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【NDC18】『Durango:Wild Lands』の事例からディレクターが「夢を実現する方法」を伝授…問題に直面したとき解決に必要となる力とは

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ネクソン<3659>連結子会社のNEXON Koreaは、4月24日~26日の3日間、韓国最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 18(NDC18)」を開催した。
 
本稿では、24日にネクソン WHAT!STUDIO戦略ユニットリーダーのヤン・スンミョン氏によって行われた「『Durango:Wild Lands』ゲームデザインレビュー」のセッションについてレポートしていく。本セッションでは、『Durango:Wild Lands』(以下、『Durango』)が配信開始されるまでの開発過程や制作に関する裏話が語られた。


▲『Durango:Wild Lands』でクリエイティブディレクターを担当するヤン・スンミョン氏。ゲームデザインの総括がメインだが、技術的な課題やプロジェクトマネジメントについても管理を行っている。
 
まずヤン氏は、本講演で「夢をかなえる方法をについてお話したいと思います」と切り出した。大衆的に知られること、売り上げを上げること、自分の作りたいものを作ること、夢の形は人それぞれだが、誰もがその過程で多くの問題に行き当たる。そのハードルは、コスト、技術力、チーム力など様々なものがあるが、こうした問題点と折り合いをつけてゲームを作成するのは妥協しなければならないということでもあるため、開発者にとっては最も苦痛を強いられる過程であるとヤン氏は続ける。その中で、大きな夢を持ってスタートし、多くの形で夢を実現してきたのが『Durango』だと語った。
 
そこでヤン氏は今回、『Durango』が実現した夢として下記の6つの点について、どのような方法で成功したかをゲームデザインの側面から話すことを明かした。なお、こちらの6点は『Durango』のプロジェクトがスタートしたときから抱いていた夢だったということだ。
 
【『Durango』で主に描いた夢】
・パーマネントなMMOワールド
・常に変化する環境
・リアリティのある世界
・新たな成長モデル
・大衆的な成功
・技術、アートの部分をハイレベルなものに
 
1.パーマネントなMMOワールド
『Durango』は、チャンネルなどで分散されることなく、ひとつにリンクされた世界で多くのユーザーが同時プレイできるゲームとなっている。また、自分の家を建てるにも特別なハウジングエリアなどが用意されているわけではなく、世界中どこでも自分の好きな場所を開拓して家を建てることができる、といったような自由度の高さが特徴となっている。ヤン氏は、ユーザーインタラクティブによって世界が作られていくゲームを作ろうという夢があったと話した。
 
この夢から、舞台は湖や川、雪原や砂漠といった環境が存在する巨大大陸にすることが決定。しかし、単一大陸でサイズを決めてしまうと人口密度の増減に対応できないため現実的ではないと判断したという。
 

▲単一大陸のプロトタイプ。実際にネクソンの社員300名ほどがこの大陸でのプレイしてみたとのこと。
 
そこで次に考案されたのが、人口がいっぱいになった際に新たな大陸が自動生成されるという方式だ。ここで問題となったのが、大陸が生成される時期によって空き地や人口密度にバラつきが生まれてしまうという点だ。『Durango』では、野生の地に遭難したことから自身で探検して道を切り拓いていく楽しみを味わって欲しかったが、そうした体験も得られにくくなってしまったという。
 


▲そこで、定着地と探検値を「安定島」と「不安定島」という形で分離することで持続的に新たな土地を供給することには成功する。しかし、安定島では古参ユーザーに物価が私有化されてしまい、新規ユーザーは有利な土地を得られなかった。
 
次に考えたのは「引っ越し」システム、そして私有地を奪い取ることができる「争奪戦」だという。しかし、「争奪戦」はカジュアルに参入するユーザーが減るという問題も発生してしまうためこの段階では実装を断念した。その代りに登場したのが「無法島」というシステムだ。現在はここでのみ私有地の争奪戦ができるという形にし、ユーザーからも好評を得ているとヤン氏はコメントした。そして、今後もインタラクティブな要素を持ってマップが作られる要素を追加していきたいと考えていると加えた。
 

 
2.常に変化する環境
続いて開発メンバーは、常に変化する環境を作るために、環境のシミュレーション要素を取り入れたいと考えたという。初期プロトタイプで環境変化を具現化したものを作成し、タイル単位に肥沃度を持たせて木を生やす、その周りに草食動物が集まるようにといった実験を行った。
 

