【Sp!cemartゲームアプリ調査隊】売上ランキングTOP10入りの『メダロットS』を分析。既存ファンに向けた「メダロット」ならではの露出も
スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。ゲームアプリの運用情報をいつでもウォッチできる「Sp!cemartカレンダー」や、毎月発行しているレポートを提供している。
なかでもカレンダーは、セールスランキング上位のモバイルオンラインゲームのゲームシステム・運用施策をダッシュボード形式のWEBツールとして提供。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関関係を時系列で分析できる。
本連載記事ではSp!cemart協力のもと、カレンダー機能を用いた、ランキング上位タイトルの直近のゲーム内施策を分析。今回はイマジニアの新作『メダロットS』の施策をピックアップする。
(以下、Sp!cemartゲームアプリ調査隊より)
■20年以上の歴史を持つロボットバトルRPG
提供:イマジニア(開発:SoWhat)
リリース日:2020年1月23日
人気ゲームシリーズ「メダロット」の最新作がスマートフォン向けアプリとして登場。「メダロット」は、人間とロボットが共存する近未来を舞台に、昆虫や動物をモチーフとしたロボット同士を戦わせるという世界観が特徴的なメディアミックス作品です。
1997年のシリーズ第一作目の発売以来、ゲームソフトを中心に、テレビアニメや雑誌での漫画連載、マーチャンダイジングなどのメディアミックス展開により人気を不動のものとし、ゲームは累計出荷本数が330万本を超える大ヒットシリーズとなりました。なかでもゲームは、ロボットのパーツやアイテムなどを「収集」「育成」「交換」し、自分好みに「カスマイズ」して「対戦」するというシステムが支持され多くのファンを獲得。
1997年に発売された第一作目のゲームボーイ版を皮切りに、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDSなど携帯ゲーム機を中心にナンバリングタイトルが発売されました。また、基本的に「カブト・クワガタ」の2バージョンを並立して発売していたのも特徴です。
TVアニメが放送された1999年~2001年が全盛期としながらも、以降も途切れぬようナンバリングタイトルが発売されるなど、人気IPとして長年愛されてきました。
さて、シリーズ初のスマホゲーム『メダロットS』では、さきに挙げたコンシューマ版同様に、ユーザーが収集、カスタマイズしたメダロットを用いて戦うロボットバトルRPGです。従来のメダロットシリーズで好評なコマンド形式によるバトルシステムの面白さはそのままに、新規ユーザーにも楽しめるように用語や機能の再精査を行うことで、奥深いメダロットの世界を多くの方が体験できる仕様になっています。
開発・運営を担当したのは、イマジニアの連結子会社である株式会社SoWhatです。『メダロットS』は、『LINE アキンド星のリトル・ペソ』、『すみすみ ~まったりパズル~』に続くSoWhatの第三作目にあたります。
リリース後は、App Storeの無料ダウンロードランキングでは1位、セールスランキングでは最高8位を記録する幸先のいいスタートを切りました。まずは事前プロモーション施策からどのようなことを行ってきたのかを調査しました。
■既存ファンに向けた「メダロット」ならではの露出
【リリースまでの流れ】
■ 2018年11月に開発中の旨を発表(関連記事)
■ 2019年5月16日に正式タイトル発表。及びティザーサイト開設
■ 同年7月28日にオリジナルメダロットのデザインコンテストを開催
■ 同年9月3日に事前登録開始
■ 同年9月9日にニコニコ動画でアニメ「メダロット」全52話を一挙放送
■ 同年10月23日に公式Twitterアカウントでフォロー&RTキャンペーンを開始
■ 同年11月23日にメダロットシリーズ初のLIVEイベントを開催
■ 同年11月28日の「メダロットの日」に生配信企画を開催及び配信日等を発表
■ 同年12月19日に公式Twitterで「みんなで作るロボロボ団最強メダロット計画」を開始
■ 2020年1月23日に正式サービス開始
上記が『メダロットS』のリリースまでの流れですが、情報出しの感覚が空いているにも関わらず、その熱量が落ちることはありませんでした。
プロモーション施策の特徴としては、「メダロット」シリーズに初めて触れる方に向けたデジタルマーケティングというよりは、過去に一度でも遊んだことのあるユーザーに向けて、同シリーズお得意のメディアミックス施策で訴求していたことが印象的でした。
たとえば、オリジナルメダロットのデザインコンテストをはじめ、アニメ「メダロット」の一挙放送、シリーズ初のLIVEイベントなど、リリースを控える2019年下半期(実際には2020年1月末)に狙いを定め、感覚を空けながらも毛色の異なる大きい施策を展開しているようでした。
▲デザインコンテストの投稿形式
