【インタビュー】DMM.futureworks担当者に訊く 3DCGホログラフィック専用劇場「DMM VR THEATER」に見るVRビジネスの未来


VR元年とも言える2016年。先日の東京ゲームショウ2016でも、様々なVRソフトがプレイアブル出展されており、早くも開発会社、コンテンツホルダーによるVR競争が激化しつつある。

その多くのVRコンテンツが、OculusやPlayStation VR、Viveといったヘッドマウントディスプレイ、所謂ウェアラブルのディスプレイ対応となっている。没入感や臨場感といった点では、ヘッドマウントディスプレイを装着するという行為は適していると言える。だがその一方で、小さな子供への対応、VR酔い、ヘッドマウントディスプレイ自体の価格、などといった普及に向けての問題や課題も多く残されている。

そんな中、横浜にDMM VR THEATERという施設が2015年に誕生している。この施設はシアターVR有限責任事業組合が設立、運営しており、ヘッドマウントディスプレイを着けることなく、その場にいないはずの人物があたかも存在し舞台に立っているかのような演出を楽しめる、最新鋭のエンタテイメント・ステージ・システムを常設する劇場施設だ。

仕組みとしては、大昔から舞台演出等に使われていた「ペッパーズゴースト」という手法を使用している。多元レイヤーで構成されたペッパーズゴースト型ホログラム投影装置をステージ舞台とすることで、3DCGで制作された映像に物理的な奥行きを加え、あたかもそこに役者が存在するかのような錯覚を作り出す「手品的な」演出を行う。


 

ペッパーズゴーストとは…
 


劇場などで使用される視覚トリック。観客から見えている舞台のほかに、もうひとつの隠された舞台を用意。観客と舞台のあいだに45度の角度で板ガラスを設置し、隠された舞台にいる人物に光を当てることで板ガラスに反射して観客に幽霊のように見せることができる。
 


この装置に使われているLED、ハーフミラー性能のスクリーン等、2015年時点で最高峰・最新鋭のものが搭載されており、ホログラム映像のクオリティを高いものとしている。

本稿では、DMM VR THEATERの運営・コンテンツ製作を行っているDMM. futureworksのアシスタントプロデューサー鈴木沙季氏にお話を伺い、DMM VR THEATERの取り組みの狙い、ライブコンテンツとVRの融合による今後のVRビジネスの行方を探る。

 

株式会社DMM.futureworks
制作部
アシスタントプロデューサー
鈴木沙季氏
DMM VR THEATERで上映するコンテンツの制作・運営をご担当



--本日はよろしくお願いします。早速ですが、DMM. futureworksとして、DMM VR THEATERを設置した目的をお聞かせください。

鈴木氏:もともとDMM. futureworksはワイドワイヤワークスという社名で、初音ミクのコンサート(2010年ミクの日感謝祭、2013年のマジカルミライ等)を制作している会社でした。初音ミクのライブのようなバーチャルライブを開催するにあたり、開催の度にシステムを毎回設置・制作をしなければならないのは費用もかかりますし、お客様に届けるまでに時間がかかってしまうので、それであれば常設のバーチャルライブを行える劇場を作ってしまおう、と考えたのがDMM VR THEATERの始まりです。そんな中でDMM.comさんからお声がけをいただき、DMM VR THEATERを運営することになりました。

VRが当たり前のものになっていく中で、従来から存在している映画・舞台といったエンターテインメントもこれから先どんどん発展していきます。その2つの先にある形がこの劇場だと考えております。


--VRが一般に普及し当たり前の世の中になっていきつつある昨今ですが、現状VRというと所謂ヘッドマウントを装着して楽しむものが主流となっています。そんなVR市場においてのDMM VR THEATERの位置づけというのはどういったものになるのでしょうか?

鈴木氏:実際、ヘッドマウントディスプレイを装着して楽しむものがVR、というのが世間の認識だと思います。とはいえ、VRという言葉はバーチャルリアリティ(仮想現実)という意味なので、DMM VR THEATERは実際には会えないはずのキャラクターや人物に会えるといった部分では仮想現実という説明の枠からは外れていないと思います。DMM VR THEATERのようなものも、ヘッドマウントディスプレイを装着して楽しむものも、両方ともVRなのだと私たちは認識しております。
 

没入感という意味では、360度すべて仮想世界といった部分でウェアラブルのものの方が圧倒的にあると思います。ただ、DMM VR THEATERでは、客席に座って、他のお客さんと一緒に仮想現実を楽しむことが可能です。

バーチャルとリアル世界の間を表現しているのが、このDMM VR THEATERなのではないかと感じています。


--現在DMM VR THEATERのような劇場は日本では他に存在してなく、DMM VR THEATERがパイオニアとしての役割を担っていると思いますが、現状でDMM VR THEATERと競合しているエンターテインメントは存在しているのでしょうか?