▲プレイヤーが多くの木を伐採することで廃墟と化してしまったり、他の植物が生まれたりと生態的に面白い現象が発生したとのこと。川へ水を飲みに来た草食動物を、ティラノサウルスが狙うという事象も見られたとか。
 
上記のように面白い現象は見られたものの、土地の面積によってシミュレーションの速度が若干違ったことから、ここで得たロジックをそのまま使うことはできなかったとヤン氏は話す。また、植物や自然を美しく配置するためのルール決めなどを含めるとロジックが複雑になる。そこで、このロジックを効果的に処理する方法として、プロダクションをするうえでコンテンツデザインをコード化し、シミュレーションで見られたように特定の資源が絶滅してしまうとゲームが進行できなくなってしまうことを防ぐため、魅力的な資源は強力な動物に守らせるなどといった概念が追加されていく。その過程の中で厳密な因果律が消滅していったという。
 
こうして、綺麗で意図された環境が要求条件によって自動的に生成されることには成功したが、ユーザーのプレイによって生態系が引き続き変化するというシミュレーションは諦めてしまったと結論を述べた。
 
3.リアリティのある世界
 
3つ目はユーザーが実際に野生の地に遭難したような体験をさせたいという夢だ。遭難してしまった場合には決まった物語に沿って話が展開することはないように、よりリアルな体験を追い求めた。ただ、苦労することをゲームとして面白い行動に落とし込む方法については悩ましいポイントだったとヤン氏は振り返る。例えば、RPGではNPCから与えられるクエストが一種の刺激となり楽しみに繋がるが、クエストがない『Durango』ではこの問題を解決することが非常に難しい。
 
このとき、『Durango』の軸となっていたのは生存と協力という点だ。生存本能から、ユーザーは死なないためにゲームをプレイする。そして、自分のためだけではやる気が起きないことも、他人に必要とされることがモチベーションに繋がるとヤン氏は説明した。
 

▲当時はドキュメンタリーを参考に「水や食料、寝床」など生き残りに関連することを全てゲージ化してゲームに入れ込み、問題が発生したポイントに対応していくという形となっていた。しかし、モバイルの小さな画面では全ての情報をユーザーに伝えることが厳しかったとヤン氏は語る。
 
また、大きな問題となったのは「生き残る」ということに固執するあまり発展が生まれず、これはゲームの面白味を生み出さないということに気付いたという。そこで、ゲージは疲労度を単純化するのみに留め、限定された資源を自らの発想力で生き残りに使用していく方向でゲームが進められるような舵取りを行った。
 

▲韓国のテレビ番組から、ガラスの破片を矢尻にしたり、料理道具を作っているのを参考にしたとのこと。「属性基盤」というシステムを作成し、資源を様々な方法で加工することにより、実際にできそうなことをゲームの中で体験できるようにした。
 
上記の試みが、ユーザー間の協力の活性化にも大きく貢献したという。システム面は複雑化して難題なものとなったが、多くの議論を経て今リリースしているものを作ることができたとまとめた。
 
こうして協力に関するモチベーションを与えることには成功したが、依然ひとりで遊ぶ際のモチベーション維持には問題が残った。プレイしたユーザーアンケートの中には「この苦痛な世界で生き延びる必要があるのか?」という意見まで寄せられてしまったという。
 
そこで、それまで反応型のガイドだったところを、試しにストーリーが少し入ったクエストのようなガイドに変更。最初は数時間で遊べるものだったが、これがユーザーから非常に好評だったとのこと。さらに、ガイドが切れた瞬間に何をすればよいか分からないという反応があったので、島が生成された段階でクエストも一緒に生成されるようなシステムを取り入れることになった。
 

▲当初こそNPCもクエストも実装していなかったが、ここでクエストを導入したことでユーザーが自らモチベーションを作るまでのスペースを埋めてくれるものになったとヤン氏は説明した。
 
しかし、最初はNPCやクエストを導入していなかったからこそ、こうした一連のプロセスを経てクエストというシステムの重要性を再確認することができたと素直な感想を述べた。
 
4. 新たな成長モデル
続いて、特別な成長モデルを実現するため、最初に考案されたのは「戦闘」、「生活」、「社会」のレベルを基盤にしたモデルだ。
 
当時、MMORPGはサンドボックス型とテーマパーク型に分けることができたという。その中で、サンドボックス型で採用されていたのは、スキルツリーが非常に複雑で自由に成長できるが、学ばなければならないことも多いためやや難解なシステムとなっていた。一方、テーマパーク型はカジュアルな成長モデルで単一レベルが存在するため、自由度は限られるが学びやすい構造となっていたと紹介する。
 
