【レポート】Nianticが都立明治公園とのAR関連パートナーシップ締結についての説明会を開催 最新AR技術を駆使したデジタルアミューズメントパークへの展望も


Niantic
Tokyo Legacy Parksは、111日、都立明治公園とのAR関連パートナーシップを締結したことについての説明会を開催した。本稿では、その模様についてレポートしていく。

まずは、Niantic代表取締役社長の村井説人氏より、Niantic PARKプロジェクトについての概要が語られた。



本プロジェクトは、デジタルの新しい価値を現実の場所に付加することで新しい体験や今までに経験したことがないような体験を提供する場所を生み出すプロジェクトになっているという。そもそも、デジタルでの新しい体験を人々に提供するためには、コンピュータが現実世界をより精緻に理解をする環境を作ることが重要だと捉えていると村井氏は話す。これを実現するために、同社ではスペーシャルコンピューティング(空間コンピューティング)に注力している。人間が見ている世界をコンピュータが同じように見えるようにすることで、インターネットの表現方法は格段に進歩すると考えていると述べた。



また、同社では“人々が仲間とともに世界を探索するお手伝いをする”というミッションを掲げている。このミッションを実現すると共に、人々が外に出て楽しく、かつ今までにない体験をすることができる場所を作ることができないだろうかと日々考えてきた。これを実現するために、デジタル上のアミューズメントパークのようなものを作り出すことができないかと構想を練っていたという。



そこで、明治公園を運営・管理しているTokyo Legacy ParksTLP)とパートナーシップを結び、Niantic PARKMEIJI PARK)という新しい取り組みを発表した。Nianticの高度なAR技術を活用し、都立明治公園の来園者に没入感のある魅力的なAR体験「Niantic Park」を提供することで、都立明治公園の魅力と認知を高め、より多くの方々を惹きつけたいと考えているという。



その第一歩となるのが、公園のデジタルツインの実現となる。ここでは、現実世界とデジタルの世界が交錯する表現が可能となる。このような表現を実現するために、Nianticは今までコンピュータが現実世界をよりよく理解する技術として「オクルージョン」や「セマンティック」といった機能や技術を提供してきた。これにより、デジタル上の生き物が現実世界で生きているかのような表現が可能になった。



これらの技術に加えて、さらにコンピュータが現実世界を精緻に理解できるようにするために、自社の技術を活用して世界中をスキャンし、今までにない精度の高い3Dデータベースを作ることにチャレンジしている。無料アプリ『SCANIVERSE』は、2021年に提供を開始している3Dスキャンアプリだ。本アプリでは、目の前にあるものやその周囲をスキャンできる。同社では、この技術を活用して3年間、世界中をスキャンしている。



さらに今回、Nianticの新しい試みとして、Niantic PARK全体をスキャンするために「Photon(広域スキャンデバイス)」という機材を実験的に導入している。Photonは、同社が独自で開発したもので広域エリアをスキャンすることに特化した機材である。この機材を活用することで、より広範囲のエリアを短時間で精度高くスキャンすることが可能になるという。



▲公園全体をスキャンするには、本来、かなり時間や労力がかかるが、Photonを使用することで一気に点群データを取得することができる。

このようにNianticの最新技術を活用して公園全体を3Dデータで表現し、デジタルの世界で都立明治公園を再現したいと考えていると村井氏は話す。これが、Niantic PARKプロジェクトの第一弾の取り組みになる。



さらに、データの精度を上げるためにVPS(ビジュアルポジショニングシステム)も提供する。VPSを構築することにより、コンピュータと現実世界のオブジェクトとのインタラクションが今まで以上に精緻に、且つ効果的に実現することができるようになる。

同社は、このように特定の公共の場所に恒久的なデジタル空間を提供したことは今までになく、今回が初の試みとなる。これにより、世界中の開発者がNianticの提供するデベロッパー向けのツールを活用して作った新しいAR体験を常に都立明治公園で体験できるような環境を提供することができると展望を述べた。そして、Niantic PARKは新しい技術を楽しむ人たちで溢れる空間になるのではないかと本プロジェクトの先を見据えた。

