【GameBank設立発表会】ゴールは「201x年までに国内最大のオンラインゲームパブリッシャーとなる」…ヤフー/ワイモバイルとの連携などを公開…加入者限定でゲーム体験版の先行配信など


川邊氏と椎野氏

ヤフーグループのゲームパブリッシャー・GameBankは、都内にて事業説明会およびタイトル発表会を4月8日に開催した。事業説明ではGameBankのビジョンやグループ会社のヤフー、ワイモバイルとの連携事案に関しての説明が行われ、タイトル発表では2015年にサービス提供予定の4タイトルが発表された。

【関連記事】
GameBank、スマートフォン向け新作ゲームを発表…アクションRPG『オービットサーガ』や釣りゲーム『みんなの釣りバカンス』など4タイトルを年度内にリリース
【インタビュー】ヤフーのグループ会社GameBank 代表取締役社長 CEOの椎野真光氏が語る「これからのオンラインゲームアプリ」
GameBank、事業説明会およびタイトル発表会を本日開催! パネルディスカッションにはスクエニ安藤氏、Aiming椎葉氏も登壇
ヤフー、スマホ向けゲーム会社「GameBank株式会社」を設立…ゲームパブリッシング事業に進出


本稿ではまず、GameBankの事業説明パートについてレポートしていく。

■「SNSやゲームの世界にヤフーのユーザーを増やしたい」がGameBank設立のきっかけ

 
まず、オープニングスピーチに檀上に立ったのは、GameBank 取締役の川邊健太郎氏(ヤフー株式会社COO)。ヤフージャパンはここ3年間、新体制のもとで「スマデバ(スマートデバイス)ファースト」を掲げ、来年の設立20周年を前に、スマートデバイス向けに各種サービスを展開してきた。4,300万人ほどのスマデバユーザーに対し、結果3,900万人がなんらかのヤフージャパンのサービス(ブラウザ、アプリ)を利用しているという(スマデバユーザーの90%)。

ここ1、2年はアプリのリリースにも力を入れ、App Annieの調べによれば、2014年、初のTOPアプリケーションパブリッシャーとなった。同社はこれまでユーティリティやニュースアプリなどに力を入れてきたわけだが、調査によれば、スマデバユーザーは1日に2時間42分、平均でデバイスを使っているが、その利用時間のうち、ゲームが約32%を利用しているという結果があり、SNSとともに利用比率が高いということが明らかとなっている。

そこでヤフーとしては、「ユーザーが一番時間を使っているものをもっとやらなければならない」、「ゲームやSNSを使っているユーザーの方々に、『こういったサービスもあるんですよ』とご案内を申し上げて、SNSやゲームの世界にヤフーのユーザーを増やしたいと考え、GameBankが設立されたと川邊氏は設立の経緯を語った。

設立にあたっては、椎野氏をはじめ、たくさんの優秀なゲーム開発者を採用し、ヤフージャパン本体とは別のルールでヒットアプリを出せるような体制を整えているという。また、多くのゲームパブリッシャーとも契約できていることを明らかにした。

GameBankの特徴として、川邊氏はヤフージャパンの強力なプロモーション力を存分に使い、ヤフーユーザーに新しいジャンルのゲームを訴えかけていくこと、そしてヤフージャパンの約100あるサービスとの連携を考えていきたいとし、「ヤフージャパン全体がゲーム脳と化し、新しいゲームのジャンルをスマデバの世界に確立していきたい」と挨拶を締めくくった。

■「日本一ゲームプレイヤーを創る会社」になっていきたい

続いて、代表取締役社長 CEOの椎野真光氏がステージに登場した。椎野氏からは、同社のビジョンや目指すゴールについてが語られた。一部は本日弊誌に掲載したインタビューにて語られているので、そちらも併読していただければ幸いだ。(関連記事

4月1日に代表取締役社長 CEOとなった椎野氏は、GameBankの理念として、「人と繋がると、楽しい…コミュニケーションこそ最大のエンターテインメントである」をまず紹介した。オンラインゲームを数多く作ってきた椎野氏は、それ以上にオンラインゲームを遊んできたといい、ゲーム自身の面白さはもとより、「仲間とのコミュニケーション」こそが面白さの本質であると強く感じてきたという。GameBankはオンラインゲームをしっかりと届けられる会社にしていきたいという。

同社のビジョンは「一億総ゲーマー」というもので、日本人全員が、ゲームを心から愛しているという状況にしていきたいという考えで、ほとんどのネットユーザーがヤフーのサービスを利用していることから、利用者に対してしっかりと作ったゲームを届けていくことを目指している。

