東宝、アニメIPの海外展開を深化 配給からグッズ販売まで収益機会を拡大、2032年に向け投資先行

木村英彦 編集長
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東宝<9602>のIP・アニメ事業が、海外展開の強化に向けて事業基盤の整備を進めている。8月中間決算における同事業は増収減益となったが、この背景には一時費用に加え、海外事業の人員や管理体制の強化に伴う費用増加がある。同社は北米・欧州・アジアの各地域で配給やライセンス、商品販売などの機能を拡充しており、日本発のIPを海外に販売するだけでなく、現地で収益機会を取り込む体制の構築を進めている。

 

■IP・アニメ事業は増収も減益、海外展開に向けた費用が先行

東宝の8月中間決算におけるIP・アニメ事業の営業収入は431億3200万円(前年同期比15.6%増)、営業利益は59億7000万円(同44.2%減)となった。

営業収入は2桁の伸びを確保した一方、営業利益は大幅な減益となった。会社の説明資料では、条件付対価に関する一時費用や、海外事業の人員・管理部門の強化に伴う費用増加などが利益を押し下げた要因として挙げられている。

一時費用の影響があることに加え、海外事業では今後の成長に向けて組織や事業インフラの整備を進めている。足元の利益率だけで事業の成長性を判断するのではなく、こうした投資が今後の収益拡大につながるかが焦点となる。

 

■配給だけでなく、ライセンスや商品販売まで海外で展開

東宝の海外戦略で特徴的なのは、現地の配給会社に作品を販売するだけでなく、海外市場でIPを展開するための機能をグループ内に取り込んでいる点だ。

北米では、アニメ作品の配給を手掛けるGKIDSを通じて、劇場公開や配信プラットフォームへのライセンスなどを展開する。また、Toho Internationalは、米国で「GODZILLA SHOP」や「TOHO animation STORE」を運営し、ゴジラ関連商品やアニメ作品のアパレルなどを販売している。

欧州では、地域統括会社のTOHO Europe Limitedを設立したほか、英国のAnime Limitedをグループに迎え入れた。さらに、PLAION PICTURESとの戦略的提携を通じて、英国・フランス以外の欧州市場でも東宝作品の配給・配信機能を拡張している。

アジアでは、Toho Entertainment AsiaがIP・映像作品のライセンス、商品事業、マーケティングなどを担う。ゴジラでは、台北やマレーシアでの常設店舗の展開、中国本土でのライセンス事業に向けた提携など、地域に応じた施策を進めている。

このように、北米・欧州・アジアで現地の事業基盤を拡充することで、作品の配給や配信ライセンスに加え、キャラクター商品の販売や商品化ライセンスなど、IPから得られる収益機会を広げようとしている。

 

■海外のファンと直接つながり、IPの価値を高める

海外に自社グループの販売・マーケティング機能を持つ意義は、収益源の拡大にとどまらない。

現地のファンに作品を届け、商品を販売する機能を持てば、地域ごとの嗜好や需要を把握しやすくなる。こうした情報をマーケティングや企画開発にフィードバックすることで、作品の認知度を高め、継続的な商品展開につなげることも期待できる。

東宝は中期経営計画で、海外拠点の拡充とグループ会社間の連携を進め、2032年に海外売上高比率を現在の約10%から30%に引き上げる目標を掲げている。IP・アニメ事業についても、同年に営業利益400億円以上を目指す方針を示している。

この目標を実現するには、日本国内でヒット作品を生み出すだけではなく、海外市場で作品を流通させ、商品化し、継続的に収益を得る仕組みが必要になる。海外拠点の拡充は、そのための事業基盤を整える取り組みといえる。

 

■海外投資を収益拡大につなげられるか

海外で配給や商品販売などの機能を自社グループ内に持つ場合、現地の人員や管理体制、マーケティングなどに先行費用が発生する。一方、事業基盤が整えば、複数の作品やIPを継続的に展開し、収益を積み上げる余地が広がる。

もっとも、拠点の拡充そのものが収益性の向上を保証するわけではない。今後は海外売上高の伸びに加え、先行投資を吸収して利益率を維持・改善できるか、商品販売やライセンス事業がどの程度の収益を生み出すかが重要になる。

今回の増収減益は、東宝のIP・アニメ事業が海外で稼ぐための基盤を整備している局面を示している。日本発の作品を海外に販売する段階から、現地で配給・ライセンス・商品販売まで手掛け、IPの価値をより深く収益化する段階へと進めるか。2032年に向けた成長戦略の進捗を測るうえでも、海外事業の売上と収益性の変化が注目される。

 

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東宝株式会社
https://www.toho.co.jp/

会社情報

会社名
東宝株式会社
設立
1932年8月
代表者
取締役会長 島谷 能成 / 取締役社長 松岡 宏泰
決算期
2月
直近業績
営業収入3606億6300万円、営業利益678億8900万円、経常利益701億4000万円、最終利益517億6900万円(2026年2月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9602
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