【イベント】『神魔狩りのツクヨミ』メディアイベント&先行体験会をレポート 生成AIを体験の軸としたコロプラの新たな試みとは


コロプラ<3668>は、ゲームクリエイター・金子一馬が創る新規IPとして、スマー トフォン&PC向け新作ゲーム『神魔狩りのツクヨミ(読み:じんまがりのつくよみ)』を2025年5月7日にリリースする(関連記事)。

これに伴い5月1日、メディア向けイベント&先行体験会を開催。アプリビジネスの定石から外れた作品として、コロプラ社の中でも挑戦的な立ち位置である本ゲームにおける開発思想や、生成AIを活用したゲームが目指す姿について話を展開したほか、一足早くゲームを体験できるプログラムを用意。本稿では、その模様をレポートしていく。

■生成AIを体験の軸とした新しい試みを『神魔狩りのツクヨミ』で創造

イベントが始まると、まずはコロプラ取締役 上席執行役員 CPOの坂本佑氏が登壇。国内モバイルゲーム市場の現状と課題認識について話を展開した。


▲コロプラ取締役 上席執行役員 CPOの坂本佑氏。

国内のモバイルゲーム市場は、年々緩やかに規模を拡大してきたが、昨今はコロナ禍の影響などもあり成長が鈍化している傾向がある。また、世界的には横這い、アジアの中には減少傾向にある国もあり、日本では中国系企業の参入が目立っているというのが大きなところである。加えて、長く運用しているタイトルが多く、顔ぶれが変わらない状況から新作がヒットしづらい点が現状の課題感であると坂本氏は述べた。



他にも、以下の3点を課題として感じていると挙げた。

1.売上最大化構造(LTV重視、インフレ型課金)
2.LiveOPS依存(リリース過多)
3.キャラガチャ中心のUX設計

これにより、ユーザーに飽きが生じているほか、開発現場も疲弊していることから短期スパンで施策を続けることが難しくなってきているとコメント。「勝ちパターン」が定番化していることから、業界構造そのものが硬直化していると続けた。

そうした中で、今回、同社がなぜ『神魔狩りのツクヨミ』をリリースするに至ったのか。先に、同社のコンテンツ戦略を公開した。コロプラでは、位置情報やリッチな3Dを活かした未知のUXを扱った自社IPゲームの制作を得意としている。ここから、生成AIを体験の軸にした『神魔狩りのツクヨミ』でグローバルヒットを目指していくという。


▲同社が得意とする位置情報ゲーム×他社IPの例として、近年ヒットした『ドラゴンクエストウォーク』などを挙げた。

『神魔狩りのツクヨミ』には、3つの魅力があると坂本氏は語る。まずひとつは、「女神転生」シリーズで名高いゲームクリエイター・金子一馬氏のアートワークと世界観が取り入れられているということ。


▲『神魔狩りのツクヨミ』は、コンセプトプランナーとして参画している金子一馬氏のコロプラ移籍後初タイトルとなる。

2つ目に、昨今の流行である“ローグライクカードゲーム”の戦略性と高いリプレイ性があること。



▲金子氏が現代を活かした設定を作る際に、タワーマンションが閉鎖空間として面白い舞台装置になるというところから着想を得たという。そこにデッキ構築型ローグライクカードゲームを組み合わせた作品となっている。

最後に、生成系AI技術で類似ゲームにはない新たなゲーム体験を創造していることだと説明した。



また今回、国内モバイルゲーム市場の課題感を踏まえ、解決を起点として本企画は立案されたと振り返る。既存の構造ではなく、生成AIを軸として課題を解決するような構造になっていると坂本氏は述べた。

そこで、2024年6月にリリースされたブロックチェーンゲーム『Brilliantcrypto』(関連記事)と生成AIを活用したという点で繋がりがあると説明。




『Brilliantcrypto』では、キャラメイク時にそのキャラの背景や人物像がAIにより自動出力される。また、発掘した宝石の色や形、状況から、その名前や背景がAIで自動生成される。さらに、ユーザー間で宝石のやり取りをする際にゲーム内にニュースとして映像が流れるのだが、その際のアナウンサーの映像や音声がAIで生成されている。



