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【インタビュー】事前の設計や可視化が重要…Precious Analytics米元氏に訊く レベルデザインのステップとは

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昨今のアプリゲーム市場は、競争が激しく、コストを掛けて開発しても売れるかどうかがわからないレッドオーシャン化が進んで久しい。その為、一度上げた売上を維持して利益をしっかり確保することが以前にも増して重要になっている。

今回、そうした中で、売上を維持するための秘訣について、株式会社Precious Analyticsの代表取締役CEO米元広樹氏にインタビューを行った。本稿は前回のインタビュー「UXポリシーに基づいたパラメータ設計」の第二回目にあたる。(インタビューアー:美田和成氏) 

【関連記事】「UXポリシーに基づいたパラメータ設計を」…Precious Analytics米元氏に訊く 長期運営・売上維持のレベルデザインとは

 

◼︎文字に書き出すことによる定義を…UXポリシー決定のステップ



株式会社Precious Analytics
代表取締役CEO
米元 広樹


―――: よろしくお願いいたします。前回はレベルデザインやデータ分析と売上維持の関連性についてのお話をしていただきましたが、今回はその続きをお聞かせ下さい。
 
宜しくお願い致します。前回は、コアの楽しみ・成長実感・英雄感の3つの要素に分けて、それぞれの要素と短期・中期・長期の売上とがどう関連しているかについてお話させていただきましたが、今回は、それを実現するためには、どのような設計をどのタイミングで行えばよいかをお話させていただこうと思います。

前回で、適切なレベルデザインのステップとして、最上流のUXポリシー決定からゲームロジック設計、パラメータ設定、UX可視化、KPI設計、UXの確認の順に進めると良いというお話をさせていただきましたが、今回はその概要についてお話させて頂きますね。



―――:それでは、まず最初に最上流のUXポリシー決定のところからお話いただいてもよろしいでしょうか。
 
はい。UXポリシー決定のステップは、簡単に言うと、まずは大枠を決めて、詳細を詰め、整理する、という流れになります。これは、よく言う企画書を書くというフェーズになるのですが、弊社では、ここは出来る限り文字で書いていただくようにしています。
 


ここでは、ユーザーへどういう価値を提供するかを書き出して頂きます。その際に、「全体UXポリシー設定」「個別UXポリシー設計」「段階別UXポリシー整理」の3ステップを経ていただくことが多いです。
 
―――:企画段階としてはそれだけで十分なのでしょうか?
 
十分ではないかもしれませんが、最低限しっかり書き出す必要があるのは、これら3つと考えております。本当はもう少し細かく決めていかないといけないのですが、時間も限られておりますので、またの機会にお話させて下さい。
 

―――:では、順番にご説明いただいてもよろしいでしょうか?
 
はい、まずは「全体UXポリシー設定」についてですが、ここでは、ゲーム全体としてどういう体験をお客様に提供するか、その枠組はどのようにするか、ということを定義していきます。当然ですが、ここがダメだったらゲーム全体が全く機能しなくなります。

キャッチコピー的なものから、世界観、どのようにマネタイズするかについても概要を決めます。ここで意外と見落とされがちで重要な点は、ひたすら文字で書くことですね。とにかく明文化することが重要というのもありますが、絵とかで何となく表すのではなく、言葉でかっちりと定義することが重要です。これはやっていただくとわかるのですが、非常に難しい作業となります。ここのフェーズで、ゲームとしてどういう遊びをしてもらい、どういう体験をしてもらうかをしっかりと定義する必要があります。

また、世界観のところは、一見レベルデザインにあまり関係がなさそうに見えますが、この世界観次第でゲームロジックがユーザーに受け入れられにくかったりするので、地味に重要になります。ここも話し始めると長くなりそうなので、今回は割愛させて下さい。

 
―――:文字だけで書くのはハードルが高そうですが、確かにそこまでしっかり書ければ、UXがブレることは少なそうですね。
 
そうですね。とはいえ、単に全体を書いただけではまだちゃんとしたゲームの形にするには足りないので、それを更に細分化して、「個別UXポリシー」を作成します。要は、全体UXポリシーを具体的にどういう機能で実現するかを書いたものです。こちらも同様に書き出すことが重要になります。その上で、ある程度のターゲット層などを明確にすることで、例えばミドル層向けの要素が抜けている、等の確認をすることが出来ます。
 
最後が「段階別UXポリシー」です。こちらは、先ほどお話させていただいた個別UXポリシーについて、ユーザーに体験してもらう順番で整理するイメージですね。一般的に、ゲームは複雑な方がユーザーも飽きにくいのですが、どうしてもチュートリアルなど最初に沢山詰め込みすぎようとして、ユーザーの離脱を招きやすいので、しっかりと整理することが継続率の向上とユーザー維持にとって重要になります。

 
―――:確かに、チュートリアルの後に何をしたらいいのかわからなくなることは時々ありますね。
 
 

◼︎ありとあらゆる想定とそれに対する対策の熟考


次は仕様段階で決める内容についてです。ここでは、先程固めたUXポリシーをどんなロジックや式で実現するかを考えます。

ロジックというと難しく聞こえますが、要はどういう仕組みでユーザーに楽しんでもらうかというものを考えます。ここについては、本当に色々とあるのですが、例えば、グループでバトルを楽しんでもらう際には、何人と何人で戦って、どれくらいの時間で、どういう攻撃方法があるか、などがゲームロジックに相当する部分ですし、成長に関しては、どういう制約を入れて、どう試行錯誤してもらおうか、というような事を決めます。

