ブシロード、26年6月期の研究開発費は46%減の8.12億円 ピークから減少もIP開発継続 大型IPと多点数開発を組み合わせる戦略へ

ブシロード<7803>の2026年6月期の研究開発費は、前の期比45.8%減の8億1200万円となった。2025年6月期は14億9800万円、2024年6月期は15億1300万円と、直近2年間は15億円前後の高水準で推移していただけに、大幅な減少となった。

ただ、これをもってブシロードが研究開発やIP開発を縮小していると見るのは早計だろう。過去数年間の研究開発費の推移と実際のタイトル投入、さらに同社が掲げる「中期ビジョン2030」を合わせてみると、むしろ大型タイトルへの投資を積極的に行ってきた段階を経て、複数のルートからIPを生み出し、育成する体制へと進もうとしていることが分かる。

 

■研究開発費は2024~2025年6月期に15億円規模へ

ブシロードの研究開発費は、2019年7月期の1億5700万円から2020年7月期には2000万円まで減少したものの、その後は増加に転じた。2021年6月期は6300万円、2022年6月期は4億100万円、2023年6月期は8億5300万円と増加し、2024年6月期には15億1300万円、2025年6月期には14億9800万円まで拡大した。

その後、2026年6月期は8億1200万円となり、ピーク時からは大きく減少している。

この背景には、ここ数年における大型タイトルへの積極的な投資があるとみられる。特にトレーディングカードゲーム(TCG)では複数の大型タイトルを投入したほか、コンソールゲームについても多くのタイトルを展開してきた。

つまり、2024~2025年6月期の研究開発費が突出していたというより、数年間にわたって開発投資を拡大した結果として15億円規模まで膨らみ、2026年6月期にはその水準から低下したと捉える方が実態に近い。

 

■研究開発費が減ってもIP開発への意欲が後退したわけではない

一方、2026年6月期の研究開発費が減少したことだけを見て、ブシロードが新規IPや新作タイトルへの投資を抑制していると判断することもできない。

同社は「潮流と本質をとらえ、型にはめずに挑戦し、革新的エンタテインメントで世界を代表する会社を創る」という基本方針のもと、良質なIPの開発・獲得に注力している。特にTCGとモバイルオンラインゲームでは、新製品を市場に送り出すための企画開発・製作活動を積極的に行っていると説明している。

2026年6月期にも、その後の市場投入につながる開発が進められていたと考えられる。例えば「バンドリ!」では、2026年9月に新作モバイルゲーム「バンドリ!アワーノーツ」をリリースしている。リリース自体は2026年6月期終了後だが、その企画・開発は当然ながら同年度から進められていたものだ。

また、TCGでは「パルワールド オフィシャルカードゲーム」など、新たなタイトルを市場に投入している。

こうした動きを踏まえると、研究開発費の減少は、開発活動そのものが後退したことを意味するものではない。過去2年間に大型タイトルへの投資が集中した反動という側面も大きいと考えられる。

 

■IPを「大型化」するだけでなく、多数のIPを生み出す

今後のブシロードの戦略を理解するうえで重要なのが、同社がIPをランク付けして成長を管理している点だ。

同社は、積層型のIPビジネスモデルを構築する中で、IPごとのランクを可視化し、

- Sランク:年商100億円以上を3本以上
- Aランク:年商40億円以上を4本以上
- Bランク:年商10億円以上を5本以上

保有することを事業目標としている。

これは「次の大型IPを1本作る」という単純な戦略ではない。複数のIPを開発し、それぞれを事業として育成し、売上規模に応じてさらに成長させる。そうしたIPポートフォリオを構築する発想が色濃く表れている。

現在の有力IPである「カードファイト!! ヴァンガード」「バンドリ!」については、会社の顔となり継続的に売上を生み出す柱として、さらに強固なものにしていく。

また、「スターダム」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」といったIPについても、次の柱として育成する方針だ。

 

■大型IP開発と「多点数IP開発」を並行

新規IPについても、従来型の大型IP開発だけに依存しない。ブシロードが得意とする音楽ライブや舞台を起点とした「ライブミックス」による大型IP開発は今後も継続する。2026年1月に発表した新規自社IP「ZERO RISE」に続き、2030年までに少なくとも2本の大型IPを立ち上げる方針だ。

一方で、2024年6月期に新設したブシロードワークスでは、出版事業の刊行点数を増やすとともに、これまで培ってきたアニメ製作委員会のノウハウを活用し、出版を起点としたIP開発も強化する。

ここには、従来の「大型IPを開発して大きく育てる」という方法に加え、比較的小さなIPを多数生み出し、その中から成長するIPを育てていく仕組みを作る狙いがあるとみられる。

大型IP開発と出版による多点数IP開発を並行させることで、IP創出の入り口そのものを増やそうとしているわけだ。

 

■TCGでは自社IPと外部IPの両輪で拡大

この考え方は、カードゲーム事業にも表れている。

ブシロードは「ヴァイスシュヴァルツ」「カードファイト!! ヴァンガード」という自社の基幹タイトルを引き続き成長させる一方、「パルワールド オフィシャルカードゲーム」や「ゴジラ カードゲーム」など、外部IPとの協業による新規タイトルにも取り組んでいる。

自社IPを育てるだけでなく、強力な外部IPをカードゲームという自社の強みのある事業に取り込むことで、タイトル数と市場規模を拡大していく戦略だ。

同社は、取り扱いタイトル数ではすでに世界有数のポジションを確立しているとしており、今後は「世界最大のカードゲームパブリッシャー」を目指す。

これは単にカードゲームを増やすという話ではなく、新しいIPをカードゲーム化するためのグローバルなプラットフォームになる、という構想につながっている。

 

■「研究開発費の減少」から見えるのは投資後退ではなく、IP戦略の変化

研究開発費だけを見ると、2026年6月期の45.8%減は目立つが、2019年以降の推移を振り返れば、ブシロードは2022年6月期以降、研究開発投資を大きく拡大し、2024~2025年6月期には15億円前後を投じる水準まで引き上げてきた。

その間に大型TCGやコンソールゲームなどを積極的に市場へ投入し、現在もモバイルゲームやTCGなどで新しいタイトルを開発・投入している。

したがって、2026年6月期の研究開発費減少は、IP開発への意欲が後退したというより、過去数年間に膨らんだ大型開発投資の水準から低下したものと見るのが妥当だろう。

むしろ注目すべきは、今後の投資の「量」だけでなく「方法」である。既存の大型IPを育て、新たな大型IPを継続的に立ち上げる。その一方で、出版などを通じて多くのIPの種を生み出し、さらに外部IPとの協業によってTCGタイトルを増やす。

その中からS・A・BランクのIPを積み上げていく。

ブシロードは、これまでの大型IP開発の経験を生かしながら、「一発の大型IP」に依存するのではなく、複数のIPを継続的に生み出し、育て、収益化するポートフォリオ型のIPビジネスへと進もうとしている。

研究開発費の減少は、その戦略転換を考えるうえでの一つの数字に過ぎない。むしろ今後は、投入したタイトルがどのように育ち、どのIPがBランク、Aランク、そしてSランクへと駆け上がっていくのかが、ブシロードの成長力を測るポイントになりそうだ。

 

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株式会社ブシロード
https://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役会長 木谷 高明/代表取締役社長 根本 雄貴
決算期
6月
直近業績
売上高578億2300万円、営業利益47億5400万円、経常利益59億3000万円、最終利益45億6500万円(2026年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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