【セミナー】女性向け人気タイトルに関わるクリエイターの交流会「Girls Game MEETS」レポート…人気タイトルの運営ノウハウと繊細なキャラクター設定


ジークレストは2018年9月19日、女性向け作品に携わるクリエイターの交流会「Girls Game MEETS」を開催した。
 
今回は、『夢王国と眠れる100人の王子様(以下『夢100』)』ディレクター大野祐策氏、『A3!』プロデューサー沖田多久磨氏が登壇。企画職向けに世界観設定や運用方法についての講演が行われた。また、後半はジークレスト取締役の佐野哲也氏、『茜さすセカイでキミと詠う(以下『アカセカ』)』コンテンツプロデューサー西山葉月氏が加わり、著名タイトルに携わる4者によるパネルディスカッションが行われた。本稿では、当日行われた講演の内容を中心にレポートをお届けする。


  
■Girls Game MEETSとは
ジークレストが主催する女性向けゲーム業界の発展を目的に、女性向け作品に携わるクリエイターとの交流をメインとしたイベント。これまでイラストレーター編、シナリオライター編、イラストレータ向けに執事を呼んでクロッキーを行う執事クロッキー編が開催された。
 

■3周年&全世界1000万ダウンロードを突破した『夢100』の運用ノウハウ

 
まずは『夢100』ディレクターの大野祐策氏が登壇。「3周年&全世界1000万ダウンロードを突破した『夢100』の運用ノウハウ」をテーマに、講演を行った。
 

▲本講演のアジェンダ。


▲『夢100』の紹介。バトル部分は、同色のピースを繋げて消すパズルで表現。多数登場する王子様と、危機を乗り越えながら絆を深める。
 
『夢100』は、ユーザーの98%が女性である。年齢層は幅広いが、30歳未満が6割、それ以上が4割。もともと、幅広い年齢層をターゲットにしていたので、うまくリーチできているのではないかと大野氏。
 

▲『夢100』の大きなイベント史と、ダウンロード数。
 
『夢100』は1年目において既に海外展開に着手し、ダウンロード数を大きく伸ばしていた。2年目には、同ジャンルの人気タイトルとのコラボを積極的に展開。停滞すること無くダウンロード数を伸ばしている。3年目はアニメ放送など、『夢100』自体の進化を中心に展開。全世界1000万ダウンロードに到達した。
 
●課題と発見①人気投票
ここからは、実際にゲーム内で行った施策を分析し、今後の課題となった要素と施策から得られた気付きが紹介された。
 

▲1周年イベントとして実施された人気投票「プリンスアワード」。総投票数は1億2千万票に達した。
 

▲人気投票イベントの施策意図。

この当時、キャラクター系ゲームにおいて鉄板企画であった人気投票は、本作でも多数の投票が得られた。しかし、一部ユーザーにとっては自分が好きなキャラクターが人気かどうがが可視化されてしまうことが辛く感じるという声があったという。また、同一王子にどれくらい投票したのかで、ユーザーランキングがつく仕様は、自分にとっては王子様は唯一の存在であるはずなのに、自分の他にも好意を寄せている人がいるということを認識させてしまい、王子様と自分という、2人だけの世界を壊すことになってしまったと語られた。 

しかし、よい発見もあった。ちょうど3月上旬の企画であったことから、一番多く投票した王子様からサプライズでホワイトデーのお返しが来るというイベントを開催した。。当時、王子様は約150人が実装されていたが、全員のテキストや背景を用意。感動して泣いてしまったという方もいたほど、喜ばれたとのこと。用意したテキストはそれほど長文ではないが、文脈次第で感動を生むことができるという発見が得られた。
 
●課題と発見②演出強化

  
次に、イベントを王子様と一緒にまわるという企画を実施した際の課題が紹介された。本イベントは「誰か一人を選ぶ」「全王子様をまわるとスチルが見られる」という仕組みが好評を得た。攻略対象一人を選んでプレイする、コンシューマゲームの仕組みからヒントを得たという。
 