ここからは同社が提供するAR位置情報ゲームとの連携について。



まず、『Pokémon Go』には「Niantic PARK」のロゴが入ったポケストップやジムが登場する。ここでは、「Niantic PARK」ロゴが入ったポストカードを手に入れることができる。また、今までの経験に基づいて公園内のポケストップやジムを再配置。プレイヤーが公園の中を楽しく回遊できる仕組みを提供している。また、公園内のポケストップやジムには公園を作ったTLPの想いを概要欄に綴っているため、ゲームを通して改めて明治公園について学ぶ機会を得ることができる。

Pikmin Bloom』では、「Niantic PARK」のロゴが付いたスペシャルスポットが出現。11116時以降より登場しており、ここでは「金の苗」を受け取ることができる。金の苗からは、金のプレゼントシールをまとった赤・青・黄のいずれかのデコピクミンが登場する。なお、本スペシャルスポットから一度金の苗を受け取ると、その後30日間はスペシャルスポットから新たな苗は出てこなくなるので注意。

最後に『Ingress』では「Niantic PARK」ロゴが入ったポータルキーを手に入れることができる。



今回は発表がなかったが、今後は『Peridot』や『モンスターハンターNow』でも特別な体験ができる施策を考えられているようだ。

本取り組みは、改めて公園の素晴らしさを再認識するきっかけになるほか、今までに体験したことがないAR体験を提供できる場所を作る取り組みとなっている。Niantic PARK構想は、Nianticの技術とサービスが詰まったデジタル上のアミューズメントパークだ。たくさんの人が家から外に出てゲームを楽しみながら公園やその周辺の素晴らしさに改めて気付く。そして、そこに集まった人たちに交流が生まれる場所になると嬉しいと村井氏は述べた。また、未来のインターネットを支えるXR技術をより身近に感じてもらうために、この技術を活用して現実とデジタルが融合された新しい表現を恒常的に提供できる環境を引き続き作っていきたいとしてコメントの締めとした。



続いて、Tokyo Legacy Parks代表取締役 兼 東京建物 新規事業開発部長の川治利夫氏は、今回のプロジェクトについて、特別なARを提供することによって、来園者に新しい楽しみを提供することができることを喜ばしく思っているとコメント。先月、実施された「モンスターハンターNow カーニバル 2024 渋谷」も好評だったようで、今回、Nianticとパートナーシップを締結できたことで一層、明治公園を魅力的なものにしていきたいと意気込みを語ってくれた。



最後に、Tokyo Legacy Parks株式会社 取締役 兼 東京建物株式会社 新規事業開発部 課長代理の黒田敏は、今回のパートナーシップ締結には少し特殊な背景があることを話してくれた。明治公園は、20176月に創設された「Park-PFI(公募設置管理制度)」というスキームを東京都立公園として初めて採用した公園で、民間事業者と公共が連携して作る仕組みの公園となっている。管理・運営については民間事業のノウハウを活用しながら行っており、その一環として都市公園の新しい可能性を広げるための施策として今回のパートナーシップ締結があったと経緯を明かした。今後、明治公園を活用してデジタルで楽しめる部分を増やすことによって、今まで来園しなかった層にも楽しんでもらえるのではないかと展望を述べて締めとした。



今回の取り組みによって、今すぐ劇的に何かが変わるというわけではないが、技術は着実に進歩しており、ARの発展や構想も実現へ向けて動き出していることが伺えた。今まで夢物語でしかなかった巨大なデジタルアミューズメントパークが遠くない未来に誕生するという。また、本施策によりゲーム業界にも新たな波が起きることを期待したくなる、そんな説明会となった。


(取材・文 編集部:山岡広樹)

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