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【インタビュー】モバイルエンターテイメントにおけるASEANベンチャー投資―インドネシアのPtoPゲーム交換プラットフォーム「Bazaar Entertainment」

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インドネシアといえば、ASEAN最大の人口2.4億人を擁しながら、多くの日系企業にとって距離的・文化的に最も謎めいた国。他のASEAN諸国に比べてオフショア拠点としてもゲーム運営・開発拠点としても、ほとんど実例を聞くことがない。

そんな市場に単身渡り、Apple/Googleに代わる第三の途上国プラットフォーム構築を企てる男がいる。Bazaar Entertainment社の大和田健人氏だ。第一回シンガポールでのMobiclix社(関連記事)に続き、「投資」による日系企業のASEAN展開について取り上げる。 (インタビュアー:美田和成)

 

アジア中を駆け回る行商の末、最後にたどり着いたゲームの未踏国家インドネシア

 

―――: よろしくお願いいたします。大和田さんの起業の経緯について伺ってよろしいでしょうか。

はい、最初どこからお伝えすれば…と思いますが(笑)。ソニーコンピューターエンターテイメントで12年間働いておりまして、主にプレイステーションの中国営業をやってました。

営業、といっても当時はプレステ含めたコンソール筐体は中国政府に認められていませんから、むしろ門戸を開いてもらうためのBtoG(Business to Government)が重要になってきます。私は関東国際というちょっと変わった高校に通っておりまして。当時から中国語漬けにしてもらったお陰で中国語は問題なかったんです。

ソニーに入社した当初はエンジニア採用だったのですが、3年目に「よし、お前中国語しゃべれるんだから中国いってこい」と送り出されまして。そこからは営業・マーケティングを中国・台湾でやってました。


ソニー中国時代は最初、市場の正常化というところからミッションが渡されて。様々な問題がある中でも海賊版が一番大きな問題でした。でも当時ソフトウェアが4500円くらいで正規品を売っているのに、目の前の海賊版店舗では全部100円のたたき売り。場当たり的な対処療法では限界があり、まずは海賊版市場の全体像を把握する必要があると考え、2年弱で中国の全ての店舗をまわりました。
 
―――: 中国の全店舗…というのはどのくらいになるのでしょうか。

1000店舗くらいですかね。100都市の各10店舗ずつくらいで、上海北京などの主要都市から西はタクラマカン砂漠、北はアムール川流域、南はミャンマーとの国境の曖昧な街まで。ですので2年間弱かかっているんです。そうした調査が進むうちに、海賊版の工場にも入り込んだことがありました。顔が現地の方々とそんなに違わない特性も生かして、名前を「王(ワン)さん」にしてですね(笑)。掃除人として1週間、住み込みで入り込みました。顔に機械油をぬって工場で清掃しながら、なるほどこうやってプレスしてこういう筋の業者が入って…とやってるわけです。

で、長くなってしまいましたが、この調査が現在の起業のアイデアにつながっています。この写真、なんだと思います?

 


―――: フィーチャーフォンでしょうか。かなり年代物ですね。

ノキアのガラケーです。2005年頃に潜入した工場で作業員たちが使っていたものです。このボタン、みえますか?2、4、6、8、のキーがつぶれているでしょう。これ、ゲームのボタンなんです。日本でも昔5ボタンがつぶれてましたが、もう本当に単純なゲームを朝から晩まで指でこするようにやっているんです。大したゲームじゃないんです。それこそ1人でつくって出せるようなカジュアルなゲーム。これをみてハッとしましたね。ゲームって本来こういうものなんじゃないか、と。

そんな難しく構えなくていいんです。友達同士で、ひまつぶしに遊べるようなゲームを、数十秒で勝敗が決まるようなやりとりををひたすら繰り返す。プレステのような高価・高品質な筐体をベースに、広告・マーケティング費用を大量に投下しながら消費者の目を引いていく一方で、そんなものと隔絶した所で全然チープなゲームでソーシャルな欲求を満たす人たちがいる。そこに何かできることがあれば、というのがずっと僕の心の中に残っていたんですね。

