
モバイルファクトリー<3912>は本日10月1日、Suishowの買収をめぐって元株主である片岡夏輝氏との間で続いていた一連の紛争について、裁判外で和解契約を締結したと発表した。これにより、同社と片岡氏との間の一連の紛争が解決することになる。
今回の和解では、片岡氏がモバイルファクトリーに解決金を支払う一方、片岡氏が保有するモバイルファクトリー株を処分し、モバイルファクトリーが保有するSuishowの全株式を片岡氏に譲渡する。2023年に成長への期待を背景に完全子会社化したSuishowについて、最終的に資本関係を解消する形で決着することになった。
■400万DLの「NauNau」に期待してSuishowを買収
モバイルファクトリーは2023年5月、位置情報共有SNS「NauNau」を運営するSuishowの株式取得と簡易株式交換による完全子会社化を発表した。
Suishowは2021年5月設立のスタートアップで、位置情報共有SNS「NauNau」やNFTを活用したメタバースプラットフォーム「Zoa.space」などを展開。当時、「NauNau」はZ世代向けの次世代SNSランキングで1位を獲得し、2023年5月15日時点で400万ダウンロードを突破していた。モバイルファクトリーは、自社が培ってきた位置情報ゲームやブロックチェーンなどのノウハウを活用し、「NauNau」の事業を加速させる考えを示していた。
買収ではSuishowの発行済み株式1万1669株のうち9669株を取得し、残る2000株を株式交換で取得することで完全子会社化する計画だった。株式の取得価額は8億2186万5000円、アドバイザリー費用などを含めた合計額は約8億2952万円だった。
当時の発表では、モバイルファクトリーの宮嶌裕二社長が、Suishowに「多くの可能性」を感じ、位置情報連動型ゲームで培ったノウハウを活用して新たなユーザー体験を提供していく考えを示していた。片岡氏も、モバイルファクトリーと協力して「NauNau」をさらに発展させる意向を示していた。
■「NauNau」の問題をきっかけに買収後の対応を協議
しかし、子会社化からわずか数カ月後の2023年10月、「NauNau」における個人情報漏洩の可能性について報道が出た。
モバイルファクトリーは10月20日に問題を認識し、10月23日には事実確認と第三者機関による調査を開始。12月7日に調査結果を公表した。その後、12月15日には、Suishowの子会社化前に株式を保有していた一部の元株主との間で、今後の対応について協議することを決定したと発表した。
この時点でモバイルファクトリーは、買収前にSuishowについて合理的な調査を行っていたものの、個人情報漏洩の可能性については認識できなかったと説明。そのうえで、株式譲渡契約において元株主から表明保証されていた事項などについて、協議すべき事項があるとの認識を示した。
つまり、問題は単なる子会社のサービス上のトラブルにとどまらず、Suishow買収時の株式譲渡契約における表明保証の問題へと発展していった。
■片岡氏には約3.9億円の返金を要求、第2回支払いも見送り
2024年1月の開示では、片岡氏との協議がさらに具体化した。
モバイルファクトリーは、片岡氏が株式譲渡契約においてSuishowに関する事項が真実かつ正確であることを表明保証
していたと説明。そのうえで、2023年12月に公表した内容などを踏まえ、片岡氏による表明保証に重大な違反があったものと認識しているとして、すでに支払った約3.9億円の譲渡対価の返金などを求めて交渉を続けていた。
また、譲渡対価は2回に分けて支払う契約となっており、2024年1月30日に予定していた約2.6億円の第2回支払いについても、片岡氏との協議が続いていることから支払いを見送った。
その後、両者の交渉は訴訟へと移行する。モバイルファクトリーは2024年3月19日、片岡氏に対して株式譲渡契約に基づく損害補償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した。
これに対して片岡氏は同年8月、モバイルファクトリーに対し、株式譲渡契約に基づく追加対価の支払いを求める反訴を提起した。以降、東京地方裁判所で審理が進められていた。
今回の和解に際してモバイルファクトリーは、裁判所から示された心証に加え、Suishowや片岡氏が保有するモバイルファクトリー株の取り扱い、訴訟の長期化による事業などへの影響を総合的に判断したとしている。
■Suishowは片岡氏へ、モバイルファクトリーとの関係を解消
今回の和解契約では、片岡氏がモバイルファクトリーに解決金を支払う。
一方で、片岡氏が保有するモバイルファクトリー株は所定の方法で処分し、モバイルファクトリーが保有するSuishowの全株式を片岡氏に譲渡することで合意した。解決金の受領後、モバイルファクトリーが本訴を取り下げ、それと引き換えに片岡氏も反訴を取り下げる予定となっている。
これによって、2023年にモバイルファクトリーの完全子会社となったSuishowは、約3年半を経てグループから離れることになる。
なお、和解契約のその他の内容については、秘密保持条項を理由に開示していない。
■和解に伴う特別利益も発生へ
今回の和解は、モバイルファクトリーの2026年12月期業績にも影響する。同社によると、片岡氏から受け取る解決金に加え、片岡氏が反訴を取り下げた場合には、追加対価として計上済みだった未払債務の戻し入れが発生する見込み。この解決金と未払債務の戻し入れによって生じる利益の合計額を、2026年12月期の連結財務諸表で特別利益として計上する予定だ。
そして、その特別利益の合計額は、2025年12月期の親会社株主に帰属する当期純利益の30%を上回る見込みとしている。具体的な和解金額などについては現時点では開示されていない。
■買収から約3年半、Suishowをめぐる一連の問題が決着
2023年当時、400万ダウンロードを突破していた「NauNau」の成長性に期待し、モバイルファクトリーとSuishowはともに位置情報サービスの新たな展開を目指していた。
しかし、買収後に「NauNau」をめぐる個人情報漏洩の可能性が問題となり、そこから買収契約上の表明保証をめぐる協議へ発展。さらに損害補償請求と追加対価請求という双方の訴訟にまで発展した。
今回の和解では、モバイルファクトリーが解決金を受け取る一方、Suishowの全株式を片岡氏に譲渡し、双方の資本関係を整理する。2023年に描いた「Suishowをグループの成長に取り込む」という構想は、最終的にはSuishowをグループから切り離す形で終結することになった。
一連の紛争を終わらせることで、モバイルファクトリーにとってはSuishowをめぐる問題に区切りをつけ、今後の事業に集中できる環境を整えることが今回の和解の大きな意味となりそうだ。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社モバイルファクトリー
- 設立
- 2001年10月
- 代表者
- 代表取締役 宮嶌 裕二
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高34億2700万円、営業利益11億2100万円、経常利益11億4500万円、最終利益4億8800万円(2025年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3912