【イベント】ファリアー、学生向け勉強会「駿馬」を札幌にて初開催…4都市目となる『ゲームクリエイターの「足元から支える」ゲームフロー講座 』をレポート


ファリアーは昨年12月24日、一般財団法人さっぽろ産業振興財団「Inter x cross Creative Center」との共催で、第9回駿馬を開催した。「駿馬(しゅんめ)」とは、当媒体の連載記事「ゲーム業界活人研」でもお馴染みの株式会社ファリアー代表馬場氏が手がける、関東近郊以外の地域からゲーム業界を目指す学生に向けたイベントの総称である。
 
今回で4都市9回目の開催となる駿馬。全国のゲーム業界を目指す学生に向けて、ゲーム業界を「ただの夢」ではなく「目指す先」として具体的にイメージし、何をすればたどり着けるのか?「夢から目標に」転化する機会を届けている。今回の記事では、初の札幌開催となる「駿馬」の模様をレポートしていく。
 

案出しからアウトプットまで経験するゲームクリエイターの「足元から支えるゲームフロー講座


▲ゲーム制作は、勢いで始める前に、まず大枠を知ることが肝となる。
 
ゲームの制作に興味のある学生が集まる駿馬だけあり、参加者はゲーム好きが多い。しかし、ゲームをつくってプレイできる形にしたことがある学生は少ない。「1人で作ることが難しい」というのも大きい要因だが、つくりたいと思うゲームはプロがつくった大作をイメージしていて、「夢が大きい(≒事前の準備で膨大に時間がかかる)」というのも大きな要因だと言える。

百人単位のプロが年単位の時間をかけて作るゲームを学生が数人でつくるのはかなり難易度が高いといえるが、学生はやはり憧れてしまう。でも、ゲームは大規模なものがすべてではない。ゲームエンジンやデバイスの進化によって、カジュアルゲームを短期間でつくることが出来る今、馬場氏と古川氏で開発した『コラプス』のように、学生でもゲームを開発して世に発信し、世界中のユーザーに楽しんでもらうこともできるのだ。

そんな時代だからこそ、「未来のクリエイター」である学生たちに対して、ゲームづくりのスタートラインにある取り組み方の説明からイベントはスタートした。
 

これまでの講演でも紹介されてきている「企画書を構成する9つの要素」について改めて説明され、まずは全体像をイメージしてもらえないと伝わらないことが強調された。そのためには、「何を準備すればいいのか?」、「どの順序で伝えることが相手に理解してもらいやすく、伝わりやすくなるか?」という説明もされ、学生も「なるほど」とうなずく場面が見られた。

さらに、今回の講義では、その中からピックアップした部分を学ぶと伝えることで、自身の最終的に用意するものに対してどこを学んでいるかが分かる形となっていた。積み木積み上げ形式で最後にならないと全貌がわからない構造ではなく、全体像を始めにイメージした上で必要な要素を学んでいく構成は、ゲーム制作経験がプロより絶対的に少ない学生にとっては理解のしやすい形だと言える。

ゲーム制作の教育において、全体像が見えづらく、体系化がまだまだされていない点もあるため、普段からゲーム制作を学ぶ学生も真摯にメモを取っていた。


最初のワークショプでは、元ゲームクリエイターである神奈川工科大学の中村隆之氏が考案したEMSフレームワークを利用した「ゲーム概要からコンセプトメイクまで」を学ぶための入り口として、とにかくアイデアを出す訓練を行った。

アイデアを出すのは、プランナーだけの仕事ではなくゲームクリエイターであれば、誰しも出すこともできるし、出さねばならないものである。大切なのは、アイデアを実装できる形に構造化し整理しまとめあげる、ということである。そのためにも、まずは余計なことは考えずに思いつく限りのアイデアやその断片をとにかく必死に量を出すことが第一歩となる。

短時間でテーマに沿ってアイデアを出す訓練は、プランナー・デザイナー・エンジニアにかかわらず、様々な場所で役に立てることが出来る。昨今、情報が溢れ、いち早く答えを求めがちだからこそ、1つの答えではなく自分の頭の中にある考えを書きだし、思考するという行為のメリットは大きい。つくり手を目指す人向けのワークショップならではの特徴と言える。
 

▲誰でもなれるアイデアマン!

