【WFS特集 Vol.6】「挑戦する、何度でも。」…Wright Flyer Studios代表に訊く ものづくり改革と果てしなく続く挑戦の物語


「Wright Flyer Studios」は、2014年にグリー<3632>が設立したスマートフォン向けアプリ開発スタジオ。
 
第1弾としてリリースされた『消滅都市』は現在、全世界累計900万ダウンロードを記録。2017年には、アニメ制作スタジオA-1 Picturesとタッグを組んで制作する『ららマジ』、同スタジオ初の本格3DアクションRPG『武器よさらば』、やりこみ要素満載のシングルプレイ専用RPG『アナザーエデン 時空を超える猫』(以下、『アナザーエデン』)、さらに『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~』(以下、『ダンメモ』)をはじめとする大型IPタイトルをリリースするなど、ハイクオリティな作品を次々と提供している。
 
そこで本稿では、Wright Flyer Studiosの魅力を探るべく、全6回に渡って同スタジオのキーパーソンをゲストに迎えた連載企画を実施。最終回となる今回の話し手は、Wright Flyer Studios代表取締役の荒木英士氏。Wright Flyer Studios設立に至った経緯から、3年半での変遷、そこから生まれたスタジオ内に通ずるゲーム制作に対する姿勢についての話を伺ってきた。
 
【話し手紹介】
Wright Flyer Studios代表取締役
荒木英士

 
グリー 取締役 上級執行役員 兼 Wright Flyer Studios代表取締役。PC向けGREE、モバイル事業、ソーシャルゲーム事業、スマートフォン向けGREEの立ち上げを主導した後、2011年、米国法人の設立に参画。2013年9月に日本に帰国してグリー取締役に就任した後、2014年にWright Flyer Studiosの立ち上げを担った。



 

 

■Wright Flyer Studios誕生から今までの歴史を辿る

 
──:こちらの連載もいよいよ最終回ということで、大トリをWright Flyer Studios代表取締役の荒木さんに飾っていただき、いろいろとお話を伺っていきたいと思います。
 
そもそも当時からモバイル向けにゲーム開発を行っていたグリーの中でWright Flyer Studiosを立ち上げた意図はどういったところにあったのでしょうか?

 
荒木英士氏(以下、荒木):まず当時の市場の状況ですが、Webゲーム事業のスマートフォンシフトが鮮明になってきて、いろいろと変えていかなければいけない時期でした。しかし、弊社はWebゲーム事業の規模が大きいということもあり、その時点で既に出遅れており、本来はゲームとしての面白さを追求しなければいけないところ、GREE Platformという看板を背負ってゲームを展開してきたことが足かせになっている部分がありました。
 
具体的には、ゲーム開発を行う際にGREE PlatformのIDとパスワードを使用する、課金にはGREEコインを利用することが必須になっており、ゲームの本質ではないところにかける時間が多かったのです。世のユーザーはゲーム性や表現に満ちたものを求めているのに、クリエイティブ以外の部分でいろいろなものに縛られており、既存の仕組みを使わなければいけないと。開発者たちが視点をガラッと変えてプラットフォーム的な制約から解き放たれ、いかにゲームを面白くするか、どのように魅力的なゲームを作るかのみを考えられるような環境の変化が必要だと思いました。そこで、まずは名前から変えてみようというのがWright Flyer Studios誕生のきっかけになります。

 
──:”Wright Flyer Studios”というスタジオ名の由来についてもお聞かせください。
 
荒木:新しいブランド名でゼロからスタートするにあたって、どういった名前を付けるか、いくつか設定した条件がありました。
 
一つは好みもありますが、レトロSFな感じを出したかったというのがあります。その一方で、造語が嫌だという想いがありました。これは、アメリカに赴任していたときの経験から、造語を作っても海外の人が読めないという問題を知っていたので、英語を使うならしっかりと伝わるものにしようと考えていました。これらの条件を満たしつつ、イノベーティブやテクノロジーを感じさせるワード。さらに、”挑戦”という概念が入っている名前が良いと思いながら候補を挙げていきました。ちなみに、Wright Flyer Studiosというのは当時のメンバーが考えたもので、他には「海底二万里」という小説に出てくる潜水艦「ノーチラス号」や、手塚治虫さんの漫画に登場するキャラ「ロビタ」というのも候補の一つでした。
 
その中で、テクノロジーを感じさせながらも、未来感が出すぎない温かみがあるものが良いということでWright Flyer Studiosという名前が挙がり、すごく良いなと。人類で初めて飛行機による有人飛行を成功させたライト兄弟の挑戦の歴史、テクノロジーによって叶わなかったことを成し遂げたというイノベーションもあり、英語としても分かりやすいということでこの名前に決めました。

