【発表会】「スマホO2O市場は未開拓」…セガネットワークスのマーケティング支援ツール「Noah Pass」の新サービスと今後の戦略


セガゲームスは、2015年11月25日、都内で「セガネットワークス カンパニー メディアカンファレンス 2015 Summer」を開催し、同社の提供するマーケティング支援ツール「Noah Pass(ノア・パス)」の今後の戦略と新サービスについて発表した。

カンファレンスでは、はじめにセガゲームス 代表取締役社長 CEO 里見治紀氏が登壇し、現状の「Noah Pass」について説明。そもそも「Noah Pass」とは、アプリ間の相互広告・送客を主軸としたマーケティング支援ツールのこと。自社ゲーム内で他社ゲームの広告を掲載した場合、掲載回数と同じ回数を相手のゲーム内で掲載できる仕組みを持ち、かねてから「無料」「OPEN」「効果的」という3つのコンセプトで展開してきた。
 

現在はサービスも充実してきて、「セガネットワークス」「ゲーム会社」「異業種企業」による3つの柱を中心に、B to Bシェアリングが確立されている。セガネットワークスでは、「Noah Pass」のサービス開発・運営・提供を行い、かつ自社タイトルも積極的に参加させてサービスの拡充に努めている。

一方でゲーム会社側は、タイトルを提供することで「Noah Pass」の相互送客システムに参加し、各種サービスを利用できる。そのなかでマーケティングを中心にKPIの向上にも繋がるほか、追加収入源の獲得も可能。そして、異業種企業はサービス単位で参加し、広告費を「Noah Pass」上に提供していく。何よりもメリットは、セガネットワークスが抱えるゲームユーザーに向けた出稿となり、異業種企業としては新たなユーザー層の獲得に繋がることだ。

このように、三者三様の提供と結果によるサイクルで、「Noah Pass」が持つB to Bシェアリングのエコシステムが実現している。里見氏は「決してゲームだけに依存しないサービスとして高めていく。事業成功確度の向上に繋がれば幸い」と言葉を添えた。
 
 

■「NOAH AD」は非常にリッチな広告枠として成長



続いて、セガゲームス セガネットワークス カンパニー COO 岩城豊氏が登壇し、「Noah Pass」の新サービスや今後について説明した。また、「Noah Pass」の現状は、累計接触端末数が前年比166%の1億2,138万(前回カンファレンス開催の2015年6月比で20%増)、月間ユーザー数が前年比162%の1,249万(同25%増)、参加社数は113社、タイトル数は554タイトルとなった。
 

次に有料広告サービス「NOAH AD」の経過報告について。同サービスには、ブランディング向けのプレミアムパネルと、販売促進向けのアクティベーションテキストの2種類が存在。これらを展開するうえで、岩城氏は必要な要素として「量」「良質」「効果的」という3つを上げた。

量は、コアゲーマーのユーザープールとして日本最大級を誇っているのが特徴。というのも、異業種企業が出稿する際は、これまではカジュアルゲームが中心だったという。しかし、コアゲーマーは接触頻度・時間が多いうえに、高いモチベーションを持ってゲームに臨んでいるため、結果として深い成果点が実現するとのことだ。

実際に数字として見ると、量はひと月に最大20万件の成約を生むパワーを持っている。また、20~25%の案件をクリックするうち、週平均で獲得率が75%という突出した獲得率を生むアクティブなユーザーがいることも判明。そして、1件獲得あたり100円から実施可能というのも嬉しい点だ。「どれも驚異的な数字を記録している。非常にリッチな広告枠として成長」と岩城氏。
 



▲直近の実績。今後は時流の早い市場に適したバナーの提案や、コンテンツとどのように絡ませていくのかなど、目下の課題としている。
 

■「スマートフォンO2O市場は未開拓」



次にOnline to Offline(以下O2O)サービスを発表に。O2Oとは、インターネット上(オンライン)での情報提供やサービスを通して利用者の実店鋪(オフライン)への来店を促すことで、以前の発表会では、GMOインターネットグループでO2O支援事業を展開するGMOコマースと協業したことも発表した同社。