 
―――: なるほど。そうした途上国のゲームプレイを間近でみた経験が現在につながるんですね。それでソニーを辞められて起業、ということでしょうか。

そこからずいぶん時間は経ちましたね。中国全土の海賊版調査を行い、販促品を店舗オーナーのインセンティブにすることで正規版をちょっとずつ扱ってもらえるようになり、それはもうほんとにオセロをひっくりかえすように1つ1つ正規版店舗に変えていきました。同時に中国政府の高官とも懇意になって色々合法化の道筋を教えてもらいました。ただ、当時はこちらから政府にお願いをする、という致命的な交渉から始めてしまっていたため、なかなか前に進まない。我々がお願いするのではなく、彼らからお願いしてもらわないといけない、と考え一旦中国を撤退する決断をしました。

その後2007年には台湾にいって、台湾のデジタルコンテンツ産業を推進するという名目でBtoG営業を展開していました。当時中国と台湾は微妙な関係で、良い言い方をすると台湾をとても注目していた訳です。最終的にその台湾での事例が寄与して2013年に中国でもついにコンソールが合法化になります。その時期にやりきったと感じたと共に、大企業の限界が見えてしまったため、同年の2013年にソニーをやめました。

起業についてはどの市場でやっていこうかずいぶん考えました。生産人口の減少と高齢化がみえはじめていた中国にずっとしがみついていていいのかという気持ちがあり、これからはもう東南アジアの時代だと思ったんです。全く土地勘は無かったのですが。そしてボタンのつぶれた携帯電話が忘れられず、東南アジアでどんなゲーム事業を展開していくべきかを模索するためにアジア中をまわりました。

ベトナム、タイ、マレーシア、ラオス、カンボジア、ミャンマー、フィリピン、インドネシアと。テキ屋のように風呂敷に様々なゲームをもって各都市を回り、街頭や学校の前で並べて「よってらっしゃいみてらっしゃい」と客寄せしながら、そのプレイスタイルをひたすら見るんです。

まあそんな露天商のようなやり方なのでずいぶん危ない目にもあって、インドネシアのメダンでは車に連れ込まれて金を出すまで小一時間リンチに遭い続け、とにかく商売道具のゲーム機だけは勘弁してもらったり(笑)。

そんな目にもあったんですが、やはり2.4億人。ASEANで最も日本語学習者の多い親日国というところも考慮して(※インドネシアの日本語学習者80万人は、2位のタイ3万人を大きく引き離すASEAN1位である)、インドネシアでやろう、と決意しました。自分で稼ぎの手段が少ない学生がこのサービスに親和性が高いことも分かってきていたので、大学が多いBandungという町で立ち上げました。それが2014年のことです。

 


コンビニのイートインのスペースで実施したゲームテキ屋
 

インフラのない国でこそ効果を発揮する対面ゲーム配信PF…世界トップレベルのKPIを実現


―――: 壮絶なストーリーですね。伝記を一冊読み終えたような気分ですが(笑)、Bazaarとしてはそのインドネシアでどんな事業を展開されているのでしょうか?

ここまでは前段ですね。BazaarはPtoPでゲームを配信できるプラットフォームを提供です。ネットを使わず、Wifiを経由させて対面でゲームを配信してもらうので、通信インフラの弱い国でこそ効果を発揮する「代替インフラ」です。口コミでコンテンツを普及させるために最適なインフラとは何かを突き詰めた結果辿り着いたソリューションです。「ほら、このゲーム面白いから、あげるよ」と言って、10秒程度で友達と一緒に遊べるゲームをゲットできる。

また、ゲームで消費する仮想コインもPtoPでユーザー同士で流通させられます。ここはちょっとわかりにくいかもしれませんが、弊社のユーザーは2種類いて、ディストリビューターというゲーム自体を販売してくれるスタッフと普通のゲームユーザーに分かれます。雇用しているわけではなく、販売代理店の様な位置づけです。