鈴木氏:競合しているエンターテインメントはないと思います。映像ではあるのですが、映画と競合している意識はありませんし、全く新しいエンターテインメントの形だと思っています。

ですが、競合がいないからこそ、自分たちでDMM VR THEATERの良さや楽しさを多くの人に伝えていかなければならないと感じています。

DMM VR THEATERのコンテンツは、説明がとても難しくて、「キャラクターが実際にいるように見えるんだよ!」と言ってもほとんど伝わりませんし、写真や映像を見ても皆さんピンとこないと思います。ゴーグルを着けるわけでもないので、お客様としては「どうやって見えるんだろう?」という疑問しかなく、実際に見てもらってはじめて伝わる楽しさだと実感しています。

 

私たち自身も、この劇場で見せるコンテンツについて何が正解なのかわからず、常に試行錯誤している部分があります。

「ふなっしー」や、『ときめきレストラン☆☆☆』といった演劇やライブコンテンツの他に、「VRDG+H」というVJイベントも行っています。このイベントでは、VJの方がご自分で映像を制作し、劇場で流して、音楽もかけて、と、DJが音楽を扱うようにVR映像を巧みに扱います。そういったイベントで、映像制作者の方々は「新しいおもちゃをみつけた!」かのように目を輝かせ、様々な表現方法を試行錯誤し、編み出していました。今後行っていく公演やイベントでもどんどん新しい試みが出てくるのではないかと思っています。

--新しいテクノロジーを利用して、新しい表現方法がどんどん出てきてさらに新しいものに発展していく形ですね。

鈴木氏:そうですね。10月から11月にかけて「HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016」というコンテストを行います。このコンテストでは、DMM VR THEATERに投影させる映像を募集しました。ここに投影するサイズだけ規定に合わせてもらえれば、尺も表現も自由となっています。そこでも新しい表現が生まれてくると思います。

--少しDMM VR THEATERとは外れてしまいますが、今後のVRのコンテンツはどうなっていくのでしょうか?

鈴木氏:VRコンテンツを制作している他社さんもすでに考えているとは思うのですが、リアルタイム要素は確実に追加されていくと思います。AI(人工知能)と映像をコラボレーションさせ、VR映像自体の情報量が増えていき、VRの映像から私たち観客に与えられるものが増えていくのではと感じています。VRの映像から問いかけられ、それに答えて、また映像から何かアクションがある、といったようなコンテンツが増えていくのではと。

--そういった取り組みに関しても、今後のDMM VR THEATERのコンテンツに追加されていく可能性があるということでしょうか?

鈴木氏:そうですね。そういったものも考えていかなければなりません。

--では、直近でのDMM VR THEATERの今後の展開や、構想等を教えてください。

鈴木氏:現状ではDMM VR THEATERは横浜にしか劇場がなく、遠方から足を運んでくださるお客様が多くいらっしゃるので、こういった劇場を日本全国に増やしていくことが目標です。

また、コンテンツに関しても、上映できるものを増やしていきたいと思っております。

直近では、ネルケプランニングのアイドルステージの惑星アイドル「CHaCK-UP」のライブ上映が10月1日から10月30日まで上映されます。

さらに、スマートフォンのゲーム『モンスターストライク』のアイドル「白雪姫リボン」のCDデビュー記念ライブも11月6日に開催します。

また、劇場の外の部分でも遊びの部分を作っていきたいと考えております。例えば、劇場でアイドルキャラクター達のバーチャルライブを楽しみ、その後ロビーにてヘッドマウントディスプレイをつけて出演していたキャラクターとの握手会やお見送り会を楽しめるといった、ウェアラブルとの共存も考えられます。劇場の中だけでなく、このDMM VR THEATERの建物全体で、お客様にはテーマパークのように楽しんでもられればと将来的には考えております。

そして個人的には、DMM VR THEATERにもっと子供向けのコンテンツを上演したいとも思っております。子供なら、VRに対しての先入観もなく素直に体験を楽しんでくれますし、また、この劇場であればヘッドマウントディスプレイのような年齢制限もなく、ご両親と一緒に楽しむことができます。

例えばですが、「ももたろう」などといった昔話は、最初は口伝で伝わって、次に文章になって、絵本になって、ビデオになって…と技術が進歩するなかで表現方法もどんどん変わって次の世代に代々伝わっています。そんな昔話を、最新鋭のテクノロジーを詰め込んだDMM VR THEATERで上映して、子供達に見てもらって、その後それを見た子供たちが、もっともっとすごいテクノロジーでその昔話を表現するかもしれない。そういったテクノロジーの進歩によるつながりはとても素敵だと感じていて、そしてDMM VR THEATERは、この時代の最先端として、次の世代に何かを届ける役割ができるかもしれません。


--最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

鈴木氏:まず、この劇場にきたら新しい体験ができますよ、というのが一番伝えたいことです。映像を見に来るというより、体感してほしいと思っています。

DMM VR THEATERでは、今後いろんなコンテンツを上演する予定です。その中で興味あるコンテンツでも、知らないコンテンツでも、ここで公演をみたらそのコンテンツにハマってしまうくらい魅力的に見せる自信があります。

最初は、最新鋭の技術だとかVRだとかあまり難しいことは考えず、「眼鏡かけなくても見える3D映画」のような軽い気持ちで足を運んでもらえれば嬉しいです。


--ありがとうございました。

 

E.T.L extra〜Volume上げてRising★ハイ!スペーストリップに出発だ!


〜世界初の3DCG劇場・DMM VR THEATERにて、惑星アイドル「CHaCK-UP」ホログラフィックLIVEの上映が決定!合言葉は!“背中のチャックは開けないで★”



特設ページはこちら
http://chack-up-etlextra.com/

公演期間2016/10/1〜2016/10/30
料 金[前売] 2,500円 [当日] 3,000円

 

HOLOGRAPHIC VR CONTEST 2016




世界初、最先端の設備を利用した新たな表現を創出し、日本のCG、映像、VRなどのクリエイティブ産業の発展をめざすコンテストです。

特設ページはこちら
http://hvc2016.com/

公演期間[本選上映] 2016/11/3
料 金[一般] 2,000円 [学生] 1,000円

 
DMM.futureworks

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