【イベント】ファリアー、学生向けの勉強会“駿馬 NAGOYA KAIKOU「邂逅」”を名古屋で開催! 出展企業5社による会社説明会も

 

ファリアーは、9月16日、東海地域周辺の学生に向けた勉強会“駿馬 NAGOYA KAIKOU「邂逅」”を開催した。本イベントは、当媒体で「ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- 」(関連記事)を連載している、ファリアーの馬場保仁氏が、学生向けゲームクリエイター育成のために主催している勉強会で、過去5回開催されている。

第6回となるこの日は、“駿馬”の特徴である「講義+演習」に加えて、「今回は駿馬とHEAT(ゲーム業界合同就職イベント)を合体させたような形で、企業さんに見てもらいながら行う初めてのケース」と主催の馬場氏が言うように、企業が5社参加する「企業説明会」「トークセッション」といったプログラムも行われた。

「講義+演習」を通じて、単なる説明会と違って自身をアピールできるチャンスでもあり、今回参加している企業でゲーム制作に携わる人の意見を聞く良い機会となった本イベントには当日、名古屋の学生はもちろん、東京や京都、大阪から足を運んだ学生の姿も見られ、参加者は60人近くに及んだ。名古屋という地で、この新しい取り組みを実施したのは「わたしも、岐阜県の出身なので、地元なのです。何か地元の後輩たちにわたしからできることがあれば!という想いもあるからです」(馬場氏)と挨拶があり、第一部が始まった。


 

■個人ではなく、チーム制作でゲーム概要を考え、まとめる


最初のプログラムは、馬場氏による演習(講義とワークショップ)。

参加学生に向けて、「きみたち学生は、よく面接で“自分はどうであるか”を主張したがる。が、もし自分が選考する立場だったら? と、自分をどう見せるかよりも、選考する側の目線で“何を見るのか”を考えること」が大事だと馬場氏。「実際に5分くらい話して、企業に“この人はすごいな”と思われるおもしろいアイデアを持った人は少しだけ。だから、どんどん外に出て企業、社会人と接する機会をもってほしい。企業は誰を「仲間」にするかを真剣に見ているので、ある意味自分を客観的に見てくれる」(馬場氏)と、企業参加のイベントの意味合いについて触れた。



馬場氏が同イベントを開催する根本には「ゲーム業界で働ける人、おもしろい事をやれる人をどんどん増やしていきたい」という思いがある。「ものを作る人間はいかに行動するかが大事。学校でやっていることは大前提としてあるが、それに加えてこういうイベントに参加したほうが良い」(馬場氏)と、学生同士、または企業と交流できるイベントを開催し、全国の学生たちが打席に立つキッカケを積極的に作っているのだ。

今回のワークショップでは、チーム制作をテーマに、各テーブルごとでグループ分けされた学生たちが、ゲーム企画のアイデア出し→企画発表までを行った。作業に入る前には、チーム制作の“足元から支える”グループでの企画発想法と題し、馬場氏からゲーム作りに関する講義が行われた。ゲームやエンタメは、最初は誰しも作ったことはない。ただ、企業の中には即戦力を求め、開発経験を重視することがあるのは事実。それならば、「作るしかない!」と馬場氏は言う。そして、学生たちがいま自分がどのステージにいるのかを考えてほしいと、下図をスクリーンに展開。プロトタイプを完成させたものを他人にプレイしてもらったり、コンテストや学外に出すなど、学校だけではなく自分の時間で何をするかを考え、「モノを作ることを繰り返す。モノを作り続けて、それを企業さんに見せてください」とアドバイスした。


 
では、実際にゲームを作ろうとしたとき、実質開発の前に企画立案をする必要があるが、企画立案に時間をかけすぎて実質開発を始められないケースも多い。「時間がない。長期開発できればいいものができる」という意見もあるようだが、更に企画をこねくりまわし、時間を浪費してしまい「うまくいったのを見たことがない」と馬場氏は指摘した。企画を早期にまとめらるのが理想だが、そのためには伝わる企画書類を作らないとならない。

