【ゲームマーケット2026秋】個人クリエイターはどうゲームを作り、売るのか? 6作品の制作者に聞く開発と販売のリアル

山岡広樹 gamebiz編集者
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アナログゲームの展示・即売イベント「ゲームマーケット2026秋」では、さまざまなクリエイターが自ら企画・制作した作品を出展している。身近な題材をゲームに落とし込んだものから、カードの仕組みを突き詰めたもの、キャラクターの世界観を生かしたものまで、そのアプローチは多種多様だ。

一方、ゲームを形にするには、アイデアを遊びとして成立させるための工夫はもちろん、試作や製造、価格設定、販売といった工程も欠かせない。では、制作者たちはどのように発想を形にし、作品をプレイヤーに届けているのだろうか。

今回は会場で6作品の制作者に話を聞き、企画の着想やゲームデザイン上の工夫、製造・販売に対する考え方、そしてゲームマーケットに出展する意義を探った。


▲会場にはゲームマーケット公式マスコットキャラクター「コロ」の姿も。

■手作りのゲームをより多くの人へ――アイデアを商品に落とし込む工夫

『コロコロキッチンスクランブル』は、上から転がした木製ボールの動きを利用する、ピンボールやスマートボールのような物理的要素を取り入れたゲームだ。ネズミやネコなどが登場するにぎやかな世界観のなかで、ボールの行方を予測しながら遊ぶ。

本作は、ツノガエル氏が手作りしていた木製のコリントゲームをもとに、ノスゲムの佐藤氏がディベロップを手掛けたもの。元の作品は手作りゆえに価格が高く、年間の制作数も10個ほどに限られていたという。

佐藤氏は、ゲームとしての面白さをより多くの人に届けたいと考え、コンパクトなサイズにまとめた。量産に向けては台湾の工場とやり取りしながら何度も試作を重ねたといい、物理的な仕組みを備えたゲームを製品化するまでには苦労もあったという。

コスト削減を最優先したわけではなく、試作を繰り返して品質を確認したうえで量産に進むという開発工程を経て、より多くの人が手に取れる形を目指した。



一方、キャラクターのコンセプトをゲームに落とし込んだのが『シェリベルとつくる! ファッションブック』だ。

本作は、ファッションブランドの立ち上げを目指すウサギのキャラクター「シェリベル」の世界観を生かした、塗り絵を使うボードゲーム。プレイヤーは「シチュエーション」「テイスト」「モチーフ」のカードを引き、指定された季節や色、アクセサリーなどの条件に沿って服をデザインする。完成した作品を見比べ、デザイン性を楽しむ仕組みだ。

制作者は、ファッションや塗り絵を題材にしたボードゲームが意外と少ないことに着目。キャラクターをより多くの人に知ってもらう手段として、ボードゲームを制作したという。

ゲームデザインでは、点数によって明確な勝敗を決めるのではなく、完成したデザインを見比べて楽しむ形にすることに苦労した。一方で、完成した作品をInstagramやXなどに投稿すれば、対面で遊んだ人だけでなく、SNSを通じて世界中の人とも楽しみを共有できる。ゲームを遊ぶ体験とキャラクターの認知拡大を結び付けた試みといえる。



■絵柄やデータを遊びに変える――ゲームとして成立させるための試行錯誤

ゲームの題材だけでなく、遊びの仕組みそのものに工夫を凝らした作品もある。

『SYMBOLS(シンボルズ)-PUPPIES & FLOWERS-』は、犬や花の絵柄を使った、カルタのようなゲームだ。お題カードに示された2つのシンボルを手掛かりに、該当する絵柄が多く含まれていそうなカードを取る。制限時間内にカードを選んだあと、実際に含まれるシンボルの数を確認し、最も多く集めたプレイヤーがカードを獲得する。

制作者が意識したのは、絵柄そのものを楽しめるゲームにすること。絵柄だけでゲームとして成立させる方法を考えた結果、このシステムにたどり着いたという。

ただし、アイデアを思いつくだけではゲームとして成立しなかった。絵柄に含まれるシンボルの数を数えるのが難しく、遊びやすさに課題があったためだ。そこで、カードの裏面にシンボルの数を記載し、お題カード側にも確認箇所を示すことで、プレイヤーが数を確認しやすい仕組みを取り入れた。

