松竹、24年2月期決算は営業益35億8400万円と黒字転換…映画「あの花」や「ガンダムSEED FREEDOM」興収40億円、「滝沢歌舞伎」も大ヒット

松竹<9601>は、4月15日、2024年2月期(2023年3月~2024年2月)の連結決算を発表し、売上高854億2800万円(前の期比9.2%増)、営業利益35億8400万円(前の期は7億7600万円の損失計上)、経常利益28億6600万円(同110.8%増)、最終利益30億1600万円(同45.0%減)だった。

・売上高:854億2800万円(同9.2%増)
・営業利益:35億8400万円(同7億7600万円の損失計上)
・経常利益:28億6600万円(同110.8%増)
・最終利益:30億1600万円(同45.0%減)

営業利益と経常利益の大きく改善したが、これは主力の映像関連事業が黒字転換したことによる。「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」と「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が興行収入40億円の大ヒットとなった。「THE FIRST SLAM DUNK」「名探偵コナン 黒鉄の魚影」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」も興行事業に貢献した。最終利益は大きく減ったが、これは前の期に計上した固定資産売却益に相当するものがなかったため。

 

■映像関連事業

売上高は458億1000万円(同11.0%増)、セグメント利益は25億6100万円(前の期はセグメント損失13億7100万円)となった。

配給は、邦画9作品、洋画4作品、アニメ9作品、シネマ歌舞伎、METライブビューイング、松竹ブロードウェイシネマなどの作品を公開した。同社配給作品の「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」と「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(バンダイナムコフィルムワークスとの共同配給)が興行収入約40億円の大ヒットしたほか、「なのに、千輝くんが甘すぎる。」「こんにちは、母さん」が興行収入10億円を超えた。また、4月公開の「滝沢歌舞伎ZERO FINAL 映画館生中継!!」も大ヒットとなり、全国の映画館で売り切れとなる上映回が続出するなど収益に貢献した。

興行は、松竹マルチプレックスシアターズで、各劇場で対抗館対策、注力作品での取り組みなどで成果を上げており、ヒット作の回数確保や、ファミリー層、シニア層等の幅広い動員獲得を目指してきた。松竹作品に加え、興行収入100億円を超えた「THE FIRST SLAM DUNK」「名探偵コナン 黒鉄の魚影」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」をはじめ、アニメ作品が大ヒットとなり、年間興行収入の回復に貢献した。MOVIX八尾は8月に台風7号の被害を受けた影響により現在休館しているが、2024年秋に営業再開を予定している。

テレビ制作は、地上波で「必殺仕事人」「再雇用警察官5」「警視庁追跡捜査係」、連続ドラマ「やわ男とカタ子」、BS放送で、「悪女について」「無用案隠居修行7」「広重ぶるう」、連続ドラマ「OZU~小津が描いた物語~」「雲霧仁左衛門6」「めんつゆひとり飯」、CS放送で「鬼平犯科帳 本所桜屋敷」等を制作した。番組販売は、新規放送枠としてBS松竹東急に木下恵介アワー「3人家族」(全26話)他8作品を販売し、好調に推移した。

映像版権は、DVD・ブルーレイディスク販売で「ある男」「シャイロックの子供たち」「なのに、千輝くんが甘すぎる。」「交換ウソ日記」「こんにちは、母さん」「REVENGER」「好きな子がめがねを忘れた」などの新作やアニメーションを販売し、好調に推移した。

配信は、定額制動画配信に関して、Leminoで「耳をすませば」、Netflixで「なのに、千輝くんが甘すぎる。」の独占配信をスタートさせ、売上に大きく貢献した。都度課金型動画配信は、U-NEXTで「ある男」「かがみの孤城」「シャイロックの子供たち」「ミンナノウタ」を先行配信する事で売上に貢献した。

権利販売に関しては、小津安二郎監督生誕120周年の当期は、様々なチャンネルで小津監督作品が放送した。12月には「東京物語」等が3週にわたりNHK BSで放送され、好評を博した。国際映画際では、北京、カンヌ、香港、ヴェネチア、東京などで小津作品が上映され、多くの観衆を魅了した。

