スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。
同社のサービス「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」では、ゲームアプリの運用情報はもちろん、他社のYoutubeやTwitterの運用情報なども分析することができ、毎月発行しているレポートを提供している。
また、中国をはじめとした海外のゲーム内イベントやランキング情報も閲覧でき、本連載記事ではスパイスマート協力のもと、海外市場のゲームアプリ動向を紹介する。
今回は世界的人気シリーズの初モバイルタイトル『Diablo Immortal』をピックアップする。
(以下、スパイスマートが提供するスマホゲーム分析/運営ソリューションル「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」での調査内容を基に掲載)
人気シリーズの初モバイルタイトル『Diablo Immortal』
広大なフィールドを舞台に、登場するモンスターを退治しながらキャラを育成し、他ユーザーとパーティーを編成したりPvPコンテンツを楽しめる。2022年6月3日にリリースされた。
▲ リリース公開画像
開発元のBlizzard EntertainmentはActivision Blizzardの子会社で、『Diablo』、『Warcraft』、『Overwatch』、『StarCraft』などの有名ゲームを開発・サービスしているアメリカのディベロッパーだ。
1996年の『Diablo』PC版リリース以降、『Diablo』シリーズとして数々のヒット作を世に送り出してきた。シリーズ最新作である本作は、シリーズとしてもBlizzard Entertainmentとしても初のモバイルゲームとなる。
事前登録者数は全世界で3,500万人を突破し、40ヵ国以上のApp StoreとGoogle Playで1位を記録した。
イギリスのゲーム産業メディアであるゲームズインダストリーの報道によると、世界売上はリリースから24時間で約80万USD、2週間で約2,400万USDを記録したという。
現在も、App StoreとGoogle Playの売上ランキングで平均10位以内に入るなど人気が続いている。
リリース後にも定期的に新規ダンジョンやエリア、シーズン、職業を追加したり、各種イベントを実施するなど、 より良いプレイ環境の提供に努めている。
本作の注目ポイント
・様々な成長コンテンツとキャラの職業
キャラの職業は6種類あり、職業の変更も可能。変更後も成長状況や所持アイテムはそのまま引き継がれる。また、クエストやPvPモードなどの各種コンテンツを通じてキャラを成長させることができ、キャラが最大レベルに到達した後にも、Diabloシリーズではお馴染みのパラゴンレベルのアップやステータスの追加成長が可能となっている。
・原作シリーズの世界観とシステムを踏襲
広大なフィールドを自由に移動しながらフィールドに登場するモンスターを退治し、経験値やドロップアイテムを獲得してキャラを成長させていく。グラフィックや戦闘演出などは原作のDiabloシリーズと同様で、ストーリーもこれまでのシリーズ作品と繋がっている。
基本情報
ゲームエンジンは、NetEaseが2013年から使用している自社開発エンジンMessiahを採用している。多数のコンテンツが存在し、グラフィックもハイクオリティであるにもかかわらず、最適化により安定したプレイが可能となっている。
また、PC版(リリース時にはオープンベータ扱い)とのクロスプレイにも対応している。ゲームモードはシングルプレイとマルチプレイが存在。
・世界観とストーリー
本作は、シリーズ作である「DiabloⅡ」の終了後から「DiabloⅢ」が始まるまでの中間の時代を背景としている。
ワールドストーンが破壊されたことで悪魔の軍勢に包囲され、危機に直面した世界で、悪魔から世界を守るために戦う者たちの姿を描いており、これまでの「Diablo」シリーズの世界観に基づいてストーリーが展開される。
プレイヤーキャラは、ストーリーを進行し戦闘を重ねる中で成長していく。
各種戦利品を収集し、モンスターを退治することで解放されるスキルを駆使しながら、より大きな脅威に立ち向かっていく。
ゲームシステム
・キャラクターの職業
キャラ作成の際、6つの職業(クラス)の中から1つを選択し、性別も選択できる。キャラスロットは5つあり、削除も可能だが、30レベル未満の英雄キャラは復元不可能となっている。
詳細内容は下記の通りだ。
・キャラのレベルアップとステータス
キャラは、戦闘に参加したりクエストをクリアすることで経験値を獲得し、レベルアップができる。一定のレベルを達成すると一部のコンテンツが解放される。
