モバイルゲーム運営で発生する配布・報酬の設定ミスへの対応…平等重視の『ウマ娘』と“ヤケクソ補填”の『ブルアカ』を事例に【ゲームエイジ総研】

ゲームエイジ総研は、モバイルゲーム内のイベントでのアイテムの配布・報酬に設定ミスとその対応、影響に関する調査結果を発表した。長期運営が前提となっているモバイルゲームビジネスでは、システムの不具合や配布・報酬アイテムの設定ミスなどが発生することもあるが、アイテムの配布・報酬に設定ミスが発生したことがある『ウマ娘』と『ブルーアーカイブ』をケースとして取り上げたという。両タイトルがどのような対応を行ったのか、その結果、ユーザー数がどのように変化したのかを同社のアプリログ自動集計/分析システム「iGage(アイゲージ)」で見ていく。


<以下、プレスリリースより>


■イベント報酬日の誤配布でユーザー数が伸びた『ウマ娘』
『ウマ娘 プリティーダービー』は4月1日から4月4日までの期間、ゲーム内イベント「みんなでトップウマドルプロジェクト」が開催されました。『ウマ娘』はゲームプレイ時に「ファン」を獲得できるのですが、このイベントではイベント期間中に全ユーザーが獲得した「ファン」の総数が一定数に到達するごとにゲーム内アイテムの報酬を4月5日に獲得できるというイベントとなっていました。

4月4日のお昼まで行われたこのイベントでは、報酬がもらえる最大「ファン」数は2兆人に設定されていましたが、最終的に約3.3兆人の「ファン」を獲得し終了しました。その後4月5日にはそのイベント報酬が配布されたのですが、本来配布される予定だった「サポートPt」ではなく「サポートPt」と比べ希少性の高い「サークルPt」が配布されてしまうというミスが発生してしまいました。

運営側は発生後1時間未満で緊急メンテナンスを実施するなど、迅速な対応が行われましたが、平日とはいえ、ログインしやすい昼休みの時間帯であったこと、この話題がTwitterのトレンド入りしたことなどが影響し、非常に多くのユーザーがログインしたものと思われます。

最終的に、運営側の対策として4月5日中に、ロールバック(全ユーザーの一部データを一定の期間の段階まで戻すこと)が行われ、正しいイベント報酬アイテムの配布、緊急メンテナンスのお詫びアイテムの配布などが行われました。

iGageでこの期間のDAU(デイリーアクティブユーザー)の推移をみると、イベントが開始された4月1日に196万人と、ユーザー数が最も多くなっています。2日~4日のイベント期間も、170万人以上と、比較的高い水準でアクティブユーザー数をキープしています。そして配布ミスがあった4月5日は、186万人と、イベント期間中の2日~4日より10万人以上のユーザー数となっていることがわかります。【グラフ1.】

 

この配布ミスがTwitter上で話題となったことや、アイテム配布数が増加したこともあったことから、ユーザー数が大きく増加したことが考えられます。


■イベント開始翌日の“ヤケクソ補填”でユーザーが伸びた『ブルーアーカイブ』
『ブルーアーカイブ』は10月26日から11月9日まで、ゲーム内イベント「Get Set, Go!」が開催されました。10月22日には、本イベントに関する生配信も行われ、期間限定のキャラクターの実装などもあったため、ユーザーの中でこのイベントは話題となっていました。

しかし、イベント開始日である26日に、イベントでもらえる報酬アイテムの量に大きなミスがあり、イベント開始から2時間後には修正のため緊急メンテナンスが開始されました。

メンテナンスが終了したのは深夜で、お詫びのアイテム配布などが行われましたが、イベント報酬アイテム数には大幅な下方修正が入りました。先ほどの『ウマ娘』と違い、一定の日にまとめて報酬アイテムを獲得するタイプではなく、プレイ中に報酬アイテムを入手できるイベントであったため、メンテナンス前にプレイしたユーザーが大きく得をする結果なりました。

報酬数の下方修正という意味である「報酬ナーフ」などがTwitterでもトレンド入りをし、ユーザーからの不満の声を重く見たのか、10月27日の深夜3時に統括プロデューサーによる今回の経緯説明とお詫び、そして、追加の補填内容が掲載されました。その補填内容があまりにも充実していたため、今度は「ヤケクソ補填」などのワードがトレンド入りするという現象も見られました。さらに、『ブルーアーカイブ』の公式Twitterフォロワー数50万人突破の記念アイテム配布も重なり、10月27日には非常に多くのアイテムが配布されるという結果となりました。

iGageでDAUを見るとイベントが開始された26日のアクティブユーザー数は27万人と、前日の25日より4万人ほどアクティブユーザー数を伸ばしています。しかしトラブルが起き実際に多くのアイテムが配布された27日は37万人と、イベント開始日よりも10万人ほどアクティブユーザー数が増加しています。【グラフ2.】

 

また、その週に獲得した新規・復帰ユーザー数を見るとトラブルがあった10月24日週には新規・復帰ともに10万人以上のユーザーを獲得しています。【グラフ4.】

一般的にアプリゲームにおいて大きくアクティブユーザーが増加するタイミングは「周年」「ハーフアニバーサリー」「年末年始」などですが、【グラフ3.】の7月20日から8月3日に行われた1.5周年イベント「出張!百夜堂 海の家FC計画」で獲得したユーザー数をはるかに超えていることがわかります。

 

今回は『ウマ娘』と『ブルーアーカイブ』における配布・報酬の設定ミスと、それによって生じたユーザー数の変動に関してiGageのデータを用いて見てみました。

結果として、どちらもユーザー数を増加させてはいますが、両社のトラブル対策には違いが見られました。ユーザー間の格差とゲームバランスが崩壊しないことに重点を置いた『ウマ娘』はロールバックという、全ユーザーに対して平等な解決方法をとったことや、対応が早かったということもあり、大きな問題には発展しませんでした。

一方で、ユーザー間の格差が若干生じてしまうが、それ以上のアイテム配布を行うことで、新規・復帰ユーザーを多く獲得した『ブルーアーカイブ』ですが、ロールバック等の処理は行われなかったため、ユーザー間のアイテム獲得数には差が生じることとなり、一部のユーザーに不満が残る結果となりました。

もちろんトラブルを発生させないことが基本ではありますが、長期間にわたるゲームの運営上、不具合や設定ミスを完全に排除することは難しいと考えられます。万一それが起きたとき、どのようにユーザー対応をするのかは重要な課題です。その対応次第で運営に不信感を持ち、離脱するユーザーが発生してしまうことが最悪の結果と言えるでしょう。

トラブルが発生した場合、スピーディーな「お詫び」と公平感のある「代替案・解決策」の提供は不可欠な基本手順ですが、それを実施することにより、ユーザーの不満を満足に転換し、企業ブランドや提供サービスの信頼度向上につなげていく。それも運営の重要なミッションと言えるでしょう。

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