【発表会】グリーとBilibiliが業務提携…田中社長「日本・中国のゲーム・アニメ文化をよく知るBilibiliとの協業で新しいコンテンツを作っていける」
グリー<3632>が、10月30日にBilibili.と、日本、中国国内におけるスマートフォン向けゲーム事業およびVTuber事業について業務提携契約を締結したことを発表したのは既報の通り。本稿では、同日に都内・赤坂ガーデンシティにて行われた発表会についての模様をレポートしていく。
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まずは、グリー 代表取締役会長兼社長の田中良和氏が登壇して今回の提携に関する背景を説明した。
▲グリー 代表取締役会長兼社長の田中良和氏。
田中氏は、ゲームやアニメを含む二次元市場において、グリーとBilibiliは互いに最重要のパートナーであると話す。その中で、グリーは中国で事業を展開するために、Bilibiliは日本で事業を展開するために今回の提携が締結に至ったとのことだ。
また、グリーはネイティブゲーム事業において「エンジン×IP×グローバル」という事業戦略を掲げている。これに則り、同社ではこれまで”エンジン”や”IP”の部分で『アナザーエデン 時空を超える猫』、『SINoALICE』、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~』、『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』といったタイトルを国内で展開してきた。そこで、最後のグローバルを達成するため、中国市場へのアプローチを考えたという。
▲その人口の多さから日本を凌ぐほど巨大に発展した中国のモバイルゲーム市場は、今や日本からしても無視できない市場へと成長している。なお、市場規模は2020年に2,5兆円にまで至ると予測されているとのこと。
ただ、中国市場は独自性が強く外資の参入規制も厳しいため、現地で日本のゲームを売り出すには強力なパートナーが必要になると考えたと田中氏は述べる。その中で今回、全世界に1億人以上のアクティブユーザーを持つBilibiliとの提携を決めたのだとか。数ある中国企業の中からBilibiliを選んだ理由としては、同社が抱えるユーザーには日本の二次元コンテンツ好きが多く、ゲーム事業を展開するうえでは非常に相性が良いと説明した。また、Bilibiliは数年前から日本市場に進出しており、両国のゲーム・アニメ文化をよく知る同社と協業することで今までにない新しいものを作ることができるのではないかとの展望を述べて説明を終えた。
▲両社の間ではゲーム事業とVTuber事業を展開していく。グリーは、日本で制作したIPを中国でも展開していくとのこと。
続いては、Bilibiliの董事長兼CEOの陳睿氏が登壇し、Bilibiliにとってグリーと提携する意義を説明した。
▲Bilibili 董事長兼CEOの陳睿氏。Bilibiliは中国国内最大級の若者向けエンターテインメントプラットフォームやコミュニティ運営を手掛けている。
陳氏は、Bilibiliユーザー約1億人のうち、82%は中国のネット文化の中核層である「Z世代」だと話す。そのため、同社は中国における未来のコンテンツ消費のトレンド最先端に立っているのだと説明した。
▲数百万人のユーザーが3000万件以上の動画が投稿されていることや、毎日200万本以上の動画コメントが投稿されていることなどを特徴として挙げた。
その後、陳氏は日中のアニメ・ゲーム産業に対する見解を発表。アニメ・ゲームの発信地である日本は、全世界においても非常に重要な場所であると話す。また、ユーザーの熱量が高いだけでなく、豊かな人材とクリエイティブがあるという見解を示した。一方、中国のアニメ・ゲーム産業はまだまだ新しく市場で成長段階にあるという。現在は、中国本土発のものが拡大しており、大手ネット企業も注力しているとの話だ。今後は、熱量の高いユーザーを多く抱えていることからも、世界最大級の文化・エンタメ消費マーケットになると考えていると陳氏は述べた。
Bilibiliでは、日本業界との交流・協業を重要視していることから、2015年より、日本アニメの海外放送ライセンスの主要取引先となり、数多くのアニメ作品の制作に取り組んでいる。その後、2016年には日本オフィスを設立。また、Bilibiliが制作した「TO BE HERO」はテレビ東京にて放送し、2017年東京アニメアワード「アニメファン賞」で7位に入賞している。そして、2018年に合弁や協業を通して、日本でアニメスタジを設立するに至ったと経緯を話した。
