2025年の冬アニメでは、「SAKAMOTO DAYS」「薬屋のひとりごと」「シャングリラ・フロンティア」「俺だけレベルアップな件」が各配信サービスで圧倒的な人気を誇った(「シャングリラ・フロンティア」は2024年秋からの継続作品)。どのサービスでもランキング上位を席巻し、”4強”の様相を呈していた。
一方で、「いずれ最強の錬金術師?」「没落予定の貴族だけど、暇だったから魔法を極めてみた」「Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。」「ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います」といった、いわゆる異世界作品も安定した人気を維持し、特定のサービスではランキング1位を獲得することもあった。
上記の作品群がどの配信サービスでも強かったのは大前提として、サービスごとで人気作は少しずつ異なってくる。本稿ではdアニメストア、DMM TV、ABEMAの傾向を見ながら、2025年冬の人気作を振り返っていきたい。
【dアニメストア】異世界&人気シリーズが強い!冬アニメランキングTOPの傾向とは?
dアニメストアでは、人気シリーズの最新シーズンが特に強い傾向が見られた。特に2月から配信開始した 「Re:ゼロから始める異世界生活 3rd season」 の「反撃編」は、地上波先行配信の影響もあり、ランキングの常連となった。
また、「戦隊レッド 異世界で冒険者になる」 は新エピソード配信の前後で大幅にランキングを上昇させる現象が見られた。一時的ではあるものの、固定ファンの存在がうかがえる。
さらに、「Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。」 もdアニメストアでは特に人気が高く、デイリーランキング1位を定期的に獲得するほどの支持を集めた。
【DMM TV】異色の人気!「悪役令嬢転生おじさん」が話題沸騰した理由
DMM TVでは、意外な作品が注目を集めた。その筆頭が 「悪役令嬢転生おじさん」 だ。最速配信ではなく、遅いタイミングでの配信だったにも関わらず、視聴者の関心を引き続け、DMM TV内での強い支持を得た。
また、DMM TVでは 「ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います」 が安定した人気を維持し、配信ランキングで上位に君臨。一方で、同じくDMM TVで 「クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。」 も意外なダークホースとして人気を集め、定期的にランキングに登場するなど、独自の視聴傾向が見られた。
【ABEMA】先行配信が強み!「外れスキル」「チ。」が冬アニメの覇権に?
ABEMAでは、地上波先行配信の影響が大きく、「Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎⼠(ペット)として暮らしてます」 や 「外れスキル《木の実マスター》~スキルの実(食べたら死ぬ)を無限に食べられるようになった件について~」 が特に強い支持を得た。特に 「外れスキル~」 はデイリーランキング1位を定期的に獲得し、ABEMAのユーザー層とマッチした作品だったといえる。
また、NetflixとABEMAのみが最新エピソードを配信した 「チ。 ―地球の運動について―」 も好調。物語が進むにつれてファンが増え、最終回が近づくほどに視聴数が伸びていった。
さらに、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅤ 豊穣の女神篇」 の「派閥大戦クライマックス」が2月~3月にかけて最速配信され、これが視聴数の増加に大きく貢献した。
【SNSで話題沸騰も…】それでもサブスクランキングで伸びなかった冬アニメ
SNSでは大きな話題となったにもかかわらず、配信サイトのランキングでは振るわなかった作品も存在する。その代表例が 「メダリスト」 と 「BanG Dream! Ave Mujica」 だ。
「メダリスト」は配信戦略の影響?ディズニープラス単独最速配信の影響とは
「メダリスト」はフィギュアスケートを題材にした青春アニメであり、SNSでは高い評価を得た。しかし、配信ランキングでは思うように伸びなかった。その理由として、 ディズニープラス「スター」にて単独最速配信が行われていたこと が挙げられる。他のサービスでは遅れての配信となったため、dアニメストアなどのランキングには反映されにくかったのは当然のことだ。
「BanG Dream! Ave Mujica」の苦戦は、本当に苦戦だったのか
