ゲームメディアから見た取材・記事にしやすい広報活動(1) 個別取材の依頼について


スマートフォンゲームアプリのマーケティング活動の一環として、いわゆるPR(パブリック・リレーションズ)活動の重要性が増している。広告などと比べて"数"は取れないものの、ゲームに関心のある"質"の高いユーザーを獲得する手段と位置づけられているケースが多いようだ。当サイトにも、取材依頼やプレスリリースの配信などに関する問い合わせが増えてきた。

プレスリリースや取材依頼など広報活動全般に関しては様々な書籍があるし、様々なPR代理店などが広報活動に関するセミナーを行っている。ただ、ゲーム業界特有のやり方もある。今回、ゲームメディアから見たゲーム会社のPR活動のあり方に関する考察をまとめてみたい。メディアや編集者・記者によってやり方は異なるので、あくまでSocial Game Infoからみたものと考えてほしい。

第1回目となる今回は、「取材依頼」を取り上げたい。取材依頼とは、大きく(1)ユーザー向けイベントや記者発表会、ゲームの試遊会などを開催するので来てほしいと依頼するケースと、(2)社長やプロデューサーなどとの個別取材を依頼するケースに分けられる。今回は(2)の個別取材にフォーカスを当てたい。メディア側から取材依頼がある場合もあるが、こちらは別の機会にしたい。


 
■取材内容と日程を提示しよう

個別取材を依頼する場合、まず決めておいて欲しいのは、

(1)何を取材してもらうか
(2)いつ取材してもらうか


だ。

何を取材してもらうか決めておく、などということは当たり前と思うかもしれないが、必ずしもそうではない。取材依頼したのに、何を取材してもらうか、きちんと決まっていない会社が意外とある。他のメディアの記者と話していても、年に1~2回はそういったケースがあると聞く。「広報担当がとにかく取材にきてくれというので、何か新しい情報があるのかと思って行ったら、社長や担当者から第一声に『何を聞きたい?』といわれてあ然とした」というケースだ。何か話したいことがあるから、取材に来てほしいといったのではないのか、などとメディア側は思うのだが...。

もちろん、取材する側も予備の質問事項は用意しているので、形として取材することは可能なのだが、内容がどうしても薄くなってしまう。取材したのに記事にならない、記事が面白くないのは、会社側にとっても、メディア側にとっても不幸だ。時間を取って取材する以上、実りある記事にしたいと考える。

取材依頼するテーマが決まっていない場合は非常に稀だが、逆にテーマが絞れきれず、「あれもこれも書いてもらおう」となってしまうのも同じくらい良くない。ついついそう考えてしまうのは人情なのだが、その場合、よほど慎重にテーマを設定しないと、話が散漫で記事の内容が薄くなる可能性が高い。取材を依頼する場合、少しテーマが狭いかもしれない、と感じるくらいでいいのかもしれない。


 
■日程調整…取材希望日を伝えよう

また、(2)については、いつ取材に来てほしいか、会社側から希望をあらかじめ出してもらえるといいだろう。「取材可能な日を教えてほしい」よりも「いつ取材してほしい」といわれる方が楽なのだ。具体的には、取材依頼のメールで3つほど候補をあげて、この中からどうでしょうか、といってもらえれば、話が進みやすい。仮に候補日が難しい場合は、メディア側から代案を出してほしいと添えてもいいだろう。これは一般的なアポイントメントにも通じることかもしれない。

実は記者もゲーム会社で広報の仕事をしていたことがあるが、「メディア側も忙しいだろうから先方の都合に合わせよう」などと考えていたことがある。立場が変わってみると、企業側から「いつ取材に来てほしい」と伝えられるほうがスムーズに進むとわかった(何かを説明に行く際も同様だ)。

考えてみれば、取材する側は、記者とせいぜいカメラマンのスケジュール調整だけで済むのに対し、取材される側は、広報担当だけでなく、プロデューサー、役員などと複数人数が絡み、スケジュール調整が面倒になる。スケジュール調整の難しい方から決めたほうが話が進みやすいのは道理だ。その意味で会社側から日程を提示するのが望ましいと考える。


 
■内容確認は可能か?

取材が終了した後、記事内容の確認をしていいのかとも聞かれるが、Social Game Infoでは記事確認には対応している。話の流れでついついオフレコ話をしてしまうこともあるだろうし、ゲームの場合、固有名詞が独特なので聞き間違えたり、話の解釈を間違えることもある。その意味で会社側が確認することは悪いことではない。

ただし、内容確認ができるからといって、何でも話してOKというわけではなく、あくまで書かれても構わないことだけを話すようにしてほしい。または、「これは書かないで」と前置きして話すか、広報担当者がストップするかのいずれかである。そして、文言の削除も必要最小限にとどめるべきだ。

なお、大手新聞社や通信社などの取材は記事内容の確認が不可となるケースが多い。その場合、当たり前だが、書かれても構わないことだけを話すようにしよう。広報担当者としては、取材時に録音したり、議事録をとったりしておくのが得策だろう。これは内容確認をする場合にもいえることだが…。

【追記】
メディア側としては内容確認はできるだけ早く返してもらえるとありがたい。また、以前、原稿の1/3くらい削った会社があり、「あくまで解釈ミスや聞き間違いのチェックなどにとどめるべきであり、書かれるのが困るなら、そもそも話さないでほしい。」と抗議したら、かなり戻してきたこともある。メディア側も工数を使っていることは考えて欲しいところである。


 
■終わりに…不定期連載するかも

ここで触れていないが、どういう内容を取材してもらうかが一番大事なのだが、少し長くなりそうなので別の機会にしたい。以上、簡単に取材依頼についてまとめてみた。ニーズがあるようであれば、不定期の連載として、時々書いていきたいと思っているが、今回限りとなる可能性もある。こんなことについて書いてほしいとリクエストなどがあれば幸いだ。
 
(編集部 木村英彦)