朝日新聞社、「AIに関する考え方」を公表…今後はAIを利活用した取材報道を検討・実行

朝日新聞社は9月29日、AI(人工知能)に関する考え方をまとめました。AIは業務の効率化や新しい価値の創造などに大きな可能性がある一方で、様々なリスクもある。読者やお客さまの理解と信頼を得ながら、AIの利活用、AIに関連したサービスや製品の開発・提供を適切に推進するため、考え方を公表することにした。

AIに関する考え方は8項目で構成している。その冒頭では、AIはあくまで人間を補助する役割とし、最終的な判断と責任は人間が担うことを宣言。人権を尊重し、法令を順守するとともにリスクに適切に対応することなどを明記している。

AIを利活用した取材・報道を検討、実行


報道については、これまでと同じように当事者への直接取材や現場での取材が基本であることを明確にした。そのうえで、AIを利活用した取材・報道を検討、実行すると表明。AIの出力結果には誤りが含まれる恐れがあるため、事実関係を確認することも明確にした。

また、AIは強い影響力を持ちる。報道機関にとっては監視の対象であると位置づけるとともに、AIによって引き起こされる倫理的・法的・社会的な課題の解決に向けて、報道を通じて責任ある役割を果たすという決意を示した。

さらに編集部門でも社内のガイドラインに基づき、生成AIを利用している。AIでプログラムを短時間で作り上げ、大量のデータを効率的に分析したり、AIによってアンケートの自由記述を分類したりした実績がある。

朝日新聞社のAI(人工知能)に関する考え方

AI(人工知能)は業務の効率化や新しい価値の創造などに大きな可能性がある。一方で、様々なリスクもある。AIの利活用、AIに関連したサービスや製品の開発・提供を適切に推進するため、朝日新聞社の考え方をまとめた。

1.人間中心
 AIは人間を補助する役割と位置づけ、最終的な判断と責任は人間が担います。

2.人権
 AIの利活用、開発・提供に当たっては、人権を尊重し、不当に侵害することのないよう努めます。

3.法令順守
 関連法令を順守し、AIに関する社内ガイドラインも整備します。また、朝日新聞綱領、朝日新聞社行動規範、朝日新聞記者行動基準、朝日新聞社コミュニケーションポリシー、朝日新聞社の個人情報保護方針など社内の関連規定を順守します。

4.リスク
 AIには様々なリスクがあります。リスクを認識し、適切な利活用、開発・提供に努め、リスクに対応する体制を確立し、継続的に改善します。万一、予期せぬ事態が発生した場合には、リスクマネジメント体制のなかで、迅速かつ適切に対応するよう努めます。

5.透明性
 AIの利活用、開発・提供に当たっては、過程も必要かつ可能な範囲で適切に説明し、透明性の確保に努めます。

6.人材育成
 AI時代のメディア企業に必要な知識や技能を身につけた人材を育成します。

7.報道
 当事者への直接取材や現場での取材が基本ですが、AIを利活用した取材・報道も検討、実行します。利活用する際には、出力結果の事実関係を確認し、1~6の考え方を踏まえた上で、「朝日新聞記者行動基準」を順守します。
 また、AIは強い影響力を持つことから、報道機関にとっては監視の対象です。倫理的・法的・社会的な課題を引き起こす存在でもあります。こうした課題を注視し、解決に向けて報道を通じて責任ある役割を果たしていきます。

8.柔軟かつ責任ある運用
AI技術の進展や社会情勢の変化に合わせ、朝日新聞社の考え方や社内ガイドラインも必要に応じて見直し、責任ある利活用、開発・提供に取り組みます。