また、デジタルマーケティングでは、Twitterを用いた定番のフォロー&リツイートキャンペーンで拡散・露出に努めていましたが、抽選で貰えるプレゼント内容が知る人ぞ知るキャラクター「快盗レトルト」を模した「メダロットカレー(30個入り)」10名分だから驚き。怪盗レトルトは、ゲーム版『メダロット2』で初登場し、主人公たちのピンチにカレーに参上し、ことあるごとに助けてくれる正義の怪盗……当然、既存ファンに向けたプレゼント内容であることが考えられます。
リアルインセンティブではありますが、レトルトカレー(かつ原作知らない人にとってはパッケージの意味も分からない)のため、あまり訴求にはならないのでは……と思いきや、いざ蓋を開けてみれば、16,000件のリツイートを記録しました。色物賞品ですが、忠実に原作を再現した施策を打ち出し、各方面で話題を作り上げることに成功。
事前登録は当初10万人までを報酬上限に設定していましたが、最終的に20万人を超えて、追加報酬を新たに設定。また、事前登録方法はTwitterの公式アカウントのフォローでしたが、その後にApp StoreとGoogle Playの予約注文ボタンを設けたことで、数字が伸びたことが考えられます。
20万の内訳としては、公式Twitterのフォロワーが2020年1月27日現在で9万のため、アプリストアの予約注文ボタンで11万以上の数字を上乗せしたのではないかと思います。
続いては、『メダロットS』のマネタイズをはじめ、直近におけるランキング推移と施策について、「Sp!cemartカレンダー」で調べてみましょう。
■有料アイテムのルビーと、ダストルビーの存在
本作のマネタイズは、有償アイテムのルビーや商品パックの販売です。ルビーは主にガチャなどに使用します。ルビーのラインナップは以下の通り。
【ルビーのラインナップ】
・ルビー1個(120円)
・ルビー6個+おまけ1個<無償>(610円)
・ルビー12個+おまけ2個<無償>(1,220円)
・ルビー40個+おまけ10個<無償>(3,680円)
・ルビー70個+おまけ20個<無償>(6,100円)
・ルビー125個+おまけ43個<無償>(10,000円)
ガチャでは、抽選で★2以上のメダロットの頭部、右腕、左腕、脚部パーツのいずれか1つ、もしくは★2以上のメダロットの純正セット一式(同一型番の頭部・右腕・左腕・脚部パーツのセット)が当たります(10連なら純正セット一式が1体確定)。なお、ガチャは1回でルビー3個(360円)、10連で30個(3,600円)必要になります。
「メダロット」の醍醐味は、手に入れたパーツを組み合わせて、育成(強化)し、自分だけの最強メダロットを作ることです。その意味でも本作における主なマネタイズは、パーツを手に入れるためにガチャを利用することにあります。
『メダロットS』【調査期間:2020年1月22日~1月27日】
Sp!cemartカレンダーでは、リリースから直近の施策及びランキング推移として、2020年1月22日(水)~1月27日(月)を抜粋しました。ランキング推移を見てみると分かる通り、セールスランキング(オレンジ色)とダウンロードランキング(青色)が垂直立ち上がりに。無料ダウンロードランキングは1位を継続し、セールスランキングも右肩上がりで推移。
ゲーム内施策では、ログインボーナスからミッション達成など基本的な施策は取り入れているなか、今回はミッション達成にスポットをあてていきます。
ミッションには、デイリーとフリー(期限なし)の2種類が存在。フリーでは、達成することで強化などの各種アイテムが貰えますが、デイリーミッションではダストルビーというアイテムが手に入ります。このダストルビーは、10個集めるとショップにてルビー(無償)1個と交換することができます。なお、デイリーミッションをすべて達成すると、通常のルビーも手に入ります。
今後デイリーミッションの内容は変わっていく可能性もありますが、筆者が遊んでみた感じでは他社タイトルと比べて簡単に達成できるのが印象的でした。無償とはいえ、ログインボーナスとは別に、毎日ルビーが1個(120円相当)とダストルビーが7~8個ほど手に入ることを考えれば、継続率を促すひとつの施策として寄与していることが考えられます。
■“子ども向け”も昔の話。成長したユーザーたちが夢中に
ここ最近、過去に一世を風靡した子供向けコンテンツのスマホゲーム化が相次いでいます。現在も続いていることから、“過去に一世を風靡した”なんて失礼な言い方かもしれませんが、その背景に共通しているのが、当時遊んでいたユーザーたちの成長と接触でしょう。
▲左から『デュエル・マスターズ プレイス』(配信:2019年12月18日)、『ミニ四駆 超速グランプリ』(配信:2020年1月16日)、『メダロットS』(配信:2020年1月23日)
直近リリースされた上記タイトルは、それぞれアプリストアのセールスランキングでも高い順位を記録しています。各タイトルともその原作は長年愛されているものではありますが、主に90年代~2000年代を中心に大ヒットしたものばかりです。
そんなタイトル群が2020年に次々とスマホゲーム化。当時遊んでいたユーザーも成長し、現在は20代後半、あるいは30代、40代など年齢層も高い。一定の認知度をありながら、懐古的な興味と、幾ばくかの新鮮さを求めて、前述した高い年齢層のユーザーに刺さったことが考えられます。また、スマホゲームという装いも新たな体系ではありますが、一度はお金を支払ったコンテンツのため、ロイヤルユーザーとしての期待値もあります。