「BanG Dream! Ave Mujica」もまた、「BanG Dream!」シリーズのファンを中心に大きな注目を集めた。しかし、本作はSNSでリアルタイム視聴しながら盛り上がる「実況する楽しさ」が重要になっていた作品であり、サブスクには頼らなかった可能性が高い。さらに、配信サイトが多数あることで視聴数が分散し、特定のサービスで目立ちにくくなった。ランキングだけを見ると「苦戦」という表現になるが、さまざまな視点から観測必要があるだろう。
ランキングがすべてではない!テレビ放送&独占配信の影響を考える
「メダリスト」や「BanG Dream! Ave Mujica」のように、サブスクのランキングでは振るわなかった作品があるからといって、人気がなかったことを意味するわけではない。
「メダリスト」は ディズニープラス「スター」 で配信されていたため、ランキングに反映されなかっただけであり、実際には多くの視聴者がいたと考えられる。また、「BanG Dream! Ave Mujica」はテレビでの視聴者が多く、配信サイトでの視聴数が伸びなかっただけだ。
【配信時代を生き抜くために】サブスクランキングで上位に入るためのポイント
サブスクのランキングで上位に入るためには、単に「話題になる」「作品のクオリティが高い」といった要素だけでは不十分だ。配信戦略や視聴傾向を踏まえた施策が必要となる。2025年冬アニメのデータをもとに、サブスクで強いアニメの特徴を分析する。
独占配信・先行配信のトレードオフ
「外れスキル《木の実マスター》」や「チ。」のように、 特定のサブスク独占・先行配信は強力な武器となる。独占タイトルは配信サイト内での露出が増え、ランキング上位に入りやすい。しかし、その一方で 他のサービスでの存在感が薄れてしまうというトレードオフの関係がある。
「メダリスト」はディズニープラス「スター」での単独先行配信により、他の配信サイトでは話題に上がりづらくなった。このように、 特定のサブスクで強い=全体の人気が高いとは限らないことも念頭に置く必要がある。
固定ファンを掴む戦略も有効
「戦隊レッド 異世界で冒険者になる」×dアニメストア、「悪役令嬢転生おじさん」×DMM TVのように、 特定のサービスと相性の良い作品はランキングに定期的に登場する。
「戦隊レッド 異世界で冒険者になる」は特撮ファンをターゲットにすることで、固定層をしっかり獲得し、 新エピソード配信時にランキングが急上昇するパターン を確立した。このように、視聴習慣が確立している層に向けた戦略を打ち出すことも、サブスクで成功する鍵となる。
週末配信の影響を考慮する
TVアニメは、週末にテレビ放送されることが多い。それに合わせて サブスクでの最新エピソード配信も週末に集中しやすい。
「SAKAMOTO DAYS」「薬屋のひとりごと」「シャングリラ・フロンティア」などの作品は、まさにその影響を受けた代表例だ。人気作品が週末に集中すると、 その他の週末配信作品がランキングで埋もれやすくなる という現象が起こる。
サブスクランキングで上位を狙うなら、 あえて平日配信にすることで、ランキングが上位に食い込みやすくなる可能性がある。これは、DMM TVで「悪役令嬢転生おじさん」が成功した理由の一つでもある。
まとめ:配信戦略次第でランキングは大きく変わる
2025年冬アニメのデータから、サブスクのランキングにおける重要なポイントが見えてきた。
1.独占配信・先行配信は強力だが、他のサービスでの影響力が弱まるリスクがある
2.固定ファンを持つ作品は特定のサブスクで安定した人気を獲得しやすい
3.週末配信作品は激戦区になりやすいため、平日配信の戦略も有効
サブスクランキングがすべてではないが、ランキング上位に入ることは作品の認知度向上や新規ファンの獲得につながる要素でもある。 配信戦略をどう立てるかによって、アニメの成功が左右される時代 になっていることを、2025年冬アニメは示してくれた。
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
©鈴木祐斗/集英社・SAKAMOTO DAYS製作委員会
©Solo Leveling Animation Partners
©硬梨菜・不二涼介・講談社/「シャングリラ・フロンティア」製作委員会・MBS
©長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Reゼロから始める異世界生活3製作委員会
©上山道郎・少年画報社/悪役令嬢転生おじさん製作委員会・MBS
©松琴エア・はにゅう・講談社/外れスキル《木の実マスター》製作委員会
©BanG Dream! Project