そもそも、ここまでセガネットワークスがO2O事業に躍起に理由は何なのか。O2Oの市場規模は、2011年に約22兆円と推計され、2017年には50兆円規模に達するとの予測もあり、著しい成長を続けており「非常に大きなポテンシャルを秘めた巨大市場。まずしっかりと入っておきたい」と岩城氏は説明。と同時に、O2O市場は、その99%がスマートフォン以外で市場が構成されていることも明らかにした。

O2O事業を行うとなると、リアル店舗に交渉するという営業コストがかかるため、そうした点も岩城氏は「仕組化して簡素にしていく必要がある」と説明。実際に現状O2Oで広告収益を得ている企業は、日本ではほとんどないという。ともすれば、セガネットワークスが持つ良質なユーザー層をベースに、異業種企業に対して新しい機会を提供できるのではないか。言い換えれば、同社にとってスマートフォンO2O市場は未開拓、ブルーオーシャンとのこと。
 

そして、O2O事業の新たな取り組みとし、GMOコマースとゲームアプリユーザーを実店舗へ送客する新しいO2Oアプリ「ShopRound(ショップラウンド)」を11月25日(水)よりAppStoreおよびGooglePlayで提供を開始した。

「ShopRound」は、GMOコマースの成果報酬型店舗集客サービス「GMOチェックイン」のシステムをベースに開発したサービス。ゲームアプリユーザーが「ShopRound」の掲載店舗に来店(チェックイン)すると、セガネットワークスのマーケティング支援ツール「Noah Pass」に参加しているゲームアプリ内のアイテムと交換可能な特典を付与するという。また、店舗の広告掲載による収益は、掲載面を提供する「Noah Pass」参加各社に分配されるため、ユーザーのゲームへの参加率向上と、店舗への集客に加え、ゲーム運営会社の収益機会創出が期待できるとのこと。
 



▲GMOチェックイン側では、初年度に1万店舗の規模感を実現させ、「Noah Pass」側では初年度に100万人ユーザーの送客を目標とし、来店成果型O2Oサービスの基盤形成に努めていくという。


また、当日はO2O事業のさらなる展開として、ソフトバンク<9984>とShowcase Gig(ショーケース・ギグ)の協業体制を構築することについて合意したと発表した。

具体的な施策として、①セガネットワークスは広告掲載面の提供、②ソフトバンクはクーポンの利用可能店舗網の提供、広告の販売、③Showcase Gigは新メディアの企画運営をそれぞれが担い、ゲーム利用者がオンライン上のタイアップ企画から小売店などで商品サンプルを受け取れるクーポンや、該当商品の購買で特典を獲得できるサービスを展開。

今回の取り組みは、「Noah Pass」の約1億2,138万件の累計接触端末に向けて広告を掲載し、全国約4万5,000の店舗網への送客を可能にする、国内最大規模のO2Oサービスネットワークを広告クライアントに対して提供するもの。本ネットワークを利用することで全国くまなく、一斉にプロモーションキャンペーンを展開することができるようになるという。なお、まだ正式なサービス名は決まっていない。
 

 

▲サービス利用フロー


ここで、ソフトバンク株式会社より法人事業開発本部 デジタルマーケティング事業統括部 統括部長 SBギフト株式会社 代表取締役の藤平大輔氏が登壇し、O2O事業の可能性について言及した。

現在、同社ではヤフーと協業して「ウルトラ集客」というO2O事業を展開している。「Yahoo!」告知の店舗来店キャンペーンとして、応募実績1,300万人以上、送客実績270万人以上と絶大な効果を発揮しており、藤平氏は「O2O事業はスタートアップ的なものかと思われるが、じつは一般かしている」と現状についてコメント。

実際に店舗の買い物に対する顧客も変化しているという。買い物前にはスマートフォンで商品情報をリサーチし、店内ではスマートフォンを活用して店内で価格比較をするなど、リアルとデジタルがより密接してきているようだ。また、小売業売上全体の約半分をデジタルが寄与しており、藤平氏も「もはやチラシやCMだけで完結している企業も減ってきている」とO2Oの重要性について言葉を添えた。
 

