日本トイザらスが民事再生、「ドンキ」運営のPPIHがスポンサーに 「キダルト」など成長の芽をどう伸ばすか、再建の行方に注目

木村英彦 編集長
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日本トイザらスは10月1日、東京地方裁判所に民事再生手続開始を申し立てたと発表した。同時に、「ドン・キホーテ」などの運営会社として知られるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)<7532>との間で事業譲渡契約を締結。PPIHの完全子会社であるオペレーションシェアードサービス(OSS)が、トイザらスの店舗・オンラインで展開する玩具・子ども用品販売事業を承継する予定だ。事業譲渡の実行日は10月30日を予定している。

日本トイザらスは1991年に国内1号店をオープンし、現在は全国に約150店舗を展開する国内最大級の玩具・ベビー用品専門店となっている。しかし今回、会社側は民事再生に至った理由について、少子化を踏まえた事業転換の遅れや、EC企業などとの激しい価格競争によって売上が低迷し、自力での事業継続が困難になったと説明している。業績面でもここ数年、赤字決算が続くなど苦戦していた(関連記事)。

その一方で、今回の再編を単純な「玩具専門店の破綻」と捉えるのは少し違う。注目されるのは、スポンサーとなるPPIHが今回の事業取得を、自社の成長戦略の一環として位置付けていることだ。

 

■米国本体の破綻を乗り越えた日本トイザらス

日本トイザらスには、今回とは別の「トイザらス破綻」を乗り越えた過去がある。2017年、米国のToys“R"Usが財務再構築に動いた際、日本を含むアジア事業はその対象外だった。日本トイザらスは当時、トイザらス・アジア・リミテッド傘下の事業として、米国法人とは財務的に独立した組織であることを説明している。

この間の流れを示すと以下のようになる。

2017年:米国トイザらスが財務再構築
↓
日本事業は独立した事業として存続
↓
その後も日本で事業を継続
↓
2026年:今度は日本法人自身が民事再生

という経緯になる。

約9年の時間を経て、日本トイザらスは今度こそ自らの事業モデルを見直す局面を迎えたことになる。

 

■「少子化」だけでは説明できないトイザらスの現在地

もちろん、日本トイザらス自身が民事再生の理由として「少子化を踏まえた事業転換の遅れ」を挙げている以上、従来型の子ども向け玩具市場だけに依存することの難しさは大きかったとみられる。

しかし、実は日本トイザらスも手をこまねいていたわけではない。その象徴が「キダルト」への取り組みだ。日本トイザらスは2025年3月、ダイバーシティ東京 プラザに初の通年型キダルト専門店をオープン。前年に実施したポップアップストアが好評だったことを受けた展開だった。

さらに京都河原町OPA、横浜ワールドポーターズなどにもキダルト専門店を展開。2025年12月時点では、キダルト専門店4店舗に加えてキダルトコーナーを展開する37店舗を有し、さらに32店舗でブラインドボックスの品揃えを強化するなど、取り組みを既存店舗へ広げていた。

横浜ワールドポーターズ店では、フィギュア、ゲーム、ブロック、トミカ、ブラインドボックスなど、大人が楽しめる商品を幅広く取り揃えていた。つまり、「子ども向け玩具だけでは難しい」という認識から、すでに大人の需要を取り込む方向へ動き始めていたのである。

 

■PPIHは、この「成長の芽」をさらに広げるのか

そこで今回のPPIHによる事業承継が興味深くなってくる。PPIHは今回のスポンサー契約について、日本トイザらスが持つ「顧客基盤及び事業基盤」をグループに取り込むことで、新たな顧客層・事業領域の獲得とLTVの拡大につなげることを狙いとしていると説明している。

PPIHがトイザらスを取得する目的は、単純に店舗を引き継ぐことではない。

トイザらスには、

- 玩具専門店としてのブランド
- 全国約150店舗の店舗網
- 子ども・ファミリー層という顧客基盤
- 玩具・ベビー用品に関する商品・販売ノウハウ
- EC

といった事業基盤がある。これらをPPIHの小売事業に組み込むことで、新しい顧客層を獲得しようとしているわけだ。そして、PPIH側は大人の需要を取り込む商品ラインアップへの転換も打ち出している。

ここから考えると、今後のトイザらスは「ドン・キホーテ化する」というよりも、トイザらスというブランドを残しながら、その商品領域や顧客層を広げていく方向になる可能性がある。実際、PPIH側は可能な限り全従業員の承継を目指し、全店舗についても賃貸人からの承諾を得るため協力を依頼するとしている。一方で、事業譲渡後の具体的な運営方法については現時点では未定だ。

 

■玩具専門店から「エンタメ小売」へ?

キダルト市場で扱われているのは、単純な「大人向け玩具」ではない。フィギュア、トレーディングカード、キャラクターグッズ、ブラインドボックス、プラモデル、ゲーム、ホビーなど、ゲームやアニメと隣接する商品群が多い。日本トイザらス自身も、すでにこうした領域への進出を始めていた。

その意味では今回のPPIHによる事業承継は、日本トイザらスがすでに見つけていた新しい需要を、PPIHがより大きな店舗網や小売ノウハウの中でどう育てるかという話でもある。

少子化によって子どもの人口が減少するなかで、従来の「子どものための玩具店」から、子どもと大人の双方が楽しめる場所へ変わっていく。そこにゲーム、アニメ、キャラクター、ホビーといったエンターテインメント領域が重なってくれば、トイザらスの位置付けそのものが変わる可能性もある。

もちろん、現時点でPPIHが具体的にどのような商品政策や店舗政策を打ち出すのかは決まっていない。事業譲渡についても裁判所の許可などが前提となっており、PPIH自身も業績への影響を精査中としている。

だからこそ、今回のニュースで注目したいのは「トイザらスがなくなるのか」ではない。米国本体の破綻を乗り越えてきた日本トイザらスが、今度は日本市場の変化を受けて再編される。その中で、すでに取り組んでいたキダルトという成長の芽を、PPIHがどこまで大きな事業へ育てられるのか。ここが今回の事業承継を見ていくうえでのポイントになりそうだ。

 

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