
ブシロード<7803>は9月28日、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を公表した。今回の資料では、2025年に掲げた「中期ビジョン2030」の進捗を示すとともに、2030年に向けて「ライブミックスエンタテインメントとグローバルスケールの加速」を進める方針を改めて打ち出している。
同社が目指すのは、売上高1000~1200億円、営業利益120~150億円。2026年6月期の実績は売上高578億円、営業利益47億円であり、今後5年弱で事業規模を大きく拡大する計画だ。その成長を支えるのが、①自社IPの活性化・新規IP創出、②カードゲーム世界一、③海外進出の加速という3つの取り組みとなる。

■2030年に売上高1000~1200億円、営業利益120~150億円
まず押さえておきたいのが「中期ビジョン2030」の数値目標だ。2026年6月機の実績は、売上高が578億円、営業利益が47億円だった。これに対して2030年の到達イメージとして、売上高1000~1200億円、営業利益120~150億円を掲げている。
事業KPIでは、ライブイベント動員数を98万人から150万人、TCGプレイヤー数を34万人から50万人、海外売上高比率を29%から50%へ引き上げる。2026年6月期は売上高が過去最高を更新した一方、営業利益は前年の48億円から47億円とほぼ横ばいだった。会社は2026年6月期を「次なる成長への仕込み期間」と位置付けている。
つまり、現在の事業規模をそのまま積み上げるというより、今後の成長に向けてIP、TCG、海外、ライブの基盤を作っていく段階と見ることができる。
■成長の基本にある「LIVE-MIXED ENTERTAINMENT」
その前提となるのが、ブシロードが強みとして掲げる「LIVE-MIXED ENTERTAINMENT」だ。同社は、TCGの大会運営やプレイング環境、音楽ライブ、プロレスの巡業など、人と人が同じ場所・時間を共有することで生まれる「熱量」を重視している。
そのうえで、IPを立ち上げ、アニメやゲーム、音楽、MDなどへ展開していく。グループ内にさまざまな機能を持つことで、IPの立ち上げから多角的なコンテンツ展開までをワンストップかつスピーディーに進められることを強みとしている。
象徴的なのが「BanG Dream!」だ。声優×ガールズバンドというプロジェクトから、TCG、デジタルゲーム、アニメ、出版、ライブ、CD・Blu-ray、グッズなどへ展開。こうした多角展開によってコンテンツへの接触機会を増やし、最終的にリアルなライブなどを通じてファンとの接点を作るというモデルだ。
■自社IPを増やし、収益の柱を厚くする
そのための最初の取り組みが、「自社IPの活性化および新規IPの創出」となる。既存の「カードファイト!! ヴァンガード」「BanG Dream!」などの有力IPを継続的に育成するとともに、新規IPの立ち上げにも取り組む。
2026年6月期には新規自社IPとして「ZERO RISE」を発表し、舞台公演を実施。今後はアニメ化に加え、2027年5月の舞台公演も予定している。出版事業ではブシロードワークスを通じて多点数の商品開発を進め、出版起点でのIP創出も強化する。
さらに同社はIPを売上規模によってランク分けして管理しており、2030年までに年商100億円以上の「Sランク」IPを3本以上、40億円以上の「Aランク」IPを4本以上、10億円以上の「Bランク」IPを5本以上保有することを目標としている。
2026年6月期の時点ではSランクが「BanG Dream!」の1本、Aランクが「カードファイト!! ヴァンガード」「ヴァイスシュヴァルツ」の2本、Bランクが「スターダム」「PalVerse」の2本となっている。
既存IPを大きくするだけでなく、新たなIPを継続的に積み上げることが2030年に向けた重要なテーマになっている。
■「カードゲーム世界一」へ、TCGをグローバルプラットフォームに
もう一つの大きな柱がTCGだ。ブシロードはTCGを「売って終わり」の商品ではなく、ユーザーが遊び続けるための「インフラビジネス」と位置付けている。
企画・開発から製造、海外でのローカライズ、販売、ショップ運営、大会までをグループ内外のネットワークで支える。世界の公認店舗は約4300店舗で、国内約1300店舗に対し海外が約3000店舗。2026年5月の「カードゲーム祭り2026」では国内外から2万3652人が来場した。
公式TCGツール「ブシナビ」では、店舗検索、大会へのエントリー、大会運営などをサポート。6言語で展開し、ユーザー、カードショップ、ブシロードをつなぐネットワークの構築も進めている。
TCGプレイヤー数は2025年6月期の25万人から2026年6月期には34万人まで増加しており、2030年には50万人を目指す。
さらに海外売上の伸びも大きい。2026年6月期のTCG売上は国内149億円に対して海外114億円まで拡大しており、会社は2027年6月期にTCGの海外売上比率が初めて50%を超える見通しとしている。
■海外売上比率50%へ
海外展開はTCGだけにとどまらない。2026年6月期のブシロードグループ全体の海外売上比率は29.1%で、前年比1.9ポイント上昇した。2030年にはこれを50%まで引き上げる方針だ。
重点地域として中国を中心とする東アジアや北米を挙げ、TCG、アニメ、ゲーム、音楽ライブ、MDなど、グループのコンテンツを海外へ直接届ける。
そのためのマーケティング施策として「Bushiroad EXPO」も継続する。国内でIPを作って海外へ輸出するだけではなく、TCGを中心に海外の販売・イベント・コミュニティまで自前のネットワークを構築しようとしている点が特徴だ。
■ライブ動員150万人を目指す
そして、これらをつなぐ役割を担うのがライブだ。ブシロードは2030年までに、音楽ライブや舞台などを起点とした大型IPを少なくとも3本立ち上げる計画。ライブイベントの有料来場者数についても、2026年6月期の98万人から150万人まで増やす目標を掲げている。
これは単純なイベント動員数の拡大だけを狙ったものではない。同社にとってライブは、IPとファンを直接つなぎ、そこで生まれる「熱量」を他の事業へ波及させる役割を持つ。
IPを作る→ゲームやアニメ、TCG、MDなどへ展開する→ライブやイベントでファンと接点を持つ→海外へ広げる。この循環を大きくしていくことが、ブシロードのいう「LIVE-MIXED ENTERTAINMENT」の姿といえる。
■2030年に向けた「仕込み」は始まっている
今回の資料を見ると、ブシロードの2030年戦略は、単に既存事業を拡大するというものではない。
自社IPを増やし、そのIPをTCGやゲーム、アニメ、出版、MD、ライブへ展開する。あるいはTCGを中心に海外のユーザー・店舗・イベント網を広げる。そしてリアルな体験を通じて、さらにIPの熱量を高める。―――こうした循環をグループ全体で作り、収益規模を現在の約578億円から1000~1200億円へ引き上げるのが「中期ビジョン2030」の全体像だ。
2026年6月期は、売上高こそ過去最高となったものの、営業利益は47億円と利益面では大きな伸びを見せていない。一方で、ライブ動員数、TCGプレイヤー数、海外売上比率はいずれも2030年目標に向けて進展している。
今後の焦点は、こうした「仕込み」がどのタイミングで収益成長に転じるかだろう。2027年6月期には「パルワールド オフィシャルカードゲーム」や「BanG Dream! Our Notes」といった大型タイトルの収益貢献も予定されており、ここから2030年に向けた成長フェーズに入れるかが注目される。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社ブシロード
- 設立
- 2007年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 木谷 高明
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高561億7500万円、営業利益48億6800万円、経常利益48億4400万円、最終利益34億1800万円(2025年6月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 7803