▲デジタル化する顧客は収益上重要となってきている。顧客の84%が買い物時にデジタルを活用した情報収集を実施し、それらの顧客の購入率が40%上昇したこともデータとしてあるようだ。まだ、それに付随して顧客の22.4%は客単価が25%に上昇、顧客の75%はデジタル情報収集によってロイヤリティが向上しているという。「セガ様はデジタルに造詣の深いお客様を多く抱えている」と改めて協業のメリットにも触れた藤平氏。
 

▲消費者購買モデルの分類も変化しているとのこと。認知から獲得までの一連の流れはそのままに、ネット普及期からは共有(Share)の重要性も取り上げられている。そして、O2O時代の購買モデルには、共有後に「再利用(Loyal)」というフェーズが追加。


続いて、株式会社Showcase Gig 代表取締役 新田剛史氏が登壇。同社は、モバイルペイメントサービス「O:der(オーダー)」、IoT プラットフォーム「O:der Connect(オーダー・コネクト)」などを提供しており、飲食・小売店舗のデジタルツール開発を手掛けている企業。オムニチャネル・モバイル決済領域において、数多くの実績とノウハウを持っている。

また、日常生活におけるスマホ利用と消費者行動とを結びつけ、利便性の高い情報を提供しているのも特徴。なかでもゲームはユーザーが多く、休憩時や通学・通勤の際に触れるという日常化してきている。そうした背景のなか、同社は日常接触するゲームの中からフードデリバリーを実現し、新たな消費行動を実現。

まさに同社のパズルゲーム『デリバリープラネット』は、アプリからの注文・決済でピザや寿司が届くという仕組みを持っている。「コラボイベントをはじめ、ゲームと現実世界の連携により、ユーザーにとって違和感のないコンテクストを創出している」と新田氏。適切なコンテクストを設置したことにより、若年層(10~30代)の比率が向上したほか、新規顧客の流入効果が通常媒体の3倍、新規顧客のリピート増にも繋がったようだ。
 

▲新田氏は「いかにゲームユーザーにとって、バリューのあるサービスにするかが重要。うまく消費行動のなかに溶け込んで打ち出せるよう、新しいサービスを創出していきます」とコメントした。
 

 
 

■海外展開の問題点をワンストップ・ソリューションで解消


最後に、「Noah Pass」の海外展開について。これまでも何度か話題に挙がっていた海外展開だが、その難しさはゲーム業界においても取り沙汰されてる課題。岩城氏も「Noah Pass」を海外に持っていくことを考えたとき、「どのような市場規模になっているのか、果たしてポテンシャルが残っているのか」という問題点を考えたという。
 

同社による推定規模だが、現在のモバイルゲーム市場は画像の通り。日本の市場規模は目を見張るものがあるが、コンシューマやPC、ほかのエンタメコンテンツでも言える、必ずこの人口の壁にぶつかってしまうのが現状。既存ユーザーの成長と共に、コンテンツも進化を求められるため、結果として初期投資額が高騰。タイトルによって振れはあるが、初期開発+初年度運営、マーケ費用という大きな3つの要素を合わせれば、1本あたり数十億円規模のコストがかかることになる。ましてやグローバル展開を考えた際は、さらにコストが積み重ねっていく。

一方で他国は、まだまだモバイルゲーム市場の成長が著しいのが特徴。東南アジアや繁体圏、欧米タイトルで言えば英語圏の市場成長により、今後の売上・DL数の期待値にも繋がるものだ。しかし、日本では人口の壁、言わば頭打ちとなり、結果として「(開発費の)回収ができない」という状況に陥るという。

「海外展開は時間がかかる。そのため毎回のチャレンジに連続性がなく、経験値が不足しているがゆえに、非効率的になってしまう」と問題を挙げた岩城氏。そこでセガネットワークスは、その問題を解決するために、「日本発のヒットタイトルで、世界中のみなさんに受け入れてもらうという幻想を捨てること」を意識。キーワードは「より多くのコンテンツを、より早く、より多くの国へ」。
 

▲需要基盤を築くために、展開コストを下げ、より多くリリースし、より多くの失敗から多くの経験値を積んでいく。


そこでセガネットワークスは、2016年春よりゲーム運営会社向けにスマートデバイス向けゲームのグローバルパブリッシング支援サービス「goPlay(ゴープレイ)」の提供をGo Game Pte. Ltd.(本社:シンガポール、CEO:David Ng)を通じて開始すると明らかにした。
 