ゲームのアイデアを実際の遊びにするうえでは、ルールを考えるだけでなく、プレイ中に生じる手間や分かりにくさを取り除くことも重要になる。『SYMBOLS』では、カードの情報をどう配置するかが、遊びやすさを支える工夫となっている。



データを題材にした『会社王』も、発想と仕組みを結び付けた作品だ。東京ゲームメーカーズのミヤザキユウ氏が、企業のIR情報を使って制作した本作では、売上高や平均年収などのお題に合わせて、企業カードを数値の順に並べていく。ただし、カードは伏せた状態で扱うため、プレイヤーが見られるのは企業名のみ。知識や直感を頼りに順番を予測し、並び方に疑問があれば「ダウト」を宣言する。

ミヤザキ氏は以前からデータを見ることが好きで、過去には野菜の栄養素を比較する『サラダマスター』も制作していた。企業データを使ったゲームもいつか形にしたいと考えていたが、データ収集に手間がかかることが課題だったという。

そこで活用したのがAIだ。データを集める作業をAIに任せ、集めた情報の確認は自ら行うという分担によって、今回の作品を形にした。ただし、AIによって作業がすべて解決したわけではない。企業情報に誤りがあってはならないため、最終的なチェックには大きな労力をかけたと話す。

制作を効率化する手段が増えても、作品の信頼性を担保するための確認作業は欠かせない。『会社王』は、AIを活用した個人制作の一例であると同時に、情報を扱うゲームならではの責任も示している。



■既存作品の展開から遊びやすさの追求まで――制作の方向性はさまざま

シエラゲームズが手掛ける『VIVID ENGINE: IGNITION』は、2019年に発売された『VIVID ENGINE』をもとにした作品だ。同人ボードゲーム制作サークル「96組」が開発した作品を、シエラゲームズが手掛ける形で制作された。

制作者は、カードゲームが好きだったことに加え、デッキ構築とすごろくを組み合わせたようなシステムや、カードを混ぜない独自の仕組み、そしてイラストレーターのエカニス・エニカ氏への思い入れが制作を引き受ける決め手になったと振り返る。

制作面で苦労したのは、カードのアートワークだ。本作はカードの表面だけでなく裏面の絵柄も異なるため、工場との調整に時間を要したという。作品の魅力を支えるビジュアルを実現するためには、ゲームのルールやカード構成とは別の部分でも、製造工程を見据えた調整が必要になる。

また、商業的にゲームを制作する場合の価格設定については、人件費や印刷費などを計算したうえで、原価率を3~4割に抑える必要があるとの考えを示した。作品へのこだわりと、継続的に販売していくための採算性。その両方を意識していることがうかがえる。



遊びやすさを追求した作品としては、『ひらがな麻雀 ひらがじゃん プロ版』も挙げられる。麻雀の牌やプレイ感覚を取り入れながら、点数を競う代わりにひらがなを組み合わせて言葉を作るゲームだ。ひらがなが読めれば遊べるため、麻雀の経験がない人も参加しやすい。

プロ版では、一般的な日本の麻雀と同じ136枚の牌を採用し、牌のサイズも28mmとすることで、牌を積み重ねる感触や音といった要素も生かしている。

制作者が重視したのは、年齢や性別、地域、麻雀の経験に関係なく、幅広い人が遊べること。その一方で、麻雀らしさを残すため、ひらがなの組み合わせや使用する文字の種類・枚数、全体の構成を考える部分には苦労したという。

販売面ではAmazonを主な販路としており、ゲームマーケットでは出品手数料の違いを踏まえ、できるだけ手に取りやすい価格に設定している。イベントで直接販売する機会を生かし、購入者の反応や要望を次回作や価格設定に反映していきたい考えだ。



■製造数や価格はどう決める? 作品を届け続けるための現実的な判断

今回話を聞いた制作者たちの間では、製造数や価格設定に対する考え方にも違いが見られた。

初出展の『シェリベルとつくる! ファッションブック』では、類似する作品が少ないなか、サイズやゲームのボリュームが近いものを参考に価格を決め、製造数も少なめに設定。一方、『SYMBOLS』は、生産コストを価格設定の基準としつつ、過去の出展経験や販売実績、作品ごとのターゲットを踏まえて製造数を調整しているという。