そこで、うまく伝わる企画書に絶対に必要なポイントとして馬場氏が口にしたのが“イメージ”。オリジナリティあふれるものなら、写真やイラストなどビジュアルは必要で、既存のものの一部を使うなら、言葉で説明するだけでも可だが、その既存の部分で切り取っている要素がわかる画像は添えるべきと、具体的な例を挙げた。また、企画をまとめる際に、タイトルやゲーム概要、ゲームの流れ、コンセプトなど必要なパーツがある事にも触れ、「これがすべてではないものの」と前置きしつつ、最低限これくらいのパーツがないと伝わらないとした。



企画をまとめる際に必要なパーツの1つとして「ゲームの概要」をあげ、それについては、誰が、どんな手段で、何が目的なのかという「そのゲームが何をするものなのかを明確にするもの」という馬場氏。そのための手段として、中村隆之氏が考案し既に発表もされている、EMS Framework=手段と目的を明示し、“動詞からゲームのアイデアを生み出す方法”を提示。“かける”という動詞をテーマに、25分で1人15個の以上のアイデアを出す、という課題を学生たちに出した。




25分後、学生たちがアイデアを出し終えると、1人の学生に発表をしてもらった後、次に各自の書いた「アイデアシート」を、同じテーブルの右隣の学生に渡し、その中から一番面白そうだとインスピレーションがわいたものを1つ選び、その他人(左隣の人)のアイデアをもとに、何が面白いと感じたかを考え、アイデアを考えた本人には質問せずにそのアイデアを膨らませ、どういう順番でゲームを進めるのか? それを文字と4コマのイラストでコンセプトシートに記入して、最後に各グループのコンセプトシートの中でいちばん自信があるものをひとつ選ぶという工程で課題は終了した。


▲アイデア出し終了後、参加者を代表してひとりの学生が考えたアイデアが公開された。


▲真剣に課題に取り組む参加学生たち。




▲3グループ限定で完成したコンセプトシートを代表者が発表した。

学生たちのコンセプトシートを見て、「個人で考えるとどうしても発想の源が、自分の引き出しからだけになってしまうが、今日のように自分が考えた“アイデアの種”を、違う人に渡すことで、自分にはない引き出しでアイデアが広がり、ゲームのイメージが広がることが実感できたと思います」と馬場氏。「個人制作にはない、“チーム制作ならでは”のプラスアルファがある」ことを、今回の演習で伝えたかったことだとした。




 

■参加企業5社による学生向け会社説明会&代表トークショー

 



続いては、参加した学生に向けて企業による会社説明のプレゼンが行われた。今回参加したのは、アカツキ、ヴァンガード、グリー、三洋物産、ツェナワークスの5社で、各社10分で会社の概要を説明したのち、学生たちが興味のある企業のブースに集まり、その企業のより深い内容について、説明を受けていた。

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▲株式会社アカツキ


▲株式会社ヴァンガード


▲グリー株式会社


▲株式会社三洋物産


▲有限会社ツェナワークス
会社説明会が終わると、最後はアカツキの速水康氏(新卒採用チーム)、ヴァンガードの杉山智則氏(代表取締役 社長)、グリーの下村直仁氏(ファンプレックス 代表取締役社長)、三洋物産の木村修氏(商品開発部 部長 兼 東京開発部 部長)、ツェナワークスの笹平大介氏(開発部長)という、参加企業5社の代表によるトークセッションが行われた。