本サービスは、今後成長の見込める新興国市場(東南・南アジアの国と地域、ロシアなど)をはじめとした、グローバル市場におけるスマートデバイス向けゲームの展開を目指す企業を支援するもの。セガネットワークスはGo Game社と資本業務提携し、本サービスを共同で展開していく。

前述したように、スマートデバイス向けゲーム事業においては、端末の機能向上に伴って開発費をはじめとした初期投資費用が高騰すると同時に、国内を例に挙げると、成熟しつつあるスマートデバイス向けゲーム市場では競争が激化し、ゲーム運営会社の海外でのコンテンツ展開志向が高まっている。しかし、地理的な隔たりから発生するコストをはじめ、市場環境や言語・文化の違いといった参入障壁が存在し、海外での事業展開には高いコストをかける必要がある。

こうした背景を踏まえ、セガネットワークスでは下記をパッケージングしたスマートデバイス向けゲームのグローバル展開支援サービス「goPlay」の提供を開始し、国外での事業展開コストの軽減を実現するという。なお、メタップスのマーケティングパートナーとしての参加がすでに決定しており、今後さらなるパートナーシップの拡大とサービス拡充を進めるようだ。

(1)「goWrap(ゴーラップ)」(SDK/ソフトウェア開発キット)
スピーディ、かつ簡便にスマートデバイス向けゲームの展開に必要な機能を実装可能

(2)第三者決済
数十の決済手段に対応、ゲーム運営会社が展開地域特性やターゲットニーズに合わせた選択を可能に

(3)「Noah Pass」の機能
ゲームアプリの相互プロモーションや広告掲載による収益力強化、及び全世界共通での顧客基盤構築を可能に

(4)各種ソリューション
マーケティング、カスタマーサポート、ローカライズなどを、高い専門性、信頼性を持つ国内外企業とのパートナーシップのもと提供
 

▲本サービスは業界初となる無料で利用できる(シルバー)プランから有料のものまで複数プランを用意しており、ゲーム運営会社は自らがパブリッシャーとなり、コンテンツの海外展開におけるノウハウの蓄積や、顧客基盤を構築できる。なお、ゴールドプランのRevShareに至っても業界最安を実現。展開地域は東南アジアを筆頭に進めていくという。そのため、本社もシンガポールにあるようだ。
 

ここで、GO GAME CEOのDavid Ng氏が登壇。同氏と言えば、過去gumi AsiaのCEOを務めて、『ブレイブフロンティア』を海外で成功させた立役者でもある。Ng氏は、「日本のコンテンツは質が高いのに進出に苦戦する。言語対応やマーケティング手法など様々な要素が付きまとう」と海外展開の難しさを挙げた。

スマートデバイス向けゲームのグローバルパブリッシング支援サービス「goPlay(ゴープレイ)」は、ローカライズやグローバルマーケティング、カスタマーサポートなど、ワンストップ・ソリューションとして提供。「160ヵ国語にグローバル展開すると、何ヵ月の準備が必要で何人ものエンジニアが携わってくる。そうすると必ずエラーも起こる」と指摘するNg氏。
 

一方で「goWrap」という別機能では、コミュニティやテストローンチ、アナリティクスなどを簡単に導入できるプラットフォームとなっている。このほか、SNSや公式サイト、サポート、wikiなども同時にゲーム内で表現される。
 

 

▲問題報告では、自分の状況を伝えるライブチャットも搭載している。

最後にNg氏は、「1社でこの問題を解決するのは非常に難しいです。日本のコンテンツを海外のお客様は、非常に好みます。ぜひ、go gameを使ってみてください。一緒に世界に行きましょう」とコメント。

「Noah Pass」では、今回発表された海外展開やO2Oサービスのほか、多種多様な機能を拡張した「Dashboard」や、ユーザー自らがゲームイベントを簡単に開催できる「PARTY」など、複数サービスの動きもある。岩城氏は「こうした取り組みをひとつひとつ結実させていきます」との言葉で発表会を締めくくった。同カンファレンスは定期的に行われるため、次回開催では今回の新サービスの進捗が聞けることだろう。
 


■セガネットワークス
 


©SEGA
株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長COO 杉野 行雄/代表取締役副社長 内海 州史
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
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