【ドリコム決算説明会】新規開発はオリジナル路線から軌道修正 IPタイトルにも注力 『フルボッコ』の経験を活かし『崖っぷち』の復調目指す


ドリコム<3793>は、7月30日、第1四半期(4~6月期)の決算発表を行うとともに、東京都内でアナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。開示した決算は、売上高16億3400万円(前四半期比1.9%減)、営業損益2億0500万円の赤字(前四半期2300万円の赤字)、経常損益2億1000万円の赤字(同2800万円の赤字)、最終損益1億5300万円の赤字(同1億1000万円の赤字)となり、前四半期との比較で減収・赤字幅拡大となった。
 

『ちょこっとファーム』以外の既存ブラウザゲームの縮小傾向が継続し、売上高は前四半期に比べて減少した。こうしたなかにあって、主力ネイティブアプリは堅調だった。バンダイナムコエンターテインメントと共同で展開する大型IPタイトル『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』と『ONE PIECE トレジャークルーズ』は堅調に推移した。特に『ONE PIECE』は英語圏や繁体字圏でも上位に入るなど拡大基調にあるという。またサイバーコネクトツーとの協業タイトル『フルボッコヒーローズ』も大型IPとのコラボやプロモーション施策により好調に推移し、5月には月次売上高1億円を突破した。
 


利益面では、減収に伴う限界利益の減少に加え、労務費や広告宣伝費、原材料仕入など、アプリ開発に伴う先行投資の増加が影響し、前の四半期との比較で赤字幅が広がった。現在、『崖っぷちバスターズ』ではプロモーションを停止する一方、アプリの改修作業を行うなど立て直しを行っている最中にある。このため、毎月、5000万円程度の赤字が発生しているという。
 


 
■『フルボッコヒーローズ』…改修後、コラボとプロモーションでアクセルを踏んだ

今回のトピックスは、『フルボッコヒーローズ』の復調があげられる。リリース後、伸び悩んだこともあり、これまでサイバーコネクトツーとともに継続的にゲームの改修を行っていたが、ここにきて活躍が目立つようになってきた。広告宣伝費をかけてプロモーションを行うとともに、アニメやゲームなどの有名IPとのコラボレーションを行ったという。

5月には『進撃の巨人』とのコラボ実施とともに、テレビCMを使った大規模なプロモーションを行ったところ、DAU(日次アクティブユーザー数)はコラボ前は約3万人だったが、一連の施策により、約15万人まで急拡大したという。同社の内藤裕紀社長(写真)は、「他社でも見られた事例だが、コラボレーションを行うことでゲームで遊ばなくなったユーザーが復帰している。そして、コラボレーションに合わせて、プロモーションを行うと効率的であることがわかった。今後も毎月行いたい。具体名はいえないが、8月と9月にも大型IPとのコラボを行い、DAUと売上のベースを引き上げたい」と述べた。
 


 
■『崖っぷちバスターズ』…フルボッコの経験を活かして改修中

もうひとつの重要なトピックスとして、『崖っぷちバスターズ』の改修作業の状況だろう。リリース直後、継続率とARPUが低いことが明らかになり、いったん、プロモーションをやめて、ゲーム内容の改修を行っていた。同社では不調となった原因として、ゲームの楽しさと魅力がユーザーに伝わっていないこと、そして、マルチプレイやエリアモードで接続が切れてしまい、遊べなくなるという技術的な問題が発生していたことにある、と分析した。

改修作業は、当初、第1四半期(4~6月期)中に終える予定だったが、延期し、8月下旬には完了する見通し。同社では、マイルストーンを設けて、改修完了後に、継続率とARPUなどKPIの状況をチェックして次のフェーズに移行するかどうかを判断しているという。6月に実施したVer.1.1、7月に実施したVer.1.2が完了し、所定の成果が出ているそうだ。

今後は、8月上旬にVer.2.0、8月下旬にVer.2.1をリリースする予定。Ver1からVer2になることで、ユーザーからはっきりと変化がわかるという。その後、継続率とARPUの改善具合を確認し、合格点となれば、プロモーション活動を再開し、本格的な立ち上げを図る予定だ。『フルボッコヒーローズ』でも改修とその後のチェックを行い、改善を進めてきており、同じ手法を取る。また仮に目標に到達していない場合はプロジェクトの規模を縮小する可能性もあるそうだ。
 


 
■他社IPタイトルにも取り組む…新作の開発ラインを再考

さらに新作の開発に関しても、大きな方針変更を行ったことを明らかにした。これまで同社は、IPタイトルをリリースして順調に立ち上がっている状況を鑑み、売上・利益へのインパクトの大きい自社オリジナルタイトルにフォーカスする考えを示していたが、再びIPタイトルにも注力する考えを示した。

その背景には、マーケット環境の変化がある。モバイルゲーム市場は国内外で伸びているものの、ヒットタイトルの硬直化が起こっているという。新規のタイトルが毎月、ランキング上位に入る状況ではなくなりつつあり、ユーザーはすでに遊んでいるゲームにお金と時間を費やしている状況からどんどん乗り移る状況ではなく、オリジナルタイトルに絞ったポートフォリオのリスクが上がっていると見ているそうだ。

今後、オリジナルタイトルに挑戦しつつ、アプリポートフォリオにはIPタイトルも組み入れる考え。「面白いゲームができるかどうかはリスクとして残るが、IPタイトルは集客に関するリスクが少ない。一定のファンがいるので安定した集客ができる」という。ただ、従前と異なるのは、パブリッシングをドリコム名義で行う可能性もあるという。これまでは他社アカウントから配信していた。
 

開発中のラインに関しては、複数本ラインが走っており、リリースのメドが立ち次第、随時公表する予定。リリース直前に情報が出る可能性もあるという。ゲームの基本部分の開発を行っており、面白くないものは開発を中止する。プロトタイプができた時点で、オリジナルタイトルにするのか、IPタイトルにするかの判断を行っていくようだ。

 
▲広告事業は動画広告サービス「poncan」が引き続き伸長。動画広告市場の伸びに合わせて売上も伸びているという。EC事業者を対象にしたサービスだったが、「DreeVee」としてリニューアルし、アプリ開発会社向けにも提供していく。「アプリ開発会社の出稿ニーズが大きい」。黒字化に向けて取り組む。


 
■第2四半期の見通し

第2四半期(7~9月期)の業績は、売上高17億1600万円(前四半期比5.0%増)、営業損益1億9500万円の赤字(前四半期2億0500万円の赤字)、経常損益1億9000万円の赤字(同2億1000万円の赤字)、最終損益1億4700万円の赤字(同1億5300万円の赤字)と、増収・赤字幅が減少する見通し。
 

『フルボッコヒーローズ』は、コラボレーションとプロモーションを通じて売上拡大を図る一方、バンダイナムコエンターテインメントと提供する大型IPタイトルも引き続き堅調に推移する見通し。『崖っぷちバスターズ』は、8月中に改修が終わるが、改修がうまくいったとしても本格的な寄与は第3四半期以降になると見ているという。

このほか、コストについては、広告サービスの研究開発が終わるため、研究開発費が減っていく見通し。大きな要素として、ソフトウェア償却の減少もプラスに働くという。内藤氏は、「当社がリリースしているゲームの多くは、配信から1年以上経過した。第1四半期は月次ベースで6500万円ほどのソフトウェア償却が発生したが、第3四半期までに随時終わり、4000万円ほど軽くなる」と説明した。
 
(編集部 木村英彦)
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高108億円、営業利益22億8100万円、経常利益21億9200万円、最終利益11億5900万円(2023年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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