CS放送は、松竹ブロードキャスティングにおいて、ホームドラマチャンネルの開局25周年を記念した企画で、新規契約者獲得に努めた。また、複数のケーブルテレビ局の新規採用が決定するなど、有料放送市場におけるシェア拡大に努めた。

 

■演劇事業

売上高は243億5600万円(同7.4%増)、セグメント損失は7億0400万円(前の期はセグメント損失10億5900万円)となった。

歌舞伎座においては、歌舞伎座新開場十周年の本年度であり、新開場記念月の「鳳凰祭四月大歌舞伎」をはじめ、5月「團菊祭」、8月「納涼歌舞伎」、9月「秀山祭」、11月「吉例顔見世」、2月「猿若祭」など、月ごとに彩を変え、話題となる公演を揃えた。当期は、歌舞伎座初となる超歌舞伎の上演など、古典から新作まで幅広い演目を提供し、ユーザー層の拡大につなげ、2月の「十八世中村勘三郎十三回忌追善公演」を大盛況で千穐楽を迎えることができた。また、6月から一幕見席の再開に加え、前売券を導入し利便性の改善を図った。増加傾向のインバウンド対応として、9月から英語音声ガイドを開始し、サービスの向上に努めている。

新橋演舞場においては、3月の「ルーザーヴィル」、4月の「滝沢歌舞伎ZERO FINAL」、5月の「少年忍者『俺たちのBANG!!!~大劇場を占拠せよ~』」、7月の新作歌舞伎「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」、9月の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」、10月の「少年たち」、11月の「シェルブールの雨傘」、12月の新作歌舞伎「流白浪燦星」等が好成績を収めた。1月の「平家女護嶋 恩愛麻絲央源平」、2月のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」、一部公演中止のあった6月の「熱海五郎一座」、8月の「ビートルジュース」等も大変好評を博した。

大阪松竹座においては、大阪松竹座開場100周年と銘打ち、3月の「東西ジャニーズJr. Spring Paradise」、4月の「ルーザーヴィル」「垣根の魔女」、7月の「七月大歌舞伎」、8月の「One ANOTHER」、9月の「ビートルジュース」、10月の坂東玉三郎演出作品「星降る夜に出掛けよう」、11月の「キャメロット」、12月の「シェルブールの雨傘」等の公演を実施、1月の「坂東玉三郎 初春お年玉公演」を含め、開場100周年に相応しい演目が揃い、新たな顧客層の獲得及び収益増に繋げることができた。

南座においては、3月の「三月花形歌舞伎」や毎日放送との共催となる4月「若き日の親鸞」、6月の坂東玉三郎演出作品「星降る夜に出掛けよう」、8月の「坂東玉三郎特別公演」、9月の「新・水滸伝」、10月の藤山直美出演「錦秋喜劇特別公演」、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」の効果が顕著にあらわれた11月のOSK「レビュー in Kyoto」等はいずれも好評を博した。12月の「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」、八代目市川新之助初舞台「吉例顔見世興行」は大いに盛り上がり収益増に繋がった。

その他の公演に関して、演劇公演では、6月の三越劇場新派公演「三婆」、10月の日生劇場のブロードウェイミュージカル「キャメロット」が、大きな収益を残した。歌舞伎公演では、1月の新春浅草歌舞伎における花形俳優陣の演技が好評を得た。巡業公演では、公文協歌舞伎巡業東西コースを4年ぶりに再開した。

受託製作の歌舞伎公演として、2月に園座の「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」、4月と5月に明治座の「創業百五十周年記念」歌舞伎公演、6月に博多座の「六月博多座大歌舞伎」の公演が行われた。また平成中村座は姫路城や小倉城での公演、4年ぶりの「永楽館歌舞伎」等、それぞれに彩りがあり好評を博した。

シネマ歌舞伎は、坂東玉三郎主演・泉鏡花原作の名舞台4作品一挙上映や、宮藤官九郎作・演出の新作歌舞伎「唐茄子屋 不思議国之若旦那」を公開した。「月イチ歌舞伎」シリーズも継続し、「わが心の歌舞伎座」や「歌舞伎NEXT 阿弖流ため【アテルイ】」など幅広いラインナップを上映した。

