【インタビュー】「テラ・ワールド」の構想を坂口博信氏に直撃…『テラバトル2』は「ストーリー」「フィールド」「共闘」の味が魅力の”3色アイス”

 
ミストウォーカーコーポレーションが配信するスマートフォン向けゲーム『テラバトル』。
 
本作において、6月22日、新作スマートフォン・PC向けゲーム『テラバトル2』および『テラウォーズ』を開発中であることが発表され、今後も「テラ・ワールド」としてシリーズ展開されることが明かされた。そんな『テラバトル2』が、いよいよ9月14日より、サービスを開始する。
 
そこで今回は、『テラバトル2』のプロデューサーを務めるミストウォーカーの坂口博信氏、ディレクターを務めるシリコンスタジオの國原徹氏、エグゼクティブプロデューサーを務める河原典昭氏にお話を伺ってきた。『テラバトル2』で新たに加えられた要素についてはもちろん、今回DMM GAMESにてPC版を同時にサービス開始させることになった経緯や、今後の展開など、たっぷりとお届けしていく。
 
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株式会社ミストウォーカー
 『テラバトル2』プロデューサー・坂口博信氏(写真右)

シリコンスタジオ株式会社
 『テラバトル2』ディレクター・國原徹氏(写真中央)
 『テラバトル2』エグゼクティブプロデューサー・河原典昭氏(写真左)


 

■同じ幹を持ちながらも世界を広げる「テラ・ワールド」とは

 
──:坂口さんが「テラ・ワールド」を構築しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?
 
坂口博信氏(以下、坂口):出発点は業界内でスマホタイトルの続編が配信されにくいという話をしていたことでした。スマホゲームの特徴として、1タイトルでの長期運営が可能なため、「2」や「3」といった続編が生まれ辛い傾向があります。もちろん、それは良い面でもあるのですが、ひとつのエンターテインメントとして捉えたとき、根本的な部分は繋がりながらも世界観やキャラが一新されたときの新鮮味というのは重要なポイントになると思いました。

これまでのコンシューマーゲームはもちろん、映画や小説で続編が作られるのは自然な流れです。シリーズとして新鮮味を出していくことで今までのスマホゲームにはない展開ができるチャンスと考えたところがスタートになります。

 
──:『テラバトル2』の公式サイト(http://www.terrabattle2.com/jp/)には、坂口さんが手掛けた『ファイナルファンタジー』シリーズのように「同じ幹と同じ匂いを持ったものにしたい」というコメントもございますが、どのような想いが込められているのでしょうか。
 
坂口:構想に関しては、「テラ・ワールド」も『ファイナルファンタジー』シリーズを制作していた頃の流れを組んでいるので僕としては自然な流れでした。

味方キャラで敵を挟んで戦うという『テラバトル』としての根本的な部分は変わらず、ストーリーや登場キャラが毎回異なる。そういう形を3作、4作と続けて制作し、ユーザーに定着させることで同じ幹にある安心感を与えられるようなシリーズにしていきたいですね。気持ちとしては、『テラバトル2』がリリースされた直後から『テラバトル3』を制作したいぐらいです。

 

河原典昭氏(以下、河原):弊社としても、坂口さんの構想に沿って開発できるような体制を作っていきたいという気持ちがありますね。
 
──:『テラバトル2』をシリコンスタジオと共同で開発することになったきっかけは、前作『テラバトル』のPC展開を担っていたからでしょうか?
 
河原:実は、『テラバトル2』の話が先にありました。
 
國原徹氏(以下、國原):弊社の代表取締役社長である寺田と坂口さんの間で、新しいジャンルの試みにチャレンジしたいという話から『テラバトル2』の話をいただいたのがきっかけになります。PC版への展開については、その流れの中で別途受けさせていただきました。

 
──:國原さんと河原さんはどういった経緯で『テラバトル2』に関わられることになったのでしょうか?
 