アイデアを出した後は、代表者が前で発表を行った。たくさんのアイデアが出るからこそ、ここから共通の認識に深めていくことが出来る。今回は「まく」をテーマとしたが、「ウィルスをまく」といっても、空中散布なのか、咳をして撒き散らすのか、何かを媒介して広めていくのか、といった多種多様になり、1つのアイデアで色々な解釈ができる。そのアイデアが「正しい・正しくない」ではなく、EMSフレームワークでひねり出したアイデアの断片をもとに、イメージを広げていくことが大切であることが、講評を通して理解できる構成になっていた。


▲発表することで得られる、頭の中の整理と第三者目線でのアイデア

手段と目的というシンプルな構造で話をすることで、相手との認識がずれずに話が進められる。複雑なゲームになればなるほど、その手段と目的は階層構造になり、途中で分岐もするため、まずは単純構造を理解し、構造がシンプルなゲームに面白さを持たせる意識をすることで、基礎を応用につなげるイメージができたのではないかと感じた。
 

次のワークショップでは、プレイヤーの気持ちの変化について話が進んだ。自分がつくったゲームをプレイしてもらった時、何度も遊んでもらいたいと思うのはクリエイターとして自然なことだ。しかし、この「何度も遊んでもらう」というのがとても難しい。

ゲームをプレイすれば、必ず感情が動く。「おもしろい」「つまらない」「ドキドキ」「ワクワク」など、多くの表現が可能だが、何をするとどんな感情になるかを意識することが大切である。プレイ中に起きる事象がつながって行き、面白いと感じるところまでいかに誘導できるかは、つくり手として腕の見せ所である。
 

▲スライドに写っているのは感情の動きを線で表したもの。
ゲームをプレイした際の感情変化を可視化する。

ゲームは「機能」では流れず、「感情」でつながることが多いと馬場氏は語った。「あ、面白そう」と思って手に取ったものも、「やっぱり面白い」に変わらないと次に進まず、そこから「もう一回やりたい」になって初めて繰り返してプレイしてもらえる。認知、確認、再起のモチベーションと説明されたこの要素を、実際にプレイしてワークショップで確認してみようというわけである。

自身がプレイする中で感じた感情の変化を、線で可視化してみることで、どんな気持ちの変化があり、そこにはどのような要素が関連しているかを確認することが出来る。さらにそれを周りの友達と話すことで、異なる意見によって「確かにそれも起こりうる!」といった発見がある。ただ単に「楽しかった」で終わらせるのではなく、その要因をしっかり自分で発見するために効果的なワークショップであった。
 
▲参加学生は楽しくプレイしながらも、どんな感情変化があるかと頭を悩ませながらプレイする。
その目はプロのクリエイターに近しい真剣さが垣間見えた。
 

■ゲーム制作の考え方から就職活動の手法までアドバイス…学生を支援する取り組み



駿馬参加学生を見て、講義+ワークショップという形式で学ぶことの効果を改めて感じさせられた。これまで感覚で進めてきた部分を体系的にまとめる講義に加え、自分の頭の中にある情報を表に出し、その情報を他の人に見てもらうワークショップがあった。

そして互いに話をすることで最初は誰の頭の中にもなかった考えが浮かんでくるという流れは、チームでのもの作りを感じられる構成設計であるとともに、学生が学校に戻ってからも友人と行える、再現性のあるプログラムになっている。

勉強会やイベントに参加するだけで満足してしまうことも少なくないが、イベントで目標を見つけることができ、プロセスも自身で繰り返せるという点は、学生にとって大きな経験になったのではないだろうか。

また、イベントの中で就職活動についても触れられた。会社によって異なる新卒についての考え方や、奨学金を借りている学生は特に気にしなければならない初任給や生活費について、札幌近辺での企業探しに加えて全国に目を広げた情報収集の行い方など、これまで開発の現場、採用の現場、採用支援の現場を知るファリアー馬場氏だからこそのアドバイスにも熱がこもっていた。
 

今回は、一般財団法人「さっぽろ産業振興財団」インタークロス・クリエイティブ・センター(Inter x cross Creative Center)と共催という形で開かれた駿馬。全国各地で様々な人とつながり学びの機会を広げている。今年はすでに札幌で2回目が開催がされており、今後もゲーム業界志望の学生を支援する駿馬には注目していきたい。




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第9回「駿馬 SAPPORO 〜ゲームクリエイター育成講座〜」

『ゲームクリエイターの「足元から支える」ゲームフロー講座』
 
講師:
 馬場保仁氏 株式会社ファリアー 代表取締役
 
プロフィール:
 1997年 セガ・エンタープライゼス(現セガゲームス)入社
  『プロ野球チームをつくろう!』シリーズ
  『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』シリーズ
  『龍が如く OF THE END』
  『スーパーモンキーボール』シリーズのプロデューサー / ディレクターに従事
 2012年 ディー・エヌ・エー入社
  スマートフォンアプリのエグゼクティヴプロデューサーに従事
 2016年 ファリアー 創業 現在に至る 
 
会場:
 一般財団法人 さっぽろ産業振興財団
 インタークロス・クリエイティブ・センター
 Inter x cross Creative Center
 札幌市白石区東札幌5条1丁目1-1

共催:
 Inter x cross Creative Center
 
参加費
 無料
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株式会社ファリアー
http://farrier.jp/

会社情報

会社名
株式会社ファリアー
設立
2016年7月
代表者
代表取締役社長 馬場 保仁
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