ゲームキャラクターはプレイヤーに「共感」を与えるか? DiGRA JAPAN夏期研究発表大会2016レポート

総合芸術と称されるデジタルゲーム。日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)でも、文系・理系を問わず、さまざまな分野の研究者が一堂に会し、さまざまな研究発表が行われる。8月6日・7日に東京工芸大学中野キャンパスで開催された2016年夏期研究発表大会でも、数々の発表が行われた。

ここでは「セッション4 ゲームと心理(1)」から、「デジタルゲームにおける共感尺度の開発」をレポートする。

 


 

■ゲームキャラクターはプレイヤーに「共感」を与えるか?


インタラクティブメディアであるデジタルゲームは、プレイヤーそして社会に対して、どのような影響を与えるのか。そしてそれは他のメディアと異なる、ゲーム独自の特徴があるのか……。世界中で多くの研究者がこの命題に対して研究を続けている。

東京大学大学院の林志修氏は、研究の取っかかりとして、プレイヤーがキャラクターに示す「共感」に注目。176名の質問票調査の結果をもとに分析し、「デジタルゲームにおける共感尺度の開発」という発表を行った。
 

▲林志修氏

共感とは「他者の体験する感情を見た時、それに一致した、または対応した感情的反応」が起きる現象をさす。

ここから林氏は「デジタルゲームにおいてキャラクターが体験する出来事を見たプレイヤーに、それに対応した感情的反応が起きること」が、デジタルゲームにおける共感だとした。キャラクターに対してプレイヤーに共感が発生すれば、ゲームが人に影響を与えていることの証明になる(もっともゲームキャラクターには現実のような感情は存在しないため、その点は異なる)
 


分析の結果「因子① ファンタジー・他キャラクターへの共感」「因子② 自分のキャラクターへの共感」「因子③ キャラクターの感情への反応」という、3種類の有力な傾向が見られた。それぞれ「ゲームをプレイするとき、自分がプレイするキャラクターになりきってしまう」「自分のキャラクターが悲しい体験をしていると辛くなってしまう」「他のキャラクターが困った体験をしていても助けたいと思わない」などが、各因子に含まれる代表的な感情となる。

因子① ファンタジー・他キャラクターへの共感
「ゲームをプレイするとき、自分がプレイするキャラクターになりきってしまう」

因子② 自分のキャラクターへの共感
「自分のキャラクターが悲しい体験をしていると辛くなってしまう」

因子③ キャラクターの感情への反応
「他のキャラクターが困った体験をしていても助けたいと思わない」
 



林氏は「現実の共感尺度は認知面と感情面に分かれることが多いが、今回の実験結果では因子①と因子②で両者が含まれており、因子③では感情的反応だけが含まれている」と分析。デジタルゲームではキャラクターが実際には感情を有しておらず、共感的関心を持つ前に相手がどのような体験をしているか想像する必要があるため、現実と異なる結果が出たのではないかとした。

またゲームでは主人公の行動を通してNPCを助けられるため、NPCへの共感というゲーム特有の現象も見られるのではないかとコメント。さらなる研究を深めていきたいとした。
 
(取材・文:ライター  小野憲史)


 

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