ジェットマンは、9月16日、PlayStation VR(PS VR)向けの『クーロンズゲートVR SUZAKU 朱雀』の体験会を宝塚大学新宿キャンパスで開催した。
今回の体験は、PlayStationStoreで公開中の体験版とは異なり製品版に近いバージョンが用意されていた。
筆者は会場で体験することができたが、同バージョンは移動方法や酔い対策など、よりクーロンズワールドを楽しめるよう更なる調整を行っていた。
本稿ではそんな体験会の様子、更にチューニングをした『クーロンズゲートVR SUZAKU 朱雀』の体験、そしてジェットマン代表の井上幸喜氏、COOの吉岡章夫氏のミニインタビューのをお届けする。
▲宝塚大学新宿キャンパスで開催
まずは体験会の様子だ。午前中から男女年齢問わず幅広い層が会場に来場した。体験者はプレイ中しきりにスタッフに質問が出るなど、興味深々の様子だった。
VR自体が初めてだった体験者もおり、九龍フロントではその高さが珍しいのか、終始上の方を向いてプレイしている人もいたのが印象的だ。
では実際の体験に話を移そう。今回体験できた『クーロンズVR』は、「念写」と「剥きエビ拾い」が実装されており、また体験版では行けなかった龍城路と九龍フロントの広い範囲を探索できるようになっていた。
体験版での操作とは異なり横移動が可能になっており、少々ぎこちない動きが改善されスムーズに動くことができた。
界隈を徘徊しているユニークなあの住民達の数も増え、街の存在を強く感じるようになっていた。
雨が降る場所においては、天から降る雨粒と、打たれた地面がリアルに描写されるといった具合だ。
体験版で公開されたマップは空間の狭い場所だったが、体験会のバージョンは高低差を感じる作りになっているため、終始上下を見てしまう。
初めての海外旅行よろしく、キョロキョロしてしまい完全にお上りさんの状態だ。
音(SE)に関しても、擬似バイノーラルの影響か、自分の向いてる方向によって音の定位が変化するなど、クーロンズの臨場感を高めるためのこだわりを感じることができた。
更に今回試したバージョンではクラウンドファンディング出資者向けの様々な特典を確認することができた。
反応は人によってそれぞれだと思うが、筆者は思わず爆笑するシチュエーションとなり、体験会会場でなければ膝から崩れ落ちていたところだ。
どのような出来上がりになっているか、出資者の方は是非、VRを使ったクーロンズワールドを体験してほしい。
■体験版からのさらなる向上も。ジェットマン井上氏、吉岡氏に聞く。
宝塚大学教授・ジェットマン代表 井上幸喜 氏 (写真右)
宝塚大学准教授・ジェットマン COO 吉岡章夫 氏 (写真左)
--今回のバージョンは操作方法など体験版に比べて大幅にチューニングされたと感じました。
井上幸喜 氏(以下、井上) :VRでの操作方法に関しては、酔いという問題は避けて通ることができません。私たちもまだ模索しています。
こちらでプリセットしたお勧めの操作方法を幾つか入れようと思っています。
吉岡章夫 氏(以下、吉岡):操作方法の経緯としては、Oculusの『クーロンVR』の体験会の操作方法で、みなさん酔わない方が多かったんですね。
そこで『クーロンゲートVR SUZAKU』も同様にしたんですね。
井上:ただ、体験会は立ってプレイするため、実際に座ってプレイする状態とは酔いという点では体感が変わってしまいます。
座ってる方がきつく感じるのでその差が出ていたのかなとは思いました。
吉岡:FPSゲームやシューティングでは、自分の見ている先に銃やコクピットの計器類があります。
『クーロンズゲートVR SUZAKU』では、その空間を魅せたいので見ているもの全部が見えてきます。ただし注視ものがないと酔いやすくなってしまいます。
井上:今回のバージョンでは画面中心に緑色のポイントが付けてみました。我々はそれを「酔い止め玉」と呼んでいます(笑)
回転する時にあの玉を見ると酔いが少なくなります。いらない人にとっては玉自体も消せるようになっていますよ。