このように、これまでクリエイターがスクリプティングしてきたものをAIによって自動生成することで作業効率化が図れていることはもちろん、ゲームの中の体験として広がりを見出すことが実践的に実証できたと坂本氏は述べた。

こうして『Brilliantcrypto』で実証できたことを踏まえて、『神魔狩りのツクヨミ』では、より生成AIに軸足を置いて主な体験として届けられることに挑戦していると話を展開。ローグライクというジャンルが持つ戦略性やリプレイ性の高さと、生成AIでの体験は相性がよく、今までにないゲーム体験の提供が可能となると坂本氏は自信を覗かせた。


▲現在、体験してもらったユーザーからも好評が得られているとの話だった。

具体的には、金子一馬氏がコロプラに入社してから作成したイラストなどのクリエイティブを独自に学習させたオリジナルAI「AIカネコ」を作成。このAIカネコをゲーム内に登場する偽神「オオカミ」に搭載し、ゲーム体験として昇華している。

作中では、オオカミがプレイヤーの行動を全て記憶し、そのログをもとに世界に1枚しかないユニークカードをリアルタイムに生成する。


▲どういった敵と戦ったのか、会話イベントでの選択などを踏まえて唯一のイラスト・性能を持ったカードが生成される。

なお、全く同じ行動をとった際にも生成されるカードは変わるとのこと。同じモチーフにしても無限のバリエーションでカードが生成されると付け加えた。これにより、ユーザーごとに世界でひとつだけのカードが生成される。




『神魔狩りのツクヨミ』は、『Brilliantcrypto』に続く挑戦的なゲームであり、単体での売上最大化のみではなく、企業としての開発ポートフォリオ最適の一環であり、どちらも“アプリビジネスの定石”に対する挑戦的な試みであるとして本テーマの話の締めとした。

坂本氏からは最後に、AI活用による「開発スピードとスケーラビリティ」の刷新についても述べられた。同社では、DX(クリエイティブ工程の効率化・業務改善)と、UX(ユーザー体験の向上を目的に活用)といった点で生成AIを活用している。


▲AIをサポートとして用いることで期間短縮・少人数での制作を可能としている。

また、AIの活用はIPを創出する際にも有用だと捉えていると坂本氏は続ける。冒頭の課題感でも述べられた通り、新規IPを創出することは非常に困難である。その中で、AIによる体験性で差別化し、新しくIPとして成立するところを目指したいと展望を語った。

しかし、IP創出の際には多大なるコストが掛かってしまう。そこで、AI活用での効率化を進めることで大ヒットせずとも(※中ヒット、小ヒットでも)活動を続けられる状況にできるのではないかとの考えを述べた。

『神魔狩りのツクヨミ』が成功モデルになれば、今後の展望としてもさまざまな側面で有効であることが立証できると坂本氏は話す。同作の展開をさらに広げていくことはもちろん、著名IPとのコラボなども実施できるかもしれない。『神魔狩りのツクヨミ』を単一のプロダクトではなく、AIをさらに活用して進化させていくことを考えているとして話の締めとした。

■『神魔狩りのツクヨミ』の開発で見えたAIとの向き合い方について

続いては、コロプラ上席執行役員 CIO 菅井健太氏と、『神魔狩りのツクヨミ』開発プロデューサーの齋藤ケビン雄輔氏が登壇し、“AIとクリエイターの共創はどこまで可能か?”をテーマにしたトークセッションを繰り広げた。


▲コロプラ上席執行役員 CIO 菅井健太氏。


▲コロプラ『神魔狩りのツクヨミ』開発プロデューサーの齋藤ケビン雄輔氏。

①人とAIの役割分担、そして編集という創作
これについて齋藤氏は、まず生成AIは手段・道具のひとつであると考えているとコメント。生成AIがアウトプットしたものの中からどれが適切であるかを取捨選択し、改変・修正して直していき、最終的にユーザーに届けられる際にどう意味づけられるかを考える工程が重要であると説明した。『神魔狩りのツクヨミ』でも、この3点に時間を費やしたという。

