ソーシャルゲーム業界の最新の求人動向…リクルートエージェント山田大貴氏に聞く

今回は、リクルートエージェントの山田 大貴 氏に「ソーシャルゲーム業界の求人・求職動向」に関するインタビューを行ったので、そのもようをお伝えする。リクルートエージェントといえば、人材紹介会社の最大手であり、インターネット業界にて様々な企業から求人が寄せられているが、その中でも特に求人熱が高いSAP企業から求人が増加している。2年ほど前から続いているソーシャルゲーム業界の求人動向に変化が出てきたのか、全体的な視点からお話いただいた。

 

---: 本日はよろしくお願いいたします。まず、山田さんの所属とお仕事の内容を教えていただけますか?

山田氏: 私は、リクルートエージェントのインターネット領域を専門とする部署に所属しており、企業の採用をお手伝いするリクルーティングアドバイザーと、求職される方の転職を支援するキャリアアドバイザーの両方の役割を担っています。最近ではソーシャルゲーム系の企業からの求人依頼が増え、そちらにも力を入れております。

---: リクルートエージェントというと、営業とキャリアアドバイザーとの分業体制となっていると聞いたことがあるのですが、それとはまた違っているんですね。

山田氏: 従来のリクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーとの分業体制の領域もあります。企業様や求職者の方のご要望が細分化する中で転職エージェントとして最も有効な体制を各領域ごとにとっております。

 

■スマートフォン対応で変わる求人動向…クリエイターの求人が急拡大

---: 本題に入りますが、最近のソーシャルゲーム系企業の求人動向はいかがでしょうか?

山田氏: ソーシャルゲーム業界については、2年くらい前から求人数は急激に増えていますが、昨年の夏から秋口くらいにかけて、募集職種に変化が出てきました。それ以前ですと、ソーシャルゲーム系の企業は、主にLAMPやスマートフォンのエンジニアを確保したいという傾向が強かったのですが、クリエイターの求人にも動きが出てきました。特にWEBデザイナー、FLASHER、イラストレーターなどが該当します。

---: このあたりの背景は何があるのでしょうか?

山田氏: ソーシャルゲームもフィーチャフォンからスマートフォンに移行しつつありますが、それに伴い、コンテンツのクリエイティブの幅が広がってきたことがあげられます。コンテンツの見せ方で売上が大きく変わるようになり、クリエイティブ面をより重視するようになっています。カードゲームなどのキャラクターデザインや、モーションのクオリティを上げたいといったニーズがあるようです。昨年の秋口以前ですと、フィーチャーフォンがメインだったため、クリエイティブ部門を外注企業やアルバイトに任せる傾向があり、そういった求人はほとんどありませんでした。

---: 次にエンジニアについてはいかがでしょうか。

山田氏: こちらも、スマートフォン関連のエンジニアが増えました。以前は、LAMP環境やRubyを使えるエンジニアへの求人が多かったのですが、スマートフォン向けの開発経験を持つエンジニアへの引き合いが強くなってきました。最近になって、スマートフォンでの開発経験のあるエンジニアが転職市場に出てきましたので、その人材を対象とする求人が出てきています。スマートフォンは新しい技術ですから、以前は求職者がほとんどいませんでした。

---: スマートフォンですと、個人でアプリを開発されている方も多いですよね。そういった方も対象になるんでしょうか?

山田氏: はい。もちろんエンジニアとしてのバックグラウンドがあることが前提にはなりますが、例えば、エンジニアとして業務用のシステムを開発している方であっても、個人で勉強してスマートフォンアプリを開発し、App Storeに出しているという経験があれば、ぜひ採用したいという企業が多いですね。

---: スマートフォンがキーとなって求人動向が変わっているわけですね。

山田氏: そうです。最近の状況ですが、4月から新年度が始まり、上半期もしくは年度の採用計画で、50-100名単位で採用したいという企業が増えていますね。そのほとんどがエンジニアとクリエイターです。

---: なるほど。ディレクターやプランナーはいかがでしょうか?

山田氏: 引き続きニーズは強いです。ただ、エンジニアやクリエイターと異なり、大量採用したいという会社はそうは多くないです。こちらについても変化が出てきています。以前ですと、モバイルコンテンツプロバイダーにてディレクターをされている方を求める企業が多かったのですが、さらに最近ではコンシューマーゲームやオンラインゲームなど、いわゆるゲームそのもののプランニングをできる方へのニーズも強くなってきました。

---: 以前は違ったのですか?