 
──:Wright Flyer Studiosにはそういった意味が込められていたのですね。今年はロゴも新たなものに変更されましたが、これにはどういった意図があったのでしょうか。
 

▲Wright Flyer Studiosのロゴ。
 
荒木:リブランドというよりはバージョンアップという意味合いが強いです。今年の春頃から、これまで数年間、苦労しながら作ってきたタイトルをリリースすることができ、お客さまの好評価が続いたことから組織的にも業績的にも次のフェーズに進めたと感じました。これまではタイトルの立ち上げというところに注力して頑張ってきたので、それが成し遂げられた今次の大きな目標を旗として掲げなければいけないなと。
 
同時に、お客さまからブランドが認知されてきて、社内のメンバーの帰属意識が高まり、「これが自分たちのブランドだ」という感情が生まれてきたので、ここで所属するメンバーがもっと誇れるようにしたいと思いました。事業的にも組織的にも区切りのタイミングにしたかったということです。「次に行くぞ!」ということを表現したかったんです。

 
――:なるほど。苦労しながら作ってきた、ということですが、荒木さん自身はその間どうでしたか?辛く苦しい時期が続いたのでは?
 
荒木:辛くはならなかったですね。世の中的にはタイトルがリリースされないと何もしていないように見えてしまいますが、現場では日々新たなタイトルを制作している様子が見えているので面白いタイトルができるとすぐに分かりますし、開発している側は楽しいですよ。
 
──:リリースラッシュといった区切りを経て、今はどういったフェーズでしょうか?
 
荒木:これまで面白いスマートフォンゲームをリリースするということを目標に2~3年続けてきて、ようやくしっかりとしたものが出せるようになり、それがお客さまからも評価を得られて良かったと思っています。
 
少し話はそれますが、次にやりたいことを考えるにあたって改めてWright Flyer Studiosのサイトを見直したとき、設立趣意が目に入ったんです。


 
【Wright Flyer Studios設立趣意はこちら
 
 
荒木:そこには「世界中の人に新しい驚きを届ける」と書かれているのですが、ゲームを作るうえで、今までにない新しいものを取り入れるという理念は、今も根本にあって変わっていないと思いました。また、世界では今数十億人がスマートフォンを使っているので、このデバイスを通して世界中に発信していきたいという想いを最初に綴ったのを思い出したんです。
 
今までは主にスマートフォンで国内向けにヒットさせることに集中してきましたが、次は改めて最初の設立趣意に戻り、ゲームやエンターテインメントというドメインで、新しい動きを作って世界に届けられるかに挑戦していきたいと思っています。
 
なので、今の事業フェーズとしては、これまで作ってきたタイトルを伸ばしていくことを続けながら、新しいタイトルを作り、海外配信も行っていく。そのほか、『消滅都市』や『アナザーエデン』といった自社IPを立ち上げることができたので、自分たちが持っている作品を長期的なIPとして育てていくことも考えています。そのためには、ゲームだけでなくさまざまな取り組みを含め、IPとして伸ばしていかなければなりません。スマホゲームの配信という意味では、日本だとApp StoreやGoogle Playに絞られてしまいますが、モバイル以外のプラットフォームにも挑戦するなど、「拡げる活動」をしていきたいと思います。

 
 

挑戦を続けるスタジオだからこそ生まれた作品たち

 
──:新しいことに挑戦しているというのは、Wright Flyer Studiosのタイトルを見ても伝わりますよね。そのようなゲームを生み出しているスタッフの方々は、どのような人たちなのでしょうか?
 
荒木:弊社の会計年度である2016年度(2016年7月~2017年6月)には、モバイルで6タイトル・VRで3タイトルの作品をリリースしているのですが、その内モバイルの6タイトルはApp Store売上トップ50、さらにその内の4タイトルはトップ10入りをしたことがあるほど安定してヒットしています。
 
ここで強調したいのは、ヒット率を高める、または複数のタイトルを同時開発してヒットさせるというのは特定の個人だけの力では成し得ないことなので、組織力が付いてきたという証になるということです。もちろん、Wright Flyer Studiosには優秀なクリエイターや尖ったゲームデザイナーが在籍しており、彼らが核になっているという事実もあります。しかし、組織全体として優秀な人材の才能を生かして良い製品に反映していくために、技術的に高品質なものを安定して量産できる基盤を築き、QA(品質保証)やマーケティングをしっかりと行う。それらのことを、積み上げてきたからこそ今の成果があると思っています。
 