本意としては自由度の高いサンドボックス型の成長モデルを取り入れたいが、ラーニングカーブが高くカジュアルさがなくなってしまうため、3つのレベルに圧縮して将来の夢に基づいて発展させることでラーニングカーブしようという試みで先の成長モデルが提案されたのだと説明した。
 

▲この後、ヤン氏はチーム内でコミュニケーションを経るうちに自分たちが本当に求めるものが何かを理解していったと話す。
 


▲サンドボックス型で様々なモデルを検証しながら、長くて外れのない成長という部分を守ることで自ずと協業ができるように誘導していった。
 
ここで検証を進めるうち、あまりにもシステムが複雑になりすぎてしまったため、一度、単一レベルの成長システムを導入することに。しかし、これにより戦闘でレベルを上げて生活スキルを取得するという望ましくない傾向が見られる、という新たな問題が発生してしまう。
 
そこで、サンドボックスが持つ自由度の高さはそのままに、大衆向けのラーニングカーブを維持するため、単一レベルと系列別のレベルを共存させる今のシステムに決定したという経緯を明かした。結果的に、このシステムに決定してからはプレイヤーにアイデンティティが生じたことから自ずと役割分担までしてもらえるようになったという。
 
5.戦闘
戦闘に関しては、先述したパーマネントなワールドや変化する環境が実現できれば狩りも楽しいものが作れるのではないかと考えていたとのこと。しかし、開発メンバーに『マギノギ英雄伝』を開発していた方も在籍しており、その場でただ剣を振り回すだけのような戦闘にはしたくない、またネットワーク上にラグが発生しても不自然に見えないようにしたいといった意見が挙がった。
 

 
しかし、戦闘を行ったり逃げたりすると同期化の負荷が発生するため担当者は非常に苦労したポイントだったという。動物を退治するような基盤を作り、戦闘視野を制限するなどの工夫を行ったがまだ問題は残っているため、今のものが完成系と思わず改善方法を模索していると話した。 

ヤン氏は、夢を実現するにあたって中には惜しいものもあるが、最初に描いた夢があまりにも大きかったこともあり、これだけ不確実性の高いプロジェクトがロンチに成功しただけでも不思議だと言われることもある、とコメント。その中で『Durango』が成功できた要因のひとつに、外部ユーザーを対象としたテストを多数行ったことが役立ったと分析した。
 
『Durango』では、毎ビルドごとにテスターを招いてデバイスにゲームをインストールして1~2週間プレイしてもらったほか、G-STARに出展したり、海外ユーザーの反応を見たりもしたという。ヤン氏は、内部の人間だけでなく外部ユーザーを対象にテストを行うことでよりストレートなフィードバックが得られるので参考になると話す。さらに、テスターの深層インタビューを行い、ログを分析して発言が正しいか検証することでより信頼性の高いデータを得ることができるということも述べた。
 
そのほか、チームメンバーと討論を重ねることの重要性や、ビルドごとに正しい方向に進めているかを再検討することの必要性についても説いた。開発を進める中では何かを諦めなければならない瞬間も発生するが、そうした際に後悔しないよう「何故、諦めなければならないか」という根拠を残しておくことが重要になるとのことだ。
 
最後に、今回の講演で話したクエストや単一レベルの話からも分かるように、従来のゲームで上手く働く仕掛けに理由があることを学んだという。『Durango』の開発を通じて、レベルやクエストが何故存在し、どういった役割をしているかを再発見できた。また、最初にクエストを排除したことでクエストに頼らないゲームデザインが可能になったと収穫を述べた。ジャンルの文法を否定することが、ありきたりなゲームにならず思いもよらなかった妥協点を見出すことができる非常に良い方法だったとまとめた。ヤン氏は「国内ゲーム市場においても多用なチャレンジをするゲームが増えることを望んでおります」とコメントして講演を締めた。
 
 
(取材・文 編集部:山岡広樹)



■関連サイト
 

NDC公式サイト(韓国語、英語のみ)

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企業情報(株式会社ネクソン)

会社名 株式会社ネクソン
URL http://www.nexon.co.jp/
設立 2002年12月
代表者 オーウェン・マホニー
決算期 12月
直近業績 売上収益2349億円、営業利益905億円、最終利益567億円(2017年12月期)
上場区分 東証一部
証券コード 3659

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