【イベント】“主人公だったあの頃に”…ファミコンから『モンスト』まで新旧ゲーム音楽をフルオーケストラ演奏! 大胆な編曲が醍醐味の「伝説の音楽祭 勇者たちの饗宴」を取材


カヤック<3904>は、2015年10月24日(土)・25日(日)、東京・新宿文化センター 大ホールにおいて、ゲーム音楽交響楽団「JAGMO」によるフルオーケストラ公演「伝説の音楽祭 - 勇者たちの響宴 -」を開催した。

JAGMOは“ゲーム音楽を音楽史に残る文化に”というビジョンのもと、これまで高い芸術性を保持するオーケストラ公演を実施している。一方でカヤックは、去る2015年3月31日にJAGMOの全事業を譲受し、同社が持つコンテンツやクリエイティブの強みを活かして、JAGMOが開催した7月の夏公演をサポートし、満員御礼の大成功を収めた。本稿では、10月公演であるフルオーケストラ公演「伝説の音楽祭 - 勇者たちの響宴 -」の模様を取材。

【10月公演のプログラム】
■『クロノ・クロス』より
「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」

■『クロノ・トリガー』より
「クロノ・トリガー」
「風の憧憬」
「時の回廊」「王国裁判」
「カエルのテーマ」
「魔王決戦」
「世界変革の時」

■『サクラ大戦』
「檄!帝国華撃団」

■『モンスターストライク』
「タイトル BGM」
「メニュー BGM」
「イベントクエスト:極 BGM」
「降臨クエスト:究極、超絶 BGM」
「降臨クエスト:BOSS BGM」
「勝利 BGM」

●『MOTHER』より
「Eight Melodies」
「Bein' Friends」
「Pollyanna」
「SMILES and TEARS」

●『ロマンシング サ・ガ』より
「オープニング」
「四魔貴族バトル」
「四魔貴族バトル2」
「玄城バトル」
「ラストバトル」

●『キングダムハーツ』より
「Dearly Beloved」
「Traverse Town」
「Roxas」
「Tension Rising」

●『FINAL FANTASY IV』より
「ゴルベーザ四天王とのバトル」

●『FINAL FANTASY V』より
「ビッグブリッヂの死闘」

●『FINAL FANTASY VII』より
「片翼の天使」

●『FINAL FANTASY VIII』より
「Eyes on me(24日 夜公演限定)」

●『FINAL FANTASY X』より
「ザナルカンドにて」
「ノーマルバトル」
「シーモアバトル」
「Other World」
「決戦」
「Brass de Chocobo」
「素敵だね(24日 昼公演限定)」

●『FINAL FANTASY XII』より
「KISS ME GOOD BYE(25日 昼公演限定)」


 

■JAGMOならではの大胆な編曲に注目


2015年2月に初のフルオーケストラ公演「伝説の交響楽団」、 7月には戦闘曲を中心とした「伝説の戦闘組曲」を開催し、 計1万5000人を超える動員を達成したJAGMOの公演。 季節毎にコンセプトを定めた”伝説”のフルオーケストラ公演新シリーズとして、今回の10月では秋に相応しい色彩豊かなプログラムで音楽祭をイメージしたものとなった。

既存のフルオーケストラの形にとらわれないJAGMOは、オーディション形式で毎回選りすぐりの質の高いチームを作り、その確かな演奏力で、着実にリピーターを増やしている。また、ゲームユーザーが心躍るプログラム内容にも注目が集まる。そんな前評判も奏功し、チケットは公開も早々に完売し、当日券の追加販売をするなどの盛況ぶりを見せた。
 

▲指揮者・吉田誠氏(写真中央)、コンサートマスター・枝並千花氏(写真左)

開幕は、過去公演でも好評を博した『クロノ』シリーズの壮大なメドレー。本編同様、大海原の心地よい風を感じさせる『クロノ・クロス』のオープニングテーマ「時の傷痕」から始まり、美しい音色と共に観客の心を冒険者への旅路へと一気に引き込んだ。

続く『クロノ・トリガー』では、力強い圧倒的な演奏力で会場の雰囲気がガラリと変わり、誰もが“あの主人公だった頃”に立ち戻り、冒険に対する士気が高揚しただろう。さらに楽曲は、不安のなかも前に進まなければならない、雨の音色にも似た中世フィールドのテーマ「風の憧憬」、物語の真実に触れる神秘的な古代フィールドのテーマ「時の回廊」、そして厳かなようでちょっぴりコミカルな「王国裁判」と『クロノ・トリガー』の世界を脳内で追体験。