なので、どのような人がいるかと問われると、「優秀な人たちが真面目に働いている」という印象です。ただ、真面目なだけでは面白さに繋がらないので、要所にセンスやクリエイティブを足しながら、彼らが活躍できる土壌を作れる組織になっている点が良いところだと思います。

 

──:先ほど、スタジオ設立のきっかけのひとつに開発者がクリエイティブに注力できる環境を構築するという意図も込められているというお話もありましたが、設立してすぐに第1弾タイトルとして『消滅都市』のようにユニークなタイトルがリリースされ、今もなお次々と新しいことに挑戦し続けられるのは何故でしょうか?
 
荒木:ビジョンとして「新しい驚き」というものを掲げてはいますが、実際に形にして世の中に発表されるまでにはいくつか必要な要件があると思います。前回、下田とのインタビュー(関連記事)でもお話した通り、「新しいものを世の中に出すことが格好いい」という文化的な土壌がなければそもそもチャレンジをさせてもらえません。そうしたコンセプトが組織全体に共有されているというのはベースとしてあります。
 
また、新しいことしようとすると必然的に試行錯誤が増えるので、お金や時間がかかります。なので、お金や時間をかけさせてくれる守られた環境がなければいけませんし、挑戦することを許容できる経営的な体力があるという点も必要になります。
 
後は、新しいことをしっかりと実現するための技術力を始め、QAなど、ゲームクリエイターだけでなく周囲を支えるチームがしっかりしていることが大事です。こうした条件が整っていたからこそ、新しいものを生み出してお客さまに受けいれられることができたのかなと思います。新しいことに挑戦するというのは、まだ成功例がない、ということでもあるので、もしかしたら成り立たないかもしれない、というリスクはあります。その分、経営・事業運営という面ではヒヤヒヤしていたところもあるので、チャレンジがうまくいったことを本当に嬉しく思います。

 
──:これまでのインタビューでもあった通り、新しいものを生み出す過程では失敗も何度も経験されたと思うのですが、立ち上がり続けられる強さの秘訣は何でしょうか?
 
荒木:結果論として、立ち上がり続けられた人たちが今も残っているというのはあります。ここまで生き残ってタイトルを出せたからこそ成功したという話です。ただ、失敗したとしてもまたファイティングポーズを取れる人かどうかは非常に重要で、採用の際にも重視しています。
 
また、開発戦略としてもタイトルをリリースしたときに仮にヒットしなくても次につながるようなプロジェクトの組成をしています。もちろん、立ち上げたタイトルは全てヒットさせるという意気込みがある反面、経営陣はドライにヒットしなかったときのことを考えている部分もあり、例えば「技術的に次に使えるものを残す」、「新しいジャンルや技術領域のノウハウが溜まる」、「IPの育成にはなる」と、何かしら次につながるものを考えながら作っているというのはあります。
 
現場のクリエイターとしても、自分が時間をかけて作ってきたものが完全に無くなるのは辛いですよね。ゲームなので当然売れないこともありますが、「やって良かった」と思えるよう、次のプロジェクトに生かしたり、後につながる感覚があった方がいいと思い、この手法を選択しています。

 
 

脈々と受け継がれていく魂と、それを可能にした組織構成

 
──:職場環境の面で、何か特別に取り組まれていることはありますか?
 
荒木:職種別の定期集会やカンファレンス、勉強会は開催しています。後は、例えばアクションゲームのノウハウが溜まっている人には新しくアクションゲームを作るときに開発に参加してもらったり、意識的にローテーションを行うことで横のつながりができるようにしています。
 
そのほか、新規プロジェクトを立ち上げる際に、社内で他の人が経験したことがあるにもかかわらず、その事実を知らずにゼロからスタートしてしまうという事故を防止するために、新プロジェクト立ち上げの際には全チームのリードレベルの人材が集まって、新プロジェクトでやりたいことを聞き、「どのエンジンが使える」や「このポイントは今のうちにつぶしておいた方がいい」というアドバイスを含め、情報交換をしています。

 

──:先ほど、会社として「技術的に次に使えるものを残す」というお話がありましたが、開発者それぞれにも残るものがあるという方針なのですね。
 
荒木:そうですね。ただ、これらの取り組みは一プロジェクトを終えるごとに人が辞めてしまうと続かないんですよね。当たっても外れても続く戦略やアプローチをしているので、Wright Flyer Studiosでは何度でも立ち上がれる人たちを求めていますし、そういった人たちが活躍してくれる環境でありたいと考えています。
 
