App Storeランキングで2014年前半を振り返る…家庭用ゲーム大手の存在感が一段と強まる、LINEタイトルは「二極化」

2014年も半分が終わった。そこで1月から6月までのApp Store国内売上ランキング(ゲームカテゴリー)の推移を振り返り、今年上半期のモバイルゲーム市場の総括と分析を行いたい。月末時点のランキングの推移を分析した結果、LINEやガンホーの伸び悩み、家庭用ゲームソフト大手のシェア拡大などが見えてくる。また、上位陣の「新陳代謝」低下を示す兆しもある。

まず、以下のグラフを見てもらいたい。月末時点の売上ランキングで、企業別に上位20位に入ったタイトルが何本あったかを集計したものだ(左軸がタイトル数)。注目点はLINEの伸び悩みと、バンダイナムコゲームス<7832>に代表される家庭用ゲーム大手のシェア拡大だ。

昨年中盤にかけて4~5本のタイトルをトップ20に送り込んでいたLINEだが、昨年終盤から今年上半期にかけては2~3本のランクインにとどまっている。ネイティブアプリで先行したガンホー<3765>とコロプラ<3668>も、タイトル数は伸び悩んでいる。
 

一方、存在感を高めたのはグラフ上で緑色の部分、つまり、家庭用ゲーム大手だ。強力なIP(版権、知的財産)タイトルを保有するバンダイナムコはもちろん、セガ<6460>、コナミ<9766>、スクウェア・エニックス<9684>も奮戦。セガは昨年後半以降、『チェインクロニクル』『ぷよぷよ!!クエスト』がトップ20の常連に成長。昨年後半に失速していたコナミとスクエニもタイトルを送り込んでいる。
 

■コナミとスクエニが復調…バンナムの層の厚さも際立つ


以下、各月15日と月末のランキング上位50位について、家庭用ゲーム大手5社のタイトルに色付けした図だ。縦が順位で、右に進むほど時間が経過する。セガを赤、スクエニを緑、コナミを黄、カプコン<9697>を紫、バンナムを青に着色した。 バンナムのみ別表とした。

セガ、コナミ、スクエニのタイトルが上位に登場。バンダイナムコは昨年と変わらず多くのタイトルを上位に送り込んでいるが、中身をみると、「ガンダム」タイトルの伸び悩みを、『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』や『テイルズ オブ アスタリア』『テイルズ オブ リンク』といった新作タイトルが補う構図となっている。

 

バンナムを除く4社について、月末のみに絞り、直近1年半の推移を示してみた。昨年後半と比べると、コナミ(黄)とスクエニ(緑)のタイトルが持ち直していることがよく分かる。コナミは『ワールドサッカーコレクションS』、スクエニは『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』が堅調だ。セガは『チェインクロニクル』が昨年後半に比べて伸び悩んでいるが、『ぷよぷよ!!クエスト』が上位で踏みとどまっている。
 
 

■LINEタイトルが二極化…ガンホーも『パズドラ』頼みの色彩が高まる


次は、ネイティブアプリ分野で先行したガンホー、コロプラ、LINEの3社について、上半期のランキング推移を見てみよう。

こちらの注目点はまずガンホー。『ケリ姫スイーツ』などの作品がトップ20以上に食い込めなくなっており、『パズル&ドラゴンズ』頼みの色合いが濃くなってきた。その『パズドラ』が、ミクシィ<2121>の『モンスターストライク』に一時追い抜かれ、不動の1位の座から落ちる場面があったことも、この上半期のトピックだろう。
 

もう一つの注目点は、LINEの伸び悩みだ。LINEについては、以下のグラフで、直近1年半(月末ベース)の推移を見てもらいたい。緑色の線で示したように、昨年は上位20位内に固まっていたLINEのゲームが、『ツムツム』『ポコパン』といった上位10位内を維持しているタイトルと、20位以下に伸び悩むタイトルに分かれている。
 

 
この現状を受けてかどうか、LINEは、これまでとは異なるジャンルのゲームを強化する動きを見せている。LINEは20タイトルを6月で終了した(関連記事)。6月後半からはタワーディフェンスゲーム『LINE レンジャー』が好調なランキング推移を示している。
 