▲『ミニ四駆 超速グランプリ』のパーツ強化画面(左)では、実写さながらのパーツを調整するシーンが挿入されます。また、ヘルプ画面(右)では、子ども向け漫画雑誌のようなレイアウトと、紙質の色合いまでも再現するなど、一度でもミニ四駆を遊んだことのあるユーザーにとっては、思わず目が止まる魅力的なシーンが随所に散りばめられています。もちろん、『メダロットS』にも粋な演出が多数。
このように一見して子ども向けのコンテンツ・IPではありますが、実際に遊んでいるのは年齢層の高いユーザー。さきに挙げた3タイトルは、スマホゲーム版のユーザー層を理解していてか、該当の層に訴求できるようなマーケティング施策、ゲーム仕様(デザイン)などをきちんと講じており、徹底した市場及びコンテンツ分析を経て、こんにちのヒットにもつながっていることが考えられます。
また、『メダロットS』ではシリーズ関連商品の発売が控えています。たとえば、2020年1月23日(木)に本作のリリースにあわせ、大阪・日本橋にメダロットオフィシャルコーナー「Medarotters base コトブキヤ日本橋」がオープンするほか、下記の商品も発売。
▲メダロットのアクションフィギアが3月下旬に発売予定。『メダロットS』から登場する新メダロット「クロスメサイア」も早速ラインナップに入っています。約1/12スケールになったメダロットで様々なポージングも自由自在です。
▲TVアニメ放送開始から20周年を記念して発売されるアニメDVD-BOXの受注販売がメダロットの公式グッズ販売サイト「Medarotters Store」で開始。Medarotters Storeでの予約特典として、『メダロットS』向けの描き下ろしイラストを用いたアクリルキーホルダーも付属。
現在はスタートダッシュの恩恵でアプリストアのランキングが垂直立ち上がりを見せていますが、これから落ち着いた推移になっていくことでしょう。ただ、ゲーム内には「メダリーグ」という新モードが3月上旬にオープン予定とのこと。名前から察するに、ランキングバトルやダンジョン系、はたまたPvPコンテンツなどが考えられますが、いずれにしても『メダロットS』の裾野を拡げてくれる重要なモードになることは違いありません。
■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「Sp!cemart」というサービス名称で各種ソリューションを提供。
コーポレートサイト:http://corp.spicemart.jp/
Sp!cemart 商品に関する問合せ:info@spicemart.jp
■Sp!cemartゲームアプリ調査隊 バックナンバー
■Vol.1 〜待望のシリーズ最新作『マリオカート ツアー』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜
■Vol.2 〜新作リズムゲーム『欅坂46・日向坂46 UNI'S ON AIR』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜
■Vol.3 〜初週で全世界1億DLを記録した『Call of Duty®: Mobile』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜
■Vol.4 〜Riot Games大特集。新作『Team Fight Tactics』の概要から『LoL』の直近プロモ・e-Sports施策まで〜
■Vol.5 流入から定着まで繋げた7つの施策…大ヒット中の『FFBE 幻影戦争』、事前登録からリリース直後の施策を総まとめ
■Vol.6 事前プロモ(ほぼ)なし…突如配信された『ワールドフリッパー』ヒットの背景。リリース前後の施策を分析
■Vol.7 運営7周年を迎えた長期運営タイトル『にゃんこ大戦争』…長く愛される理由をゲーム“内外”の施策から分析
■Vol.8 好調なリスタートを切った『魔界戦記ディスガイアRPG』、リリース中断から再開までの8ヵ月間の動向を分析
■Vol.9 大ヒット中の『デュエル・マスターズ プレイス』、売上ランキング2位の背景をIP×マネタイズの観点から分析
■Vol.10 スマホ向けパズルゲームのトップを走る『ガーデンスケイプ』の施策とシリーズの強みを分析
■Vol.11 海外発のストラテジーゲーム『Rise of Kingdoms -万国覚醒-』がヒットの兆し。リリース前後の施策を分析
■Vol.12ヒットを生み出し続けるYostar待望の新作『アークナイツ』を分析。リリース前施策からマネタイズまで
会社情報
- 会社名
- イマジニア株式会社
- 設立
- 1986年1月
- 代表者
- 代表取締役社長兼CEO 澄岡 和憲
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高59億600万円、営業利益3億4500万円、経常利益6億5600万円、最終利益4億1600万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 4644
会社情報
- 会社名
- 株式会社スパイスマート
- 設立
- 2015年7月
- 代表者
- 代表取締役 久保 真澄