式については、単調に難しさを増加させるのか、後半から加速して上げるのか、それともある値に収束させるのか、というようなUXを数式ベースで考えます。このあたりのロジックが破綻していたり、あるいは変な式になっていると、折角のUXポリシーが台無しになる上に、パラメータ設計をいくら頑張っても売上改善をすることが出来なくなったりします。


例えば、成長のロジックが単純で飽きやすいもので、しかも成長実感が得にくいような式が入っていると、いくらパラメータ設計が秀逸でも、どうしてもユーザーの心をつなぎとめておくことは出来ませんよね。もちろん、シンプルな方がユーザーにとってはわかりやすいのですが、先程お話させていただいた通り、ゲームとしては奥行きも大事なので、ここのバランスを踏まえて設計することが非常に難しいのです。
 
―――:わかりやすさと複雑さを両立することが重要なのですね。
 
そうですね。実はここまでをしっかり考えるのが結構大変で、次のパラメータ設定では、定めたUXポリシーに沿って数値を当てはめていく作業なので、比較的考えるのは楽になります。ただ、考えることが無いわけではなく、ふわっとしているUXポリシーを、定量的に変換していくことが必要になります。街づくりゲームを例に取ってご説明させていただきますと、発生するアクシデントについて、「意外と頻発して起こる上に、ダメージも大きいのでスリリングな体験になる」というようなUXポリシーがあったとします。

その場合は、「意外と頻発して起こる」というのを、定量的に「60分に1回発生する」としたり、「ダメージも大きい」を定量化して、「最大で所持金の7割が無くなる」という風に設定したり、「スリリング」を「ダメージが所持金の1割から7割の間でランダムに変動する」という具合に幅を持たせる、というようなことですね。このようにひたすら定量化の作業を地道に繰り返すことで、ミスが起きにくいパラメータ設定が可能になるわけです。

 
―――:UXポリシーさえしっかり作られていれば、比較的スッキリ決まるのですね。
 
実際はマスタ設定など膨大な工数が掛かるので、スッキリとはいかないことも多いですが(笑)。パラメータ設定が一通り終わったら、次はUX可視化を行います。ここではパラメータの設定値がUXポリシー通りになっているかを可視化します。当然、テストプレイは必要なのですが、その前段階として、数値レベルでUXを可視化出来るようにすると、事故がぐっと減ります。例えば、「あるキャラを育てるには何日掛かるか」のように、ユーザー体験を数値でざっと表現するのです。今お話したようなものはシミュレーションなんかをするとわかりやすいのですが、意外とマスタを整理整頓するだけで可視化出来たりします。

例えば、ダンジョンに潜ってアイテムを回収する時に、どのダンジョンでどれくらいのアイテムが取れるかも重要なUXですが、それはマスタをちょっと整理するだけでもかなり可視化されたりするので、事故防止につながります。


―――:ここまで設計をしっかり出来ると、ほぼ完成ですね。
 
設計としてはほぼ完成なのですが、あくまでもここまでは仮定の積み上げなので、最後はKPI設計を行って、想定したUXと実際のUXの差分を確認する為の準備を行う必要があります。ここも実はそんなに難しくないんです。というのも、既にある程度UXが可視化されているので、UXを可視化した時に想定したプレイどおりにいっているかモニタリング出来るようなKPIを設計するだけになります。

例えば、「ヘビーユーザーは一日に何回プレイして、何日間でここまでのクエストをクリアする」、のようなイメージで想定を作られていると思うので、その層のプレイ回数やクエストクリア状況がそのUXを確認するためのKPIになります。逆に、ここで難しさを感じるのは、それより前の設計がしっかりできていない可能性が高いので、もう一度上流に遡って、固めきれていない部分を確認したほうが良いかもしれません。あとは、リリース後にそのKPIを見ながら、想定したUXが提供できているか、ゲームは楽しんで頂けているかの確認を行っていきます。

 

 

―――:KPI設計は難しいと思っていましたが、UXの可視化まで出来ていると、逆に難しくはないのですね。
 
ただ、裏を返せばUXの可視化までが物凄く大変とも言えるので、結局は難しいかもしれません(笑)。また、もう1点お気づきかと思いますが、実はコーディングやアート制作無しでもUXポリシー作成からKPI設計まで設計可能なのです。なので、理論的には、ここまでしっかり固めてから開発を開始すれば、コストを最小限に抑えることが出来ると考えております。
 

―――:確かにそうですね。1つ気になったのですが、何故ここまで開発前に設計を詰めることを重視されるのでしょうか?
 
前回お話させていただきましたが、私は元々メーカー出身でして、そこでシミュレーションによるプラント設計業務にも携わらせて頂いた事がありました。設備自体が最低20年と長期で稼働する前提で作られていることも多く、その為にありとあらゆる想定とそれに対する対策を建設前にしっかり検討する必要がありました。

これは、業界や対象が変わっても、モノづくりをする上では非常に重要な考え方だと思います。勿論、このフローが唯一解ではないと思いますし、実際のところ、ゲームはある程度作りながらでないとイメージもしにくいと思いますので、現実的には完全にこのように事前の設計をやりきるのは難しいと考えております。ただ、当然ながら手戻りや仕様変更が多ければその分コストは嵩みますし、逆にこれらのフローをしっかり踏まえて意識すれば、かなりのコストを抑えられると考えております。

 
―――ゲーム設計でもそういった経験が生きているのですね。本日はありがとうございました。

※インタビューに関して意見に関連する部分はすべて私見によるものとなります。
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