【イベント】「飽きないゲームをつくるには?」・・・ゲーム作家山本貴光氏が登壇したDeNA主催ワークショップ「座・芸夢 for STU」を取材


 
ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>が主催する「座・芸夢 for STU 若手ゲームプランナー育成塾~未来を担う人に伝えたいこと~」。本イベントはゲームプランナー(=ゲームデザイナー)をめざす学生を対象としたワークショップだ。

3月15日に開催された第19回では「飽きないゲームをつくるには?」と題して、コーエー(現・コーエーテクモゲームス)でのゲーム制作(プログラム/企画)を経て、現在はフリーランスとしてさまざまな活動をされている、ゲーム作家・文筆家の山本貴光氏が講師として登壇した。本稿ではその模様を紹介していく。
 

◼︎「飽きる」を考える



山本氏はまず最初に、今回のテーマには、明確な答えは用意されていないが、考えるためのヒントや「問い」を投げかけることで一緒に考えていきたいという、テーマの趣旨を説明するところから講義ははじまった。
 

最初の問いは「飽きる」とはどういった状態かというものであった。この問いには、自分の中ではなんとなく当たり前に思えていることでも、一度は疑い、改めて定義してみることで見えてくるものがあるという考え方のヒントであり、例えば辞書などで調べてみるのもひとつの手だという。


実際に辞書に記載された意味がスライドに表示されるが、ここで少し意外なのが「飽く」のひとつ目の意味。「満たされた気持ちになる」ことによって「飽く」というのは、皆が「飽きる」から抱く最初のイメージとは、若干異なるように思える。
 
このように「飽きる」にはポジティブな「満足して飽きる」と、ネガティブな「嫌になって飽きる」があることが分かる。共通するのは結果的に、「人が何かに興味を失った状態」になること。ポジティブな意味で「飽きる」を考えることも大切だが、ここで山本氏はネガティブな「嫌になって飽きる」方に注目していく。
 


二つ目の問いを考えるにあたり、山本氏は例としてふたつのゲームを挙げた。マスで区切られた盤面にふたりのプレイヤーが交互に手を出し合って勝負していくゲームである「三目並べ」と「将棋」。
 
例としてこの二つのゲームを採用した背景に、何かの「問い」を考えるときは、多くの人が知っている例を選ぶと他の人との検討も進めやすくなるためだと山本氏は話す。今回の例では、三目並べはなぜすぐに飽き、将棋はなぜ飽きずに千年以上もプレイされ続けているのかを考えていく。

三目並べは3×3の非常に狭い盤面で戦われ、手駒も機能を持たない置くだけのものになるため、あらゆるゲーム展開を、簡単に樹形図化することができる。

このことから山本氏は、三目並べが飽きる理由を以下のようにまとめた。

対して将棋は、無限ともいえる盤面のパターンが存在するゲーム。しかし、ここで山本氏は注意しておきたい点として、「状況が多様化するゲーム=飽きないゲーム」ではないことを挙げた。ここを勘違いしているゲームが世の中には意外と多いと話す。
 


ここで3つめと4つめの問いが投げかけられた。「人はなぜ飽きる?」「どうしたら飽きない?」という内容だ。


この問いに関して、山本氏は「心というよりも、本能に近い身体の話かもしれません。なぜなら本質的に人や動物は、慣れる存在だから。」と話す。



 

 
ここまでの「問い」では、いくつかの「飽きる」原因のヒントとなるものだったが、「飽きない」ようにするにはどうすればいいのか?山本氏はこれまでの「問い」を踏まえ、3つの方法を提示した。

1. 新たな刺激を得る。
2. 好奇心を働かせる。
3. ものの見る目を変える。

 
ゲームで例えると、新効果を持つアイテムの追加などは「1.」に当り、新ワールドの追加などは「2.」に当てはまる。「3.」については、歴史ゲームを遊んだら、今までつまらなかった歴史の授業が楽しくなった、というようなことだと例えた。
 
この3つは、ゲームプランナーにとってはつねに考え続けるべき問題。なかでも「3.」は、日頃から訓練しておいた方がよく、ここまでやってきたような様々な「問い」を持ち、考えることも、新たな視点を得るためのスタート地点だという。これまでの講義を踏まえての、一旦の回答としてまとめられ、飽きないゲームをつくるには、さまざまな過去のゲームを調べることも大事だが、同時に、人間の性質を理解し、考えることも大事であると山本氏は語った。


 


◼︎「飽きない」ゲームを考える


後半では演習が行われた。演習内容は二部構成にて進められ、一つ目の演習では、以下の内容が行われた。

▼演習1
 
1. 個人作業
 これまでの自分の経験から、
 a. 飽きたもの
 b. 飽きないもの
 を思い出して理由とともに書き出してみる。
 
2. ディスカッション
 グループでお互いのメモについて話しあい、
 内容を1枚(A4用紙)にまとめる。

 
まずはあまり深く考えず、思いついたものをどんどん書き留めること。たとえば何度聴いても飽きない音楽や、何度観ても楽しめる映画があれば、なぜそうなのかを考えてみると良いという、山本氏のアドバイスもありながらも、学生たちは頭をひねりながら作業を進めていた。