國原:坂口さんがシリコンスタジオに求められていたものが、ソーシャルゲーム運営に対する部分ということもあり、経験があった私に声を掛けていただきました。ちょうど前の案件がひと段落したタイミングだったということも大きかったです。

立場としてはディレクターですので、プロデューサーである坂口さんとやり取りをさせていただいたり、どういう風にゲームメイクをしていくかという舵取りを受け持っているというイメージになります。
 
河原:僕は昨年の12月辺りに合流しました。ローカライズなどに関する知識を持った人間が必要というのが主な理由ですね。開発・運営の責任者として、メンバー構成などのヒューマンマネジメントを行ったり、PC版についてDMM GAMES窓口の方と
話し合いをしたり、プロモーションの展開を考えたり。肩書きとしてはエグゼクティブプロデューサーになります。
 

──:先ほど國原さんからも少しお話にありましたが、坂口さんとしてはシリコンスタジオのどういったところに期待されているのでしょうか?
 
坂口:弊社は人数的にも層が厚い会社ではないので、主にシナリオや音楽に注力できるよう、プログラムやゲーム内エフェクトの作成など、人員的なところで助力いただけるかなと。

そのほか、まだ弊社の経験が浅い部分でもある運営ノウハウはもちろん、カスタマサポートやデバッグといったところでも経験値の高いチームと組みたかったという想いはありました。運営に対するスピード感に関しては、『テラバトル』をリリースした際に痛感した部分で、ゼロからアイデア出しをしている分、オリジナリティには溢れていたと思うのですが、ゲームに慣れているユーザーが矢継ぎ早にイベントを遊べるだけのスピード感を保ちたいなと。

 
 

■より濃いシナリオを描くためキャラを課金要素から排除

 
──:ここからはゲームシステムについてもお伺いしていきたいのですが、前作『テラバトル』とは主にどういった部分が変わっているのでしょうか?
 
坂口:一番大きい変化は「フィールド」の要素が入ったということです。また、シナリオをより濃く語りたいという理由でキャラを課金要素から外しています。これによりどのデータにもキャラが確定で存在しているので、コンシューマーゲーム的な形でキャラ同士の人間模様をドラマとして描けるようになりました。
 
──:シナリオ部分では、キャラ同士が吹き出しの台詞で掛け合いするという見せ方は前作にはない表現ですよね。
 
坂口:そうですね。コンシューマーではよくある形ですが、続編を制作すること同様に、まだやっていないところを突くことで新しい環境を提供することがエンターテイメントを楽しむうえで重要になるという発想から今の形に行き着きました。
 
  

坂口:あとソーシャルゲーム的な要素としては、キャラにセットすることができる「守護者」や「装備品」といったシステムを取り入れています。キャラ自身が成長しない分、装備品に成長要素を加えることでコンシューマーとスマホゲームの良いとこ取りを目指しました。

通勤中にゲームを遊んでいたらストーリーが佳境に差し掛かってふと泣いてしまう、そんなユーザーの感情を揺さぶれるようなゲームにしていきたいです。

 
──:「守護者」にはどのような特徴があるのでしょうか?
 
坂口:キャラひとりひとりの背後に寄り添う形になっています。守護者にセリフはなく、それぞれ炎や氷といった属性、スキルを備えています。自由に切り替えが可能で、戦闘に関わるステータスに直結するイメージです。
 
 

──:登場キャラは固定とのことですが、各キャラに戦闘面での特徴はあるのでしょうか?
 
坂口:装備できるものの種類は変わります。種類が限定されるという意味で、例えば「このキャラは杖が持てないから魔法使いの守護者を付けても魔法攻撃力を上げられない」といった組み合わせを考えるのも楽しみのひとつになります。
 
國原:また、装備にはパラメータだけでなく範囲が設定されています。前作はスキルそのものに範囲が付随していましたが、今作ではスキルの効果範囲を広げる要素として武器が存在しているので、その辺りをどう組み合わせていくかもポイントになりますね。

 
 

――:先ほど、1番大きいと仰られたフィールドにはどのような変化が?
 