Bazaar Goldという弊社のゲーム内通貨を購入していただき、それを友達に再販していただきます。基本は額面で販売してもらいますが、特に定価を定めていないのでマーケットプライスになります。まさにバザール状態。ユーザーさんが入手したBazaar Goldをゲームで使っていただくことで、ディストリビューターさんに手数料が入るという仕組みです。

この仮想コインの利益還元モデルがユーザーを主体的にプラットフォームに関与するディストリビューターに変える魔法の杖なんです。別に自分が発明した訳ではないですが、この様なビジネスモデルはインクルーシブビジネスと言われ、途上国において効果的に自社の流通販売網を構築するモデルとして注目されていて、途上国で活躍する日本企業も積極的に導入を始めています。ゲームでは当社が初めてだと思いますが。

 


大学でディストリビューター登録の場所を提供してもらう。
Bandungの中堅大学PASM理事長へのコンセプトの説明。

試験終わりを狙って登録会。運営するのもディストリビューター。
学生たちがゲームに群がり、登録が進む。

 
―――: なるほど、ユーザー自身がディストリビューターとして販売代理機能をもって、口コミでゲームをWifiで渡して、その場でプレイすると。それを促進するために、卸価格/小売価格でBazaar通貨の価格差で儲けを作り出し、経済合理手金友人を誘うというモデルですね。コンテンツとなるゲームはどうされているんですか?

こちらもゲームを提供していただく会社様がいます。弊社のSDKをアプリに入れてもらえれば、Bazaarプラットフォームに配信ができます。このゲームそれぞれの収益がレベニューシェアで還元されるわけで、現在40個のアプリがはいっております。弊社の対面型プラットフォームの特性もあり、eSports系といいますかPvP型のゲームを集中的にいれていこうと思っております。
 


ゲームコンテンツの提供を受けるインドネシア開発会社Agateにて。
左から大和田健人氏・VPのDave氏・CEOのArief氏

 
―――:それで実際どのくらい売上がたつものなのでしょうか?

正直、まだ実験段階です。Bandung市は人口450万人の横浜市と川崎市を繋げた様な規模の街なのですが、大学が40以上もあり、学生数だけで42万人の学園都市です。Bandungのある学生数が1万人の大学で初週に20人のディストリビューターを獲得したのですが、彼らが頑張ってくれたおかげで、3ヶ月たたずに学内のAndroidユーザーの8割、5000名くらいが当社のゲームを遊んでくれています。

そして、ここが出資会社さんにも一番評価頂きましたが、対面プラットフォームだからか非常に高いKPIが出ているんです。5000名単位で実験したときに、「紹介後インストール率79%(インドネシアのAndroid平均は20%)」「1か月のRetentionは47%(市場平均は9%)」「ARPPUは$1.5-4.2(市場平均は$1.0以下)」と、あらゆるKPIが高いです。

 
―――:すごいKPIですね!1つの大学の学生半分がプレイしていること自体も凄いですが、インドネシアにしてARPPUが$4以上にもなり、何より30日後継続率47%というのは世界トップレベルの数字ですね。

しかもそれがそれほど特別なゲームというわけではないのです。まあ、考えてみれば当たり前ですよね。友達からこのゲーム面白いよって、PtoPで渡されて、一緒に遊ぼうぜ、と声をかけられる。これが本当のゲームのKPIだと思ってます。無料なはずのユーザーを広告をうって何万人も獲得、その1割も残らないなかでユーザー当たりの課金単価をどんどん釣り上げて運営していくという現在のモデルは、あまり健全とはいえません。

皆プレイしたいからインストールするわけですし、100万個もゲームがあってもほとんど遊ばれないプラットフォームというのは勝者総取りの焼き畑市場です。我々は、直接の知人とつながりながら関係性を第一にプレイしていくスタイルですし、明確に「第三のプラットフォーム」として差別化できると思っています。


既に30を超える大学の学生からディストリビューターをやりたいという希望を頂いております。自分がビジネスを担うんだ、という気概を持ち、ユーザーさんに接する事のできるスキルを身に着けてもらった上で活動できる様、教育活動を重点的に行なっています。このディストリビューター業務自体が自分で卸・小売の個人事業を立ち上げるようなところがありますし、「教育効果があるよね」ということで連携している大学からも評価頂いています。

ちょうど9月から新学年ですので、これから半年でバンドン市の大学生ならみんな使っているゲームプラットフォームとなれるよう、粛々とマーケティング活動を実施して行きます。

 

ブシロード社、インドネシア財閥との提携…途上国41億人にむけたゲームプラットフォーム事業


―――: この2017年に外部資本を入れられたとお聞きしています。資本政策についてお伺いできますか?