②金子一馬らしさをどうAIに伝えたか
今回、この点に最も苦労したと斎藤氏は話す。まずは金子さんらしさとは何かを言語化・分析し、プロンプトで生成できないか試すところから始まったという。しかし、言語だけでは伝えきれない部分も多く、金子さんらしさが再現されなかったとのこと。そこで、金子氏がコロプラに入社してから制作したイラストを学習させ、それをもとに生成されたものを大量に選定し、再度学習させるといった工程を繰り返して今のものに行き着いたという話だった。

③生成されたアウトプットと、共創のリアル
これについては菅井氏が、さまざまな学習パターンがある中で金子さんらしさが垣間見える惜しいイラストがでることもあれば、そうはならないこともあったと話す。選定した画像を学習させることでイメージから離れてしまうこともあり、かなりトライ&エラーがあったのだとか。しかし、最終的に出来上がったものを金子氏に見せた際に「私もこれは描けないな」という声が挙がった時に生成AIの可能性に手応えを感じたと話をまとめた。

④“AIと創る”に向き合った理由
斎藤氏は、効率化として生成AIを活用しようという試みは今も多くの企業が実施しているが、これをゲーム体験に落とし込めないかということを数年かけて考えてきたという。純粋にAIを使った新しいゲーム体験を作れないかというところがスタートになっており、金子氏と制作を進める中で徐々に絵にスポットが当たっていったのだとか。

また、菅井氏はそれまでもAIを活用したゲーム自体はあったものの、1度遊ぶだけで繰り返し楽しめるものではなかったと話す。同社としても、最新のテクノロジーと独創的なアイデアで新しい体験を届けたいというビジョンを掲げているため、AIを活用したタイトルを最初にリリースしたいという想いがあったと述べた。

⑤AIが“継承のツール”になる可能性
これについては菅井氏が、「AIカネコ」を作った際に、2025年の金子氏の感性が保存されることに対して、さまざまな人がそこに意見を投げかけたうえですぐに反応をもらえるほか、数年後、金子氏自身から影響を受けられる可能性もあるのではないかと話した。

また、斎藤氏は多くのプロダクトで俗人化しないための耐性が重要な中で、学習コストやクオリティの担保という意味ではAIに可能性があるとコメント。例えば、10年続いたサービスに新しく合流するとなった時に、一人がそれまでの全てを勉強するとなると中々難しい。それをAIで再現できるのであれば、人が入れ替わった際にも継承できるのではないかとの例を挙げた。

⑥AIとの共創で見えた新しい創作のかたち
斎藤氏は、実際にやってみた課題も含めて、AIを活用する際は必ず「ユーザーに何を届けたいのか」という価値とのセットで考えなければならないと話す。AIを使ったから面白くなるわけではなく、AIを取り入れたからこそ生まれる価値とは何か。最終的にユーザーへ届ける際に、納得性やAIを使ったからこそ生まれる価値観、ゲームの中での意味合いを常に考えながらやらなければいけないと述べた。

■早速、世界で1枚だけのカードを得られる瞬間を体験!

ここらは『神魔狩りのツクヨミ』を先行体験。

主な目的としては、主人公であるツクヨミたちが結界に閉ざされたタワマンからの脱出を目指す。さらに、なぜこのような状況になってしまったかの原因を究明していくというのが本作の主旨となる。

プレイヤーキャラとして登場するのは4名で、イザヨイヅキ、シンゲツ、マンゲツ、ハンゲツが登場する。リリース時にはイザヨイヅキとシンゲツがプレイ可能で、マンゲツ、ハンゲツは後日の登場になるとのこと。4人のシナリオを全て読めば、この世界に何が起きているのかが解明できるとの話だった。

バトルでは配られた3枚の神魔札(カード)の中から“オド”を使用して1枚を使用。神魔札を消費した後はデッキから1枚補充され、これをオドが尽きるまで行うことができる。



敵の攻撃先には矢印が表示されており、その箇所にある神魔札の盾の値(カード右下に記載)がプレイヤーのガード値になる。自分のターンなら神魔札の場所はいつでも入れ替え可能となっているので、敵の攻撃力に見合ったものをセットしておこう。



