【年始企画】App AnnieのCEOに訊くゲームアプリ市場の未来。2015年のトレンドや次の市場を担う成長国、日米で異なるプロモーション施策とは


スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2014年の市場動向と2015年のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2014-2015」。

今回は、アプリ市場データと分析ツールを法人顧客向けに提供しているApp AnnieのCo-Founder & CEO・Bertrand Schmitt(バートランド・シュミット)氏にインタビューを実施。同氏より全世界におけるゲームアプリ市場の今後をはじめ、日米で異なるプロモーション施策や顧客ニーズなどについて話を伺ってきた。
 
App Annie(アップアニー)とは、アプリ市場データや分析ツールの業界標準サービスを提供する企業。同社は、アプリ開発者・マーケッター・機関投資家などの方々がアプリ市場の動向を理解するために必要なデータとツールを提供し、より迅速かつ確かな意思決定を支えている。

さらに、ストアランキングTOP100のパブリッシャーのうち90%以上に利用され、世界中で約64万のアプリがダウンロード数や収益、ランキング、レビューなどの情報をApp Annie Analyticsサービスで追跡・管理。累積790億件以上のアプリダウンロード及び220億米ドル以上のアプリ収益をトラッキングしている。現在、米・サンフランシスコに本社を置き、270名以上の従業員を擁する非上場企業で、アムステルダム、北京、香港、ロンドン、モスクワ、ニューヨーク、ソウル、上海、東京などの世界10都市に拠点を構えている。

 

■新興国市場の成長やIPタイトルの人気拡大…

 
App Annie Co-Founder & CEO
Bertrand Schmitt(バートランド・シュミット)氏


――:本日はよろしくお願いします。月並みな質問ではありますが、はじめに2014年を振り返ってゲームアプリ市場の動向について伺えればと思います。常日頃から各アプリの浮き沈みを目にしているシュミット氏ですが、どのような見解をお持ちですか。

2014年が間もなく終わろうとしていますが、やはり日本・北米などを中心とした盛んな市場では、変わらずトップセールスの首位は『パズル&ドラゴンズ』(ガンホー<3765>)や『クラッシュ・オブ・クラン』(Supercell)といった数少ない一部タイトルの成功が長く続いています。

一方、日本では『モンスターストライク』(ミクシィ<2121>)のように、わずか半年間で急激に成長してトップセールスの首位に躍り出るタイトルが、まだまだ出てくる土壌があります。セールスランキングを広い目で見ると、日に日にカジュアルタイトルが落ち着きを見せ始め、ミッドコアタイトルが上位に張り付いているのが現状だと思っています。



――:たしかに。2014年下半期にかけて、売上ランキング上位にはやり応えのあるミッドコアタイトルが増えてきています。これらは端末・ゲーム慣れした大多数のユーザーが成長して、よりやり応えのあるゲームを求めるように、ニーズが変わっていったのでしょうか。

■直近、2014年10月 - 日本ゲームのトップアプリ(クリックすると拡大)

出所:App Annie

もちろん一部ユーザーにはそうした傾向があるかもしれませんが、すべてのユーザーが成長して、コアユーザー化に向かっているとは言い難いです。まだまだコアタイトルはダウンロード数自体が少ないもので、そんな少ない母数のなかで大きな売上を出しているため、たとえ売上ランキング上位のアプリでも大規模なユーザー数がいるとは限りません。

とくに日本では、ひとりが1ヵ月に数万円使うような市場として珍しいです。余談ですが、中東でも面白い傾向があって、他国と比べてヘビーユーザーが増加しており、彼らは数十万円もゲームに費やしています。まあ富裕層に限りますが…。



――:なるほど。改めて日本のアプリ市場は、他国から見ると変わっているかもしれません。そのほか、シュミット氏が考える日本のアプリ市場の特徴などはありますか。

日本の興味深いトレンドとしては、やはり積極的にテレビCMを展開することですね。北米でもKingやSupercellがアプリのテレビCMを展開しているのですが、これには我々も驚きました。というのも、北米でアプリ系のテレビCMが放映されるということは、今でもすごく珍しいことなのです。1年前までは全く何もなかったのですが、2014年を機に増えてきましたね。