演習1でまとめられた紙は、終了後にコピーされ全員に配布された。ここでは、実際に書かれたものの中から、いくつか抜粋して紹介。 
 
●なぜ飽きたのか?
・モチベーションが続かなかった
・自分には難しすぎた
・新鮮味がなかった
・作業感などの苦痛が上回った
・周囲が強すぎて勝てなかった
・上達を感じられなかった
 
●なぜ飽きなかったのか?
・毎回予想できない部分があった
・緊張感が維持できた
・目標が途切れなかった
・他プレイヤーが関与していた
・代わるものが他になかった
・上達が感じられた


続いて演習後半は、以下のような流れで行われた。

▼演習2
 
1. ディスカッション
 演習1の議論を踏まえて、飽きないゲームのしくみを考えてみる。
 グループで議論したアイディアを1枚(A4用紙)にまとめる。

 
ここで山本氏は、プラットフォームや具体的な内容というよりは、根本的な仕組みを考えるのがコツであり、ひとつの指針として、1000回繰り返しやっても飽きないものを想定して、それが飽きない理由を説明できるようにしてみるとよいとアドバイスを送り、各グループにて盛んに議論が行われた。

演習2においても、同様にコピーが全員に配布された。いくつか抜粋したものを紹介。
 
●飽きないゲームのしくみ
・常に目的を与え続ける
・プレイヤーが自由につくれる場を用意する
・ギリギリクリアーできる障害
・対人による不確定要素
・習慣性を持たせる
・自分の目標設定ができる
・上達感を得られる
・細かい達成感を与え続ける

 
いくつかのレポートの講評が行われたのち、最後に山本氏から「飽きないゲーム」をつくるためのヒントが話された。

「変化があること」は飽きないための重要な要素のひとつである。ソーシャルゲームなどでよくある、カードやストーリーの追加もこれに当たるが、作り手がどんどんコンテンツを追加していくという形は、遅かれ早かれ限界が来てしまうもの。コンテンツを追加しなくても、新しいものができていく状況が理想だという。
 
ここでキーワードとなるのが「創発現象」という言葉。ゲームに置き換えて説明すると、要素は限られているのに、何度遊んでも見たことのない状況があらわれるような状態を指し、将棋などがまさにこれに当たる。ビデオゲームでいうと「シムシティ」なども好例であり、このゲームは都市の形を分析した研究をもとに作られているという。
 
こうした「創発現象」のヒントは、いろんな所にあるので、一見ゲームと関係ないようなさまざまな分野に興味を持つことも重要だ。たとえばAIの研究などは、今後どんどんゲームに応用されていくと予想される。そうした先端技術はもちろんのこと、落語やクラシック音楽といった古典芸能も、「飽きない」ことを考えるための優れたサンプルになるのだ。
 
講義で紹介した、3つの「飽きない」ための行動、「新たな刺激を得る」、「好奇心を働かせる」、「ものを見る目を変える」。プランナーとしてこれらを常に意識し、「飽きないゲームをつくるには?」という問いの答えを考え続けてくださいと、山本氏は締め括りに述べた。
 
最後に「座・芸夢 for STU」を主導するファリアーの馬場保仁氏から、本ワークショップのふり返りが行われた。馬場氏は飽きないゲームをつくるというのは大変な話で、「飽きない」とは、どうやったら楽しんでもらえるかというのを考えることであると話す。その1つとして挙げられたのは、「毎回フレッシュな気持ちで自分のゲームを触れるか? 」という考え方だ。ただ、誰しも100%フレッシュな気持ちは出来ない。何故ならすでに知っていることであるからだ。だからこそ、何をやったらユーザーが迷うのか、何が楽しみの根幹にあるのかを理解できていないといけないと話す。難しいことだが、いかにリフレッシュされた中で自分がものを見れるのか、いろんな形で訓練していくことで養ってみてほしいと呼びかけ、ワークショップは幕を閉じた。

 

■第20回は6月7日(水)開催 エントリー受付中



次回(第20回)は遠藤雅伸氏をむかえて、6月7日に実施される。講演テーマは「センス オブ ◯◯◯」となり、応募は公式サイトから可能だ。

◆参加資格: 
・ゲーム企画職(ディレクター、リードプランナー、プランナー)を目指す学生 ※学生は学年不問 

◆参加費:無料

◆参加エントリーはこちら 申込締切:2017年5月29日(月) 結果連絡:2017年5月31日(水)

 

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※事前エントリー制ですので、必ずお申込みください。
※定員を超える応募があった場合は抽選となります。
※お一人1エントリーとなります。(複数エントリーされても1エントリーとなります)
※当選されたご本人様以外の代理参加はお断りしております。
※当日はメディア取材、写真撮影が入る場合がありますが、撮影について配慮させていただきます。
 

 

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
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