ゲーム会社への就職を志望する場合、ゲーム開発に関する知識や技術、ノウハウだけでなく、業界知識も必要になってきます。この記事では、ゲーム会社への就職を志望する人が最低限知っておきたい内容をまとめてみました。ゲーム業界の市場や成長性、業界構造のほか、具体的な職種までみていきたいと思います。
■ゲーム業界の市場規模
ゲーム業界の市場規模
角川アスキー総合研究所『ファミ通ゲーム白書2022』によると、2021年の世界ゲームコンテンツ市場規模は前年比6%増の21兆8927億円と拡大するなど成長を続けています。新型コロナによる巣ごもり消費で2020年は大きく伸びた後ということで反動減が懸念されましたが、力強い成長を示しています。
日本国内市場については、同0.8%減と僅かにマイナスとなりましたが、2兆円の大台をキープしました。ここ10年ほどは、フィーチャーフォンのブラウザで遊ぶソーシャルゲーム、そしてスマホのアプリで遊ぶスマホゲームが市場拡大のけん引役となっていますが、ここにきて成長に陰りをみせるようになってきました。
また開発力を高めただけでなく、資金力のある中国企業が『原神』や『NIKKE』といった大作ゲームを日本市場にも投入しているほか、国内のゲーム会社でも『ウマ娘 プリティーダービー』に代表されるようにクオリティの高いゲームが登場しており、開発力や資金力のない会社は退場を余儀なくされています。
一方、国内の大手ゲーム会社は、これまで家庭用ゲームソフトに加えて、モバイルゲームにも注力しています。モバイルゲームの開発規模が大きくなってきたことから、スマホゲーム専業の会社と協業で取り組むほか、海外のゲーム会社に自社タイトルのライセンス供与を行うといったことも行っています。
ゲーム業界の展望
ゲーム業界では、新しい市場として、ブロックチェーンゲームやメタバース、NFTなどWeb3を有望な市場と見て取り組む企業が増えています。また、新型コロナの影響を受けたeスポーツや、クラウドゲームなどに取り組むケースもでており、これからの拡大が期待されています。このほか、ハイパーカジュアルゲームや放置ゲームなどスマホゲーム会社ならではのフットワークの良さを生かした取り組みも散見されます。
■ゲーム業界の構造
ゲーム業界は、ハードメーカーやプラットフォーマー、ゲームソフトメーカー、デベロッパー、ミドルウェアメーカー、デバッグ会社、小売や卸といった流通会社など、多種多様な関係会社が関わることでビジネスとして成立しています。
ゲームが楽しめる環境を提供するハードメーカーやプラットフォーム運営会社
任天堂の「Nintendo Switch」や、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation」など家庭用ゲーム機(ハード)を開発して販売しています。自社でゲームソフトを開発・販売して多数のヒットを挙げています。
App StoreやGoogle Playを運営するストア運営会社もありますが、自社ではあまりゲーム開発を行っていません。また、最近では、PCゲームを配信するSteam(運営:VALVE)なども台頭しています。国内では、DMMやMobage、GREEもプラットフォームです。
プラットフォーム向けにゲームソフトを提供するソフトメーカー(パブリッシャー)
スクウェア・エニックスやコナミデジタルエンタテインメント、バンダイナムコエンターテインメント、カプコン、コーエーテクモゲームスなどで、ゲームソフトの企画・販売を行っており、自社で開発チームを持ち開発も行っています。
ゲーム開発を請け負うデベロッパー
ゲームソフトの開発を行っている開発会社です。ゲームパブリッシャーが企画と販売を行い、デベロッパーが開発と運営業務を担います。パブリッシャーの中には、自社で開発機能を持たない会社もあるため、開発業務だけデベロッパー企業に委託するケースもあります。デベロッパーは下請けのみで基本的にお金を出しませんが、最近ではプロジェクトによっては開発資金を拠出するケースが増えています。
ゲーム開発を支援するミドルウェア開発会社
ゲームの開発環境ゲームエンジンや、特定の汎用的な機能をまとめたミドルウェアなどを提供し、ゲーム開発を支援しています。ゲームソフトメーカーは、開発した成果を他のゲームでも使えるように自社で開発していますが、最近はマルチプラットフォームが一般化し、様々なハードで開発できる開発環境がゲームエンジンとして提供されています。サウンド処理やグラフィック処理など特定の機能に特化したミドルウェアもあり、開発を支援する機能を果たしています。
開発されたゲームをチェックするデバッグ・テスト会社
ゲームの開発規模が大きくなり、ゲーム内容が複雑になってくると、そのゲームが企画したとおりに動いているのかを確認する手間が増えてきます。かつては自社内でアルバイトなどを採用して行っていましたが、バグの発見やテストなどを専門的に行う会社が増えてきました。ゲームの開発規模が大きくなる中、その重要性は今後も高まるものとみられています。