坂口:まず表層に世界地図があり、場所を選択することで各章の物語が楽しめる、いわゆるコンシューマーゲームでよく見られるような構造になっています。なので、新しい要素を取り入れたというよりは、昔コンシューマーゲームでしていたことをスマホゲームに入れたという感じになります。
 
國原:今はフィールドでは、マグネットでキャラをくっつけて移動できるようなシステムが実装されているのですが、ここにたどり着くまでに様々な試行錯誤がありました。仲間が一列になって後ろに付いて来るような方法も試しましたが、どうしても戦闘範囲外に出てしまうという理由で却下になったり。

 
 
坂口:ちなみに、マグネットの機能をOFFにすれば前作と同じ操作方法でキャラを入れ替えることで移動させることもできます。ただ、フィールドはこれまでのバトルより広い場所を移動するので凄く大変です。
 
河原:あと『テラバトル2』では敵も動かせます。
 
坂口:これは前作の制作時にも構想がありました。今作ではフィールドで敵を動かせると間口が広がるのではないかと思い取り入れています。

ただ、クエストでは前作にあった詰将棋のような感覚を楽しんでいただきたいという想いから、なるべく敵は動かせないようにしています。なので、フィールドとクエストでかなり遊びの感覚が異なると思います。

 
 

――:なるほど、他にはどのような機能が盛り込まれているのでしょうか?
 
坂口:オンラインで「共闘」という最大10人での協力プレイが楽しめます。ひとり2キャラを持ち込むことができるので、計20キャラが入り乱れて戦うことになります。
 
河原:共闘は開発現場でもいつも盛り上がっていますね。
 
國原:多人数で遊べるモードということもあり、ある程度エンドコンテンツを意識して設計しています。ただ、強い方がいれば攻略できるバランスになっておりますので、老若男女幅広く、倒せたり倒せなかったりというところを楽しんでいただければなと。
 
また、0.5秒ごとに同期を図っているので、ほかのユーザーが動かしているキャラをリアルタイムに見ることができます。同じ場所にキャラが重なると弾かれてしまいますが、全員が連鎖の対象になるので、上手く連携すれば150コンボ以上決めることができますよ。

 
  
 
──:大規模コンテンツを搭載されようと考えたのは何故ですか?
 
國原:前作にもソーシャル的な要素はありましたが、やりこんだユーザー同士がプレイするコンテンツ、というイメージがありましたので、もう少し自分の力量を気にせずに気軽にマルチで遊べるものを入れたいと考えました。
 
河原:βテストでも評判は良好ですよね。
 
國原:そうですね。おかげさまでかなりの稼動をいただきました。ちなみに、本当は30人で遊べるようにしたかったのですが、プログラマーの方から「勘弁してください」と言われてしまいました(笑)。ただ、ゆくゆくは同時にプレイできる人数を増やしたいという想いは未だにあります。


──:ルール的にはどのような感じなのでしょうか。
 
國原:時間で切り替わるターン制ですね。
 
坂口:やられてしまったときは、誰かがエナジーを使用すると全員に適応されます。

國原:あと、スタンプが用意されているので、簡単なコミュニケーションや意思疎通は図れるようになっていますよ。
 
河原:10人で戦ってると、スタンプもスキルもどんどん出てくるので凄く賑やかになります。
 
 

國原:ひとりで遊ぶときはじっくり考えてプレイするタイプのゲームなので、全く異なる体験が可能です。
 
坂口:「ストーリー」、「フィールド」、「共闘」、ひとつのゲームで3つの異なる味が楽しめることからチーム内では”3色アイス”という表現をしています。

 

――:シナリオ的にはどのような物語が展開していくのですか?
 
坂口:内容についてはまだお話できないのですが、次から次へと謎が浮かぶ謎解き型にしています。

更新頻度については、毎週1章ずつ公開していけるようなスケジュール間で考えているので、連続ドラマのようなイメージで楽しんでいただけると思います。今、公開されているPVのシーンも物語が進んだ後に見返すと「なるほど」となるような設計になっています。

 
 

スマホ・PC同時展開に至った理由

 
──: PC版を同時展開することになったきっかけはどういったところから?
 