●ダメージ、ライフ、筋力、知力、忍耐力、生命力、意志力の基本ステータスと、サブステータス、追加ステータスが存在
●最大レベル達成後にレベルアップするとパラゴンポイントを獲得でき、ステータスを追加でアップできる
●各クエストまたは「古文書」をクリアすると追加経験値を獲得でき、レベルアップが可能
●一定のレベルを達成すると、一部のコンテンツが解放され、キャラのスキルも強化される
・キャラクターのスキル
キャラは、戦闘の際に4つのスキルをスロットにセットできる。また、キャラのレベルが上がると新たなスキルが解放される。
●メイン攻撃スロットが1つとスキルスロットが4つ存在し、メイン攻撃を繰り出すたびに、攻撃力が短時間の間強化されるアルティメットがチャージされる
●キャラがレベルアップするとスキルが強化され、スキルのグレードに応じて攻撃力とサブ効果がアップ
●一定のレベルに達するとおすすめビルドが表示され、各種ダンジョンやクエストで適切なスキルが使えるようになる
●職業ごとに保有するスキルが異なり、コンボスキルを駆使するとさらに強力なダメージを与えられる
●スキルの使用にはクールタイムが存在し、クールタイムの長さはスキルごとに異なる
・装備アイテム
キャラは、装備やアクセサリーを装着することでステータスを強化できる。また、NPCを通じた装備のアップグレード、鍛錬、分解システムが存在。
●装備アイテムの種類には兜、鎧、肩当て、下衣、武器、オフハンドがあり、アクセサリーの種類には首飾り、指輪、手袋、ベルト、靴がある
●部位別の装備アイテムのほか、キャラの特定のスキルを強化するチャームアイテムも存在
●コスメティック(スキン)を使って防具や武器の外見を変えられる
●宝石をメイン装備に装着すると、特定のステータスをアップできる
・装備アイテムの強化
装備アイテムを分解して回収した材料を消費して装備アイテムを強化することができ、基本ステータスやボーナスステータスをアップできる。
●村の鍛冶屋のもとで装備アイテムの分解や強化が可能
●分解により回収した材料で、レアアイテム、セットアイテム、レジェンダリーアイテムのアップグレードが可能
●レアアイテムはグレード5、セットアイテムはグレード10、レジェンダリーアイテムはグレード20まで強化可能
●分解で回収できる材料の種類は、分解する装備アイテムのグレードによって異なる
●強化したアイテムを分解すると、強化に使用した材料全てを回収できる
・ダンジョン
メインストーリー
本作のメインコンテンツで、NPCとの対話や各種クエストを通じて進行していく。
●メインストーリーを進行するエリアは、アッシュウォルド墓地、常闇の森、バイルフェンなど計10か所が存在
●ワールドマップで進行可能なエリアを確認でき、位置を指定するとテレポートで自由に移動可能
●進行中のメインクエストをクリックすると、目標や報酬などの詳細内容を確認できる
●ガイド機能が存在し、進めたいクエストを選択すると、その位置に向かって足跡が表示される
インスタンスダンジョン
メインストーリーの進行に伴い解放されるダンジョン。
●狂王の綻び、忘れられし塔、ファヒールの墓、破壊の終焉、キクラス・ラピッド、ナマリの神殿、反響の洞窟、苦悶の縦坑の8つのダンジョンが存在
●シングルまたはパーティーで参加でき、繰り返し入場可能
●モンスターを倒して装備アイテムを獲得できる
●ドロップされる装備アイテムはダンジョンごとに異なり、装備アイテムのほか、財貨や経験値なども獲得可能
・その他コンテンツ
レイドコンテンツや、ギルド、PvP、クエストなどが充実しています。以下に、その一部を紹介する。
レイド「炎の紡ぎ手ラッサル」:
8人でパーティーを編成してボスを倒していくレイドコンテンツ。
●参加には、ダンジョンの段階別に定められている推奨戦闘レーティングを満たす必要あり
●目玉報酬は、「チャレンジリフト」でバフ効果を与える「ヘリクアリ」(キャラの能力強化システム)の材料
●その他にレアアイテムや材料アイテムも獲得でき、難易度が高くなるほど獲得可能なアイテム数が増加
●毎週月曜日と木曜日にクリア報酬がリセットされる
シャドウ:
本作の陣営の一つ。
専用コンテンツを通じて、キャラの成長経験値やショップ財貨、材料アイテムなどの報酬を獲得できる。
●キャラレベル40から加入可能
●NPCに話しかけると運試しの抽選に参加でき、当選後クエストを達成すると加入資格が得られる
●専用のダンジョンやクエストが存在し、クリアで獲得できるランクポイントを溜めると各種報酬を獲得できる
●各ダンジョンはキャラが一定レベルに達すると解放され、オープン時間はダンジョンごとに異なる
●ギルドのようなシステム「ダーククラン」が存在し、「シャドウ」ページから加入可能
戦場:
攻撃チーム8人と防御チーム8人の計16人のプレイヤーが参加するPvPコンテンツ。
●ウェストマーチの戦場隊長に話しかけると参加でき、ランダムにマッチングされる
●3つのステージからなり、各ステージで制限時間内に目標を達成すると勝利
●攻撃チームは目標対象を破壊すると勝利
●防御チームは目標対象を防衛しきるか、もしくは攻撃者を55回キルすると勝利
●勝利するとティアが上がる。ティアにはブロンズ、シルバー、ゴールド、レジェンダリーが存在
●入場可能な時間帯が決まっている(毎日8:00~10:00、12:00~14:00、18:00~20:00、22:00~0:0
課金・ショップコンテンツ
・パッケージ商品
ゲーム内ショップで、主に財貨や装備アイテムからなるパッケージ商品が販売されている。調査時点でショップで確認できたパッケージ商品を下記の表にまとめた。
・バトルパス
シーズン制で販売する報酬システムで、シーズンバトルパスのランクを上げる課金商品。
シーズンクエストをクリアしてバトルポイントを獲得し、一定の経験値を溜めるとランクを上げられる。
各ランクを達成する度に、報酬として各種財貨や材料などを獲得できる。本ゲームのバトルパスは40ランクまで存在。
全プレイヤーが無料で利用できる基本バトルパスのほか、課金専用の「強化バトルパス」と「コレクター版強化バトルパス」があり、課金専用パスは無料パスより多くの報酬を獲得できる。
課金専用の「強化バトルパス」で獲得できる報酬を金額に換算してみると、高級な報酬も含まれることから、最低でも「永遠のオーブ」2,890個以上の価値の報酬を獲得できることになる。
・課金タイミング
・ゲームサイクル
コミュニティ関連レポート
・コミュニティでの反応
主要コミュニティにおけるユーザー評価を要約してまとめた。
-
良い点
◆ PC版でプレイしていたゲームをモバイルでもプレイできて嬉しい
◆ 打撃感、キャラ、グラフィック、ゲーム進行のバランスが良く、没入感の高いプレイを楽しめる
◆ 広大なフィールドを自由に移動でき、シングルでもパーティーでも戦闘を楽しめる
◆ チャット機能もあり、リアルタイムなプレイが可能
◆ 詳しいチュートリアルが表示されたので初心者でもわかりやすかった
▲ オート戦闘機能がなく手動操作であることや、ストーリーがほぼフルボイスで再生される点、派手なエフェクトなどが高く評価されている。
-
悪い点
◆ プレイ中にスマホが熱くなるため、長時間続けてプレイできない
◆ 他アプリを開いて戻ってきた時に再度ログインしなければならず面倒
◆ プレイ中にゲームが終了したり画面が止まったりする現象が頻繁に発生し、これにより報酬を獲得できないこともある
◆ プレイヤーが少ないエリアでは、他プレイヤーとのパーティー編成が必須のコンテンツのクリアが困難
▲ ネガティブな評価では、序盤ではキャラのレベルアップが早くアイテムのドロップ率も高かったが、後半になると無課金の場合キャラの育成にかなり時間がかかるという意見が多かった。
シリーズの世界観を継承し、手動操作システムを採用したMMORPGゲーム
Blizzard Entertainmentは、「Diablo」、「Warcraft」、「Overwatch」、「StarCraft」といった世界的に有名なタイトルを多数輩出し、現在も既存のユーザーを維持しつつ多数の新規ユーザーが流入する、人気のディベロッパーだ。
本作は世界的人気を誇るゲームであり、英語、日本語、韓国語、フランス語など様々な言語に対応している。音声も、英語のほか日本語と韓国語に切り替え可能で、ユーザーがゲームにより没入しやすくなっている。
主な特徴として、操作システムが最適化されており、広大なフィールドでの自由なモンスター狩りや手動操作での戦闘を楽しむことができる。
また、他ユーザーとのリアルタイムチャットやパーティー戦闘など、交流が必要なコンテンツが多数存在し、よりアクティブなプレイが可能だ。
ただし、装備アイテムに装着するルーン「宝石」やキャラ育成に多少の課金要素がある点が残念だ。
課金の有無によってプレイに要する時間にかなり差が出てくるという評価が多いため、新規ユーザーの流入を維持していくためにはある程度のバランス調整が必要とみられる。
▲調査データ全容のご要望、無料アカウント登録はこちらから▲
LIVEOPSISでは中国における、マーケットトレンド、新作タイトルの事前予約状況、注目タイトルの最新情報を取得しております。調査・分析が気になる方はお気軽にお問い合わせください。
■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。
会社情報
- 会社名
- 株式会社スパイスマート
- 設立
- 2015年7月
- 代表者
- 代表取締役 久保 真澄