ーー体験版時に比べて酔いに対しての施策を盛り込んだと
吉岡:そうですね。また操作がしにくいという声もありましたので、横移動ができるようにしてみました。
井上:当初は酔い対策で削った仕様でしたが、要望が大きかったという点があります。
ーー今回の体験版のリリースは非常に得るものは多かったんですね
井上:そうですね。モニタリングという意味でもありました。
このプロジェクトの立ち上がりから、ゲームを完成させことだけが目的ではないんですね。ユーザーさんからのフィードバックなどの改善といった、コミュニケーション自体もゲームだと思っています。
ーージェットマンを見ているとファンとのコミュニケーション部分に関して特に強い想いを感じます
井上:SNSなんかは、マーケティングツールではなく、コミュニケーションツールというスタンスで使っていますね。
ーー体験会の参加者も男女年齢がバラバラでした
吉岡:オリジナルをプレイしていた40代前後の方はもちろんですが。実況動画などで興味を持ってくれた若い方もいらっしゃいますね。
ーーみなさん熱心にアンケートも書いていたのもの印象的です
▲体験後は非常に細かく内容を記載しているアンケートが多数寄せられていた。
PlayStationVRは持っていないが、このために買いたいといった意見も目立った。
井上:みなさん、もの凄く書いてくれるんですね。去年のOculusを使った『クーロンズVR』の体験会でも、アンケート取っていて、実際PS VRでのリリースはどうなるだろうって。
吉岡:「みんなPS VRを買うの?」なんて見てましたね。
ーーOculus版の含めて体験会はもう何回もされていますが、会を通して見えてきたものはありますか?
井上:クーロンズゲートVRのためにPS VRを買ってくれる人がいるんだなというのを実感しました。
またターゲットが見えてくるというのもありますね。年齢でいうと30代がメインで男女比が同じだったんです。
また新しい10代の子達が今出てきていて、子供の時に親がやってたり、家の中にあったという世代ですね。生まれた時にはもうあったと(笑)
ーー良い世代ですね(笑)VRタイトルということでプレイ時間を気にする方もいらっしゃるかと思います。
井上:もともと宣言していたように、一回のプレイ時間は短く、目安として1日10分程のプレイを想定しています。
そういったプレイスタイルで2か月ほどはお楽しみいただけるのではないかと思っています。
吉岡:開発している我々でも時間がかかる内容になっていますね。
あとVRヘッドマウントディスプレイを脱着いう行為もゲームの演出として組み込んでいます。
VRを使ったプレイは長時間するものではないので、辞めどきを誘発している部分もあるんです。
井上:一回、休もうねと。やりすぎると溶けてしまうので(笑)
そういった意味では行動自体も組み込んだというところですね。
ーーなるほど(笑) 最後にファンに向けてメッセージをお願いいたします。
井上:20年目のファンサービスとVRコンテンツの研究を始めて4年が経ちました。クラウドファンディング成功を経て、本制作開始からちょうど1年を迎えようとしています。
ユーザーさんのコメントを参考に、操作性など制作は最後の調整を行っています。
クーロンズゲートのファンの方へ恩返しのつもりで始めた企画でした。
ただ「むかしから家にあったよ」「親がプレイしてた」「実況で診た」などの、多くの若い方からの支援を頂いたんです。
世界観を構築しているビジュアルとサウンドは、「リマスター」や「ハイレゾ化」ではなく極力PS版オリジナルの再現をし、プレイし易さや、手軽な滞在時間といったところでも現代のコンテンツとして耐えられるものを目指しています。
私たち自身もゆっくりと歩きたかった陰界街を、是非皆さんも体験してください。もうすぐです。
ーーありがとうございました。
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(取材・文 : 編集部 和田和也)