最後に陳氏は、グリーとの協業で特に期待していることとして「ゲームの共同事業」と「VTuberの配信事業」を挙げた。ゲームでは既に研究事業が立ち上げられているほか、VTuber事業は今後、中国でもより人気が出ると予測しているとの話だ。
次に、グリー 取締役 上級執行役員の前田悠太氏より、中国市場とBilibiliについての説明が行われた。ここではグリーが今回、どのようにして中国市場に目を向け、どういった理由からBilibiliを提携先に選んだのかといったことが語られた。
▲グリー 取締役 上級執行役員の前田悠太氏。
人口が約13,9億人の中国では現在、スマホ普及率が約55%。7億人がスマホを利用している巨大マーケットとなっている。その中でも特にモバイルゲーム市場が急拡大しており、5年前の2013年には0,2兆円だった市場規模が2017年は1,9兆円と約10倍もの成長を遂げており、これは実に日本の2倍もの数値となっている。
▲5年前に比べて4GやWi-Fiの普及によりスマホの利用率が向上、また可処分所得の拡大なども相まって市場が急成長している。
また、日本のスマホ市場はiOSにApp Store、AndroidにGoogle Playが主要という構図となっているが、中国には独自のマーケットが形成されている。iOSは日本と同じくApp Storeからアプリの配信が行われているものの、Androidではプラットフォームが乱立して群雄割拠となっている。そのため、日本の作品を中国でAndroid向けに配信するにはプラットフォームを選択することになるという。
そして、先ほども紹介された通り、Bilibiliは中国の10~20代と若い世代に支持を受けたコミュニティを運営していると前田氏は説明する。コミュニティ内では、オリジナルコンテンツから、最新の日本ドラマやアニメを視聴できる。もちろん、放映権をきっちりと獲得したうえで放映しているため、日本の版元企業とも良好な関係を築いているとのことだ。
こうした特徴を持つBilibiliは、ゲーム事業としてもAndroidプラットフォームを展開している。そのため、熱量の高い二次元コンテンツファン層にターゲティングをしてゲームをオススメすることができるという点が重要で魅力的な点であるとのこと。さらに前田氏は、Bilibiliに数多くの二次元コンテンツファンが存在していることを分かりやすく示すために下記の写真を紹介した。
▲毎年、7・8月に大規模イベントを開催しているBilibiliでは、3日間のイベントで延べ17万人を動員。来場している方の属性としても日本のアニメファンと遜色ないほど熱量の高いユーザーが集っており、前田氏は「日本のコンテンツとの親和性を感じずにはいられない」とコメントした。
最後に前田氏は、中国における二次元ユーザーの規模は2017年で2,5億人と言われており、年々拡大しているため、市場環境としてもまだまだ伸び得る可能性があるとの展望を述べて降壇した。
ここからは、Bilibiliの副総裁である張峰氏が登壇してJV(ジョイントベンチャー)設立と共同開発について説明が行われた。まず、張氏は中国と日本のスマホゲーム市場が歩み寄るためには、下記の3つの段階が重要になると述べる。
▲Bilibili 副総裁の張峰氏。
1点目は、『ミリオンアーサー』シリーズや『Fate/Grand Order』といった”日本発のタイトルが中国市場で成功を収めた”こと。2つ目に、『アズールレーン』や『崩壊3rd』といった”中国発のタイトルが日本市場で評価されたこと”である。そして今、両国の優秀なゲーム開発者たちが共同で開発を行い、日中間のユーザーにより良いコンテンツを送り出す段階に差し掛かっていると張氏は説明した。
また張氏は、日本のゲーム開発者はIP企画やゲーム・キャラ構成、美術の表現という点が優れていると分析する。一方、中国のゲーム開発者は技術開発や遊び方の設定、容量システムの設定の面では豊富な経験を持っていると話す。そのため、共同開発を行うことで、互いに学び合い、より良いコンテンツが作り上げられことが期待できると説明。これを実現するため、両社は日本に合弁会社bGゲームス株式会社を設立し、ゲームコンテンツを共同開発していくことを決定したと発表した。
