【レビュー】斧を振り回す「魔術師」や拳を打ち込む「僧侶」が爆誕!?…カナイセイジ氏が手掛けたボードゲーム『The Last Brave』を遊んでみた


ディライトワークスは2018年11月24・25日に開催された、国内最大のアナログゲームイベント「ゲームマーケット 2018秋」にて、オリジナルボードゲーム『The Last Brave』と『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』(以下『CHAINsomnia』)を発売した。
 
『The Last Brave』は日本を代表するゲームデザイナー・カナイセイジ氏がゲームデザインを務め、『CHAINsomnia』はディライトワークスによる企画・開発が行われ、カナイ氏とボードゲームカフェ・JELLY JELLY CAFE代表の白坂翔氏が監修・協力のもと開発。両作品とも大きな話題を呼び、会期中に完売した。
 
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2019年3月10日にインテックス大阪で開催するアナログゲームのイベント「ゲームマーケット 2019 大阪」では、『The Last Brave』の追加カードが無料配布される。カードによって2401通りにもなる組み合わせと、序盤と終盤にかけて大きく戦況が変化する奥深さが特徴の本作に、どのような変化が起こるのか期待が高まっている。
 
本稿では、カナイ氏が手掛けたカードゲーム『The Last Brave』について、レビューをお届けしていく。
 

 

■プレイごとに操作キャラクターが変化する『The Last Brave

 
2019年現在、月に1度の頻度でゲーム業界関係者の情報交換や交流を目的としたボードゲーム交流会を開催しているディライトワークス。
 
2018年11月12日に開催された「ディライトワークス オリジナルボードゲーム発表会」では、会場にクリエイティブオフィサーの塩川洋介氏が登壇し、ボードゲーム制作に着手した経緯を説明。ボードゲームの持つルールやコンポーネントを自由に組み立てることができる“多様性”が、ディライトワークスの理念である「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」を実現するために、多くの学びがあるとコメントした。
 
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さらに、ボードゲーム人口が増化している背景もある。全国のボードゲームのプレイスペースは300軒を超え、「ゲームマーケット2018秋」では11月24日は12,000人、25日は10,000人と、過去最大の来場者数を記録した。バラエティ番組などさまざまな媒体で取り上げられる機会が増え、ボードゲームは年齢や性別を問わず幅広い層から注目され始めている分野となっているのだ。
 
前置きはさておき、早速、ディライトワークス初のオリジナルボードゲーム『The Last Brave』について紹介していく。本作はプレイヤーが職種・属性・武器の3つで構成された勇士(キャラクター)を操作して他のプレイヤーと戦う、3~7人用のカードゲーム。日本人として初めてドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた経験を持つゲームデザイナーである、カナイセイジ氏がゲームデザインを担当している。
 
カードサイズの小箱の中には「プレイヤーカード」「武器カード」「属性カード」「職種カード」4種類のカードが7枚ずつと、遊び方の説明書が封入。
 

 
それぞれのカードをシャッフルして1枚ずつ配り、プレイヤーカードを裏向きに出したらゲームの準備は完了だ。プレイヤーは国家最強の勇士のひとりとなり、他のプレイヤーを全て打ち倒すことが目的となる。そのために、先ほど紹介した4種類のカードで策略を練ることになる。
 

 
ゲームが始まったばかりの段階では、キャラクターの攻撃力は1。プレイヤーは相手から受けるダメージの数値分、手札のカードを場に公開していく。カードに記載されている効果は、場に公開されて初めて発動できる。つまり、攻撃を受けるほどライフが削られていく反面、より多くのカード効果が発動できるようになっていくのだ。
 


 
カードの効果はコストなしで発動できる「常時能力」、基本的に1度限りしか使えない「使用」、発動するとカードの能力すべてが失われる「喪失」の3つ。さらにプレイヤーカードには「奥の手」といった切り札的な能力を持っており、好きなタイミングに1度だけ効果を発動することができる。
 
カードを公開していくフィールドは、プレイヤーカードの左側の「スキルゾーン」と右側の「ダメージゾーン」の2つに分かれる。カードは基本スキルゾーンに公開していくのだが、スキルゾーンにあるカードをダメージゾーンに移動させることでもダメージを適用したことになる。
 