山田氏: はい。以前だと、ソーシャルゲームは、フィーチャフォンがメインでしたので、クリエイティブ面で作りこむゲームを作ることは難しく、モバイルの着メロや着うたなどモバイルコンテンツでのマネタイズ経験や、ECサイトなどで日々売上を追っている経験などが重視されてきました。最近では、スマートフォンが主流になってきて、クリエイティブ等を作り込むゲームが増えてきましたので、面白いゲームを作れる方が求められています。

---: クリエイターやエンジニアとは少し違いますが、広告や販促、マーケティング関係はどうでしょうか。

山田氏: プロモーション関係の求人も増えています。プラットフォーム内外でプロモーションをしたいとう会社が多いですので、その中で効率的に集客できるかを考え、実行できる人が求められています。仕組みは、リスティングやSEOと似ているので、その点を理解されている方へのニーズが強いですね。そのため、広告代理店などから転職される方が多いですね。

---: データ分析できる人へのニーズも強いですか?

山田氏: そういった職種は、スペシャストになりますから、市場にはほとんどいらっしゃらず、もしいれば、1000万~2000万円出しても採用したいという会社が多いです。コンサルティングファームのほか、金融工学やシンクタンクなど金融系バックグラウンドの方からも入る方が多いです。

 

■求職者の動向…クリエイターは年収2倍弱に上がることも

---: 視点を変えて、求職者の状況はいかがでしょうか。

山田氏: 求人に対して、求職者が圧倒的に少ないです。実績・実力がある方になりますと、応募した会社全てで書類が通ることはもちろん、1人の方で数社内定が取れるといった状況はザラにあります。

---: 求職者が少ない理由はなんでしょうか?

山田氏: 例えば、IT業界全体のエンジニアのうち、インターネット業界に所属する方はわずか数%程度しかいない、という状況があります。エンジニアのほとんどは、パッケージソフトやSIerに在籍しています。それでは、ゲーム業界はどうかといいますと、ゲーム業界は狭い世界で、同じ業界内の企業を個人的な人脈で転職するケースが多く、転職市場にはあまり出てこないのです。

---: デザイナーも同様の傾向なのでしょうか。

山田氏: そうですね。昨年末からの傾向で、クリエイターの求人が一番増えています。クリエイターは全般的に、ベースとなる年収が200万円台後半から高くて400万円台半ばと、エンジニアの方に比べて低い傾向にあります。そういう方がソーシャルゲーム業界に入りますと、年収が50万円から100万円上がることが多いです。

---: そんなに上がるのですか。イラスト関係ですと、フリーで仕事される方も多いですが、正社員で働きたい方も多いのですか?

山田氏: そういった方もソーシャルゲーム業界に入ってきています。例えば、大学卒業後、漫画家を目指したけど…という方がゲーム業界で正社員として入社されるケースもあります。採用する側も、WEB経験がなくても、漫画家のアシスタントなどキャラクターや背景を描ける方が欲しいというケースがありますから。

---: 最近、ソーシャルゲームのカードイラストのクオリティが上がり、イラスト関係の外注費が跳ね上がっているという話も聞きます。1枚あたり10万円というケースもあって、フリーでやりたい方も多いのかなと思ったのですが、必ずしもそうではないわけですか。

山田氏: もちろん、そういった方もいらっしゃいます。ただ、いいところがあれば、会社に所属したいというニーズも強いですね。

---: なるほど。

山田氏: あと、いま企業が一番求めているのは、クリエイティブもできるエンジニア、もしくはエンジニリングもできるクリエイターですね。そういった方がたまにいらっしゃるのですが、本当に引き合いがすごいです。デザイナーの方でもエンジニアリングを勉強される方が増えていますし、逆も同様です。フロントエンド周りの事を考えられるエンジニアがすごく重宝されるようです。

---: 例えば、どういったケースがあるでしょうか。差し支えない範囲で教えていただけますか?

山田氏: 最近のケースですと、少人数のデザイン事務所で企業向けのプロモーションサイトのデザインをされていた方の事例があります。その方は、WEBデザインだけでなく、Flashにも強かったのですが、直近の年収が350万円程度でした。その方は複数社から内定が出て、約600万円のオファーもありました。大手のコンシューマーゲームの会社に入社されました。

---: 年収が2倍弱になるわけですか。それはすごいですね。

山田氏: そうですね。受託でWEB制作をされている会社ですと、サイトの制作単価が下がり、それにつれて年収が下がってしまうWEBデザイナーが増えています。そういう方がソーシャルゲームの業界に入ると、年収が一気に上がりますね。

---: こういったことは知られていないのでしょうか?