▲シェリネやベルナといった可愛らしいキャラクターたちが魅力的な『シェリベルとつくる! ファッションブック』。

『会社王』は、完売しても赤字になってしまう事態を避け、きちんと利益が出るように製造数を考えると説明。作品を売り切ることだけを目標にするのではなく、制作を継続するための採算性も重視している。

『VIVID ENGINE: IGNITION』でも、原価率を意識した価格設定が語られた。対して『ひらがな麻雀 ひらがじゃん プロ版』は、Amazonでの販売を軸にしながら、イベントでは手数料の違いを価格に反映し、直接購入してもらいやすい形を目指している。

作品の規模や販売方法、出展経験によって判断基準は異なるものの、製造費や販売価格を考えることは、ゲームを商品として届けるうえで避けて通れない。アイデアを形にする創作面だけでなく、どの程度の数を作り、どの価格で販売するかという判断も、制作者に求められる仕事のひとつだ。

■ゲームマーケットに出展する意義――作品を知ってもらい、プレイヤーの声を聞く

制作者たちにとって、ゲームマーケットは作品を販売するだけの場ではない。

『コロコロキッチンスクランブル』の佐藤氏は、さまざまな人に作品を見てもらい、実際に触って遊んでもらえることを出展の意義として挙げた。近年は予約して購入するケースも多くなったと感じているものの、作品を知ってもらい、購入につなげられる場としてありがたいという。



『シェリベルとつくる! ファッションブック』の制作者も、キャラクターを知ってもらうことに加え、制作者自身が来場者と直接話し、ゲームの楽しさや制作時の思いを伝えられることに価値を感じている。

『SYMBOLS』の制作者にとっても、自分が好きなものを来場者に手に取ってもらい、購入して楽しんでもらえる機会であることが魅力だという。

また、『会社王』のミヤザキ氏は、アナログゲームならではの小回りの良さに注目する。デジタルゲームは複数人の協力が必要になることが多い一方、アナログゲームでは小規模な体制でも自分のアイデアを形にし、比較的素早く試すことができる。今回はAIも活用しながら、製造を印刷会社に依頼する以外は、ほぼ一人で制作を進められたという。


▲東京ゲームメイカーズのミヤザキユウ氏。

『ひらがな麻雀 ひらがじゃん プロ版』の制作者は、普段の主な販路がAmazonであることから、購入者と直接話せる機会を重視。実際の反応や改善要望を聞き、次の作品や価格設定に生かしたいと話していた。

一方、『VIVID ENGINE: IGNITION』のシエラゲームズは、ゲームマーケットをお祭りのような場と表現する。出展準備にはプレッシャーもあるが、会場に来て来場者と交流することで、イベントならではの楽しさを感じられるという。


▲シエラゲームズのブースでは、多くの来場者が足を止め、商品を購入する姿が見られた。

■アイデアを形にし、プレイヤーへ届けるまで

今回取材した6作品は、物理的な仕組みを持つゲームの製品化、キャラクターの世界観を生かした企画、絵柄や企業データを使ったゲームデザイン、既存作品の展開、そして誰もが遊べる仕組みづくりと、それぞれ異なるアプローチで制作されていた。

一方で、共通していたのは、アイデアを思いつくだけでは作品は完成しないということだ。遊びとして成立させるための調整や試作、製造工程とのやり取り、情報の確認、価格や製造数の判断など、作品を商品として届けるまでには多くの工程がある。

そしてゲームマーケットは、そうして生まれた作品を販売するだけでなく、制作者自身が来場者に魅力を伝え、反応を受け取り、次の制作へとつなげる場にもなっている。

ゲームを作る方法も、作品を届ける方法もひとつではない。制作者それぞれの発想や工夫、販売に対する考え方を知ることで、ボードゲームの面白さは、プレイ中の体験だけでなく、それが生まれてプレイヤーの手に渡るまでの過程にも広がっていることが見えてくる。



(取材・文 編集部:山岡広樹)

 

 

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