――:諦めずに何度も挑戦したというところでは、第2回にご出演いただいた野澤さんの話が非常に印象的でした(関連記事)。改めて、Wright Flyer Studiosで働く魅力がどういったところにあるかを教えてください。
 
荒木:シンプルではありますが、メンバー全員、とにかく人が良いという声は現場でもよく聞きます。全体的に健全で、前向きに議論をしながら落ち着いて良い作品を作ることに集中し合える環境を作れているのかなと思っています。そこが良いところですね。
 
 

タイトルの枠を越えて染み付いたスタジオの色とは

 
──:Wright Flyer Studiosのタイトルについても伺いたいのですが、第1弾タイトルである『消滅都市』を初めて見たときの印象はいかがでしたか?
 
荒木:「なんだこれは!?」と思いました(笑)。ただ、後に『消滅都市』チームになるチームが最初に考えていたのは今と全く違った企画でした。既にプロトタイプまで作成していたのですが、ちょっとありふれた感じで「今さらこれをやってもね」「もっと尖ったものを考えよう」ということで誕生したのが今の『消滅都市』なんです。その時点で今の主人公・タクヤのバイクに、謎の少女・ユキが乗ってロードムービー的に展開していくという案はできていて、その点が良いと思いました。個人的な好みもありますが、映画だと『レオン』、ゲームなら『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』というように、おじさんと少女のコンビの話というのは、仕組みとしても鉄板なんですよね。そこに、当時は舞台設定が現代であったり、二人の人間関係やストーリーに焦点を当てたモバイルゲームが他にないということで「良いですね」とGOサインを出しました。『消滅都市』が今の形に仕上がっているのは、開発チームのセンスのおかげです。
 
──:そこから、『アナザーエデン』や『ダンメモ』といった意欲的な作品がどんどん出てきたときの心境はいかがでしたか?
 
荒木:まず、Wright Flyer Studiosとして一つ目にヒットしたタイトルが『消滅都市』だったという影響が大きいですね。『消滅都市』が受け入れられたからこそ、ベタベタな王道ではなく新しいことをしてもいいんだと思えた。それが、自分たちのスタジオに色を付ける要因にもなったと思います。
 
その後は、「いける!」と思っていろいろなプロジェクトを立ち上げるも、2年ほどヒットしない時代が続き、大変な状況でした。何度もプロジェクトを中止にしましたし、リリースしたタイトルをクローズすることもありました。そうなると当然、心が折れてしまう人もいるのですが、それでも挫けずに「次のチャレンジをするぞ!」という中で出てきたのが『アナザーエデン』や『ダンメモ』になります。
 
自分たちとしては、開発を始める前にRPG領域にフォーカスをすると決めて、その中で必ず「何が新しいのか」や「どういう部分がウリになるか」にこだわってコンセプトを作っています。両タイトルに言えるのは、「ここがウリである」というポイントがしっかりしていることですかね。そこがブレないように頑張って開発し続けたことが良かったと思います。
 

荒木:ただ、プロジェクトによっては試行錯誤が多すぎて、中止してしまったものもたくさんあります。今、世に出ているタイトルは、その中で生き残ったプロジェクトになります。止めなければいけないようなシチュエーションもあった中で、僕の基準は、まずタイトルのコンセプトや、ユーザーに何を訴えかけたいのかという点がはっきりしていなければ続けられないというところにありました。そういう意味で、彼らはコンセプトがブレなかったです。
 
あとは、作っているチームの現場にいるメンバーがどれだけ自分たちで作っているものを信じられるかが大事です。これは規模が大きくなるほど難しく、その中で「本当に面白いの?」「駄目なんじゃないの?」と疑念を抱く人が出てきてしまうといけないので、大多数の人が「自分たちのゲームのここが面白い」、「リリースすればすごいことになる」と信じられるチームを大切にします。

 
──:そうしてリリースされるWright Flyer Studiosのタイトルには、どこか共通する「らしさ」のようなものが感じられますよね。
 
荒木:実際、プレイヤーの方々からもそのように言っていただけることが多く、嬉しいことではあるのですが、まだ自分たちとしても明確にどんな色を出しているか分からないんですよね。確かなところでいただいている意見としては、シナリオや音楽へのこだわりがある、サクサクと動くのでエンジニアリングとしての品質が高いという点を評価いただけていて、そこに関しては意識をしていたところでもあるので良かったと思います。
 
スマホゲーム市場も成熟してきていて、世の中には既に大量のゲームがあります。お客さまも今から初めてスマホゲームを遊ぶという人は少なく、そうすると新しい取っ掛かりが必要になります。どの部分が楽しいかはタイトルによって異なりますが、コンセプトをぶらさず何を届けたいかをはっきりさせるというのは続けていきたいと思います。

 
 

■2018年は世界に羽ばたくWright Flyer Studios

 
──:今後の展望はいかがでしょうか?
 