また、2周年当日にログインをするとムービーが流れ、ナビキャラからプレゼントが贈られるというイベントも振り返った。ログインボーナスでは、毎日3人の王子様が登場し、これまでを振り返る内容のセリフを喋る。これはシンプルな変更だが、ユーザーからの評判はとてもよかったとのこと。大野氏は、キャラクターを魅力的に見せる演出があれば、ユーザー体験は大きく変わるとまとめた。
 
●課題と発見③全員施策
全員施策は、人気投票「プリンスアワード」での体験をもとに、全てのキャラクターにシナリオを用意した。ユーザーは何度でも、誰か一人を選んでシナリオを読むことができる。多くのユーザーに喜んでいただいた企画だが、その中でも課題が見つかったと大野氏は振り返る。
 

  
2017年のクリスマスは、事前に誰か一人を選んでプレゼントを渡すことでクリスマス当日にシナリオが再生される仕組みとなっていた。これはユーザーの期待が高まりすぎたことと、一人だけを選ぶ形式が苦手いう声が挙がったのが課題として残った。
 
2018年のブライダルイベントは、シナリオだけではなく、豪華な演出を用意した。イベントで鍵を獲得し、1回につき3人まで見られる形でプレミアム感を担保。イベントを頑張ることで何度も会いに行けると、好評価を得ることができた。
 
運営していく中で発見した課題をもとに、新しいチャレンジをし成功する精度を上げていくことに、今後も取り組んでいきたいと大野氏が総括した。
 
●女性向けゲームとの向き合い方
引き続き、課題に対する取り組み方、ひいては作品との向き合い方について大野氏より解説された。
 

 
大野氏が積極的に取り組んでいるのが「社内レビュー」であるという。社内の『夢100』プレイヤーを集めてランチミーティングで意見を交換。その議事録をもとに改善リストを作成し、その中から実装して欲しいものに投票。議論しつつ決議するというものである。この仕組みをきっかけに、実際アプリの高速化などが実装されている。ここで得られる意見は、ユーザーの反応に近いのでとても助かると大野氏は話す。
 

  
また、イベントごとに評価アンケートを行うという。他のイベントよりも評価が著しく低ければ、すぐに改善を話し合う。
 
●これからの夢100
女性向けアプリゲーム市場は群雄割拠。ユーザーへの価値提供やIPとしてのブランディング方針も含めて、『夢100』の価値を再定義する必要を感じていると大野氏。チーム内での意識を統一することが、最終的なIPの価値に繋がると考えている、と続けた。
 

▲ユーザーの熱量をいかに保っていくかが大事である。
 
最後に大野氏は、「『夢100』の夢は、お客様とともに10年以上続くIPを作ること」と力強く宣言し、講演を締めくくった。
 

■女性向けゲームにおけるキャラクターの魅力を向上させるためのTIPS

 
続いて、『A3!』プロデューサーの沖田多久磨氏が登壇。キャラクターの魅力を向上させるためのテクニックを、いくつかのTIPSで紹介した。
 

▲イケメン役者育成ゲーム『A3!』の紹介。何かしらの弱点を抱えている決して完璧ではない劇団員を、ユーザーが開花させていく。
 
 
▲大前提として登場する劇団員達を魅力溢れるキャラクターにして、育成したいと思わせなければならない。
 
沖田氏は個人的な経験として、以前まではキャラクターを作り込むとき、キャラブレをなにより恐れていたという。ストーリーの中から垣間見える中で、そのキャラクターらしい一貫性があって、筋が通っているキャラクターがよいと考えていたのだとか。
 

▲しかし、キャラ属性への固執は一元的なキャラクターを生んでしまう。
 
沖田氏自身、殻を破りたいと考えたとのこと。そこで『A3!』では、キャラクターの思想や行動のブレを、キャラの振れ幅であると肯定的にとらえた。
 


●TIPS①克服させる弱点とさせない弱点を作る
では、多角的な面のあるキャラクターとは、どういったものだろうか。沖田氏は、キャラクター設定を考えるときに魅力を出すため弱点を考えるのは基本であると述べた。一例として野菜が嫌い、方向音痴、舞台に立つことに恐怖を覚える……など。少々ギャグ寄りのもの、深刻なもの、そして克服させるか、させないかで考える。



