モリカトロン、コスト削減を狙えるAIソリューションを一挙公開 ゲーム開発ですぐに使える5つの技術とは

ゲームAI専門開発会社のモリカトロンは、6月8日、「モリカトロンAIソリューション説明会2021」をオンラインで開催し、ゲーム開発を支援する5つのAIソリューションを発表した。

膨大な台詞テキストを一括で分析できるツールをはじめ、もっとも難しいとされる人間との自然な雑談を可能にするAI、ゲームのテストプレイをAIに代行させるためのライブラリなど、どれもゲーム制作現場ですぐに使えてコストカットにつながる技術ばかりとなった。
 

 

台詞のディレクションを手伝うAI


「AIせりふサポート」は、ゲーム開発者が設定したキャラクターの台詞を分析し、口調や一人称、他者の呼び方といった台詞の特徴がキャラクターの個性にマッチしているかをチェックしてくれる。単語の表記ミスやNGワードの有無、台詞が指定の文字数および行数に収まっているかどうかも確認できる。また、入力された台詞がそのキャラクターのものであると推測できない場合は、候補となるキャラクターの一覧と一致率を表示してくれる。



EXCELファイルに保存した大量の台詞を一括で処理することも可能で、すべての台詞に対して分析結果をまとめて出力してくれる。これらの情報をまとめた資料データも自動生成されるため、特定のキャラクターの語尾やキャラクター同士の呼び方を確認する上でも役に立つ。登場キャラクターやテキスト量が多いゲームタイトルの開発において、テキストチェックに要する時間と労力を大幅に削減できる強力な助っ人となってくれるに違いない。
 

人間と何気ない世間話ができるAI


「AI会話ジェネレーター」は、人間を相手にした自然な雑談の実現を目指して開発された。1億5000万ペアという膨大な日本語の対話情報を学習しており、会話内容の文脈を考慮した受け答えができる点が特徴だ。専用のAPIを使ってTwitterやLineのチャットボットに利用できるほか、ゲーム専用サーバーに組み込むことでプレイヤーとゲームキャラクターの対話を実現することも可能だという。

人間との雑談はAIにとってもっとも難しい分野のひとつと言われており、専門的な内容よりも日常の何気ない内容の会話になるほど難易度は上がる。デモンストレーションでは、複数のソーシャルメディアを使ったユーザーと「GeneralTalker」APIの会話が披露された。その内容は好きな食べ物やゲーム、その日の天候、旅行先の情報など多岐にわたり、その都度AIはユーザーに対して内容に即した肯定や共感の言葉、追加情報を的確に返すことで会話を違和感なく膨らませることに成功している。



 

パズルの問題を自動生成するAI


「AIパズルジェネレーター」は、3マッチパズルのレベルデザインをサポートするためのツール。その名が示すとおり、ステージのサイズやピースの種類といったパラメータを設定するだけで、ステージ開始時の盤面データをいくらでも自動生成してくれる。パズルの難易度を数値で指定できるため、ゲームバランスを容易に調整できるほか、ゲームの仕様や設計にあわせたカスタマイズも可能とのこと。なお、AIはオートプレイを繰り返しながらステージを自動生成するので、万が一にもクリア不可能なパズルが出力されることはないという。



 

3Dモデルから2Dアニメを作るAI


「AIアニメ制作サポート」(AnImator)は、3Dモデルで作られたアニメーションを、アニメ作品のようにメリハリのある動きに変換するためのツールだ。ここでの「メリハリのある動き」とは、リミテッド・アニメーションのフレームが生み出す動きの質感を指している。AIが自動的に必要なキーフレームを選出してくれるので、動作のクオリティを維持したまま2Dアニメのようなコマ打ち表現ができるのだという。これにより後から人の手で修正する手間が省け、作品制作のコストを削減できる。



デモンストレーションでは、Blenderで作成した飛び前蹴りの3DモーションをAnImatorで変換したアニメーションと、フレームを均一に間引いた通常変換のアニメーションを比較。その違いは一目瞭然で、前者ではキャラクターが脚部を伸ばし切ったタイミングをキーフレームとして捉えているのに対して、後者では動作と関係なく均一に間引いているために重要なポーズが欠損してしまっている。AnImatorはそうした動作の大きいフレームを残す代わりに、着地後の微動のような目立たないフレームを荒く間引いている。その結果、ダイナミックな動きを損なうことなく、メリハリのある表現へと変換できるのだという。
 

無人のテストプレイを可能にするAI


ゲーム開発ではバランス調整やパフォーマンス計測、ゲーム内データの収集にテストプレイが欠かせない。そうした作業をAIに代行させるために開発されたのが、ゲームプログラムとコンピュータプレイヤー(COM)を仲介するためのライブラリ「COM DK」だ。ゲームの進行状況をCOMに伝える機能と、COMのPAD操作をゲームに伝える機能をまとめたもので、ゲーム本体のプログラムをほとんど改変することなく外部からの制御が可能となる。



「COM DK」は、もともと「CEDEC 2020」でモリカトロンが発表した格闘ゲームを学習するAIに汎用性を持たせ、ライブラリとして独立させたものだという。ゲーム中のCPUやGPU、メモリの状態を記録するための環境構築はもちろん、一定の行動を繰り返させることでメモリリークをチェックする用途にも利用できる。また、特定のキャラクターとのバトル勝率や敵の出現頻度、アイテムのドロップ率といった統計データを、プレイヤーによる操作と同じプロセスで収集できる。ゲーム本体のプログラムと分けて管理できるので、条件の変更や追加が容易に行えるのも大きな利点だ。

発表会の後半では同社の代表取締役 兼 AI研究所 所長の森川幸人氏より、従来の研究開発に加え、コンサルティング事業を展開し、「そもそもAIを導入すべきか?」という多くの企業が抱えるであろう疑問が生じている段階から相談に応じるとのこと。また、共同開発のパートナー企業を募るなど開発研究を行う同社らしいメッセージを発信した。