▲bGゲームスの社長兼代表取締役は張氏が務める。当面の主な業務は、共同でコンテンツを開発し、ユーザーに優れたIPを送り出すことになる。なお、具体的な資本金や出資比率は非開示だが、マジョリティはBilibili側になるとのこと。
この提携により、実力ある日本の作家や優れたクリエイターと共に高度な開発ができることを期待していると張氏はコメントした。現在は既に、「ソードアート・オンライン」の編集者などで知られるストレートエッジ 代表取締役の三木一馬氏、『ミリオンアーサー』シリーズのプロデューサーなどで知られるシシララ 代表取締役社長の安藤武博氏を開発チームに迎えてデビュー作の制作に取り組んでいることが明かされた。こちらの詳細については、企画やスケジュールが固まった段階で改めて発表されるとのこと。後に前田氏は、まだ不確定ではあるものの、希望としては2020年内にリリースできればという展望を示した。
その後、会場では三木氏と安藤氏より本プロジェクトにかける意気込みが語られた。
三木氏(写真左):今回、Bilibiliさんとグリーさん、日中で最強のプラットフォーマ―の方々にご指名をいただいたと考えております。最強のクリエイティブを作ることが自分の仕事だと考えておりますので、現在、弊社で契約をしている優秀なクリエイターやゆかりのあるクリエイターの方々と面白いものを作っていくためにプランを練っているところです。是非、楽しみにしていただければと思っております。
安藤氏(写真右):先ほども紹介があった通り、今や日本の作品が中国でヒットし、中国の作品が日本でヒットしています。これまでも、まずは日本の方に喜んでいただけるものを作ったうえで海外に展開するというスタイルにしており、この10年で日本・アメリカ・台湾・韓国でストアランキング1位を獲得できました。結果的には、日本で売れた後に現地の良いパートナーと巡り合えたことが過去の勝因でもあると思うのですが、これをもっと早いタイミング、制作初期から良いパートナーを見つけて世界で売れるものを作ろうとすることが大事なのではないかと考えていた矢先に今回のお話をいただきました。まずは今まで通り日本の方々に楽しんでいただけるような座組で臨みつつ、最初から制作現場に中国のスタッフが在籍しているというのは今までと大きく異なりますので、さらに一枚岩になって良いゲームを作っていこうと思います。
ここで再び前田氏が登壇し、ゲーム事業とVTuber事業についての詳細を説明した。日中二次元市場の最重要パートナーとなることで、スマートフォンコンテンツで両国のゲートウェイとなるような存在になっていきたいと話した。なお、bGゲームスでは日本でもパブリッシング事業も検討中で、Bilibiliが手掛けるタイトルを日本で配信するということを考えているとのこと。その際、日本固有のレギュレーションなども存在するため、そうした部分でグリーグループの知見を活かしてBilibiliに提供していきたいと述べた。
一方、グリーとしても注力しているVTuber事業については、二次元最大のコミュニティを持つBilibiliと協業することで大きなシナジーが生まれるのではないかと期待しているとのこと。前田氏は、日本のコンテンツが好きな方々に向けて中国で配信を行っていくほか、VTuber業界そのものの拡張性という意味でも大きなインパクトを与えられるのではないかと述べる。
▲プロデュースや配信はもちろん、魅力あるVTuberをプロデュースしている各社へも積極的に投資していきたいという展望を示した。
また、中国でも現在、VTuberのプロダクションやキャラクターが続々と生まれているとのこと。Bilibiliとしても、この分野には以前から投資を行っているほか、日本でも日増しに影響力が高まっていることから、中国でもまだまだファン層が拡大するのではないかと予測している。
▲言語は主に日本語での配信を予定しているが、同時文字翻訳機能を搭載するなどして中国の方にも楽しんでいただけるよう検討しているという。
最後に前田氏は、この提携を通じて中国にVTuberファンを増やしていけるような起爆剤になれるのではないかと考えていると述べて発表の締めとした。
(取材・文 編集部:山岡広樹)
会社情報
- 会社名
- グリー株式会社
- 設立
- 2004年12月
- 代表者
- 代表取締役会長兼社長 田中 良和
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3632
会社情報
- 会社名
- bilibili(ビリビリ)