人類が消えた100年後の銀座を舞台に、ホテリエロボットたちが人類の帰還を待ちながらホテルを営むというユニークな世界観で注目を集めたTVアニメ『アポカリプスホテル』。
ポストアポカリプス×ロボット×ホテルという異色の組み合わせながら、見る人の心をじんわりと癒やす本作は、なぜここまで支持されたのか。本作を手がけた椛嶋麻菜美プロデューサーにメールインタビューを行い、企画の始まりからキャラクター設計、aikoによる主題歌の裏話、そして最終話に込めた想いまでを聞いた。
舞台は“100年後の銀座”、ロボットだけが残るホテルの物語
――本作の企画が立ち上がった経緯や、初期段階で意識されていたコンセプトについて教えてください。
本作は、CygamesPictures代表・竹中信広さんを中心に作られていきました。私自身は、脚本が出来上がったあたりから幹事として参画し、主題歌まわりや委員会組成などプロデュースを担当しています。企画の立ち上がりは、竹中さんの元部下の方が、ライデンフィルムの代表里見さんと進めていたSF企画がベースになっています。当時、竹本泉先生のラフが数点と、大まかなプロットがある状態だったのですが、コロナ禍の影響を受けるなどあり、企画が不透明になりそうになったタイミングで、竹中さんが本作を完成させたい想いでライデンフィルムさんに相談をして、CygamesPicturesさんで制作することになり、企画を進めていくことになりました。
ポストアポカリプスな世界観で、SFをベースとしたストーリーをやろうというのがありつつ、作品としても間口広げるべく、脚本家の村越繁さんも参加し、「人類がいなくなった地球で、 ロボットたちが人間の帰還を待ちながらホテルを営んでいる」とい う設定をより打ち出す形で、「アポカリプスホテル」 の土台が作られていきました。
――“100年後の銀座に残されたホテリエロボット”という世界観は非常にユニークですが、この設定はどのように構築されたのでしょうか?
イギリスや伊東温泉というアイデアもあった中、日本を舞台として誰もがわかる象徴的な場所にしたいという意図で決まりました。竹本先生のキャラクター原案で、ホテリエロボット、ポン子をはじめ、人類やロボット以外のキャラクターも沢山描いてくださっていたのですが、竹中さんと村越さんで仕切り直して考えていく中で、ロボットしかいないホテルという設定になりました。
人類の言葉を話せるのはホテリエロボットのヤチヨだけというシチュエーションも、ヤチヨの孤独感がより際立つかたちになっています。導入で従業員ロボ達がホテル運営をしている様子をしっかり見せて、第1話のラストで百年ぶりにお客様がやってきた!?ということに特別感がより出るように組み立てられています。
――ヤチヨやポン子といったキャラクターたちは、どのようなコンセプトや役割から生まれたのでしょうか?また、企画当初と現在とで、キャラクターの性格や造形に変化はありましたか?
まず、とにかく健気に頑張っているキャラクターという前提で描かれています。企画当初の竹本先生によるキャラクター原案はありつつも、性格や役割は、シナリオが進行するなかで、シーンによって都度考えられていきました。特にヤチヨは、もっとロボット寄りの言動が目立つキャラクターという案もありましたが、現代のテクノロジーの進歩を考えると、もう少し人間寄りでもいいよねという方向になり、だんだんと今のヤチヨが出来上がっていきました。
――aikoさんがオープニング・エンディングの両方を担当されていますが、タイアップの経緯や作品との関係性についてどのように考えていましたか。
春藤監督からは、OPは踊りたいという希望を当初からいただいていました。監督の中にある映像のイメージは、「ホテルの従業員ロボたちがオーナーの帰りを待ちながら、舞踏会を開いていて、ペアのダンスをヤチヨが一人で踊っている」でして、そこから主題歌アーティストを誰にしようか考えていきました。「誰かの帰りを待っている」というちょっと切ない世界観が、aikoさんの音楽性とぴったりだと思い、指名でオファーさせていただきました。
――最終話の内容も大きな話題になりました。プロデューサーとして、作品の終わらせ方はどの用に考えていたのでしょうか。
「最終話で帰ってくる地球人は、地球には住まない」という結末は、かなり早い段階で制作陣で決められていました。人類が帰ってきてハッピーエンド、というよりも、人類がいなくても地球はロボットたちで成り立っている設定がいいよね、という意図で描かれています。「アポカリプスホテル」の世界が、今もまだ続いているように誰もが感じられる、素敵な結末に仕上がったと思います。
――放送開始から最終話までの反響を受けて、どのような手応えを感じましたか?
放送前段階から、竹本先生がキャラクター原案を担当されているという点への注目度がとても高かったです。放送が始まってからも、キャラクターやストーリー、世界観に対する評判がとても良く、ありがたいことに業界内の方からも「今期で一番好き」と、声をかけていただくことがとても多かったです。海外では、クランチロールとビリビリで独占配信展開したのですが、ユーザー評価でクール1位をいただくこともできました。キャラクターの魅力に加えて、毎話展開が読めないストーリーと、CygamesPicturesさんによるアニメーションの美しさにも沢山の反響がありました。
特に、作品としての魅力が伝わってきたと感じたのは4〜5話付近なのですが、5話はタヌキ一家が来たことでホテルのお酒の在庫がなくなり、ホテルブランドのウイスキーを蒸留所から作ってみる回なのですが、1話のなかで50年くらいの時間経過があったりするので、スケール感もありつつ、そんななかでも素朴に一生懸命ホテルを切り盛りするロボット達の一言一言に、毎話味わい深く感動するようなところもあり、視聴者の方にも、アポカリプスホテルの魅力がじわじわ伝わっていると感じました。
――改めて『アポカリプスホテル』をどのような作品として捉えてほしいとお考えでしょうか?
毎話、見た人それぞれで感じることがある、素朴で唯一無二な作品だと思っています。キャラクターたちの成長物語でありながら、コメディもバランスよくちりばめられていて、どのエピソードにも魅力がたくさん詰まっています。
たくさんの方にとっての、日常で疲れた時に「帰ってきたくなる場所」のような存在になることができたら、嬉しいです。
CygamesPictures作品情報
TVアニメ『光が死んだ夏』日本テレビ系にて好評放送中。
Netflix・ABEMAでも好評配信中。
TVアニメ『アポカリプスホテル』各配信サービスにて好評配信中。
https://apocalypse-hotel.jp/
©アポカリプスホテル製作委員会
会社情報
- 会社名
- 株式会社サイバーエージェント
- 設立
- 1998年3月
- 代表者
- 代表取締役 藤田 晋
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高8029億9600万円、営業利益418億4300万円、経常利益414億7500万円、最終利益162億4600万円(2024年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4751