自分の全てのカードがダメージゾーンにある状態で、さらにダメージが適用されると脱落し、ゲームに敗北してしまう。自分以外の全てのプレイヤーを脱落させることで、初めて勝利を掴み取ることができるのだ。
 

▲スキルゾーンとダメージゾーンがそれぞれ3点ずつ、トドメの1点を合わせて計7点のダメージで脱落となる。
 
攻撃対象は手札の枚数が最も多いプレイヤーに限定されているため、ダメージは全体的に分散されるようなシステムになっている。そのため、全員からの集中攻撃を浴びるといった一方的なゲーム展開にはならない。ゲームの後半になるにつれ公開される情報量が多くなるため、どのプレイヤーをどの効果を使って攻撃するべきか、戦況は随時複雑なものに変化していく。
 

 
キャラクターの組み合わせは全部で2,401通り(7×7×7×7通り)と、ランダム性が非常に高い。実際に筆者がプレイしたときには、斧を振り回して全員にダメージをばら撒いてくる魔術師や、ひたすらに拳を打ち込んでくる僧侶など、設定が濃いキャラクターたちが数多く生まれた。職種や属性、武器の組み合わせから思いもよらないキャラクターたちの暴れっぷりが見られるのも面白く、プレイヤー同士の会話も非常に盛り上がった。
 
そのため、毎回どのようなキャラクターが誕生するかが楽しみになる。プレイ時間も10分と短いため、何度も遊びたくなるリプレイ性の高いゲームに仕上がっている。
 


▲完成したキャラクターにどのようなストーリーがあるのか、想像するのも楽しい。物理で殴ってくる魔法職のキャラなんて、きっと辛い過去があったに違いない……。
 

■追加ルールで「人狼ゲーム」のような楽しみ方も

 
基本ルールの他に、本作には赤・青に分かれて戦うチーム戦「陣営戦」が用意されている。各プレイヤーが所属するチームは、プレイヤーカードを表向きにするまで分からない。序盤は誰が敵か味方も把握できないまま攻撃を行うことになり、「人狼ゲーム」のような正体隠匿系要素を一気に高めることになる。
 

 
ガンガン攻撃していた相手が実は味方だったり、気を遣って小さなダメージしか与えていなかった相手が敵だったという展開はよくあることで、自分のチームについてうっかり口を滑らせるなど思わず笑ってしまうようなハプニングも起こりがちだ。
 
お互いが所属するチームが判明すれば、正体隠匿ゲームから協力ゲームに早変わり。相手チームの能力を「封印」したり、場に出たカードを手札に戻す「回復」をチームに向けて使ったりと、一層カード効果が入り乱れる戦闘を楽しむことができる。
 
参加プレイヤーが5人、もしくは7人になると、第三陣営である「灰」チームが登場する。灰のチームになったプレイヤーはどちらの陣営にも属していないため、一人勝ちを狙わなければならない。その分、奥の手は通常のプレイヤーカードより強力なものとなっている。
 

 
チーム戦の他にも、得点を競い合う内容や職種を固定するといった追加ルールも存在する。ランダムにカードを配るのではなくドラフト制にするなど、様々なハウスルールを追加しても楽しめそうだ。
 
また、「ゲームマーケット 2018 秋」では『The Last Brave』の「プレイヤーカードカスタムシール」が無料配布されており、製品版では登場しない“奥の手”を使ったゲームが楽しめるようになった。シールを直接カードに貼ることに抵抗がある人は、スリーブの上からシールを貼るのもいいだろう。
 




▲スリーブにカードを入れても、問題なく小箱に収納できる。
 
現在、『The Last Brave』はディライトワークスが運営するオンラインストア「DELiGHTWORKS STORE」や、公式サイトに案内のある全国の取扱店で購入することが可能。3月10日にインテックス大阪で開催するアナログゲームのイベント「ゲームマーケット 2019 大阪」では、新たな追加カード「プレイヤーカード 企む者」が会場限定で配布される。シンプルなルールなだけに拡張性が高いため、今回の追加カードは見逃せないアイテムとなりそうだ。

 
(文 ライター:台誠一郎)
 
 
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■『The Last Brave
 

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ディライトワークス株式会社
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会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
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