山札がなくなった際には神魔札の補充は行われず、ターン終了時にリシャッフルされる。こうして自身のHPが尽きる前に敵を殲滅することができれば勝利となる。

バトルに勝利した後は神魔札を獲得することが可能。3枚の中から1枚を選択できる。なお、ここで登場する神魔札は汎用的なものであり、オオカミが生成するオリジナルのものとは異なる。


▲あえて神魔札を獲得せずに「見送る」ことも可能。デッキの枚数が増えると回転率が低下してしまうため、良いものがなければ見送るのもアリ。

探索を行う中では分かれ道も。各部屋に入ることでさまざまなイベントも発生する。


▲探索中にはさまざまな効果が常時発動する「ツキモノ」が手に入ることも。効果の中には良いものも悪いものもある。

偽神「オオカミ」に出会うことができれば、オリジナルの神魔札を生成してもらえる。世界に1枚しかない神魔札を使えるという点が本作最大の特徴となっている。



また、作中には他のプレイヤーが持っている神魔札2枚の中から良い方を選択する場面も。こちらは人気投票となっており、金子氏の目に留まったものは後日、金子氏がリファインしたものを改めて作中に登場させるとの話だった。

そのほか、休憩所ではHPの回復や神魔札の強化が可能。フロア最奥に待ち構えるボス戦に備えて、バッチリと準備を整えられるようになっている。

強力なボスに打ち勝てればステージクリア。バトル終了後には、良い効果を持ったツキモノを手に入れることができる。


■マネタイズや人気投票について気になる疑問をぶつけてみた



Q.現在のモバイルゲーム市場について、キャラガチャやインフレに課題感を感じているとのお話でしたが、本作ではどのようにマネタイズを考えておられるのでしょうか?

A.基本的には経験値を溜めることでレベルが上がって機能が解放されていくのですが、これを課金で時短することが可能です。また、生成AIを使ったカード作成をする際にアイテムが必要になるのですが、この部分を課金で補うことができます。また、このアイテムはレベルアップや特定の階層をクリアすることでも手に入ります。

Q.オオカミから神魔札を生成するためにアイテムが必要との話でしたが、今仰られた以外に入手する方法はありますか? また、課金を行うことで差異は生まれるのでしょうか?

A.まず、アイテムに関してはログインボーナスという形でも入手することが可能です。

また、課金を行うことでメリットが生じることはありません。これとは別に、課金で得られるパスを用意しており、こちらを購入した場合はオオカミと頻繁に出会えて、より神魔札生成の機会が多く得られることはございます。

Pay To Winでは考えていないので、基本的には無料でも攻略が進められるようになっております。ただ、攻略をサポートするための要素として課金要素を導入しており、その部分が本作におけるマネタイズ思想となっています。

Q.人気投票による金子氏のリファインについて、どれくらいの頻度での開催を予定しておられますか?

A.頻度についてはまだ決め切れていないのですが、2週間~1ヶ月に1回という形で検討しております。神魔札が一定数生成されてから投票されるまでの期間と、金子氏がリファインするための期間を考えると、これくらいのスパンになるのではないかと想定しています。



(取材・文 編集部:山岡広樹)


【『神魔狩りのツクヨミ』 基本情報】

◆ゲーム名:神魔狩りのツクヨミ(じんまがりのつくよみ)
◆ジャンル:カード創造ローグライク
◆対応端末:iOS、Android™、PC(Steam)
◆対応言語:日本語、英語、中国語(繁体字・簡体字)
◆価格:アイテム課金制(基本プレイ無料)
◆サービス開始:2025年5月7日 予定
◆ティザーサイト:https://jintsuku.jp/
◆ストアページ
App Store: https://apps.apple.com/jp/app/id6505051119
GooglePlay: https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.colopl.mask
Steam(PC): https://store.steampowered.com/app/3360010/
◆公式Discordサーバー: https://discord.gg/WR8rMV7NMb


©COLOPL, Inc.
©2025 Valve Corporation.
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高259億7500万円、営業損益12億800万円の赤字、経常損益9億4700万円の赤字、最終損益18億6600万円の赤字(2024年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
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