なかでも「カエルのテーマ」と「魔王決戦」では、早くもJAGMOの醍醐味でもある“編曲・演出の素晴らしさ”を感じた。カエルと魔王というキャラクターは、ゲーム本編ではライバル的な存在であり、実際にお互い戦うことにもなる。楽曲の順番としては「カエルのテーマ」と「魔王決戦」と演奏されるのだが、後者のクライマックスでは再び「カエルのテーマ」が織り交ざり、まるでふたりが戦っているようなリミックス調に演出したのだ。その大胆な演出は、新進気鋭の音楽交響楽団JAGMOならでは、あるいはゲーム本編を知っている人だからこそできる芸当だろう。
 

JAGMO初公演となる『サクラ大戦』のオープニングテーマ「檄!帝国華撃団」では、軍楽団を思わせる強烈な打楽器と高らかな管楽器で、大正ロマンとスチームパンクの雰囲気の原作世界に誘ってくれた。音楽祭らしい秋めいたプログラムに、今後は「御旗のもとに」(『サクラ大戦3』)などシリーズ楽曲の演奏にも期待してしまう。

そして、今回ミュージックパートナーを務めるミクシィ<2121>より、大人気スマホゲームアプリ『モンスターストライク』のメドレーがプログラムに加わった。ゲームのコンサートでスマホゲームが演奏されるのはなかなか珍しいことではあるが、「ゲーム音楽を音楽史に残る文化に」というビジョンを持つJAGMOとしては、時代を跨いでゲーム音楽をコンサートで楽しめるような動きを見せている。

楽曲ではお馴染みの「タイトルBGM」からはじまり、降臨クエストや勝利など全5曲を披露。スマホゲームの音楽は、ゲームサイクル上どうしても1曲が短くなってしまいがちだが、いざフルオーケストラで聴くと楽曲の切り替えも違和感なく、実際のゲーム上における一連の流れを贅沢に音楽で楽しめるものだと感じた。

暖かみのある『MOTHER』に続いては、伊藤賢治氏作曲のバトルミュージックが冴え渡る『ロマンシング サ・ガ』、そして再び透き通るような神秘的な楽曲『キングダムハーツ』と、急がし過ぎず退屈しないプログラムの順番とスピード感で、こだわりを感じた。

公演の最後を飾るのは、不朽の名作RPG『ファイナルファンタジー(FF)』シリーズ。『FFX』の楽曲が中心だったが、定番の「ザナルカンドにて」はもちろん、「ノーマルバトル」や「決戦」など普段ゲームコンサートでは耳にできないラインナップで、意外性のある演奏が楽しめた。ほか、「ゴルベーザ四天王とのバトル」(FFIV)と「ビッグブリッヂの死闘」(FFV)では、前述した『クロノ・トリガー』同様にふたつの楽曲を組み合わせたリミックス調で観客を沸かせた。それはまるでビッグブリッジの上でゴルベーザ四天王と戦っているという、懐かしくも新しい演出だった。
 

▲10月公演のクライマックスでは、クラリネット奏者でもある指揮者・吉田誠氏自らが、『FF』主題歌の声楽パートを演奏。曲目は「FFXより素敵だね(24日 昼公演限定)」「FFVIIIよりEyes on me(24日 夜公演限定)」「FFXIIよりKISS ME GOOD BYE(25日 昼公演限定)」
 

▲曲が終わるたびに観客席からは盛大な拍手に加え「ブラボー!!」と賞賛が送られた。

個人的にJAGMOのコンサートは、“ゲーム音楽をフルオーケストラで演奏する”という単純なものではなく、訪れた観客に“あの頃主人公となって夢中で遊んだゲームを追体験させてくれる神聖な場”にも思えた。それは恐らく、主催者側・演奏者側にも“ユーザーだった頃”があり、そういう意味では観客と同じ視点に立って旋律を奏でてくれる数少ない交響楽団であろう。

なお、次回開催は2016年春の開催を予定している。ゲームファンは、是非。

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■10月公演「勇者たちの響宴」
 


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株式会社カヤック
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会社情報

会社名
株式会社カヤック
設立
2005年1月
代表者
代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
決算期
12月
直近業績
売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3904
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