はい、まずエンジェル段階ではこのアイデアをベースに友人達からお金を集め、それで最初の3年間はやりくりしてきました。BazaarはHQとしてシンガポールに拠点をもっています。現在はそのサービス・宣伝拠点としてインドネシアに子会社がある状況でしょうか。今回のラウンドではブシロードさんがリードをとっていただいて17年2月に出資頂き、そこに以前から出資頂いてたSNKというアーケードゲームの会社で南米支社長を務めた方が代表をされているSafariGamesさん等、複数の企業から目標通りの出資をいただきました。

また、インドネシアでは、インドネシアを代表するIT系の財閥であるMidPlazaさん、Agateというゲームスタジオと戦略的なアライアンスを締結しており、外国人が単身乗り込むのではなく、現地とのパートナーシップのもと、我々がインドネシアの軒先をお借りして、ビジネスをさせていただいているという体制で取り組んでいます。また、今も話続けている出資先はありまして、バングラデシュやサウジアラビアなど今後の事業展開先のパートナーになれるかどうかという観点も入れて、継続的に話をしております。

 
―――: 出資先のバラエティも凄いですね。どうやってこうした提携を実現しているのでしょうか。何かコツみたいなものはあるのでしょうか。

まずは行動ですね。とにかくチャンスがあれば足を運ぶ。それによって縁ができます。ブシロードさんとはGMGCという中国・崑山のだいぶ僻地で行われたイベントで海外担当役員の中山淳雄氏とお会いしたのがきっかけでした。これは面白いとすぐに木谷社長とのMtgがセット頂き、この特集の第1回でも言及されてましたが、本当にものすごいスピードで出資の話になりまして。

木谷社長ご自身がシンガポールに住まれ、東南アジアのカードゲーム店舗をドブ板で1店舗1店舗まわられています。そういうアジアのビジネスの真髄を理解されている方に、いいビジネスだねと言って頂いたことは本当にうれしかったですね。ブシロードさんが入っていただいたことで多くの声を頂くようになって、この半年間はとんとん拍子で3-4社の会社様に立て続けに参画頂くきっかけになりました。

 
―――: 最後にBazaarは今後どうなっていくのでしょうか?

いつのまにかマーケッターの様なキャリアを歩んできていますが、私の気持ちは今でもソニーに入社した時のゲームクリエイターのままです。未だにゲームの企画会議は前のめり状態で、仕事のバランス配分ができていないとスタッフに怒られます(笑)。Bazaarのプラットフォームの上で、誰かが面白いコンテンツを発表し、Bazaarプラットフォームを使って地球の反対側で、人づてにゲームを入手し、誰かがそのゲーム遊ぶ。そして幸せな気持ちになってくれる。そして、ゲームクリエイターは対価をいただいて幸せになれる。そんな世界を実現したいと考えています。

インドネシアはまだとっかかりにすぎません。現在は450万人のBundung市で展開し、次に2000万人のJakartaに展開していきます。来年にはインドネシア主要13都市の1.2億人に向けながら、フィリピン、インド、バングラデシュあたりにも展開をはじめます。3か年計画はたてており、そこでネシア全土2.4億人、フィリピン全土1.1億人に向けて展開していくつもりです。

Bazaarが掲げる世界のどこでもエンタテインメントを。Entertainment, Anywhereの精神。アジアに続いて、アフリカ、南米など、いわゆる「途上国41億人がお客様のゲームプラットフォーム事業」を展開していく予定です。

―――: ありがとうございました。


※インタビューに関して意見に関連する部分はすべて私見によるものとなります。
 

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