【イベントレポート】時を経て更に進化する『Rez Infinite』、ドームシアターを使った投影実験をお届け 水口哲也氏 x Ken Ishii氏 のセッションも


11月3日〜5日において、「日本科学未来館」で開催した「MUTEK.JP 2017」。

本稿では、Enhanceが11月5日に開催したイベント「Rez Infinite ドーム投影実験 第2弾 ー 100人でドームVRをさらなる解像度で体感!!」と「Rez Infinite Session (Tetsuya Mizuguchi x Ken Ishii)」の様子をお届けする。
 

■4K x 4K化、サウンドチューニングなど、開催ごとに進化するドーム投影実験



『Rez Infinite』は、ウィルスに侵されている電脳空間で自身がハッカーとなり世界浄化をするという内容だ。共感覚シューティングとも呼ぶ同タイトルだが、プレイヤーの操作によっての単音がいつしか音楽となっていく、そんな体験をVRや4Kを使ってできる。

本イベントでは、抽選で選ばれた体験者の『Rez Infinite』プレイをドームシアターで100人同時に体験するという試みだ。

体験にあたって『Rez Infinite』のプロデューサーでEnhance代表でもある水口哲也氏(写真)は、「前回の実験では2K映像を使用したが、解像度や明るさが足りず音ももう少し欲しかった」と前回のイベントからの改善点を挙げていた。

水口氏によると、今回のイベントでは映像を4Kにアップデートし、解像度と明るさもかなり向上したという。また音のチューニングも行っており、最前列の席の人達に対しても「音、凄いかも」と嬉しそうに語っていた。

ドーム実験は当日3回程行っているが、その都度チューニングも行っていたようだ。実際にプレイした幸運な体験者は「人がいることなど忘れてしまう最高の体験でした。」と感想を述べた。
 

 
筆者は前回も体験しているが、今回は解像度のアップの効果もあってか、全てがより"明瞭"になったという印象だ。

そして何と言っても音である。力強くも上質な低音が身体に届きまさに映像と音を体感している状態だった。音響機器が音割れも感じず、非常に上がるテンションと共に不思議な心地良さも感じた。この先の領域がまだあるのか、非常に興味深いところだ。
 

■水口哲也 x ケン・イシイの『Rez Infinite』スペシャルセッション



▲左からケン・イシイ氏、水口哲也氏、弘石雅和氏だ。

「Rez Infinite Session (Tetsuya Mizuguchi x Ken Ishii)」はトークセッションから始まった。登壇したのは『Rez』、『Rez Infinite』のArea 3の音楽を手掛けたテクノゴッド「DJ ケン・イシイ氏」、Enhance代表の「水口哲也氏」、そしてかつてソニーミュージックでソニーテクノを設立し、現在は音楽レーベルUMAA代表である「弘石雅和氏」だ。

弘石氏はソニーテクノ時代において、ケン・イシイ氏の担当しており、​UMAAとしては 『Rez Infinite Original Soundtrack』も手がけている。

初代『Rez』の製作時に、弘石氏はこの作品のために世界を旅して、アーティストに楽曲の提供依頼を行っていたという。
 

話は1995年まで遡る。1995年にケン・イシイ氏がリリースしたアルバム『Jelly Tones』の1曲目のトラックが「EXTRA」で、PVには森本晃司氏が担当しており、既にその中ではVRヘッドセットも登場している。

水口氏は1997年、気持ちのいいゲームを音楽で作りたくて構想を初めたくらいのだったと振り返った。

水口氏はスイス・チューリッヒに居た時に、ストリートパレード*が開催中だったようで、既に欧州では有名人となっていたケン・イシイ氏についてあちこちで声かけられたのだという。

*スイスチューリッヒで開催するテクノ、トランス、ゴアなどの音楽に合わせて踊る世界でも有数のミュージックパレード

その当時はまだケン・イシイ氏のことを知らず、その後MTVでヘビーローテンションしていた「EXTRA」を聞いて、「いつかこの人と仕事したい」と思ったそうだ。(水口氏)
 

ケン・イシイ氏は、森本晃司氏の仕事場でテクノやインダストリアルのCDがズラッと並んでいたのを見て「この人だったら全部任せてOKだと思った」と、当時を振り返った。

水口氏はEXTRAのPVを「今見てもタイムレス。音楽も映像も時代を感じさせない」と感想を述べていた。
 

音楽セッションでは、水口氏が"演奏者"として『Rez Infinite』のAREA 3をプレイし、ケン・イシイ氏がバラバラした曲をトラックごとにキックやベースなど6chに分けライブリミックスという新しい試みを披露した。

今回のプレイのために常設しているドームシアターのサラウンドシステムに加え、強力なサブウーファーがプラスされており迫力は抜群、そこに大型のドームに映し出される『Rez』。ビジュアルに関しても様々なエフェクトを用いているようだ。
 

今回のイベントにあたって、都度水口氏は協力した人への感謝を述べていた。

例えば、ドームシアターや立体シアターなどの特機映像施設のシステム構築を行っているオリハルコンテクノロジーのTakahei氏は、ドームの表示をいかに綺麗に解像度高く出せるかなどで、早朝まで調整をしてくれたという。

そして『Rez Infinite』の開発会社であるMonstars Inc.は通常の2D画面にある16:9やVRとは異なるドーム用の仕様への調整。

音楽を担当しているレゾネア、サントラのレーベルであるUMAAやMUTEKの事務局、日本科学未来館のスタッフ、音響、会場でPlayStationVRを使った『Rez Infinite』の体験のためにソニーインタラクティブエンターテインメントなど多くの人が協力している。

そんな多くの協力のもとで開催となったのが今回のイベントとなる。
 

本体験はライブパフォーマンスのため、非常に写真や動画、さらに現在のVRを用いてもあの音圧、会場の雰囲気や空気感に至るまでなかなか共有しにくい内容だ。

今後のどのような形でさらなる進化するのかにも期待しつつ、まだ未体験の人は次回の開催を祈りその時を待っていよう。
 

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