河原:「フィールド」要素があると知ったときPCに展開するべきだと思いました。マグネット機能を活かした移動はマウスで操作しても楽しいかなと。スマホゲームをPCでサービスするのはメリットもデメリットもあると思っているのですが、まずメリットとしては多くのコアユーザーが集まっているので多様な情報が出ることです。逆にその分、コンテンツの消化速度が早くなってしまうので枯渇しないようにしなければなりません。そこを補うのが、先ほどもお話にあった”3色アイス”の部分になります。
 
あとは、PCとネイティブの同時リリースというのはDMM GAMESとしても数少ない
試みというところで、是非、実現したいという意思が物凄く強かったです。これまで、スマホゲームがPCで遊べるようになるのは半年後や1年後というケースばかりでしたので、同時リリースすることでDMM GAMESとも互いにWin-Winの関係が築けるのではないかという話になりました。ユーザーとしても大きい画面でゲームが遊べるのは気持ち良いと思いますので、その爽快感を味わっていただければと思います。
 

──:もちろんスマホとPCのデータは連動できるのですよね?
 
河原:はい。スマホとPCで共闘を遊ぶことも可能です。
 
坂口:システムとしては、後からログインした方が主導権を乗っ取る形になりますので、最初、スマホで共闘を遊んで途中からPCでログインし直して継続することもできます。

 
 

■異業種コラボや海外展開など『テラバトル2』の今後について

 
──:今後の展開はいかがですか?
 
坂口:『テラバトル』でも実施したダウンロードスターターは行う予定です。ただ、前回は累計ダウンロード数を目標に設定しておりましたが、今作では毎月の目標ダウンロード数を設定して達成していく形になります。

既に決まっているところでは『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛けた上国料さんや渋谷さん、あとゲーム業界以外からも現代アーティストの版画家・小松美羽さん、墨絵アーティストの西元祐貴さんなど、月初めに参加していただくアーティストを発表する予定です。

 
──:異業種ともコラボできるというのは本作の強みですね。
 
坂口:墨絵や版画は天野さんの絵のスタイルと近い東洋チックなファンタジーアート的な部分があるので違和感なく入ってこられるというのもあります。
 
──:サービス開始後から早速スタートされるのでしょうか?
 
坂口:そうですね。あとは、運営カレンダーについても共闘の第2弾や新たなクエストなど、次から次へと仕掛ける予定です。
 

國原:更新のスピード感はもちろん、スマホゲームでは繰り返し遊ぶことへの動機付けが非常に重要になりますので、守護者や装備品といった要素を絡ませながら凄く慎重に設計しています。メインストーリーの更新もありますので、各々のペースに合った内容で楽しんでいただけるような形を目指しています。

──:東京ゲームショウ2017には出展されるのでしょうか?
 
河原: DMM GAMESブースで展開をいたします。ここまでの流れから推測できるかと思うのですが、新機能である「共闘」を皆様に楽しんでいただけるものを準備しております。ステージも予定しているので、『テラバトル2』をより知ってもらえる機会にできればと思います。
 
坂口:そのほかの展開としては、北米も同時リリースとなっております。将来的にはアジアにも進出したいです。
 
河原:台湾には『テラバトル』のユーザーが多いので、そういったところは大事にしていきたいです。

 
──:最後に、坂口さんにとって『テラバトル』とは?
 
坂口:一緒に働いているチームに凄く熱い情熱を感じています。僕自身、そういう場所にいたいという想いが強くありますので、非常に充実した時間を過ごさせていただいています。熱い気持ちは作品にも乗ると思いますし、それが最も大事なところですので、仕組みもさることながら、作り手の命が宿った作品に仕上がっていると思います。是非、一度手にしていただけると嬉しいです。
 

――:本日はありがとうございました。
 
 
(文・取材:編集部 山岡広樹)
(撮影:編集部 和田和也)
 


■『テラバトル2』
 

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(C)MISTWALKER/Silicon Studio Corp.
シリコンスタジオ株式会社
http://www.siliconstudio.co.jp

会社情報

会社名
シリコンスタジオ株式会社
設立
2000年1月
代表者
代表取締役社長 梶谷 眞一郎
決算期
11月
直近業績
売上高45億5400万円、営業利益2億3800万円、経常利益2億4600万円、最終利益2億円(2023年11月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3907
企業データを見る
株式会社ミストウォーカー
https://www.mistwalkercorp.com/?lang=ja

会社情報

会社名
株式会社ミストウォーカー
設立
2004年1月
代表者
坂口博信
企業データを見る
DMM GAMES(EXNOA)

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会社名
DMM GAMES(EXNOA)
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