【シリコンスタジオ決算説明会】「海外」「非エンタメ」「スマホ」などミドルウェアの事業領域を拡大へ ネイティブゲームは年度後半に数本のリリースを予定
シリコンスタジオ<3907>は、1月26日、東京都内で決算説明会を開催した。説明会に先んじて、1月14日に発表した2015年11月期の連結決算は、売上高82億3100万円(前年同期比2.2%増)、営業利益2億6600万円(同68.3%減)、経常利益2億5200万円(同69.6%減)、当期純利益1億4600万円(同71.1%減)と増収を確保しながらも、大幅な減益に終わった。
決算説明会では、同社の寺田健彦代表取締役社長がまずは説明を一通り行い、その後に質疑応答が行われた。質疑応答では、やや保守的な感が強い2016年3月期の業績予想についてや、今期のコンテンツ事業での新作リリース予定などの質問が行われた。そうした内容も踏まえつつ、会見の様子をまとめてみた。
■3Q、4Qでばん回もネイティブアプリ移行で広告宣伝費が増加
まずは終了した2015年11月期の連結決算の内容をおさらいしてみると、第1四半期、第2四半期に低迷し、第3四半期と第4四半期で徐々にばん回したという状況になっている。これはコンテンツ事業で、2月に配信を開始した『WONDER BLOCKS』(2015年11月30日にサービス終了)が売り上げ面で大きく計画を下回った影響が大きい。加えて、「ブラウザゲームからネイティブアプリへの移行により、広告宣伝費が増加した」(寺田社長)ことも利益率の低下につながったもようだ。
ちなみに第4四半期期間(9~11月)の業績を四半期推移(QonQ)で見てみると、売上高は22億6600万円(前四半期比5.7%増)、営業利益は2億2700万円(同3.3倍)、経常利益は2億2400万円(同3.6倍)、四半期純利益1億3300万円(同3.9倍)と利益率が大幅に改善している。
続いて各セグメントごとの状況を見てみたい。まずは開発推進・支援事業だが、売上高は前々期比5.0%の減収、セグメント利益は同19.9%減の減益となった。「当初から売上計上を予定していた大型案件を失注したことや、ソリューション分野においてネットワーク側の開発案件で瑕疵が発生したことが影響した」(同)とのことだが、これについては「一時的な凹みととらえている」(同)ともしていた。
次にコンテンツ事業は、売上高は同4.8%増と増収を確保したものの、セグメント利益は同25.6%減と大きく落ち込んだ。前述の『WONDER BLOCKS』の失敗はあったものの、『刻のイシュタリア』がリリース後の改修効果などもあり、「リリースした当初より売り上げが伸びている」(同)ことなどで、増収を確保できたようだ。一方で利益面については前述の広告宣伝費の増加の影響が大きい。ちなみに同社の広告宣伝費は2014年11月期の1億3600万円から2015年11月期は3億8600万円へと約2.8倍に拡大している。
なお、ネイティブアプリへのシフト自体は順調で、「売り上げにブラウザはほとんど残っていない」(同)としていた。
そして、最後に人材事業となるが、同事業は売上高が同22.6%増、セグメント利益は同17.4%増と順調に拡大した。「2014年11月期には月間130名規模だった派遣分野は2015年11月期には同170名規模に拡大」(同)しており、2016年11月期も増収増益が見込まれるという。
続いては販売費および一般管理費の内訳も見てみよう。先ほども触れた通り、広告宣伝費が前年同期比で2.8倍に増加しているほか、研究開発費も同2.2倍に拡大している。
■ミドルウェアの事業領域拡大に注力、コンテンツはIP協業案件も視野
そうした2015年11月期の状況も踏まえた上での同社の今後の取り組みに次は目を移してみたい。
まずは開発推進・支援事業では、ミドルウェアの事業領域の拡大を挙げていた。具体的には、まずは海外事業室を設置し、2016年11月期以降の海外販売増加を狙うという。また、レンダリングエンジン「Mizuchi」などにおいて製造業や建築業など非エンターテインメント分野向けの開拓を進めるほか、スマートフォンゲームに対応した次世代ゲームエンジン「Xenko」を2016年6月に正式リリースする予定だ。
ちなみに、「Xenko」も同社が強みとする光学表現に優れており、「物理ベースのレンダリングへの関心が強い海外先行でまずは展開する」(同)としていた。
続いて、コンテンツ事業については、「2016年11月期は後半に数本をリリースする」(同)というスケジュールになっている。また、オリジナルタイトルだけではなく、著名なIPを持った他社との協業案件も視野に入れるなど、収益率の向上を意識した取り組みを進めるという。
■今期はコストの見積もりなどを厳しくし、保守的な予想に
なお、2016年11月期通期の連結業績予想は、売上高93億6900万円(前期比13.8%増)、営業利益3億円(同12.7%増)、経常利益2億6400万円(同4.5%増)、当期純利益1億4900万円(同2.1%増)の見込み。今期はコンテンツが年度の後半にリリースの予定となっていることもあり、約6割を下期に計上する下期偏重型の予算を想定しているようだ。
また、営業利益率が2015年11月期実績と変わらず3.2%の想定となっているが、これについては「前期はコストの見積もりが甘かったことを受けて、今期はかなり厳しく予想した」(同)としていた。ちなみに広告宣伝費は費用対効果の検証などを進めるものの、金額としては「2015年11月期実績よりも少し増加する予定」(同)だという。
■まとめ
2015年11月期に業績予想の大幅下方修正を発表したこともあり、2016年11月期の予想はかなり保守的に打ち出さざる得ないのは致し方ないところか。ただ、会社として「営業利益率が下がってしまったことが大きな課題」(同)としていた上で、今期も同じ営業利益率の予想というのは、いささか保守的過ぎる感もある。
スマホ向けミドルウェアの「Xenko」のリリースが6月、コンテンツ事業の新作も年度後半ということになると、主力の開発推進・支援事業、コンテンツ事業とも上期は既存の事業の延長線上で展開することになるが、果たしてどのくらい利益率の改善を進められるのか、まずは今期のスタートとなる第1四半期(12~2月)の状況をしっかりと見極めたい。
(編集部:柴田正之)
会社情報
- 会社名
- シリコンスタジオ株式会社
- 設立
- 2000年1月
- 代表者
- 代表取締役社長 梶谷 眞一郎
- 決算期
- 11月
- 直近業績
- 売上高45億5400万円、営業利益2億3800万円、経常利益2億4600万円、最終利益2億円(2023年11月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3907