■事業ごとにみるゲーム業界の企業例
ここでゲーム業界における企業をあげておきます。
ゲームハードメーカー・プラットフォーマーの企業例
- ソニー・インタラクティブエンタテインメント
- 任天堂
- Apple
- VALVE
- グリー
- DMM
- ディー・エヌ・エー(DeNA)
ゲームパブリッシャーの企業例
ゲームパブリッシャーをあげておきます。株式上場している企業が多い点が特徴です。大手ゲーム6社と、モバイルゲームのTOP3をあげておきます。パブリッシャーではありますが、自前で開発チームを持つ会社も少なくありません。
- バンダイナムコエンターテインメント
- スクウェア・エニックス
- カプコン
- セガ
- コーエーテクモゲームス
- コナミデジタルエンタテインメント
- Cygames
- ガンホー・オンライン・エンターテイメント
- MIXI
ゲームデベロッパーの企業例
ゲームデベロッパーの企業例をあげておきます。パブリッシャーから委託を受けてゲーム開発を行っている会社で、いずれも大手ゲーム会社の有名作品に関わっています。ゲームパブリッシャーと異なり、表に出ることが少なく、未上場企業も多いため、知る人ぞ知る存在であることが多いです。トーセやユークスは例外的に上場していますが、どんな作品を開発しているか、ホームページで公開することがあるので確認してみるといいでしょう。
- トーセ
- ユークス
- エイティング
- ゲームフリーク
- ディンプス
- サイバーコネクトツー
- ヘッドロック
ゲームエンジン・ミドルウェアの企業例
ゲームエンジンやミドルウェアの提供企業の例をあげておきます。ゲーム開発全体の効率化を支援するゲームエンジンを提供するユニティやエピックゲームス、グラフィックやサウンドなど特定の機能に特化した支援ツールを提供するCRIミドルウェアやスパーク、シリコンスタジオなどがあります。
- ユニティ「Unity」
- エピックゲームズ「Unreal Engine」
- シリコンスタジオ「Enlighte」
- CRIミドルウェア「CRIWARE」
- スパーク「SPARK GEAR」
デバッグの企業例
デバッグ・テストを会社の一部をあげておきます。開発したゲームがきちんと動作するかどうかをテストする専門の会社です。デジタルハーツやポールトゥウイン、SHIFT、イー・ガーディアンなど上場している企業も存在しています。最近ではAIを使ってテストの自動化なども行われているようです。
- デジタルハーツ
- ポールトゥウイン
- SHIFT
- イー・ガーディアン
- コンフィデンス
- キンシャ
■ゲーム会社で就職できる職種一覧
ゲーム会社に就職する場合、どういった職種があるでしょうか。大きく企画系、デザイン系、エンジニア系、その他の職種に分けることができます。
企画系
ゲームの企画売れ行きを左右する重要なポジションで、ゲーム全体の世界観やキャラクター、遊び方、ルール、画面のレイアウト、シナリオ、アイテムなど設定を決め、仕様書にまとめていきます。
- ゲームプランナー
- ゲームデザイナー
- ゲームディレクター
- マーケター
- QA
- デバッガー
デザイン系
ゲームに登場するキャラクターや背景・オブジェ、モーション、エフェクトなどのデザインを担当します。ゲームの売れ行きに影響する「ビジュアル」を担っている。会社によって職種の内容や名称が異なっています。
- CGアーティスト
- CGデザイナー
- イラストレーター
- UIデザイナー
エンジニア系
エンジニア系の職種には、プログラミングを行い、ゲームがプレイできる環境を整える仕事を行います。ゲーム開発の要とも言える仕事です。
- ゲームエンジニア
- クライントプログラマー
- サーバーエンジニア
- AIエンジニア
そのほかの職種
ゲーム会社は、開発するだけが仕事ではありません。開発スタッフの採用活動や、給与計算、外部企業と仕事を行う場合の契約書の確認、開発された成果物の法的な権利確保、開発資金の調達、快適に仕事するためのオフィス環境の整備なども、ゲーム開発には欠かせない仕事と言えます。
- 人事
- 採用
- 労務
- 総務
- 経理
- 財務
- 法務
- カスタマーサポート
■業界知識は就職では不可欠
この記事では、ゲーム業界に就職する際に最低限知っておくべき知識をまとめてみました。どの業界に就職するにしても、志望する会社だけでなく、その会社を取り巻く業界に関する知識を身に着けておくことはとても大事です。
業界知識は、ゲームの開発や運用といった実際の仕事にすぐに役立つわけではないですが、業界全体がどのような方向に向かっているのかを知っておくことで、習得すべき知識や技能、キャリアプランを明確にすることができます。
就職した後でも継続的に情報収集を行ったり、勉強したりすることをおすすめします。