■上位50位…1割が海外勢タイトルに


上位50位に視野を広げよう。月末時点の売上ランキングで、企業別に上位50位に入ったタイトルが何本あったかを集計したものが以下のグラフだ(左軸がタイトル数)。

KingやSupercellのほか、ディズニーの『アナと雪の女王: Free Fall』、足もとで急速に立ち上がっているCom2usの『サマナーズウォー: Sky Arena』など、海外勢のタイトルがじわりと増えている。6月末時点では1割の5タイトルがランクインした。
 
 

■アソビズム、アプリボットに安定感…バンダイナムコのシェア拡大


これまで触れてきた企業以外で注目しておきたいのは、アソビズムとアプリボットだ。アソビズムは上位20位内で、アプリボットも上位50位内で、それぞれ安定感を示している。

月末の上位20位に、累計で何タイトルランクインしたかを企業ごとにまとめた。ガンホーと同着5位にアソビズムが登場し、7位のSupercellを上回っている。『ドラゴンポーカー』『ドラゴンリーグX』という2タイトルが月末時に安定して上位20位内で推移しているためだ。

▼上位20位ランクインタイトル数(月末時点、6か月合計)
コロプラ 13
LINE 13
バンダイナムコゲームス 13
セガ 9
ガンホー 8
アソビズム 8
Supercell 7
KLab 6
サムザップ 6
エイリム 6
ミクシィ 6
コナミ 5
Happy Elements 5
King 4
スクウェア・エニックス 3
アカツキ 3
Donuts  2
Cygames 1
アプリボット 1
グリー 1


同様に、月末の上位50位に、累計で何タイトルランクインしたかを企業ごとにまとめた。こちらはサイバーエージェント<4751>グループのアプリボットが6位に登場している。トップ20まで上昇することはまれだが、『不良道~ギャングロード~』『カオスドライヴ』などが上位に登場する場面も多い。

▼上位50位ランクインタイトル数(月末時点、6か月合計)
バンダイナムコゲームス 34
LINE 28
コロプラ 24
セガ 24
ガンホー 20
アプリボット 16
Supercell 12
アソビズム 12
KLab 10
スクウェア・エニックス 8
コナミ 8
Happy Elements 8
DeNA 7
King 6
サムザップ 6
エイリム 6
D2C 6
Donuts  6
ミクシィ 6
グリー 6

なお、サイバーエージェントグループ(アプリボット、サムザップ、Cygames、ジークレスト)でまとめると累計ランクイン数は25となり、コロプラやセガを抜いて3位に出てくる。

また、バンダイナムコの累計ランクイン数は34と、昨年1~6月、昨年7~12月と首位だったLINEを上回り、シェア首位に躍り出た。ここにも、豊富なIPを保有する家庭用ゲーム大手の存在感が見て取れる。ランキング上位のタイトルには、KLab、ドリコム、アカツキといった企業が開発し、バンダイナムコが提供するというものも目立ってきた。
 

■上位陣の「新陳代謝」が低下?


今回、考察してみたいのが、上位に登場する企業の「数」についてだ。昨年上半期(1~6月)にトップ50に登場した企業数は48社、昨年下半期(7~12月)は42社、そして今年の上半期は39社と40社を割り込んだ。

一方、トップ20に登場した企業数は昨年上半期は23社、昨年下半期は20社、今年上半期は20社。昨年下半期と今年上半期は同数だが、中身を比べると20社のうち17社が同じ企業で、新たに入ってきたのはコナミ、Happy Elements、アカツキの3社のみ。なお、昨年の上半期と今年の上半期を比べても、14社が同じだ。

より長期のデータを振り返らなければ正確な結論は出せないが、ランキング上位に登場する企業が絞られ、トップ20の顔ぶれも固定化しつつあるように見える。開発費の高騰やユーザーの志向の変化の中で、上位陣の「新陳代謝」が低下するのかどうか。業界全体の先行きを占う上で、今後のランキング動向への注意は怠れないだろう。