――:日本ではスマッシュヒットを記録したアプリが、さらなる大ヒットに繋げるためにテレビCMを展開することが多いです。ただ、市場規模がそう大差のない北米と比べ、ここまでテレビCMの施策に大差があるのは、どのように捉えていますか。

“文化の違い”でもありますが、やはり日本ではテレビCMとゲームアプリの親和性が極めて高いことが挙げられます。当然テレビCMの目的は、ダウンロード数増加を目的としていますが、じつは北米では直近のダウンロード数よりもブランディングへ繋がることに重きを置いています。

具体的に「テレビCMを放映してどれだけダウンロードされたか」という効果測定ではなくて、「どれだけそのブランド(コンテンツ)が浸透したか」といった数に縛られない認知度をKPI(重要業績評価指標)にしています。そのため、北米のプロモーションに関しては、やはりまだまだ「Facebook」を活用した広告がほとんどですね。



――:日本と海外では「Facebook」の浸透率も大きく異なりますからね。

そうですね。北米では、KingやSupercellはもちろん、大多数のゲームアプリが「Facebook」を通じてプロモーション展開しています。ユーザー母数やターゲッティング能力の高さはもとより、一番は広告の値段がお手頃であることです。

以前までは、「Facebook」側でもプラットフォーム上でゲームを積極的に展開していましたが、これを見直して広告価値の向上にシフトしたことで、ことプロモーション施策として利用する際は強固なものになっています。ただ、今後は「Facebook」に限らず、「Twitter」や「Pandora」などを利用した広告展開で成功を収める事例についても注目されるかもしれません。



――:また、日本のアプリ市場では動画コンテンツが非常に流行っています。つい最近では、ガンホーがスマホゲームの動画配信共有システムの開発・提供を行う「Kamcord」の株式を取得したことでも話題となりました。

ええ。世界的にもアマゾンによるTwitchの買収、グーグルもYouTubeを買収するなど、動画コンテンツの波は日に日に高まってきています。ゲームでも録画したものを動画投稿サイトにアップすることで、コミュニティが形成されたり、ひとつのプロモーション施策として活用されたりすることもあります。録画されるゲームの傾向としては、やはりコアタイトルが中心に録画されてシェアされることが多いですね。今後、動画コンテンツがアプリ市場にどのような効果をもたらすのか注視するべきだと思っています。


――:それでは、2015年のゲームアプリ市場のトレンドは、どのようになると考えられていますか。

2014年でも具体的な成果が出ていますが、やはりIPタイトルの人気が拡大していくと思っています。海外ではディズニー作品を筆頭に、ダウンロード数のみならず収益面でも堅実に数字を出しております。引き続き2015年もIPを活用したアプリが流行し、多くのユーザーから注目を集めることでしょう。


――:ちなみに、アプリ市場の成長が見込める国などはいかがでしょう。

ブラジルやインド、インドネシア、タイ、メキシコなど、いわゆるエマージング・マーケット(新興国市場)の成長が著しいですね。まだ現在はダウンロード数の増加しか見られませんが、この先2015年、2016年までには段々と収益も伸びていくと思います。ただ、直近の課題としては、どのような決済システムを作っていくのかが問題になりますね。

■App Annieが発表したEmergingマーケットについてのInfographic
詳細はApp Annieに掲載

出所:App Annie


――:最後に、App Annieとしての2015年の抱負をお願いします。

2014年は、前年に比べて契約顧客数が2倍、収益は3倍以上に増加するなど、飛躍的な年でもありましたが、弊社はこの先も成長し続けると自負しております。

現在は、約300名近いスタッフが世界各国にいるのですが、じつは、そのうちの50%はエンジニアとなり、残りは営業・マーケティングなどが中心になります。今後も逐次戦略的な人員増加に努めてまいりますが、引き続き人数が増えてもこの割合はキープしようと思っています。アプリビジネスに携わる皆様にさらなる価値を届けるため、2015年にも革新的な新サービスの発表を予定しております。ぜひ、今後もよろしくお願いします。



――:本日はありがとうございました。
 
(取材・文:編集部 原孝則)


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