▲(左から)アカツキの速水氏、ヴァンガードの杉山氏、グリーの下村氏、三洋物産の木村氏、ツェナワークスの笹平氏。


まず、イベントに出展した各社代表は、この日接した名古屋の学生たちの印象について語り、「熱気があってよかった。ブース説明会では、積極的に質問がでて、何か気づきや学びを得ようとする姿勢が印象的でした」(速水氏)、「弊社にも名古屋の出身者がいますが、積極的かついい意味で個性的な方が多いと思うので、積極性と個性的な面、どちらもいい方向に伸びてくれるといいです」(杉山氏)、「改めて、名古屋の方は内に秘めた闘志を持っていると感じました」(木村氏)と、名古屋の学生たちから積極性や熱意を感じた様子。

また、「自身の強みを説明可能な形で言語化できている方が多く、即戦力になりそうな方が多いと思います」(下村氏)、「正直、東京も名古屋も変わらないです。実際にお会いして、自分のスキルをアピールしてくれる方もいたので、学生というところでは東京と差はないですし、どこでもやっていけるなと思った」(笹平氏)と、将来学生たちが戦力になり得ると感じたとのことだ。
 
“どんな人が欲しいか”という、学生たちにとって気になるテーマに関するトークも展開された。



笹平氏は、プロと学生には大きな違いがあるため、「スキルを気にしてブレーキをかけないで行動してほしい」とし、「面接でも話すのですが、映画好きな人が撮った映画と、そうではない人が撮った映画なら前者のほうが観たいと思う。ゲームも同様です」と、欲しい人材については“ゲームが好きでしょうがない人”を挙げ、「あとは熱意、やる気があり、個人的には楽しい人がいいですね」とコメントした。

ゲーム好きと通ずるところで、「エンタメが好きな人」と答えたのは速水氏。良い企画を生みだすには自分の中の“引き出し”の数が重要で「単にゲームが好きというだけじゃなく、幅広いエンタメに触れて、それが何故おもしろいのか解釈して、引き出しを自然に増やす習慣があることが重要」という。そのほかにも、苦しいことから逃げない“やりきり力”や、仲間と協力してものづくりを進めるために必要な“コミュニケーション力”、ゲームが成立するための条件を考え、それを正確に実現できる“思考力”を持っていることも重要とのことだ。

下村氏は、「ものづくりの会社なので、ものづくりが大好きな人」であることを前提として、「誠実さもすごく大事」という。ものづくりは楽しいことではあるものの、必ずといっていいほど修羅場を迎える時があるが、「そのときにギスギスしてしまうチームなのか、仲間がバグを直している間に差し入れで牛丼を買ってきてあげられるチームなのかでは、チームの真価に大きな違いがある。修羅場を迎える時の姿勢、仲間に背中を預けてやっていけるかが大事」とした。加えて、自他ともに誠実であること(仲間を大切に思うだけではなく、自分自身の人生やキャリアも同じくらい大切にし、真っ向から取り組むこと)も重要とコメントした。

杉山氏は、「企業理念の実現を一緒に目指してくれる人。主体的、利他的、誠実な人、変われる人」を欲しい人材として挙げた上で、「お客様のことを本当に考えられる人。それから変化・進化が激しいゲーム業界でトップクリエイターでい続けるために必要なのは、いかに早く新しい技術を吸収してチャレンジしていくか」とし、そういう心構えがある人が理想的と話した。
 
「遊技機は基本、はずれ続ける遊びなので、はずれの中にも楽しさを提供し、そして、いかにしてはずれた後に当たったお客様を祝福できるか。それを真剣に考える仕事」と、パチンコ・パチスロ業界の視点で話をした木村氏。欲しい人材については、「新しいルールを作ったり、人が作ったルールに対して“こうしたほうがおもしろくなる!”と言える人」が成功するとした。
 