ここで、椎野氏は現状について自身の視点での解説を入れた。スマデバが全盛期を迎えているが、アプリや技術に関しては踊り場に来ている…が、椎野氏は「この時代は素晴らしい」と感じているという。ワイヤードでオンラインにつながっており、ハイエンド化し、普及率も高く(特に20代)、フリーミアムモデルのタイトルにより、これまでの10倍以上のユーザーに対してゲームアプリがリーチできていることがその理由だ。ここにヤフーの高いリーチ率を用いることで、「一億総ゲーマー」のビジョンを実践していきたいと考えていると述べた。

同社の事業のゴールとして、椎野氏は「201x年までに、国内最大のオンラインゲームパブリッシング会社となる」とぶち上げた。壮大な目標だが、「これは我々だけでできるとは考えておりません。我々はスタジオを持ち、自社開発も行いますが、同時にヤフーグループとして、ユーザーにコンテンツを届けられるパブリッシング環境を総合的に整備してまいります。これらの強みを活かして、パートナーとの協業やライセンスインなども積極的に行ってまいります」とした。そして「日本一ゲームプレイヤーを創る会社」になっていきたい、と述べ、「まだまだできたばかりの会社で大きいことを言っているなと思われるかもしれませんが、1歩ずつこのゴールに向かって進んでいきたい」と話を締めくくった。
 

■マスプロモーションではヤフーだけでなくソフトバンクグループとの協業も視野に


事業戦略に関しては、同社プロダクション部 部長の北山俊輔氏に説明がバトンタッチされた。

北山氏は「どんなマーケットに対して」、「どんなコンテンツを」、「いつ、どのタイミングに提供していくか」を説明し、続いてヤフージャパンとの連携、そして最後に同社が捉えたいビジネスチャンスについてを語ってくれた。

・狙うマーケット

北山氏の話は、同社のマーケット分析から話は始まった。まず、氏は2つの切り口からマーケットを分析していると紹介し、その1つ、カテゴリー(間口)に関しては、「カジュアル」、「ミッドコア」、「ハードコア」と分類し、それぞれの代表的なアプリを配置。そしてそれぞれのジャンルの事業規模予測を披露した。なお、「ハードコア」ジャンルに関しては、椎野氏のインタビューにある通り(参考記事)、「オンラインに常時接続しているコンテンツ」と定義づけを説明した。

 

もう1つはマーケットサイクル。Supercellの『Clash of Clans』を例にとり、時系列で見た場合、マーケットがどう形成されていくかを主眼に置いた資料を提示した。まず、「イノベイター」として『Clash of Clans』が成功を収めると、「フォロワー」と呼ばれるようなゲームデザインを模したタイトルがマーケットにあふれる。その後、IPを使って差別化する「ニッチャー」コンテンツが登場し、その先に新しくそのゲームから軸をずらすような「リ・イノベイター」というコンテンツが出てくると考えているという。

例えば開発力の高い会社なら「イノベイター」のポジションを積極的に取りに来ると考えられ、集客に強い会社なら、フォロワーのポジションであっても集客の力技で勝つことができる。たとえば、強いIPを持っていれば、成熟市場であっても差別化戦略を打つことが可能だ。北山氏は、「現状のマーケットでIPものがあふれているということは、成熟した市場における差別化が活きているマーケットだと感じている」とした。

北山氏は新規ジャンルがロングタームで形成されていくプロセス=成功コンテンツが派生していくタイトル群をグルーピングして、それを一つのジャンルとして認識しようという考え方をマーケットセグメントと考えているとし、話を続けた。

ジャンルの中のシェアに関しては、やはりイノベイターが強く、最初に手を付けたものがマーケットを取っていく傾向が強いとした。


 
そこでGameBankはどこを狙うのか、というと、カテゴリに関してはポートフォリオを組んでいく。どこか一つのカテゴリーだけでなく、比較的すべてのジャンルにタイトルを投入するが、ハードコアタイトルにリソースの半分以上を注ぎ込むという。また、各ジャンルにおいてイノベイターのポジションを狙い、「新しいマーケットを自ら作ってイノベイターとしてNo.1になることを目指したいと考えている」と説明した。

それぞれのジャンルへの方針では、力を入れていく成長途中のハードコアジャンルに対してはカテゴリリーダーになるべく、韓国、中国などからのコンテンツ調達も積極的に取り組むとした。
 
・GameBankが作りたいもの

続いて、同社が作りたいもの(特にハードコアマーケット向け)として、コミュニケーション(つながり)をコアに、すでに完成されているオンラインゲームのデザイン(MMO、ストラテジー、MOBAなど)を乗せ、UI(ユーザーインターフェイス)などモバイル向けに変更しつつ、そぎ落としていく最適化を行ったものになるという。

