「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」を発行するヒューマンメディアは、日本のコンテンツの進出による海外での売上を算出し、2023年は前年から1兆円以上拡大し5兆7769億円と円安率を超える大幅増となったと発表した。
本書の日本のコンテンツの海外売上の2022年の数値が2024年6月に発表され、2033年までに日本のコンテンツの海外売上の規模を20兆円規模にすることを目標としている「新たなクールジャパン戦略」に引用された。また、2023年の経団連の提言や内閣官房新しい資本主義実現本部事務局の基礎資料にも引用されている。
◆日本のコンテンツの海外市場規模の推移
出典:各種統計よりヒューマンメディア作成
2023年にはアニメと家庭用ゲーム(オンライン)が大きく伸びた。この円建ての伸びは円安を背景にしているが、それ以上の伸びだった。家庭用ゲーム(ソフト販売)も前年を上回った。
映画(実写)、テレビ番組(一般)は横ばいだった。しかし2023年には実写映画の「ゴジラ-1.0」は 国際東宝が海外配給を行い、スクリーン数を確保し、国内の2倍以上海外興行収入を得た。テレビ番組ではNetflix等でグローバル配信される日本のテレビ局製作のドラマ等の番組が増えた。出版(主にマンガ)も横ばいだった。世界的に出版は、また日本のマンガも、2022年までは巣ごもり需要を受けて伸びたが、2023年に日本のマンガはドル・ユーロ建てで減少、円建てでは横ばいだった。
スマホ・PCゲームは前年から減小した。スマホゲームは2022年に日、中、韓の自国の市場が大きく 減少、2023年に中、韓の市場は回復したが、日本の市場は微減で、国内、海外ともに停滞が続いている。
◆解説
2022年の日本のコンテンツの海外市場規模、海外における売上合計4兆6882億円は、海外の消費者やテレビ放送の広告スポンサーが現地で支払った金額で、国内への収入とは異なる。
コンテンツの海外取引は、1.「ライセンスによる権利取引」と、2.「海外の子会社等の現地での販売・配信、加えて国内から海外向けのEC・配信」という方法によって行われ、1.の権利収入と2.の売上が海外子会社含む日本の企業の収入になる。日本から海外に輸出したコンテンツの現地売上、海外市場規模は、各分野の1.2.の取引データから推計したものだ。
海外取引の方法はコンテンツ分野により異なる。映画、テレビ番組、アニメは主にライセンスによる権利取引が行われている。家庭用ゲームは海外子会社によるソフトの販売が主流だったが、2020年代後半からゲーム機メーカーによるオンラインのソフトダウンロード、課金の売上の方が大きくなった。
スマホ・PCオンラインゲームは、ライセンスと、海外の子会社等の現地での配信、加えて国内から海外向け配信が行われている。マンガを主とする出版は、ライセンスが基本だったが、大手出版社は海外の子会社等による現地での出版・配信、加えて国内から海外向け配信が行われている。
日本の音楽もライセンスによる権利取引や国内から海外向けの配信で海外に進出しているが、取引データが入手できないため加えていない。
・映画(実写)は、日本映画製作者連盟加盟4社(松竹、東映、東宝、角川)の海外への映画輸出実績(映画・テレビ映画の海外配給権、海外上映権、リメイク権、海外放送権、海外二次利用権、映画・テレビキャラクター商品化権)から、アニメと重複する加盟社の子会社の海外収入を差し引いて推計した。
・テレビ番組(一般)は、総務省の「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析」の調査から、アニメ部分を除いて推計した。
・アニメは、日本動画協会「アニメ産業レポート」の海外市場売上の数値で、劇場・放送・配信等の映像売上の他、アニメ関連の商品、アニメキャラクターを使用したゲーム売上等も含まれている。
・家庭用ゲームのソフト販売とオンラインは、ソニー、任天堂の決算書と、海外各国・地域の家庭用ゲームソフトの市場規模から推計した。
・スマホ・PCゲームは、日本オンラインゲーム協会「オンラインゲーム市場調査レポート」の数値から推計した。
・日本の出版物の海外売上や海外からの収入の統計は発表されていないため、海外各国・地域の日本の出版物の売上に関する情報によって推計した。
・音楽については、公表データがないため集計していない。