各企業では、どのように新卒を育成しているのか。その方針についても話された。



「自分で学び、自分で育つ」が大前提にあるという速水氏。この前提のもとで、いくつかの研修が用意されていて、自身の課題に合わせて研修を選択できたり、若手が困難に直面した際に先輩から支援を受けられたりする環境があるという。また、若手の挑戦環境や失敗について話が及ぶと、速水氏曰く「アカツキではピンチはチャンス」という言葉を良く使っているという。ピンチは捉えようで、乗り越えたら大きく成長できるチャンスと捉えることができる。また、失敗してもしっかり振り返ることで、ピンチを乗り越える方法がわかり、次の成功の可能性が高まる。だから、失敗しても積極的に挑戦する姿勢を推奨する文化があるという。ただし、「しっかりやりきった上での失敗だったかどうか」が重要とのことだ。

失敗しても仕事をやり続ける、という点では、杉山氏も同様の考えのようで、「失敗とは何か? やってうまくいかなかったことは失敗ではないし、失敗を繰り返して最後に成功すれば、失敗ではなく成功です。本当の失敗とは、やらないこと」だと語り、自分を育てるためには失敗しても次に活かして続けることが大事だという。また、「研修制度は社内、社外、1年間の育成制度もあります。また研修とは別に全員に理念実現への取り組みをやってもらっています。そこでどういう状態の時、自分が成長するかを考えることが大事で、無理やりやらされていることってあまり伸びない。いかに自分で考え、自分の強みや技術を伸ばすか」という育成方針であることを説明した。
 
「入社後1ヶ月は基礎的な研修を行います」とは下村氏。研修では、個人のスキルアップやどんな特性を持っているのかを見つつ、将来どうなりたいのかイメージを膨らませてもらうことを目的にしているとのこと。その後、各チームとのマッチングを行っている。また、大事なのは「新卒は各チームのマネージャーが責任をもって育てる」ことと言い、最大でも1年で活躍できるようにしているそうだ。

「来年、再来年入社する方にとって、パチンコ業界はチャンスです」と話したのは三洋物産の木村氏。「来年2月の規制で、これまでのコツや秘密の技がほぼ通用しなくなる時期が来ます。先輩たちの時代が終わったというタイミングで、新入社員は固定観念が無い中で仕事でき、若い奴らすごいなと言われるチャンス」があるとのこと。育成については、個人、または数名規模でチーム組み、プレゼン大会に参加できるという。「いままでプロダクトに関わってない人でも“あの企画いいじゃん”となる場合もある」そうだ。「実際、商品として完成の日の目を見るには時間がかかる」としながらも、「それまでにシミュレーションしたり、いろいろ成長する経験はできます」とコメントした。同社は教育の一環としてのインターンも10月28日に開催を予定しており、現在受付中(http://sanyo-internship-20171028.peatix.com/)。これからの世代に向けて、エンタメ開発の楽しさを伝える活動も始まっている。
 
採用方針について笹平氏は「弊社はこれといってない」という。それには意味があるそうで、「通常2ヶ月、適性を見るための仕事をやってもらいますが、基本即戦力として皆さんを見ています。だから入ったら仕事してもらいます。古いけど“習うより慣れろ”です」とのこと。「失敗してミスした上で成長したほうが早い」と考えているとし、「OJTを1人付けて覚えてもらう。形式が決まった研修というものは無いので、1人1人の個性やスキルを見て育成しています」と語った。

このほか、学生からの質疑応答もあり、トークショーは終了した。この日は台風接近の折、生憎の空模様だったにも関わらず、将来のためにイベントに参加するというアクションを起こした学生たち。馬場氏の講義を交えたワークショップや、ゲーム業界の先輩である参加企業の関係者と接することができ、学生たちの表情からは充実感があふれていた。

最後に馬場氏は学生たちに向け、「今日の出逢い、ネットワークを大事にして、そして広げて様々な情報を得て、ぜひチャンスをものにしてください!」とメッセージを送った。

▲全プログラム終了後、馬場氏、参加企業、学生たちで記念撮影!
(取材・文  編集部:稲葉智秋)
株式会社ファリアー
http://farrier.jp/

会社情報

会社名
株式会社ファリアー
設立
2016年7月
代表者
代表取締役社長 馬場 保仁
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