入居テナントに対しても賃料減額の措置を講じたこと等もあり、前年度比で減収となった。これらの結果、不動産賃貸事業の営業収入は279億1300万円(前年度比5.9%減)、営業利益は123億2900万円(同9.4%減)となった。

企業集団の保有する賃貸用不動産の空室率については、一時的なテナントの入れ替えにより、1.0%台で推移している。企業集団の固定資産の含み益については、2020年1月1日の固定資産課税台帳の固定資産税評価額を市場価額として、税効果を考慮した後の評価差額のうちの東宝の持分は約2862億円となっている。

なお、東宝における土地建物賃貸部門の収入は、内部振替額(8億1300万円、前年度比6.0%減)控除前で295億9400万円(同8.1%減)だった。

道路事業では、公共投資が堅調に推移したが、建設技能者の不足による労務費の上昇や資機材価格の高騰もあり、依然として予断を許さない状況が継続したなか、スバル興業と同社の連結子会社が、新型コロナウイルス感染防止策を講じながら安全管理の徹底を図り、技術提案等を通じた積極的な営業活動により新規受注や既存工事の追加受注に努めた。その結果、道路事業の営業収入は274億6000万円(前年度比0.9%増)、営業利益は40億4800万円(同1.0%減)となった。

不動産保守・管理事業では、東宝ビル管理及び東宝ファシリティーズにおいて、ホテルや劇場等、商業施設の経済活動が再開し、受注回復の動きがみられるが、昨年春の緊急事態宣言時の臨時休業による休業手当等の負担が営業利益を圧迫したことなどから減益となった。その結果、営業収入は97億5000万円(前年度比10.0%減)、営業利益は6億8400万円(同29.4%減)となった。

以上の結果、不動産事業全体では、営業収入は651億2400万円(前年度比3.8%減)、営業利益は170億6200万円(同8.6%減)となっている。


その他事業
娯楽事業及び物販・飲食事業は、昨年春の緊急事態宣言等を踏まえた臨時休業後、東宝共榮企業の「東宝調布スポーツパーク」において利用者数が回復しているが、TOHOリテールの飲食店舗・劇場売店等においては、営業時間の短縮等や外食需要の厳しい状況が続き、減収となった。その結果、その他事業の営業収入は26億7800万円(前年度比41.1%減)、営業損益は3億2000万円の損失(前年度は7800万円の営業利益)となった。
東宝株式会社
https://www.toho.co.jp/

会社情報

会社名
東宝株式会社
設立
1932年8月
代表者
代表取締役社長 社長執行役員 島谷 能成
決算期
2月
直近業績
売上高2283億6700万円、営業利益399億4800万円、経常利益427億9000万円、最終利益295億6800万円(2022年2月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9602
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