METライブビューイングに関して、2022-23シーズンではMET初演や新演出を含む7演目の上映や、恒例のアンコール上映のほか、2023-24新シーズンではMET初演の三作品を上映、意欲的な作品で新しい客層に訴求した。配信に関しては、歌舞伎の同時生配信を4月の歌舞伎座「新・陰陽師」、7月の新橋演舞場「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」、12月の新橋演舞場「新作歌舞伎 流白浪燦星」、1月の「新春浅草歌舞伎」の4公演で実施した。

特に「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」は初日公演、千穐楽昼夜公演と全3公演同時生配信し、いずれも好成績を収めた。また「新春浅草歌舞伎」では、初めてイヤホンガイド解説付きの同時生配信も実施し、好評を博した。「歌舞伎オンデマンド」では、毎月の歌舞伎座の公演を千穐楽の数日後に配信するサービスや、2023年ローンチした海外配信も継続した。英国アシュモリアン美術館で開催中の「坂東玉三郎歌舞伎衣裳展」と連動する等、認知度向上に努めた。コロナ禍で誕生した歌舞伎俳優によるオンライントークショー「歌舞伎家話」「紀尾井町家話」も継続し、人気コンテンツとなり、安定した収益を残している。

 

■不動産事業

売上高は128億3900万円(同6.8%増)、セグメント利益は55億0600万円(同7.8%増)となった。

不動産賃貸では、入居テナントとの綿密なコミュニケーションと良好な関係構築に努めることで、歌舞伎座タワーや銀座松竹スクエアなど主要物件の高稼働により安定収益を確保した。また、収益向上を目指した資産入れ替えの施策として東銀座エリアに土地建物を取得し、賃貸稼働を開始した。これらにより、通期では計画を上回る収益貢献となった。

中長期戦略である東銀座エリアマネジメント活動においては、とまちづくり推進協議会に賛同・入会する企業も増え、街の賑わい創出イベントを開催するなど、地域貢献とエリアの価値向上のための取り組みを一層強化した。

 

■その他の事業

売上高は24億2200万円(同8.5%増)、セグメント損失は5億5600万円(前の期はセグメント損失5億2900万円)となった。

需要の回復が見られる反面、消費行動が多様化する中、各事業におけるオンラインによる販売・配信の強化をはかりつつ、人気シリーズ作品やコア層向けの商品開発・販売を主軸に展開し堅調な推移となった。

プログラム・キャラクター商品に関しては、実写作品では「なのに、千輝くんが甘すぎる。」「東京リベンジャーズ」シリーズ等、アニメ作品では「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」等の作品を中心に収益に貢献した。

イベント・オンライン配信は、4月に幕張メッセで超歌舞伎2023「伽草紙戀姿絵」を開催し、同時生配信視聴数は過去最高となった。12月には「十二月大歌舞伎」第一部 超歌舞伎 Powered by NTT「今昔饗宴千本桜」を歌舞伎座で初上演し盛況となった。ホラーコンテンツ「松竹お化け屋本舗」シリーズは、5月に宿泊型ホラー「インフェルノロッジ」を岐阜県のキャンプ場で開催し人気を博した。10月には弘法大師空海誕生1250年特別企画として松本幸四郎出演による新作朗読劇「空海、大唐冒険記」を和歌山県高野山で上演した。アニメ作品「ARIA」シリーズによる初のオーケストラコンサート「ARIA The SINFONIA」は、本公演に加えて3面スクリーンでのライブビューイング及び配信も実施し好評を博した。

 

■2025年2月期の業績見通し

2025年2月期の業績は、売上高929億円(前期比8.7%増)、営業利益23億円(同35.8%減)、経常利益20億円(同30.2%減)、最終利益14億円(同53.6%減)を見込む。

・売上高:929億円(同8.7%増)
・営業利益:23億円(同35.8%減)
・経常利益:20億円(同30.2%減)
・最終利益:14億円(同53.6%減)

松竹株式会社
https://www.shochiku.co.jp/

会社情報

会社名
松竹株式会社
設立
1920年11月
代表者
代表取締役会長 会長執行役員 迫本 淳一/代表取締役社長 社長執行役員 髙𣘺 敏弘/代表取締役 副社長執行役員 武中 雅人
決算期
2月
上場区分
東証プライム
証券コード
9601
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