そして、オンラインゲーム開発力とともに、同社が重視しているのが運営力だ。PCオンラインタイトルの運営経験者を積極的に採用することにより、モバイルデバイスにおいてもPCオンラインタイトル並みの運営力を発揮したいとした。

また、ロイヤルカスタマーマネージメントを実現するべく、「コミュニティデベロップチーム」を新設。「コミュニティを体系化するというのは非常に難しいが、ロイヤルカスタマーをいかに作って、囲い込んでコミュニケーションを取るかは、我々にとって非常に重要なことと考えている」と北山氏は述べ、それを実行するのがGameBankであるとした。

そして、GameBankは、日本だけでなく、すでにハードコアのシェアが20%~30%ある東アジア(中国、韓国など)を含めたマーケットにコンテンツを提供することで、ビジネスを成立させたいとした。そうすることで、日本のみでは300億程度だが、1,500~2,000億のマーケットでビジネス成立を狙っていけるわけだ。
 

・投入タイトルは?

GameBankでは、2年の間に10本程度開発タイトルを市場に投入していく予定があるという。現状、7本に着手し、ヤフーのゲーム事業部時代から手掛けているミッドコアタイトルをはじめ、アクションRPG、スポーツ、パーティゲーム、そしてMMORPGの4本を公開するとした。

 


・ヤフージャパンとの連携モデル

ゲームは、スマートデバイスの収益の大きな柱となると考えられるため、GameBankは、ヤフージャパンからのサポートを最大限に活用していきたいと北山氏は述べ、具体的な連携モデルが紹介された。

一般的なプロモーションも1つ1つ実施しつつ、ヤフージャパン向けの独自のプロモーションを加えていく…とくにマスプロモーションに関しては、成功の大きなドライバー(立役者)としてウエイトが高くなってきているため、認知度の向上のため、ヤフージャパンのトップページへのコンテンツ掲載を行うことで、一般的マスプロモーションと同様の効果が得られると考えているという。それだけにとどまらず、「ヤフーの露出面を使い倒していきたい」とした。
 

それに加え、ヤフーモバイルとの取り組みでは、加入者限定でゲームの先行体験版を独占配信することを明らかにした。サービスの提供は5月以降を予定しており、「ヤフーだけでなく、ソフトバンクグループの中でも一緒に協業できところがあれば、積極的に模索していきたい」と考えているという。


・GameBankが捉えたい勝機

最後に北山氏は、GameBankがハードコアコンテンツに力を入れる理由として、日本のハードコアカテゴリが現状の市場の10%程度の水準から20%ぐらいまで伸びると考えており、そこに複数のタイトルを用意したいこと、海外とギャップのある日本とアジアのマーケットの流動性が高まることで、今後は最終的にある程度の融合が進む時代が来ると予測し、そこに展開しやすいPCオンラインタイトルがハードコアコンテンツであることを挙げた。
そして、モバイルゲームの課金モデルに関しても、ガチャが主流の日本のコンテンツは、海外とのギャップにつながっていることから、アジアで一般的ないわゆるVIP課金、ロイヤルカスタマー向けの課金モデル、月額課金モデルといったものが日本のモバイルゲームにも適用できないか…今の日本のモバイルゲーム市場にないものを横展開する、というイノベーションにも積極的に取り組んでいきたいとした。

また、ヤフージャパンのトラフィックをモバイルゲームで収益化するか、それをどう体系化してシステム化していくかもきちんと考えていくとした。「システム化できれば、サードパーティモデルに展開して、新しいビジネスがそこで作られるかもしれない」と北山氏は展望を述べ、プレゼンテーションを締めくくった。
 

■メタップスの解析システム「Metaps Analytics」を導入

続いては、メタップス 代表取締役CEOの佐藤航陽氏より、ビデオメッセージが披露された。

それによれば、GameBankはメタップスの解析システム「Metaps Analytics」を導入している。アプリディベロッパーが自社アプリのデータを統合的に管理し分析できるDMP(データマネジメントプラットフォーム)で、ユーザーの管理から、マーケティングプロモーションまでワンストップで提供する。ビッグデータ分析と人工知能を活用して、適切なユーザに適切な広告を配信できるだけでなく、アプリを横断してデータを一元管理し、セグメントごとにユーザの動向もデータドリブンに行っていくことができるという。

佐藤氏は最後に、GameBankに期待することとして、「アジアを中心にグローバルにパブリッシングをしていけたらなと思っております。弊社もアジアを中心にビジネスを展開しているので、アジアへのゲームプロモーションを一緒にやっていけたらなと思っております」とコメントした。

 
GameBank株式会社

会社情報

会社名
GameBank株式会社
設立
2015年1月
企業データを見る