荒木:2018年も新タイトルをいくつかリリースします。その中には、今まで培ってきたジャンルの延長戦上にあるものもあれば、新しい領域へのチャレンジもあります。
 
あと、海外配信にも力を入れていきたいと考えています。他社にライセンスしてローカライズや運営を行うのではなく、自社のオリジナル開発チームが世界展開を行っているということにチャレンジしたいなと。今はほとんどのお客さまが国内にいますが、来年は世界中で自分たちのゲームを遊んでいる人たちが増えている状態にしたいと思います。

 
──:自社でローカライズや運営を行うというのも珍しいと思うのですが、その形式にしようと決められた経緯を教えてください。
 
荒木:これまでさまざまなチャレンジをしてきたのですが、その中で一つ、大型IPタイトルがこの手法で好調だという実績があります。そこから国内でも全世界版を運営することは可能だと分かりましたので、日本のコンテンツをそのまま海外のユーザーに向けて発信していく手段を選びました。ただ、コンテンツ全てに有効な戦略というわけではありません。海外にも既にファンが存在する日本のコンテンツであることが重要で、日本で運営しているものと変わらないそのままの内容で運営していくのが良いと考えています。作品によっては、オリジナルのボイスを翻訳せず日本の声優のものをそのまま聞きたいという意見もありますので。
 

海外にいる日本のアニメ・ゲームファンはニッチな層ではありますが、全人口70億人の中のニッチになりますので、それら全て合わせると日本の市場規模とあまり変わらない規模になります。なので、日本のコンテンツが好きな海外ユーザーにアピールする戦略をとってみようと考えました。
 
さらに良いニュースとしては、海外にいる日本のコンテンツファンがここ数年で急速に増加しているというのがあります。これにもいくつか理由があり、AmazonやNetflixといったオンライン動画配信サービスが普及したことで、これまで海外に輸出されていなかった日本のコンテンツを正規ライセンスで視聴できるようになり、ラインナップも充実しているという現状があります。元々地ならしはされていたところに流通の革命が起き、コンテンツの増加に伴いファンが増えているというわけです。なので、ニッチな層ではありますが、ファンは増え続けているので良い市場だと考えています。


──:来年は、まさにロゴ通り世界に羽ばたいていくわけですね。
 
荒木:そうですね。あとは、先ほどお話の中にもあったように、自社IPを育てていく期間にしたいと思っています。今ヒットしているコンテンツを見ると、過去10年以内に生まれたものは少なく、人気IPと呼ばれるものは10年以上続いているものが多いです。なので、自分たちでIPを作り、世の中に浸透して人気が出るまで育てるには、長い時間がかかると実感しておりますので、短期的な売れた、売れないに依存せず、育てていきたいなと。
 
──:最後に、Wright Flyer Studiosを立ち上げたときにあった目標は、今どのくらい達成できていますか?
 
荒木:本当に面白いゲームを作ることに集中できる環境や、優秀なクリエイター、センスのある人材をサポートするようなものづくり組織の仕組みは少しずつできてきたと思っています。そういう意味では、立ち上げ最初期の1ステージを超えたというところでしょうか。次は積み上げてきたものをより大きく伸ばしていきたいと思います。
 
――:今後のWright Flyer Studiosの活躍にも期待しています。本日はありがとうございました。

 
また、Wright Flyer Studiosでは、12月18日にセミナーの実施を予定している。今回のセミナーでは、「運営」をテーマに、『アンジュ・ヴィエルジュ』、『オルタンシア・サーガ』、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の最高マーケティング責任者であるf4samuraiの佐藤允紀氏、『逆転オセロニア』プロデューサーを務めるディー・エヌ・エーの香城卓氏、Wright Flyer Studiosで『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~』でプロデューサーを務める野澤武人氏が登壇し、「神運営」とは一体何なのか、その実現に向けて日々どんなことに取り組んでいるのかを赤裸々に語り合う。
 
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(取材・文:編集部 山岡広樹)
  (撮影:SYN.product+林孝典)

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採用ページ


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株式会社WFS
https://www.wfs.games/

会社情報

会社名
株式会社WFS
設立
2014年2月
代表者
代表取締役社長 柳原 陽太
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