ギャグ寄りの弱点は克服させないことにより、ギャップ萌えの要素として愛され続ける弱点になるという。深刻な弱点は、すなわち克服させるべき弱点。メインストーリーなどで描く人間的成長である。克服させることで、キャラクターが成長する瞬間を垣間見ることができる。それに加え、アプリならではのイベント運営によるエピソード更新で、ひとつの弱点の克服をロングスパンで描くと、「今まで応援していてよかった」「これからも見守りたい」と思ってもらえるのでは、と述べた。
 


●TIPS②関係性の中で新たな一面を見せる
ヒロインとメインキャラクターとの間柄、すなわち男女の間で自然に見せられる関係性は、多少絞られたものになる。そこで重要になるのが、他のキャラクターとの関係性。『A3!』の場合、男性キャラクター同士の関係から、新たな一面を垣間見せることを強く意識してきたとのこと。
 
沖田氏は、キャラクターの人生を見せるという意識を持つのも、キャラクターに厚みを出す一つの方法だと思う、とまとめた。ただしゲームのノリやジャンルによってユーザーがキャラクターに対して得たいカタルシスは全く異なるため、ユーザーがキャラクターとどんな形で向き合いたいかを突き詰めて考えるべきだという。
 

 

■女性向けゲームを語るパネルディスカッション 


講演の後は、沖田氏、ジークレスト取締役で『夢100』の立ち上げから関わり、現在は別の新規プロジェクトを担当している佐野氏、『アカセカ』コンテンツプロデューサーの西山氏の3者によるパネルディスカッションが行われた。

トークテーマは「ユーザーに長く愛される女性向けゲーム作り」について。

ゲームの立ち上げ時についての質問に、沖田氏は『A3!』は「もともと自分が舞台が好きだった。一度しか見られないという所とドラマ性が濃い部分に魅力を感じる。」と、実際に舞台コンテンツが参考になっていると明かした。また、『A3!』も『夢100』も企画構想から立ち上げまでの期間がおよそ9ヶ月であったことが明かされると、会場内から「早い!」と驚きの声が上がった。
 
『夢100』も『アカセカ』も社内コンテストから生まれた企画であった。最初は、たった2人で立ち上がったプロジェクトでだったとのこと。
 
世界観やキャラクターづくりについての質問に対して、『アカセカ』のコンセプトは「女性を元気に」であると述べ、個性的なキャラクター達と一緒に過ごすことで、女性の皆様に元気になっていただければ……という思いのもと運営しているタイトルであると西山氏。『アカセカ』は一対一の恋愛を楽しむことが目的なので、60人以上いるキャラクターのひとりひとりを深く掘り下げることを重視しているそうだ。パズル部分に関しては、『夢100』において女性にパズルが受け入れられるという前例があったので、取り入れることになったという。
 
女性向けゲームの中における“ゲーム性”について佐野氏は、誰でも気軽に遊べるパズルという要素を組み合わせ、パズル上部にミニキャラを配置したり、キャラクターがカットインしたり喋ったりという演出を入れることで様々な表情を見せることで、キャラクターを長く愛して貰えるのではないかと考えたという。最もこだわったのは、パズルのルールと操作性。あまり複雑であったり、操作が長かったりすると、すぐに飽きてしまうと考えられた。そこで、すぐに反応が返ってくるものをベースに開発を進めたという。
 
その他、作品ごとの世界観を活かしたプロモーション展開の振り返りや、今後の女性向けコンテンツはアジアを意識すべきといった業界全体の話などで盛り上がり、クリエイター達の熱気の中、パネルディスカッションは幕を閉じた。



イベントの最後には、懇親会が行なわれ、登壇者や来場者同士での交流が行なわれた。ジークレストが主催しているGirls Game MEETSは今後も定期的に開催されていくという。ジークレストの公式フェイスブックや、Twitterにて情報をチェックしていきたい。

 
(取材・文 ライター:岩崎ヒロコ)



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