山田氏: そうですね。意外とご存じない方が多いようです。

---: 受託で開発されているエンジニアも同様なのでしょうか?

山田氏: 確かに年収が上がるケースが多いですが、現在のクリエイターほど急激に上がるケースは少なくなっています。ソーシャルゲームにかぎらず、受託をされている企業から自社開発をしていてかつ伸びている会社に入ると、総じて年収は上がります。

---: エンジニアであれ、クリエイターであれ、より年収をアップさせるために取り組んでおくといいことはありますか?

山田氏: 現在の仕事でやっていることと、自分の趣味で取り組んでいることを並行してやっていることがとても重要です。会社の仕事できちんと成果を出しつつ、空いた時間でアプリを作って世に出している方への評価は本当に高いですね。クリエイターも一緒で、仕事で制作しつつ、空いた時間で自分のやりたいことを成果物として作った方は、やはり自分自身で何かを作りたいという意思が強いと判断されます。場合によっては受託開発の会社に長く在籍すると、言われた仕事しかできないのでは、などと判断されることがありますので、日頃から作ることへの意志の強さを大事にして下さい。求人の動きからは、ソーシャルゲームにかぎらず、自分で考えたものを作りたい、自社開発をしている会社に移りたいという方は、採用意欲の強いいまが一番動きやすい時期にあります。

 

■リクルートエージェントのサービス

---: ところで、ご自身のお仕事についてお聞きしたいのですが、転職を考えている人にお会いする時に気をつけていることはありますか?

山田氏: そうですね。ものづくりをされている方はほんとうに忙しい方が多いので、ご相談は、電話やメールベースでの対応など、その方の状況にあった柔軟な対応をしています。もちろん直接お会いして面談も可能です。

---: 案件を紹介するにあたっては気をつけていることはありますか?

山田氏: 現在、転職しようと思えば簡単にできてしまう状況ですので、その方がなぜ転職をしたいのか、何を実現したいのか、といったことを重点的に確認するようにしています。その点をきっちりと決めないと、年収が50万円上がった、豪華で綺麗なオフィスなどに揺らいでしまい、なぜ転職したいのか、何を実現したくて転職したのかがお座なりになったままになってしまいますので、定着できずに同じ事を繰り返すことになってしまいます。

---: 社風も重要ですね。

山田氏: そうですね。求人を出す企業側もこの点は気をつけるようになっていますね。企業様によっては、100名~200名を超える規模の企業であっても面接のどこかのタイミングで必ず社長が出てきて、面接を行い、社風と合うかどうかをチェックされている企業もあります。転職を希望する人にとっても、社長とお会いすることで社風などが確認できるかと思います。急激に伸びている企業であってもミスマッチがないように長く長期的に働いてほしいという想いの表れかと思います。

---: 転職しようと決意された方は準備しておくと良い、ということはありますか?

山田氏: 転職の目的を決めておくといいですが、まずはご気軽にご相談いただければと思います。当社では、転職をしたい方も対象にしていますが、転職という範疇だけでなく、キャリアアップをしたいという方を対象にした取り組みとして、リクルートエージェントとしてWEB業界全体を盛り上げていくためにWeb CAT Studioブランドにて転職を今すぐに考えていない方にも個人のスキルアップやキャリアアップ支援のために月に4回程度のペースで、勉強会等を開催しております(関連サイト)。ぜひ皆様「いいね」ボタンを押してください。

---: なるほど。求人案件の紹介だけではないんですね。

山田氏: ソーシャルゲームの業界というと、いろいろなメディア報道のイメージで嫌がる方が少なくないですが、真面目に日本から世界に出て勝負したい、という熱い思いを持つ会社が多いです。イメージから嫌がられる方も実際にお話を聞いて、ビジネスとして取り組みたいと思う方も多いです。そういう方が入ることで、業界だけでなく、日本も活性化していくと思います。当社としても、そういった業界の活性化のお手伝いしたいですね。もちろんソーシャルゲーム業界以外の求人も取り扱っておりますので、インターネット業界にてキャリアアップ・スキルアップをご検討されている方は、お気軽にご連絡ください(転職支援サービ申し込みサイト)。

 

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