シナリオ現場の“今”が聞ける「元祖 シナリオ塾」が開催 第1部ではスペシャルゲストに『クリスタル オブ リユニオン』のプロデューサー結城基氏が登壇

クリーク・アンド・リバー社<4763>は、7月23日、同社麹町制作ルームで「元祖 シナリオ塾」を開催した。

これは現役で活躍するプロから、シナリオ制作現場の話やシナリオ制作のコツ、業界の最新事情に関する話が聞けるセミナーで、当日はクリーク・アンド・リバー社プロデューサーの石川学氏、クリーク・アンド・リバー社文芸監督の武田正憲氏のほか、スペシャルゲストとして『クリスタル オブ リユニオン』プロデューサーの結城基氏、アニメ監督の水島精二氏が登壇した。

本稿では、イベント前に催された、石川氏と武田氏による「シナリオ・トリプル・ミート」と、結城氏と武田氏が登壇した第1部の模様をお届けする。
 

▲石川学氏(写真:左)と武田正憲氏(写真:中)
 

 

■案件はあるが人出が足りていない


「シナリオ・トリプル・ミート」では、エージェンシー事業を行うクリーク・アンド・リバー社の今が語られた。
 
今回のセミナーでは、すでにシナリオ関連で活躍している方々とクリーク・アンド・リバー社でのコミュニケーションを取ることが目的だという。同社のシナリオアニメチームは立ち上がって一年のチーム。シナリオ関連の案件数は増えているが、人手不足で死んでしまうくらいに忙しいと武田氏は語る。
 
また、8月からは石川氏のプロデュースでデジタル作画スタジオの立ち上げも考えており、デジタル作画に割ける人数も欲しいとのこと。
 
デジタル作画はまだ業界内でも浸透していない作り方で、紙で作画されてきたアニメをフルデジタルで作画する制作方法。まだフルデジタル作画のみで制作を行っているスタジオはないため、立ち上げを考えているそうだ。また、デジタル作画を利用することで制作工程を短縮でき、従来の賃金と比べて日本人の平均年収は稼げるような体制を目指すという。
 

2年前に『夜桜四重奏 -ハナノウタ-』をプロデュースした石川氏からは、「アニメは紙の歴史が長いが今は変換期に入り、ようやくデジタル作画の整備もされてきた」とコメント。それでもなおデジタル作画へと移行しないのには、日本アニメの完成された紙での制作工程にあるという。
 
しかし、デジタル作画スタジオは、ある意味で何もないところからのスタートになるため、そういったしがらみにとらわれず作ることができる。絵というのはあくまでもツールなので、絵がうまい、というアニメーターだけでなく、作品を見通しつつ、デジタルに可能性を感じる人を探していると語り、「シナリオ・トリプル・ミート」は幕を下ろした。


 

■ストラテジーにおけるストーリー要素は禁忌の一つ


イベントの第1部には『クリスタル オブ リユニオン』プロデューサーであるgumiの結城氏と、武田氏が登壇。『クリスタル オブ リユニオン』は、拠点を育成したり、魔獣と戦闘したり、資源を採集したりといったストラテジーゲームのやり込み要素だけでなく、純国産RPGとしての物語性、キャラクター性を兼ね備えたゲームアプリ。プレイヤーは壮大な世界「ミッドガルド」を舞台に、英雄を従え王国の主となりゲームを進めていく。
 

▲結城基氏
 
結城氏は「ストラテジーというジャンルが日本でも少しずつ人気になってきた。そこで、純国産のゲームとして勝負してみたかった」と開発の経緯についてコメント。続けて「MMOに個性を持たせるのはすごく難しくて、ほとんどのゲームがキャラクターにあまり個性をつけない。しかし、ストーリーをつけるという新しい要素を入れることで本当に面白いものができるんじゃないか、ある種、禁忌にもされていたと思うが、だからこそ挑戦してみたかった」とも語った。
 

▲武田氏

ストーリーの構成に携わった武田氏は、「既にゲームはできていて、遊ぶこともできる。その状態から組み合わせて欲しい」という依頼に、自身のシナリオの常識とは、大きくかけ離れたこと驚く。特に自身もストラテジーのゲーマーだったこともあり、この話を聞いた時は「正気ですか?」と思ったことを明かしていた。
 
制作スタッフとの間でも“邪道”という話はでたそうだ。どうしてもストーリーを組み込みたいならば、外伝で小説を書くなり、アニメ化をするなり、軸となるメインストーリーを作らないとやりようがないと。しかし、いざ動いてみると、結城氏の中にある「こんなのが作りたい」というビジュアルイメージを引っ張り出す作業が主となり、少しずつ結城氏との描いているものがシンクロしあってきて、順調に動いていったという。
 

最初はシンクロするまでに時間はかかったものの、その分濃厚なものを作ることができたと、結城氏は振り返る。外堀から埋めていくことが、メンバー内でのコンセプト、世界観の共有にもつながり、結果プラスに働いたそうだ。
 
武田氏は、決められた制約の中で書いていくだけでなく、その中でも自由に設定を構築していると語った。特に英雄の裏設定などは、現状表になっていないものも考えており、結城氏からも許容してもらい、より面白いものを作ろうとしているという。
 
ストーリーはユーザーが自分で作っていくものでもあると語る結城氏。そこに英雄というキャラクターストーリーをどうやって絡めていこうかと考えたときに思いついたのが、キャラクターで世界観を補うことだったとのこと。
 
別々のキャラクターが色んな視点で世界観を埋めていき、最終的に同じ目的にたどり着くという形が面白いのではないかと。そのためにも武田氏は世界観を様々な場面にちりばめているという。「こことここは繋がっているんじゃないかな?」って深読みさせたりする場所がでてくることで、ユーザーをより楽しませることができるとコメントした。
 
武田氏がストーリー、世界観を作るときには最初にエンディングから考えるという。嫌いな言葉に「そういう意図で作っているわけではないが、海外の連続ドラマのような終わりのないストーリーを作ってくれ」というのがある。もちろん結末から2期のような形式はあるとは思うが、プロデューサーにストーリーを伝えるためにも、「こういうテーマがあって、最後はこうなる、というような4行で説明できるようなストーリーを必ず意識しているし、シナリオを書く人にはそれを意識して欲しい」と語った。
 
(取材・文:間浩人)


 

gumi 求人情報

 
  
 
株式会社gumi
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会社情報

会社名
株式会社gumi
設立
2007年6月
代表者
川本 寛之
決算期
4月
直近業績
売上高160億0900万円、営業利益4億4700万円、経常損益1900万円の赤字、最終利益4億4500万円(2023年4月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3903
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